スーパーモモイストレート!!   作:空にかかる野正レイ、野正レインボー

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「ひとつでも作品を投げ出したら……お前はもう後戻りできなくなる!」

「俺はそれを望んでいる」(エター)(似た設定の作品で初動ガチャ)(使いまわしストックで毎日更新)(ランキング上位に低評価爆撃)(アカウント凍結)

 多々書かなければ生き残れない!(迫真)


7球目 地下とロボットと黒い服

「いたた……」

 

 痛むお尻をさすりながら周囲を見回す。辺りは薄暗い。

 

「知らない天井だ……」

 

 お決まりのボケをひとつ。

 モモイは隣で同じようにお尻をさすっているユズに手を伸ばした。

 

「大丈夫、ユズ?」

 

「ったくケツが痛ぇんだよオラァ……」

 

「最悪なランダムイベントだったよね……ん?」

 

「…………あァ?」

 

 薄暗闇にもそろそろ目が慣れてきた。

 ぼんやりとした輪郭が少しずつクリアになっていく。

 

「ユズじゃないっ!?」

 

「んだお前オラァッ!!」

 

 砂とでこぼこの石で囲われた空間に、その叫びはよく響いた。

 

 


 

 

「んでお前がここにいるんだよオラ」

「こっちの台詞だよっ」

 

 モモイの目の前にはいつだか野球バトルをモモイ達に仕掛けて来た生徒がいた。

 周囲は岩で囲まれている。いわゆる洞窟の類いだろうか。

 

「私はアビドスオオスナアリジゴクモドキモドキモドキ超絶巨大砂地獄(インフェウノ・デザート)に巻き込まれて落っこちてきたんだけど……」

 

「頭おかしいんじゃねェのかお前」

 

「えっ!?」

 

 つい先程まで、モモイとユズはアビドスの砂漠を歩いていた。その道中で途轍もなく大きな砂の渦に遭遇し、あえなく地下空間まで落っこちてきてしまったわけだ。嘘は言ってない。

 

「あンのクソデケぇアリジゴクがそんな阿呆な名前のわけねェだろオラァ……!」

「本当だよ! ソースもあるから」

「どこだよ」

「だって私が名付けたんだよ?」

(ウチ)の冷蔵庫の中にでも入ってンのかてめェのソースはよォ!」

 

 どうやら目の前の生徒も段違いなサイズの砂の渦に飲まれて、この謎の地下空間に落ちて来たらしい。

 

「多分、単なる自然空間じゃねぇぞオラァ」

 

 モモイは言われて初めてこの空間に人の手が入っていることに気付いた。そもそも本当に自然の地下空洞になんて落っこちてたら、秒で人生のゲームオーバーだ。

 

「とりあえずユズを探さないと……」

「お前も連れとはぐれたのかよ」

「そっちも?」

「あぁ。何にせよ、ずっとこのよくわかんねェ地下にいたら餓死か圧死かまで見えてくる。さっさと拾って脱出するぞ」

 

 モモイはそういう生徒の言い方に首を傾げた。

 

「え? 一緒に来てくれるの?」

「……ひとりだと危ねェだろうがよ!」

「あ、うん……」

 

 ここは(恐らく)アビドスの地下空洞。

 何者かが手を加えているとはいえ、いつ天井が崩落したり足場が抜けたりしてもおかしくない環境だ。一人で行動するより二人で固まっていた方が安全だろう。

 

「よし、面倒な分断探索パートはサクッと終わらせちゃおう! おー!」

 

「…………」

 

「……おー!!」

 

「言わねぇからなオラァ!」

 

 


 

 

「ユズ、大丈夫だった?」

「うん」

 

「おい怪我とかしてねェだろなオラァ!」

「安心しろぽよ。大会中に怪我をして試合に出られなくなるぐらいならもう大会ごと棄権するぽよ」

 

 思いの他お互いの連れとはすぐに合流できた。

 この地下空洞はけっこう音が響くようで、モモイ達の話し声を聞き取って近くまで来ていたらしい。

 お互いに怪我の類いがないことを確認して一安心。

 

「んで、こっからどうすんだよオラ」

「脱出しないとだよねっ」

 

 合流したのなら次は脱出だ。

 地上へと続く場所を探さないといけない。

 

「そういえばスマホは? 外に連絡できるんじゃない?」

「真っ先に試したけど電波が届いてなくて」

「地道に自分の足で抜け出すしかないぽよね」

「人為的な地下だ。出口はあるはずだろオラァ」

 

 外との連絡は取れないみたいだった。ユズの方もこの空間が人工的なものであることには気付いている。モモイは充電節約のためにスマホの電源をとりあえず切っておいた。

 誰かが作ったものならば出口はどこかにあるだろう。特に異論もなく、4人は歩き出した。

 

「迷子になりそうな曲がりくねった道をしてやがるぜオラァ……」

「ユズ、通ったルート覚えてる?」

「一応……でも、暗いから自身はない、かも」

「壁伝いに歩いて、分かれ道は決まった方向に行くのはどうぽよ?」

「うん。他に策もなさそうだし、それでいこっか!」

 

 とりあえずの方針を出して行動。この状況では、とにかく動かなければ始まらない。

 この時、モモイは思った。

 

「(何かもっと揉めたりぐだぐだしたりすると思ったけど、意外とスルスルと行くなぁ……)」

 

 こういう時にパーティー内でごたごたやるのはゲームやアニメのお約束だが、どうにもそういったギスギスパートはなさそうだった。

 各自が意見を出し合って、他の人の邪魔をしない。無駄な争いもしない。

 ビジネスライクな付き合いが意外と上手に回っていた。

 

「ん? あれは何ぽよ」

「アァ? どれだよオラ」

「突き当りのところぽよ」

 

 今進んでいる道はそこそこ長い直線だ。奥の方は暗くてよく見えない。とりあえず近付いてみることに。

 近付くに連れて、モモイにも"それ"がクッキリと見えるようになった。

 

「て、鉄の扉……」

 

 ユズが思わず呟いた。

 この砂と岩で構成された地下空洞に、どう見ても人工物たる鉄の扉が鎮座していた。とても大きな金属製の扉。それを扉だと判別できたのは、中央に走る割れ目と肩ぐらいの高さにある電子ロックがあったからかもしれない。

 

「ボス戦の気配だよっ」

「道中何にもなかったぽよけど」

「露骨に怪しいなオラァ……もしかして割とヤベェ感じかァ……?」

 

 眼前に聳え立つ巨大な扉は、そこはかとなく威圧感を放っている。

 モモイは扉をコツコツと手の甲で叩いた。かなり分厚そうだ。

 

「おい! 何かマズいことあったらどうすんだよオラァ! やめろ!」

 

「えー、これぐらい大丈夫でしょ」

 

「あぁ、こいつ語尾の割にクッソビビリだから気にしなくていいぽよ」

 

「ビビリじゃねェよオラァッ! リスクヘッジの点において周囲より秀でているだけなんだよオラァ!! あとここは何か怖いし早く離れた方がいいんじゃねェのか!?」

 

「ほら」

 

「なるほど」

 

「何納得してんだオラァ!」

 

 その時、地面が揺れた。バランスを崩して転びそうになるが何とか持ちこたえる。

 ズゴゴゴゴ……と地響きを鳴らしながら扉がゆっくりと開いた。

 

「おいお前オラァ! ふざけんなオラ!」

 

「何もしてないのに開いたっ!?」

 

「触ってたろーがァ!」

 

「あんなのAボタン押したうちに入んないよっ」

 

 ついに扉が開いた。もはやこの扉の先を確認しない、なんて選択肢はない。

 モモイは恐る恐る中を覗いた。

 

「……球場?」

 

 そこには茶色のダイヤモンドと、扇形の緑があった。白線の上には白いベース。誰も使っていない観客席の下には、何の道具も置いていないベンチがあった。

 野球場だ。しかし、明らかに異常だ。

 首を捻りながらも、モモイはファウルグランドから外野に入った。

 

「お、おい!」

 

「これって……」

 

「人工芝ぽよ!」

 

 人工芝のグラウンド。

 しかし、一体なぜこんなところに野球場があるのだろうか。

 首を傾げているユズの後ろから物音がした。

 

「ひゃぁ!」

 

「うわぁあああっ!? な、なんだよオラァ!」

 

 そこには()()()()()がいた。

 すらっとしたシャープな体型。皺一つなくスーツを着こなす姿はまさに"大人"。

 だが、その非の打ち所のない胴体に乗っかる頭部は異質そのものだった。

 空間を塗りたくったような黒。ひび割れのような白い線が、人間の顔のように見える。

 

「(()が空いているみたいだ……)」

 

 その人物はゆっくりと歩いて近付いて来た。

 他人は外見によらないとはいえ、外見はファーストインプレッションの最重要テーマだ。

 モモイ達は身構えた。

 

「ようこそ皆さん」

 

「だ、だれっ!?」

 

「私のことは"黒服"とでもおよび下さい」

 

「確かに黒い服着てやがんなオラァ……」

 

「クックック……」

 

 その声は落ち着いており、場違いなほど丁寧だったが、場の雰囲気との乖離が逆に不気味さを際立たせていた。黒服の姿はスーツの整い方こそ完璧だったが、その不気味な笑い声と、どこからともなく溢れだす気持ち悪さにモモイ達は一瞬言葉を失った。

 

「私も貴女達と同じ様に此処(ここ)に迷い込んで来ましてね」

 

「(嘘くせぇなオラァ……)」

 

「怪しすぎるんだけどっ!?」

 

 思わずモモイは呟いた。モモイの額に冷や汗が滲む。

 黒服と名乗る人物の存在は、状況を説明するどころか、さらに謎と不信感を深める要因でしかなかった。

 

「しかし、どうやら此処(ここ)は野球場の様ですね……モモイさんはどう思いますか?」

 

「ええっ!? 何で名前……」

 

 急に自分の名前が呼ばれて驚くモモイ。

 

「クックック……貴女は有名人ですよ。この前の試合を観戦していた者達の中では」

 

「わぁ、そうなんだ!」

 

「何喜んでんだオラ! シンプルに不審者に名前覚えられてるだけだろうが!」

 

 黒服の声にはどこか愉悦が混じっていた。それは単なる情報提供者ではなく、観察者として、あるいは主催者として、全てを見透かしているような目線だった。モモイはその視線の中に、純粋な好意ではないものを感じ取っていた。

 

「そういう貴女も存じ上げていますよ。良い投手です」

 

「アァ? そ、そうか……良いピッチャーかオラァ……」

 

「何喜んでるぽよ!!」

 

 急に自分の方に話題の打球が飛んできて、思わず緩んだ口元をユズは半眼で見ていた。

 

───ガコン!

 

───ガコン!

 

 グラウンド横の入り口の方から大きな音が聞こえた。()()()()といったメカニカルな音を立ててやってきたのは、グローブを着用した人型のロボット達だった。必要最低限の機構しか付いていないのか、ほとんど骨組みのような見た目をしている。ただしそのセンサーやら何やらがクリアパーツで丸見えになっている頭部には、チョコンとサイズの合わない帽子が乗っかっていた。

 

「えっ、なななな何!?」

 

 あっという間にモモイ達はグローブを装着したロボット達に囲まれてしまった。

 

「ふむ、野球バトルで彼ら(ロボット)に勝利しないと出られないようですね。クックック……」

 

「……明らかに仕込み」

 

「一丁前に帽子被ってるのが腹立つぽよ! キヴォトス航空イシカワみたいな被り方しやがってぽよ!!」

 

 キヴォトス航空イシカワは特徴的な帽子の被り方をする学校だ。全国大会でも名前を見かける。

 

「とにかくっ!」

 

 モモイが手を叩いた。

 

「勝たないと出られないっていうなら、勝てば良いだけの話だよねっ!」

 

 びしっ、と突き付けた指先にもロボット達は無反応だった。

 内心「決まった……!」と思っていたので若干落ち込んだモモイであった。

 

 


 

 

 野球バトルが始まった。

 順番にバッティング(攻撃)をして点数が多い方が勝ち。ランナーは野球盤式。内野が捕ったり、外野がノーバウンドで捕球したいしたらアウト判定。イニングは3回。シンプルで、それでいてふわっふわのルールである。

 

「それで何で黒服(お前)味方(こっち)にいるんだよオラァッ!!」

 

「おや、何か問題でも?」

 

「ありまくりだろうが!」

 

 黒服が味方に加わっているという事実に、モモイ達の困惑は隠しきれなかった。敵とも味方ともつかぬ存在が、自信満々に守備に入ろうとしている。しかも、明らかにこの状況について何かを知っている人物が、だ。

 どう見てもエネミーデザインだよ、とモモイは思っていた。

 

「これでも守備には自信がありますので、ベイス★ボールの様なことにはなりませんよ」

 

「そういう問題じゃないと思う……」

 

 ベイス★ボールというのは、プロ野球チームの『NeXN横浜ヨー☆スターズ』のネット上の愛称である。爆発的な打線から繰り出される再三のチャンスメークと凡退。投手陣の好投を台無しにするお笑い守備での大量失点。定期的に訪れる大炎上。こういった残念な形の黒星(負け)試合が頻発したため付いた不名誉なあだ名だ。もっとも、ヨー☆スターズ自体はプロでも随一の愛嬌のあり応援したくなるチームでもあるのだが。

 

 モモイ達は守備からスタート。

 投手と捕手(バッテリー)はモモイとユズ。守備位置を各自宣言していく。今回は内野2人に外野1人の守備構成で行く。

 

「内野ぽよ!」

 

「では私も内野で」

 

「オラァ……外野やるか」

 

 守備についた。

 ロボットがバットを構えて打席に入る。

 審判ロボ(アンパイア)が合図をした。バトル開始だ。

 

「とりあえずまずは1球!」

 

 ビュッ!

 放り投げられたストレートにバットは振られなかった。1ストライクだ。ひとまず様子見といったところだろうか。

 

「もういっちょ!」

 

 大振りなスイングが高めの球とかち合った。球威で押し切れるかに思えたが、ロボット特有の関節駆動によって力押し。低い弾道のライナーはサード方向へ。

 

「ぽよ!」

 

 が、打球はノーバウンドで捕球。スライディングしながらもボールはグラブの中だ。予想以上に俊敏な動きにモモイは驚いた。

 審判ロボットが一拍遅れてアウトの宣言をした。

 

「逆シングル……!」

 

 逆シングル。

 グローブを着けている方とは逆の方向に飛んできた打球を片手で捕球するプレー。手首を捻っていたり、身体の正面で捕らないため、通常の捕球よりも難易度は高い。

 

「凄い!」

 

「いやこれくらい普通ぽよ……と、言いたいところぽよだけど守備には自信があるから褒められて結構いい気分ぽよ」

 

 褒めるのは大事。ナイスプレーの掛け声はチームの士気を上げる。

 続く打者をそれぞれ外野フライと内野正面のゴロに抑えて、初回のロボット達の攻撃は終了。

 次はモモイ達の攻撃だ。

 

「誰から打つ?」

「正直誰がどの程度打てるかなんて分からないぽよねぇ」

「じ、自信のある人……から、とか」

「オラ最初に打ちてぇ奴は手ぇ挙げろ!」 

 

 しーん。

 誰も手を挙げない。

 

「クックック。では私が決めるというのは……」

 

「オラ! 1番ゲットだオラァ!」

「に、2番で……」

「よーし、じゃあ私は3番でっ」

「ぽよよは4番目ぽよ」

「では残る私がラストバッターということで」

 

 打順はサクッと決まった。

 ちなみに野球の打順は、当然ながら"打てる選手"が先の方に打つように組む。打順が早い……先頭に近い方が打つ出番(打席)が回って来る確率が高いからだ。

 

「ひとつ思ったんだけど」

「モモイ、どうしたの?」

 

 モモイがユズに近付いて小声で話しかけた。

 

「いや一人称『ぽよよ』なんだなって」

「あぁ……」

 

 独特な一人称であった。 

 

「(ロボットってことはマシンみてぇなもんだろオラァ……)」

 

 打席から投手ロボットを睨み付ける。

 野球はバッティング練習の際に、機械が球を投げることがある。いわゆる"マシン"というやつだ。バッティングセンターがそれに当たる。

 マシンの球は人が投げる球とはまるで違う。実際の人間が投げる130キロのストレートは打てなくても、マシンの130キロなら余裕でかっとばせるぐらいには、マシンと人間ではボールの質が違う。

 

「ウィーン、ガガガ」

 

「ウィーンって口で言ってんじゃねぇよロボットが!」

 

 ロボットの音を合成音声で()()ながらロボットが投球動作に移った。ぎこちなく足が上がり、腕が振られる。ごく一般的なオーバースローだ。

 

『ストライク!』

 

「120キロ台か」

 

 長いリーチから投げ下ろされた角度のあるストレート。球速は速くもなく遅くもなく、といったところ。しかし、人型なのが理由か。マシンの球特有の質感は少ない。思っていたより人間が投げる球に近いストレートだ。

 ウィーン。

 ロボットがまた投球動作に入った。

 

「ッ! カーブ!」

 

『ストライク!』

 

 投げられた球は縦に大きく割れるカーブ。ロボット特有の長いリーチから投げ下ろされる変化の大きなカーブだ。

 

「(次は何が来やがる……?)」

 

 ロボットがアームを振った。

 インコースに投げられたストレートは狙い過たず膝下へ。角度のあるストレートに何とか当てるもピッチャーゴロに終わった。しっかりと捕球sたので審判ロボットの判定はアウト。

 

「角度がえげつねぇ……狙い球絞れよオラァ」

「わ、わかった」

 

 ユズが恐る恐る打席に入った。

 じぃーっと投手ロボットを観察する。

 

「(投球間隔もランダム。直球も変化球も人が投げたものに近い。それでいて物凄く精確なコントロール……)」

 

 第1球目が投げられた。

 

『ストライク!』

 

 初球は外角低めのストレート。ストライクゾーンの端っこ(コーナー)ギリギリ。

 見逃してワンストライク。

 2球目も同じコースへのストレート。振りに行くが、力負けしてファウル。3球目の低めのカーブもファウルにして、カウントは2ストライクノーボールのツーナッシング。

 

「ウィーン!」

 

「えいっ!」

 

 打球は投手ロボットの頭上。綺麗なピッチャー返しだ。

 

「ウィーン!」

 

『アウト!』

 

「!?」

 

 しかし、内野ロボットが俊敏に動きライナーを捕球してしまった。

 

「暗闇でもお構いなしかよオラァ……!」

 

 どうやらこの若干薄暗いグラウンドはロボット達にとって有利なホームグラウンドらしかった。

 ユズと入れ替わりでモモイが打席に入る。

 

「とりあえず内野の頭を越えればいいだけだよねっ!」

 

『ストライク! バッターアウト!』

 

 堂々と戻ってきたモモイに冷たい視線が飛んだ。

 

「ククク……内野の頭は越えましたか?」

「まぁ、みんなの期待は越えたよね」

「下回ってんだよオラァ」

 

 攻守交代(チェンジ)

 直球で押して、先頭と次の打者を内野ゴロに打ち取った。

 

『ファウル!』

 

「ま、また~!?」

 

 だが、一打者にかかる球数が明らかに多い。最初の打者は7球、その次の打者は12球。今回もカウントは2ストライク2ボールの2-2ながらも既に7球投げている。

 

「カット打法なんてクソみてぇな戦法しやがってオラァ……!」

 

 カット打法。

 ヒットを狙わずにわざとファウルを打つ打ち方のことだ。ストライクゾーンだが打つのが難しいボールなどを狙ってファウルにすることで打てる球を待ったり、投手にいっぱい投げさせることで疲弊させたりなどが主な目的に当たる。

 

「えいっ!」

 

「内野!」

 

『アウト!』

 

 ようやっと打球が前に飛んだ。ボテボテのゴロを見て審判ロボットはアウトを宣言した。攻守交代(チェンジ)だ。

 ボールをたくさん投げさせられたモモイは、もう大分疲れ気味の様子。

 

「何か"様子見"って感じがして嫌なんだけどっ」

「(最後のボール、フォーシームじゃなかった……若干動いたからカット失敗を誘えた。でも、モモイの集中力はもう限界に近いかも)」

「クックック……」

 

 照明が足りない薄暗い地下グラウンド。風も吹いていない。その独特な嫌な雰囲気はじめっとモモイ達に纏わりついて離れなかった。

 

「ウィーン、ウィーン……」

 

「クックック……」

 

「(ロボットも黒服の野郎もいちいちうるせぇなオラァ……!)」

 

 


 

 

「これが最後の攻撃ぽよ!」

 

 3回の表まで両サイド共に得点は0。モモイ達は裏の攻撃なので、1点でも入れれば勝ちだ。モモイは球数を投げさせられて肩で息をしている。

 

「(やはりスタミナ不足は"痛い"……)」

 

 そんなモモイの姿を黒服がじっと見ていた。

 

「そういえば引き分けの時はどうなるぽよ?」

「その場合は再試合になります」

「何で黒服が知ってるぽよ……」

「クックック……」

「もうお前隠す気ねぇだろオラ」

 

 今の状況の関係者であることを、最早まったく隠す気のない黒服に呆れた視線が向けられる。しかし黒服はおっとっとどこ吹く風。気味の悪い笑い声をあげるだけだった。

 

「とりあえず出塁……!」

 

「ウィーン、シュトー」

 

 ユズが打席で構える。

 投げられたのは高いリリースポイントから投げ下ろされるカーブ。低めに制球されており、角度と落差が大きく、捉えるのは難しい。

 

()()()

 

「ウィーン!?」

 

 ユズが珍しく思いっ切りバットを振り切った。真芯に当たった打球は内野の頭を越えてヒット。

 カーブの一番の強みはタイミングをズラすことである。ストレートとの緩急を付けることがカーブを投げる目的。なので緩急を付けたいのなら究極、適当にスローボールを投げてもいいのだ。勿論、それでは簡単に対応されるので、腕をしっかり振ったり、曲げたりなんだりと工夫をするのだが。

 

「(配球パターン単純だから簡単だった)」

 

 ユズはこれまでのロボットの投……ではなく捕手ロボットの方に着目していた。注目するのは投球指示(リード)

 ロボットピッチャーは当然のことながら非常に制球力が良い。投球ミス(逆球)などがないので、投げた投球内容がそのまま配球パターンになるのだ。

 ユズは機械特有の単調な思考パターンを完璧に読んで決め打ちをした。来る球が分かっていればヒットを打つのは容易だ。何なら投げられる球種とコースもわかっていたのだが。

 

「はぁ、はぁ……次は私の打順か」

 

 モモイが打席に入った。

 

「ウィーン、オーストラリア」

 

「えいっ!」

 

『ストライク! バッターアウト!』

 

 しかし、ここは低めのカーブに手を出して三振。フラフラと打席を出た。

 

「ぽよよが実質ラストバッターぽよね……」 

 

 呟きながら黒服の方をチラリと盗み見る。相も変わらず不気味な男だ。そして、黒服はこれまでの打席で1回もバットを振っていない。明らかにモモイらの負けを望んでいるプレイだ。

 

「ウィーン、ナー」

 

「ぽよ!」

 

 ピッチャーロボットがボールを離す(リリース)するその瞬間、ロボットのアームが()()()

 

「ぽよっ!?」

 

『ストライク!』

 

 予想よりも遥かに高い位置からストレートが投げ下ろされる。投げられたコースはド真ん中だったが、手が出ない。

 

「(こんな角度初めてぽよ!)」

 

「腕が伸びやがったぞオラァ!」

 

「あれじゃあまともにミートするのも難しい……」

 

 当然だが、スイングの角度とボールの角度が乖離しているほど、バットに当てる(ミート)することは難しくなる。では角度を合わせれば良いのでは? という声も聞こえてきそうだが、事はそう簡単ではない。

 

「(あそこまで角度が付いたボールに()()()対抗するためには極度のアッパースイングにする必要がある。だけど、下から上に振る(アッパー気味の)スイングになったら、もう強い打球を前に飛ばせない……だから、ミートポイントは角度の差だけ小さくなる)」

 

「結局水平な(レベル)スイングでジャストミートして弾き返すしかねぇぞオラァ……!」

 

 続いて投げられた球は低めのストレート。タイミングは合っていたが角度が合わずファウルになってしまう。

 2ストライク、追い込まれた。

 

「おい、てめぇ。見なくていいのかよオラ」

「もはや見る価値もないでしょう。この2球で対応できなかった時点で敗北は必然です」

「……てめぇがどういう奴だとかは知らねぇけどよ、形だけでも同じチームだ。最後まで声張って応援するのが筋だろオラァ」

 

 黒服はグラウンドと反対方向を向いていた。もうプレイを見ていない。

 

「私の見立てではヒットを打つ確率はほとんどありません。何故見届ける必要があるのです?」

「最後まで見る理由? 自分でもわかってんじゃねぇかオラ」

 

 黒服は怪訝そうに「というと?」と返した。

 

「ほとんどないってことは、()()()()()ってことだろ? だったらラスト1プレイまで諦められるわけねぇだろうがオラァ」

 

 "野球は2アウトから"。

 そんな言葉がある。野球には基本的に時間制限はない。あるのはイニングとアウトカウントだけ。1球1球ターン制で進んでいく野球はその性質上、"もう絶対に逆転できない"状況は試合が終わるその瞬間まで存在しない。

 野球は、()()()()()()()()()()スポーツなのだ。

 

『ファウル!』

 

「あ、危なかったぽよ!」

 

「ナイスカット!」

 

 ほらよ、と黒服に打席を見るように促す。低めのカーブをファウルにしていたところだ。

 

「ウィーン、ショウリー」

 

『ファウル!』

 

 高めの釣り球。思わず振ってしまったが、バットには辛うじて当たった。

 打席の外からは疲れながらも声援を飛ばすモモイがいた。

 

「無駄です。神秘もまともに保有していない凡人がいくら粘っても結果は変わらない」

 

「だからそんなの知るかってんだよオラァ!」

 

『ファウル!』

 

 粘る、粘る。

 ファウルを重ねていく。ファウルを続ければ基本的にはタイミングが合っていくはずだが、なかなか打球が前に飛ばない。

 

「……球速が上がってる!」

 

 ユズがハッと目を開いた。ファウルの度に、ピッチャーロボットの投げるストレートが少しずつ進化していたのだ。それではバッターがいくら粘っても、完璧に適応(アジャスト)することはできない。

 

「球速が上がる……!? 馬鹿な! あれは再現性を第一にした個体。投げるボールの質が変わることはない」

 

「やっぱり隠す気ないよね……色々と」

 

 驚愕する黒服にモモイは横目で呆れた。

 打席では遂に11球目が投げられようとしていた。

 

「頑張れーっ!」

 

「ぽよ!」

 

 ロボットが投げた球は離れる(リリース)と同時に一直線にホームに向かった。

 

「直球!」

 

 インコースのストレート。球威は上がり続けているが、今回はタイミングもバットの軌道も完璧だ。

 捉えた。

 確信する。

 しかし、バットにボールが当たる感覚は、なかった。

 

「……ぽよ?」

 

『ストライク! バッターアウト!』

 

 完璧に捉えたと思ったボールは当たる(インパクト)の直前で膝元に沈んだ。

 

「つ、ツーシーム……!」

 

 ツーシームファストボール。ストレートの一種。

 一般的に直球は浮き上がる(バックスピン)軌道を描く、"真っ直ぐ"な球。一般的なストレートであるフォーシームよりも回転数が少ないため、小さく変化するストレートだ。

 三振してしまった。2アウトだが、次の打者は黒服である。

 

「おい、てめぇの打順だぞオラ」

 

「……えない」

 

「あ?」

 

「有り得ない! あの機体にツーシームを投げる機構など存在しない……不可能です!」

 

 黒服はワナワナと震えている。そんな黒服の目の前にバットが差し出された。

 

「まだ勝負は終わっちゃいねーぞオラァ」

 

 黒服は一瞬逡巡した後、バットを掴んだ。ゆっくりと打席に入って構えた。

 

「(何故イレギュラーは発生した? まさか才羽モモイと小鳥遊ホシノ以外にも"神秘"が備わっているというのか……!?)」

 

『ストライク!』

 

「("人"の投げた球……そう錯覚してしまうほどの……いや、最早同一と言っていいだろう。プレイの最中に進化したというのか……!?)」

 

『ストライク!』

 

 2球見逃して、ツーストライク。やはり黒服にモモイ達を勝たせる気はなさそうだ。ユズは再試合を覚悟した。

 そんな中、疲れて座っていたモモイが急に立ち上がった。

 

「が、がんばれーっ!」

 

「……は?」

 

 モモイが叫んだ。

 予想外の言葉に全員が固まる。黒服が構えを解いた。

 

「頑張れって……何言ってるぽよ。アイツ(黒服)がバットを振るわけないぽよ! だってぽよよ達を負けさせるためにいるに違いないぽよから!」

 

「利敵だとかスナイプだとか鳩とかトロールとかティルトとかっ、ぜ~んぶ全部関係ない! だって、黒服が打てば勝てるんだよ? 今はおんなじパーティーの仲間なんだよっ! かっとばせー!」

 

「理解できないぽよ! あと野球用語で喋って欲しいぽよ!」

 

 モモイはもう全部どうでもよかった。今モモイの頭の中を占めているのは"疲れた"という思いだけ。だから余計なことは全てそぎ落として、ただ()()()()()()に全ツッパしているのだ。

 極限の状態で出てくる言葉は、その人間の本質に近い。

 モモイは手段がどうであれ結果を優先できる人間で、それでいて仲間を無条件で信じるタイプの人間だった。それだけの話だ。あるいは単に面倒くさがりとも言うかもしれない。

 

「クックック……こんなに純粋に応援されたのは初めてです。えぇ、良いでしょう。才羽モモイ、貴女にの応援に応えてみせましょう」

 

「ウィーン、ナンバーワン」

 

 ピッチャーロボットがボールを投げた。リリースの直前にアームが伸びる超角度のストレートだ。

 角度の大きい直球は、ミートできるポイントが少ない。また、下向きのベクトル成分も通常より大きくだるため、打球が飛びにくい。

 では、どうするか?

 

「完璧なタイミングで、低く強い打球を打てば良いッ!」

 

 言うは易く行うは難し。

 黒服のピッチャーロボット攻略は、それができれば苦労はしない案件だった。そして、黒服は見事にそれをやってのけた。それだけのことだった。

 鋭い打球が一塁線を割る。外野ロボットが追いかけて捕球するも、審判ロボットによって三塁打が告げられた。ランナーは1塁。野球盤システムでそのまま本塁(ホーム)に生還してサヨナラ勝ちだ。

 

「か、勝ったぽよ!」

「やったー!」

 

 両手を挙げて喜ぶモモイに黒服が近付いた。

 

「次の対戦相手は知っていますか?」

「え? えーっと……」

「ハイランダーだろオラァ! 覚えとけ!」

 

 言いよどむモモイの後ろから怒声が飛んで来た。

 対戦相手の把握は常識である。

 

「……あれ、でも何で私達の次の対戦相手まで知ってるの? 自分のチームのことじゃないのに……」

「トーナメントでどこが勝ち進んだかをチェックすんのは当然だろーが」

 

 自チーム以外の対戦結果について、気にする選手と気にしない選手がいる。トーナメント表を見て組み合わせの不運を嘆いたり、反対側のブロックの勝敗をチェックしたりする選手もいれば、自分達と対戦するチーム以外の情報はまったく知らない選手もいる。

 どうやら自チーム以外の戦績も確認するタイプだったようだ。

 

「ハイランダーには、()()()()()()()()()()()()()がいます」

 

 黒服の告げた言葉にモモイは声を上げて驚いた。今回対戦したロボットの完成品……つまり、もっと強いやつと戦うというのだ。いや、それ以前に。

 

「ロボットが出場するぽよ!?」

「はい。しかし、何も不思議なことはないでしょう」

「いやいやいや! 不思議も何も不公平ぽよ! 機械が大会に出るなんて……」

 

 そしてモモイとユズの方を向いて「そう思うぽよね!?」と同意を求めた。しかし、ユズは渋い顔をして首を横に振った。

 

「わ、私は良いと思う……」

「そうだよっ! 別にロボットでも機械でも関係ないよっ!」

 

 何故、と叫ぶ生徒にさらに追撃が入る。

 

「オレも別にロボットだろうが関係ねぇぞオラァ。今回みたいに勝ちゃあ良いだけだからな」

 

 馬鹿しかいないぽよ……と頭を抱える一人を尻目に、黒服は話を再開した。

 

「ヒントをひとつ差し上げます。何故今回、貴女の投球はロボット達に"適応"されていたか分かりますか?」

「えーっと、私がすぐに疲れちゃったから?」

「いいえ。スタミナも確かに問題ですが、私が望む答えはそれではありません……分かりますか?」

「えーっと……? う~ん、わかんないよっ」

 

 黒服は急にユズの方を見た。急に矛先を向けられたユズは視線をそのまま横にズラした。

 オレに聞くなよオラァ……とでも言いたげな目で、視線を向けられた生徒は口を開いた。

 

「ピッチャー()()でピッチングしてるからだろ」

 

 その答えに黒服は満足そうに頷いた。

 

「何にせよ、ハイランダーのような至極どうでも良い学校に負けてもらっては困るのですよ」

「それってどういう……」

「では失礼します。貴女達もそろそろ帰る時間です」

 

 黒服はそう言うとそのままモモイの静止も聞かず、ダグアウトの方に消えていった。いつの間にかロボット達も撤収していた。

 

「何だったんだろうね」

「さぁ」

 

 ズゴゴゴ……!

 その時、物凄い音と地響きがモモイ達を襲った。外野フェンスの一部が開いた。外野スタンドの座席が変形、そして()()()()()()

 

「ラッキーゾーンぽよ!?」

 

 開いた外野フェンスの奥から外野席に繋がる階段が出て来た。ひっくり返った外野スタンドも階段になっている。階段を上り切ったところから眩い光が差し込んでいた。どうやら地上に続く道のようだった。

 

「うおっ、まぶしっ」

 

 階段を上って地上に出た。眩しさにモモイは思わず目を顰める。

 

「世界の解像度、たっか……! まるで地下から地上に出たみたいだよっ!」

「"まるで"じゃなくてそうなんだよオラァ!」

 

 周囲を見渡す。相変わらずの廃れた地域だが、砂漠地帯と辛うじて文明が生き残っている地域の境目のようだ。モモイ達はここがどこなのか分からなかったが、2人の口ぶりから察するにここもアビドスらしい。アビドス高等学校からはだいぶ距離が離れた場所であることは、言われずとも何となくわかっていた。

 まだ外は明るく、地下にいた時間は思っていたよりもずっと短かったようだ。

 

「せっかくだから聞いておきたいんだけど、2人はどうして野球を始めたの?」

 

 モモイが質問した。モモイは「野球を始めた理由」を集めている最中だった。

 理由を集めて回れば、何かが自分の中で変わるような気がしていた。

 

「恩人が野球をやってたから」

 

 その言葉に横にいる生徒も頷いた。

 モモイはちょっと意外なその言葉に驚く。「詳しく聞いても?」と珍しくデリカシーを見せるモモイ。

 

「お前らはアビドスだし……関係はあるか」

「まぁ、別に隠すようなことじゃないぽよ」

「そうだな」

 

 生徒らはゆっくりと語り始めた。

 

「お前らと野球バトルしたオレら4人は、去年までのアビドスの主将(キャプテン)……梔子(くちなし) ユメさんに助けられたんだよ」

 

 その言葉を聞いて、モモイは改めて"去年のアビドス"というものがあることを実感した。不思議な話だが、今のアビドスの5人が"しっくりと来"すぎていて、モモイは言われるまで去年のアビドスというものをまるで想像したことがなかった。去年も大会に出ていたのだから、去年のアビドスがあるのは当然のことなのに。

 

「行く当てもなくフラフラしていたオレは、砂漠化の影響で治安の悪い……オレらみたいな爪弾き者がたむろってるアビドスに辿り着いた。んで、そこでユメさんに拾ってもらって色々と良くしてもらったんだよオラァ」

 

「らーちゃんだけじゃなくてぽよよ達もおんなじ感じぽよ。所属学園もないぽよよ達なんかをわざわざユメさんは救ってくれたぽよ!」

 

 真剣に聞こう、とシリアスな表情を作っていたモモイだったが、耳に入った単語にシリアスな表情が崩れる。

 

「……"らーちゃん"?」

「あっ、コイツのことぽよ」

 

 ぽよ! と横にいる生徒を指差した。

 モモイとユズは顔を見合わせた。もう一度、生徒の方を見る。

 

「……らーちゃん?」

「あだ名で呼ばれてて何か悪いかオラァ!!」

「オラオラ言ってるから『らーちゃん』ぽよねぇ」

「へぇ! よろしくねっ、()()()()()!」

「ブッ殺すぞお前! 刺殺(アウト)じゃなくて!!」

 

 ちなみにもう一人の方は『ぽよまる』『ぽよよん』『ぽよーら』など色んな良い肩で呼ばれているらし。

 話を戻して(それはともかく)

 

「んで、ユメさんは野球が大好きで将来的に野球でアビドスを復興したいって壮大な()を持ってた。オレらはユメさんの夢に少しでも貢献するために、その辺でフラフラしてるどうしよーもねぇ奴らを集めてチーム組んでんだ」

 

「勿論、狙うは優勝ぽよ! 去年初めて大会に出たけど1回戦で負けちゃって……今回こそユメさんにぽよよ達の成長した姿を見せるぽよ!」

 

 本気だ。そう感じた。

 モモイはその気持ちの籠った言葉に感銘を受けた。未来を語るその目は、地上の眩しい日光のせいかやけに輝いて見える。

 善性だけの人間はいない。悪性だけの人間もいない。人には必ず美点がある、そして、一度その美しさに触れてしまったのなら、前よりずっとその人のことが好きになる。

 軽いエピソードトークだけでもう、モモイの気持ちはブンブン揺れていた。モモイは単純な性格であった。

 

「きっと野球は色んなもんを繋げられるはずなんだよ」

 

「あっ、私達が出会ったみたいに……ってこと?」

 

「……かもな」

 

 二人と別れて、モモイとユズは携帯でミドリ達に連絡しながら歩く。モモイが水筒を飲んでいるユズに話しかけた。

 

「梔子ユメさんかぁ……」

 

「……ん、きっと凄い人なんだろうね」

 

「うんっ。アビドスの人って言ってたし、年次第ではホシノの先輩だよね」

 

 モモイは上を見上げた。

 ギンギンに照り付ける太陽が、身体から体力を奪っていく。

 

「会ってみたいなぁ」

 

 垂れてくる汗を袖で拭いながら水分を補給する。

 代わり映えのしない砂の景色が、太陽の熱で歪んでいた。




4年まではエタってない主義。というわけで突貫で作った繋ぎ回を更新

今年ももうすぐ夏の予選が始まりますね。三重県民なので甲子園では毎年三重県勢を応援しています。今年はあるぞ~!
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