斎藤家の愚息   作:熊田ラナムカ27

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38 嘘と真は表裏一体

 

 

 

 姫川さんに真実を打ち明ける数日前。

 

 俺と社長はとある釣り堀に来ていた。

 

「久しぶりだ………誰かと此処に来るのは」

 

 そこは都心から離れた場所で静寂そのもの。

 

 真が好みそうな場所だと一目で分かった。

 

 内緒話をするのにこれ以上の場所はない。

 

「今日テレビ局で彼奴の噂を聞いた。大人気番組の実質的トップの立場を利用して……業界の大物達相手に媚を売っているらしい。彼奴らしい碌でもない話だ」

 

「そうかよ。本当に碌でもない話だ。とりあえず周囲に敵じゃないってアピールする行動自体は間違ってないが、どうせ彼奴のことだからついで感覚で借りを作る気に決まってる。……何処で教育を間違えたんだ」

 

 俺と社長は思わず揃ってため息をついた。

  

 あのゲス顔だけは本当にやめて欲しい。

 

 あんなクズと身内扱いされるのは御免だ。

 

 何より社長とミヤコが流石に哀れだ。

 

 あの性格は前世からだと大声で言いたい。

  

「お前達には迷惑をかけてる。真が出ていってルビーがああなったのは俺の責任だ。恨まれても仕方ない」

 

 そう語る社長には無力感が宿っていた。

 

 そうなる事を何処か望んでいるようにも見えた。

 

 それだけの後悔と苦悩をしたに違いない。

 

「彼奴が自分勝手なのはいつものことだ。こうなったのはアンタのせいじゃない。何より……俺自身にも責任がある。ルビーがどんな気持ちで売れようとしているのか……もっと早くに気づいて止めるべきだった」

 

 俺がルビーの復讐心に気づいたのは炎上事件の後。

 

 真が業界内で力を付けつつあった頃の話だ。

 

 その時にはもう既に何もかもが手遅れだった。

 

 もう後戻り出来ないとルビーは覚悟を決めていた。

 

 そんなルビーを阻むように真は立ち回っていた。

 

 あの2人の溝は致命的なまでに深く広がっていた。

 

「ちょっと前まで復讐の事しか頭に無かった奴の口から………そんな言葉が聞けるだなんてな。ちゃんと未来について考えるようになったみたいで安心したよ」

 

「ルビーの気持ちも分からなくはない。俺だって今も同じ気持ちだ。けど、やっぱり駄目なんだよ。復讐を選択をするって事は何もかもを捨てて全てを諦めるって事だ。夢を諦めるのは死ぬのと同じくらい苦しい」 

 

 あの日からずっと俺は一人で考え続けた。

 

 自分の本当にやるべき事は一体何なのか。

 

 自分自身が本当に叶えたい夢は一体何か。

 

「彼奴は誰かに言われて選択をするような奴じゃない。誰にも頼らず選択をする奴だ。それでも彼奴はただの人間だ。完璧でもなければ無敵でもない。都合のいい神様じゃない。彼奴一人に全てを背負わせて良い訳がない。ルビーは彼奴の義妹で……俺の妹だから」

  

 俺はアイの息子として生まれ変わりをした。

 

 双子の兄としてルビーの一番傍に生まれた。

 

 真の義弟として此処までの日々を過ごした。

 

 これまで沢山の人達に色んな物を貰った。

 

 そして答えが僅かながらようやく見えた。

 

 ならばこの道を進むしか選択は他にない。

 

「また妙なシスコンかつブラコンに育ったもんだ。お前もどっかで教育を間違えたらしい。ここまで吹っ切れると清々しいくらいだ。これまたとんだ笑い話だ」

 

 俺の言葉に社長は顔を押さえて大笑いした。

 

 静まり返った釣り堀にその声が響き渡る。

 

 途中から笑い過ぎて腹も押さえ出した。

  

 サングラスの下が微かに光った気がする。

 

「ああ、その通りだ。何もかもを一人が背負う必要なんてない。そんなものはただの傲慢だ。自惚れにも程がある。もっと早くに……こうするべきだったんだ」

 

 社長は自身の鞄から一枚の書類を取り出した。

 

 それをそのまま俺に向かって差し出した。

 

 この書類を見て直ぐに俺は目を見開いた。

 

 まるで世界がひっくり返る気持ちになる。

 

「俺と姫川さんが……血の繋がった兄弟?こんなDNA鑑定……誰がやった?まさかこれ……真の仕業か?」

 

「結論から言うぞ。姫川大輝の父親は上原清十郎で故人だ。だが、真犯人は上原清十郎じゃない。お前と姫川大輝の本当の父親は別だ。真犯人はまだ生きてる」 

 

 俺は社長の言葉にただただ絶句した。

 

 この世界は俺の考えてた以上に歪んでる。

 

 彼奴が背負う重荷は想像以上のものだ。

 

 どれだけ守られたかを改めて理解する。

 

「俺は苺プロの社長という立場を利用して15年前のドーム公演の関係者達を長年探ってきたが……どれも空振りで終った。当時ぺーぺーだった奴等も今じゃお偉いさんばかりだ。一人会うだけでも相当の時間と金が要る。社長という立場は守るのはともかく何かを探るのに不向きだ。全体の半分以下しか洗えなかった」

 

 社長は自らの不甲斐なさに激しく苦悶した。

 

 この人も後悔と自責の念と長年戦っていた。

 

 そうでなかったらこんな言葉は出てこない。

 

「あの2人が動いたのはそれがきっと理由だ。芸能界の深い場所を探るには直接行くしかない。俺を通してその手掛かりを得た真の立場なら尚更だ。ルビーはお前と違って頑固だからな。生半可な説得は通じない。そうなれば残る手段は一つ。真犯人をルビーが接触する前に探し出して……自らケリを付けるしかない」

 

「どうしてそんな事を……俺に教える?彼奴は俺にこの事を……明かす気は無かったはずだ。彼奴に協力してるはずアンタがそれを明かす理由はないはずだ」

 

 俺はだからこそ妙な疑念をふと抱いた。

 

 こうもあっさり話すとは思ってなかった。

 

 説得にはもっと時間が掛かると思っていた。

 

 その言葉に社長は切なげに苦笑する。

 

「俺は協力者である以上に彼奴の父親だ。世界中が敵に回っても俺は彼奴を裏切れない。けど、俺はアイの父親でお前の義父でもある。成長した義息に手を貸すのは当然だろ。彼奴と比べたら頼りないだろうけど」

 

 社長の表情は真の表情と重なって見えた。

 

 肝心な時しか役に立たない人間の典型例だ。

 

 彼奴の人たらし具合は社長由来に違いない。

  

「そんな見え透いた媚で機嫌取っても雑用担当は変わらないぞ。じゃあ店を予約するから経費の申請頼む」

 

「いや、待て。頼るってそういうんじゃねぇだろ。頼るにしたって初っ端から金かよ。そこそこ高い店を選びやがって。家の雑用に関しちゃ………もう諦めた」 

 

「滅多に怒らないミヤコを怒らせるからだ。家の雑用担当で許してもらっただけ御の字だ。離婚届け出されたくなかったらトイレ掃除でも風呂掃除でもしてろ」 

 

 俺の言葉に社長は威厳のない姿で項垂れた。

 

 何とも憐れな姿だが同情もフォローもしない。

 

 アイの葬式を全部ミヤコに押し付けた罪は重い。

 

 あの件に関しては一生許すつもりはない。 

 

「斎藤マネと星野妹が……そんな事を考えているとは思わなかった。まるでサスペンス映画の撮影に巻き込まれてるみたいだ。そっちの方が……ずっとマシだ」 

 

 俺の説明を聞くや否や姫川は深く苦笑いした。

 

 自分の父親が殺人鬼と聞きたい奴はいない。

 

 托卵の可能性なんて知りたい奴はいない。

 

 もし仮に怒りを向けられたとしても仕方ない。

 

「けどまぁ、自分の両親の話に限っては、割とすんなり整理が付いたよ。納得したって方が正しいかも」

 

 それからしばらく時間が経ち姫川は口を開いた。

 

 俺の予想とは異なり何処か落ち着いた様子だ。

 

 氷が溶けて薄くなったはずの酒を一口飲む。

 

「俺は子供心ながら上原清十郎が嫌いだった。自分の実力から目を逸らして女遊びをする以上に、俺の存在を見ようとしない彼奴の事が嫌いだった。……けど、それはきっと必要な事だったんだ。彼奴は俺と血の繋がりがない事実に……直感的ではあるけど気づいてたんだと思う。そう考えたら……ほんの少し同情した」

 

 その言葉には幾つもの複雑な感情が籠っていた。

 

 それは同情の一言で片づけられない代物だ。

 

 姫川は視線を泳がせ次の言葉を探った。

 

 グラスに残っていた酒を全て飲み切った。

 

 空になったグラスの中で氷が静かに揺れる。

 

「母親の方には愛着がそれなりにあるよ。芸名に苗字を使ってるぐらいだしな。まぁでも、それ以上の感情は正直ない。放任主義に近い環境だったんだ。金田一さんに世話焼いてもらった時間の方がよっぽど長い」

 

 俺と姫川は少し似ているのかもしれない。

 

 雨宮五郎も父親と母親を知らなかった。

 

 自分の家族に対する愛着が殆ど無かった。

 

 そういう意味じゃ今の俺は恵まれてる。

 

 自分の家族が大切だとハッキリと言える。

  

(けれど、これはあくまで感傷に過ぎない。雨宮五郎と姫川大輝は全く別の人間だ。例え境遇が似ていようとその事実は変わらない。自分の家族にどんな結論を出そうと姫川の勝手だ。俺から言える事は何もない)

 

 そんな複雑の思いが胸を過ぎり漂った。

 

 まるで自分自身の影を見ているようだ。

 

 過去と同じで血縁を消す事は出来ない。

 

「俺の独り言に付き合ってもらって悪いな。一人でめっちゃ話してた。本当の父親がとにかくヤバいって話に戻るけどこれからどうする?何をすればいい?」

 

 姫川は一先ず切り替えそう尋ねてきた。

 

 気持ちの整理についてはまだ分からない。

 

 それでも今は前に進む事を決めたらしい。

  

「姫川にはララライのアーカイブを調べて欲しい。姫川愛梨と上原清十郎が自殺した前後を探れば何か分かるはずだ。当然だけど無理のない範囲で構わない」

  

「此処まで来て気を遣うなよ。それぐらいだったら幾らでもやってやる。……うちのアーカイブは何処で見れるか、金田一のおっさんにまず聞かないとだけど」

 

「おい、ちょっと待て。大真面目な顔でいきなりボケるな。自分の劇団のアーカイブぐらい把握しとけよ。姫川一人に任せるようで……本当に大丈夫だよな?」

 

 それはそうとこの人はやっぱり駄目だ。

 

 何というか肝心なところで締まりがない。

 

 あのクズですらもう少し締まりがあった。

 

 俺は呆れつつも心の中で溜息をついた。

 

 頼りにする相手を間違えたかもしれない。

 

「俺は真の真意について……もう少し探ってみる。彼奴がルビーを止める為に動いてるってのは察しが付くけど……腑に落ちない部分があまりに多い。わざわざルビーに敵だと思われるような行動を取る必要はないし、彼奴自ら表舞台に出て大衆の注目を集める必要もない。何かを大きなものを隠しているに違いない」

 

 彼奴の強さを俺は誰よりも知っている。

 

 あの瞳に秘められた嘘に何度も助けられた。

 

 嘘の裏側にある真実に何度も励まされた。

 

 けれど、彼奴の本心を俺は聞いた事がない。

 

 その背中を見るばかりで隣に立った事はない

 

 これでは同じことを何度も繰り返すだけだ。

 

 虚像ではない彼奴の実像を見る必要がある。

 

「それにしたって信頼してんだな。彼奴のこと」

 

「信頼なんかしてない。借りを返したいだけだ」

 

「シスコンかつブラコンって訳だ。マジウケる」

 

「前者しか合ってねぇよ。どうしてそうなった」

 

 俺が話を一区切りすると姫川は茶々を入れた。

 

 どうもこの人は話を真面目に出来ないらしい。

 

 暗い空気が明るくなったがそれはそれだ。

 

 俺をブラコン呼ばわりとは聞き捨てならない。

 

 社長といい姫川といい何故そう思った?

 

 とてもじゃないが全く理解が出来ない。

 

「あとついでに上畑志貴って名前のADには注意しろ。詳しい素性は俺も知らないけど信用出来ない」

 

「それ以前にそいつは誰だよ。お前の知り合い?」

 

「ルビーが休日の度に行く先も言わず消えた先で会ってる男だ。この前こっそり後を付けて色々と聞いた」

  

「さらっと何やってんだ。ストーカーのやる事だろ」

 

 俺の行動に姫川は呆れ顔でドン引きした。

 

 流石の姫川でも笑い話に出来なかった。

 

 不味い事をやった自覚はそれなりにある。

 

「とにかくその男は芸能界でのイロハをルビーに教えているみたいだ。何の見返りも欲さず純粋な善意で」

 

「真面目な顔で誤魔化すな。ストーカー容疑が深まっていくだけだ。付き添ってやるから早く警察に──」 

 

「あの男は自らを駆け出しのAD。この業界の仕組みを知る人間と名乗った。そんな奴が見返りを()()()()なんておかしいだろ。芸能界は()()()()の世界だぞ」

 

 けれど、それを差し引いても見逃せない。

 

 いくら擁護してもあの男は信用出来ない。

 

 姫川もその事にようやく気づいた様子だ。

 

 この業界で長年生き残ってきただけはある。

 

『善人面で近づいて来る奴のことは信用するな。悪人顔で金の話をする奴の方がよっぽどマシだ。下手な信頼関係より利害関係の方が時に強固で壊れにくい』

 

 彼奴は以前そんなことを俺に言っていた。

 

 その時は軽く流してたが今なら分かる。

 

 この世界は善意より悪意の方が遥かに多い。

 

 嘘と真がコインのように重なり合ってる。

 

 目を背けず前を見ない限り何も見えない。

 

「何が本当に正しいのか……分からなくなりそうだ」 

 

 姫川の言葉に部屋は再び静まり返った。

 

 嫌な予感が止まる気配が一向にしない。

 

 外は未だ真っ暗で夜明けまでずっと先だ。

 

 白も黒も飲み込んで闇は静かに漂い続ける。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 歓楽街の外れにある寂れた雑居ビルの一つ。

 

 そこから地下へと続く階段を下り扉を開けた。

 

 酒と煙草の匂いが中から微かに漂ってくる。

 

「いらっしゃいませ。今日も待ち合わせですか?」

 

「彼女は人気者で忙しいですから。先にいつもの」

 

 マスターは慣れたように戸棚を漁り出した。

 

 その間スマホを操作してネット記事を見る。

 

 一番上の記事には斎藤真の名前が書かれていた。

 

 彼はコメンテーターとしても活躍したらしい。

 

 裏方の人間にも関わらず殆どスター扱いだ。

 

「待たせちゃってごめんね!やっと終わった!」

 

「こっちも来たばかりですからお気にせず」

 

「マスター!まるちゃんスペシャルお願い!」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 しばらくカクテルを飲んでいると彼女が来た。

 

 身バレ防止用に帽子と眼鏡を付けている。

 

 彼女は出された飲み物を一気飲みした。

 

 仕事でのストレスが相当溜まっていたらしい。

 

「まったくさー!最近もやもやしてばっかだよ!バラエティの仕事は要らないって何度も言ってるのに!」

 

「気持ちはわかりますが落ち着いて下さい。今をときめく大女優さんの面影がこれっぽちもありません」

 

「だって息抜きしなきゃ保たないもんっ。こんな飲み屋に片瀬ゆらが居るだなんて誰も思わないだろうし」

 

 ゆらさんは渡されたお代わりに口を付けた。

 

 だいぶ酔いが回っているようで頬が赤い。

 

「今日もね。マネージャーがドラマの仕事を持って来たんだけどがっかり。久々に何をやるか決まってる仕事かと思えば高校生の役だもん。流石にキツイって」

 

「あー確か、元々出演予定だった役者が降板したんでしたっけ。島監督絡みのリークが上がったとかで」

 

「あの監督かなりの女好きだし。マコちゃん倫理観緩いタイプだし。一緒にしたらそうなるよね。会員制のお店に2人で行って飲み明かす事もあったらしいし」

 

 それは最早遅かれ早かれの降板に違いない。

 

 アザミマコはそもそも19歳でまだ未成年。

 

 枕営業以前に未成年飲酒の時点でアウトだ。

 

 彼女に酒を飲ませた島監督も勿論のこと同罪。

 

 どう取り繕っても表舞台に戻る事は難しい。

 

「まぁそれでも……有馬かなの演技を見れたって意味では運が良かったかも。どん底から復権しただけあってあの演技は勉強になった。性格は悪かったけどね」

  

 ほんの僅かに苦笑いしつつゆらさんは笑った。

 

 役者としての仕事が久々に楽しかったようだ。

 

 いつもならここら辺で自虐が始まっている。

 

「ゆらさんなら役者としてもっと高みに行けますよ。これからもファンの一人としてずっと応援してます」

 

「えへへ………ありがと。やっぱ飲むならミキさんだわ!色々気に掛けてくれてるし!もっと飲も飲も!」

 

「うわぁ………飲めるかな。ちょっと量が多いかも」

 

 僕と彼女はその後しばらく飲み続けた。

 

 彼女はいつもながらの酒豪っぷりだ。

 

 空のボトルがあっという間に量産される。

 

 話の内容は次第に変わり愚痴混じりになった。

 

 同じような話をさっきから永遠に繰り返してる。

 

 他のファンにはとても見せられない姿だ。

 

「それでね。若さはやっぱり大事だなって改めて思った。不知火フリルも黒川あかねも現役高校生だもん。それに加えて演技力もあるんじゃ人気なはずだよ」

 

「不知火フリルについては言わずもがな。黒川あかねはバラエティ受けこそしませんけど新人賞レベルの大物役者。相変わらずゆらさんの目標は高いですね」

  

「それに最近で言うと星野アクア。星野アクアと比べて影が薄いけど星野ルビー。ちょっと変わり種で別枠扱いだけど斎藤真。この3人も注目されてない?」

 

 その最中に彼の名前が発せられ耳に残った。

 

 才能溢れる者達の中に混じったイレギュラー。

 

 嘘に塗れた世界で真実を貫き続ける特異点。

 

 その存在が僕の心を音も無く静かに揺さぶる。

 

「ああ………あの兄妹。僕も彼等に注目してます」

 

「だよね!やっぱり!全員違う分野で大活躍だもん!今頃オファー行きまくってるんだろうなぁ。そもそも芸能事務所の社長の子息と子女で義兄妹とか設定盛り過ぎだよ。顔良い枠に留まらない需要の塊な訳だし」

 

「斎藤真に限っては毛色がかなり違いますけど」

 

「彼の本職ってCADだもんね。実績やら活躍ばかりに目が行って忘れそうになるけど。そういや彼って苺プロをどうして辞めたんだろ?辞める必要なくない?」

 

「案外家族仲が拗れたとかの理由かもしれませんよ。方向性の違いとか考え方の違いで居辛くなったとか」

 

「何かやけに具体的だね。普通にあり得そうだけど」

 

 それから更にしばらく経って店を出た。

 

 明日の仕事が早いらしく彼女とは別れた。

 

 僕としてもそっちの方が都合が良かった。

 

 張り付けた仮面が悲鳴を上げ壊れかける。

 

「君は何処までも………目障りな存在だよ」

 

 そんな言葉は闇に消え仮面は元に戻った。

 

 こんなものは命を感じる為の試練でしかない。

 

 偶には気分を変えて待ってみるのも一興だ。

 

 いくら足掻こうといつかその時は必ず来る。

 

 あんな命に興味なんてこれっぽちも無い。

 

 

 

 

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