斎藤家の愚息   作:熊田ラナムカ27

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芸能界編
5 変化なんて誰もわからない


 

 

 

 

 俺の名前は斎藤真。

 

 16年前にこの世界に転生した元社畜だ。

 

「クソッ駄目だ!やっぱり駄目なのか!!」

 

 現在転生して以来のピンチに直面している。

 

「諦めるな。俺達は……何度もこんな困難を乗り越えてきた。今回だって……どうにかなるはずだ」

 

 こいつの名前は星野アクア

 

 本名は星野アクアマリン(長い)。

 

 俺の義弟で同様に転生者。

 

 俺にとっての共犯者であり、現在俺と同じ理由でピンチに直面している。

 

「だが、こればっかりは………時間が足りない。あまりにも………時間が」

 

「そんな事はわかってる………俺だって。それでも……俺はあいつの可能性に賭けたいんだ………ッ」

 

「可能性に殺されるぞ!そんなもの……棄てちまえ!今回ばっかりは流石に分が悪い!!」 

 

 未だあるかも分からない希望を信じるアクアに、俺は思わず詰め寄って言う。

 

「ねぇ、2人共……本気になり過ぎじゃない?毎回だけど私以上に………」

 

 アクアの妹で俺の義妹であり転生者。

 

 彼女の名前を星野ルビー。

 

「仕方ないだろう!ルビーが受験生かつそろそろ本番の時期で次の模試も近いっていうのに、過去問の結果がズタボロなんだからこうもなる!お前は少し黙ってろ!!」

 

「俺達はルビーの今後の勉強方針について真剣に話し合っている。お前は少しの間黙っていてくれないか」 

 

「私がそのルビー本人なんですけど!?」 

 

 仮にも社会人を経験した2人をしても一向に上がらない、こいつの成績を前に俺達は頭を抱えていた。

 

 一体何が悪かった?

 

 もっと分かりやすく解説をするべきだったか?

 

 それとも勉強のやり方そのものを見直すべきか?

 

 はたまた勉強させる科目を絞るべきなのか?

 

 ………駄目だ。

 

 一向に解決策が分からない………ッ!!

 

「ちょっとそこのシスコンビ。スタッフルームで話し込んでるって聞いて来てみたら、またやってたのね。ルビーは仮にも教えてもらってる側なんだから静かにしなさい」

 

 俺とアクアが苦悶の顔で頭を捻り、その横でルビーがやいやい騒いでいると、部屋の扉が開いた。

 

 誰かと思って振り返ってみると、うちに所属している役者の一人である有馬かながいた。

 

 これから有馬は撮影の仕事があるので、専らマネージャーの俺を呼びに来たのだろう。

 

「はー、なんだ。ただのロリ先輩か。中々会えないレアキャラでもないしな。つまんないの」 

 

「誰がモブキャラだ!イビるぞマジで!」 

 

「それはこっちのセリフだ。誰がシスコンだって?というか、もうそんな時間か。俺は仕事の時間だからもう行く。アクアは今日も五反田監督のところか?」 

 

「ああ。俺もあと少したら事務所を出る。ルビーもいい加減本気で高校受験のこと考えろよ。アイドルを夢見るのは構わんけどさ、アイドルに夢を見るなよ。基本薄給だし30歳手前で定年。………学も無しに芸能界に入ろうものなら、その後どうなるか分かったもんじゃないんだから」

 

 少し何かを考えつつも、アクアはルビーに言う。

 

 ルビーはそれに笑顔で頷いた。

 

「はいはい。わかってるよ。芸能科がある高校は面接重視!学力なんて参考程度!アイドルになれば受験勉強なんてしなくて一石二鳥!なんて、思ってないから。というか、真と社長にその事でガチギレされたばっかりだし………」

 

「ただでさえ馬鹿なお前が、突然馬鹿な事を言い出すのが悪い」

 

「豆知識感覚で人生かけたギャンブルしようとするからだ。あればっかりはお前が悪い」

 

「大変申し訳ありませんでした」 

 

「おいコラ待てや!あんた等3人しかわからん話をするな!いい加減わざわざ呼びに来た私を空気にすんな!!」

 

「「「あっ、忘れてた」」」

 

 あの日から早くも13年。

 

 あれからあまりにも色々な事があった。

 

 アイというスターを失ったB小町の人気は緩やかに静かなものとなっていき、グラサンの尽力があったものの2年後に解散。

 

 看板アイドルがいなくなった事で一時は弱小に逆戻りしかけたものの、ネットタレントのマネジメント中心の経営方針に切り替える事を早々に決めた事によって、どうにか苺プロダクションは規模をギリギリ中堅程度で維持する事に成功した。

 

 幸運だったのは苺プロダクションがネットタレントのマネジメント業界への参入を決めた当時、ユーチューブなどのネット界隈が俺がいた世界と比べ、比較的ブルー・オーシャンだった事だろう。

 

 前世で異常とも言えるネット界隈の盛り上がりを見ていた事から、何度却下されようとグラサンに提案を続けた甲斐があった。

 

 けれど、その方針転換によって、苺プロダクションはアイドル事業から事実上の撤退を決定。

 

 現状うちの事務所にアイドル部門は存在しない。

 

 現時点に至っては。

 

「よくよく思い出してみると、私とあんたの付き合いって1年くらいしかないのよね。あんな条件出されたのに頷くなんて、1年前の私は何を考えていたんだろう」

 

「暇してたお前にそれなりの仕事をやって、お前の為にイメージ戦略やら媚売りをしてる俺に言う言葉か」 

 

「それ全部私の為にやってるんじゃなくて、あんたが業界で評価される為やってるだけじゃない」 

 

「正解だ。よく分かったな。お前に昔媚売ったのもその一環。海老で毒魚を釣るとは正しくこの事だ」 

 

「誰が毒魚だ!そこは鯛でしょ!!あんたの本性はとっくに知ってたけど私以上に口が悪いわね!そこは嘘でも私の為にやってるって言え!!」 

 

 俺は芸能界でのコネクション作りの為、陽東高校の一般科に通っており、有馬は学科は違うが後輩にあたる。

 

 去年高校面接で数年ぶりの再会をしたところ、有馬はやたらアクアの事についてを聞いてきた上に、まして会いたいと食い気味で言ってきたのだ。

 

 正直あれには引いた。

 

 そんでもって最近テレビで見ないので話を聞いてみると、フリーな上に仕事が全然貰えていないとの事だったので、ある条件と引き換えに、苺プロダクションの若手役者として俺がスカウトをした。

 

 その条件に有馬は当然疑問を持ったが、俺が専属のマネージャーとなって仕事を渡し、現在先行中のオワコン子役としてのイメージを払拭した上に、お望み通りアクアに合わせてやると約束したところ、随分とあっさり食いついた。

 

 おそろしくチョロかった。

 

「………一応これでも感謝はしてるのよ。あんたのお陰で仕事をそこそこ貰って、少なくともオワコンとは言われなくなったしね。アクアが役者になろうとしてる事も知れたし」

 

 余談ではあるが、アクアが有馬と再会した時の率直な感想はというと、クズが昔の知り合い相手に詐欺行為をしたと思ったとのこと。

 

 有馬には激しく同情の視線を向けていた。

 

 というか今も時々向けている。

 

「そうか。それなら一生感謝しろ。そして感謝を伝えたくば、俺にもっと金を貢げ」  

 

「けど、私の売り出し方が、面白幼馴染キャラってどういう事?幼馴染要素はまだ良いとしても、面白いの要素に関してはまだ納得いってないから。芸人になったつもりはないから」

 

 オワコンイメージ払拭の手始めとして、俺は五反田監督に頼み、当時撮影していたドラマのゲスト枠に有馬を入れてもらった。

 

 その役はドラマの中心人物の一人の幼馴染ポジションであり、その人物とは悪友のような間柄だった。

 

 主役級までとはいかずとも、久しぶりのそこそこ大きい仕事であり、ハマり役かつ、しかもその撮影をアクアは裏方として見ていた。

 

 これによって有馬のテンションはマックス近くまで上がり、結果その役を完璧以上に演じ切った。

 

 演じ切ってしまった。

 

 面白し、可愛いし、ちゃんと友達だけど、絶妙に彼女にしたくないような、残念な女の役を。

   

 しかも、その役はそこそこ世間にウケた。

 

 元々そんなキャラで売り出す予定は無かったものの、世間の反応を見た俺はそれを好機と考え、有馬をそのキャラで売り出す事に決めて実際に売り出した。

 

 結果、オワコン子役というイメージは消えた。

 

 まるでギャグみたいな裏話である。

 

「仕方ねーだろ。あの役で一度ウケちまったんだから、しばらくはこのキャラで売ってくしかない。適当なタイミングでキャラ変は考えてやるから、今は大人しく我慢しろ」

 

 今はこのキャラでウケているが、下手に続け過ぎると起用されるドラマやCMの幅が狭まって、有馬の今後の仕事が最終的に減り、それに伴って俺の取り分も少なくなるリスクがある。

 

 俺としてもこれはどうにかしたい。

 

 あと有馬の出たドラマ全てのコメント欄に毎回湧いてくる、謎の厄介ファンからの声が地味に怖いし。

 

「まぁ………それならいいけど、絶対に忘れないでよね。そろそろ撮影だから行くわよ」

 

「へいへい」 

 

 現場に行って挨拶と打ち合わせを済ませた後、簡単な読み合わせをしてからCMの撮影が始まった。

 

 こうなってくると俺の仕事はなくなる。

 

 この時間にマネージャーがやる事といったら、終わったあとの差し入れを準備しに行くか、媚を売り行くかなのだが、現場からコンビニは30、40分も掛からない近い場所にあるから差し入れの準備はもう少し後でいいし、現場全体を見ても媚を売る意味のありそうな人物は今の所いない。

 

 CMの撮影が終わったタイミングで、精々撮影監督に軽く挨拶をするくらいだろう。

 

 待っているだけというのは暇だ。

 

 やる事もなく椅子に座ってボーっとしていると、そんなタイミングでスマホに一本の連絡が届いた。

 

 誰からの連絡だと思いつつ電源を入れると、その連絡はアクアからのものだった。

 

 ルビーが応募したアイドルオーディションの結果について書かれている。

 

(………そうか。駄目だったか。そうなるとやっぱり復活させるしかないな。だが問題はない。その為の準備と根回しは既に進めてある)

 

 この11年という歳月を使ってグラサンとミヤコを説得し、有馬かなをとある条件付きでスカウトし、何よりもアクアと長い時間を掛けて話し合いを続けてきた。

 

 俺も初めは芸能界から遠ざけるべきと考えていたが、ルビーの本気っぷりと秘めたる才能を見た結果、寧ろ遠ざけると予想外の方向に状況が動く危険があると考えた。

 

 何をしようとルビーが芸能界入りするのであれば、それならば最初から囲い込んだ方がずっとマシ。

 

 アクアには悪いがこれは確定事項だ。

 

「君がかなちゃんのマネージャー?話はよく聞いてるよ。落ち目になりつつあったかなちゃんをスカウトして、たった1年で見事復活させた苺プロダクションきっての新鋭のやり手だって。会えてとても光栄だ」 

 

 俺が考え事をしていると後ろから声を掛けられた。

 

 それもとんでもない大物に。

 

(か、か、鏑木プロデューサー!??!今日現場に来る予定は無かった筈だ!俺みたいなぽっと出が余計な事を言えば余裕で消される!!なんで此処に!?)

 

 鏑木昌也。

 

 数々の人気タイトルを抱える大物プロデューサーであり、特定の企業に属さないフリーのプロデューサーでありながら業界全体に影響を与える事ができる、芸能界という魔窟の中で長年生き残ってきた文字通りの化物。

  

 俺がマネージャー業を本格的にするにあたって参考にした人物の一人であり、プロデューサーとマネージャーで立場は明確に違うが、圧倒的上位互換なのは間違いない。

 

 そして何よりこの人は────

 

「いえいえ、こちらこそ会えてとても光栄です。以前挨拶させて貰った時以来ですが、お変わりないようで何よりです。菓子折りも何も用意出来ていないのは大変申し訳ないですが」

 

 どうにか絶叫して全力で逃げ出したいのを我慢し、顔に表情が出ないよう徹底して言葉を慎重に選ぶ。

 

「構わんさ。こっちも無理言って此処に来たんだ。君や現場の人間を驚かせる意図はこれっぽっちもない。そう固くならないでくれ」

 

(つまり俺に何か要件があるって話ですよね!?無理言って此処に来たなんて言いやがって!!そんな事を言われたらこっちも断れねーよ!!怖すぎるよこの人!!)

  

 言葉の裏に隠された意図を察し、俺は思わずその場で泣き出しそうになった。

 

 こんな感じで相手に気を使うと見せかけて、自分の要件を必ず通そうとする奴には、どんな世界でも絶対に逆らってはいけない。

 

 その要件がどんなに碌でもないものであろうと。

 

「実は近々ある漫画の実写ドラマ化を予定していてね。そのヒロインとしてかなちゃんを使いたいんだ」

 

「なるほど。うちの有馬をですか。過分な評価を頂きありがとうございます。それでその作品は?」

 

「君も知っているはずだよ。『今日は甘口で』って漫画なんだけど」

 

『今日は甘口で』。

 

 確かに俺でも聞いた事がある有名な少女漫画だ。

 

 アクアの部屋に確か全巻揃っていたと思う。

 

 ………だが、有馬がそのヒロイン?

 

 恋する乙女というよりは有馬はどちらかというと、完全自己中独走娘というのが正しい見方だろう。

 

 意外にも要件が全うでこちらにも利があるし、有馬のキャラ変を考えていた時期でもあったから、話自体は悪い話ではない。

 

 だが、それはそれとして、鏑木プロデューサーは人を見る目がないと思う。

 

「わかりました。社長と一度相談させて頂きますが、前向きに考えさせてもらいます。本日は仕事の話を頂き大変ありがとうございます」 

 

「きっとそう言ってくれると思った。じゃあよろしく頼むよ」

 

 そっちが言わせたんだろうと思わず言いたくなるが、もし言ったら消されるので我慢する。

 

「あっ、そうだ。言い忘れてた。今回のドラマではモデルの子達を売り出そうと思っていてね。かなちゃんの共演者は君が思う以上に多いと考えていい。あと、モデルのみんなも忙しい身だから、スケジュール通りに撮影を行ってほしい」

 

 ………おっと。空気が変わってきた。

 

 モデルの子達を売り出す?

 

 制作側の事情でオリキャラがかなり増えるだろう。

 

 スケジュール通りの撮影?

 

 どんなに酷い演技だろうとカットはないだろう。

 

 ………いいや、まだだ。

 

 まだ、どうにか………希望はあるはずだ。

 

「ちなみにモデルの方々は演技の経験があるんですか?有馬の方も準備があるので確認したいのですが」 

 

「いいや、殆どの子が演技未経験だよ。これも経験ってやつだね。苦労すると思うけど、君とかなちゃんには頑張ってほしいな」 

 

 ………あっ、終わった。

 

 色々と、何もかもが終わってる。

 

 やっぱり碌でもない要件だった。

 

「終わったわよ。飲み物ちょうだ───えっ、どうしたの?そんなに顔を青ざめて。具合でも悪いの?」

 

「緊急事態だ。キャラ変どころか暗黒時代再突入かもしれない。ついでに俺の評価も急降下して地上に墜落するかもしれない」

 

「本当にどういう事?暗黒時代再突入って割りとマジで洒落になってないんだけど。あんたの評価はどうでもいいけど」

 

「どうでもよくない。一番大切だ」

 

 焦り過ぎてお互いにガチトーンになり、撮影監督に軽く挨拶を済ませると直様俺達はカラオケに直行した。

 

 そんでもって2人して頭を抱え、カラオケとは名ばかりの鏑木プロデューサーに対する愚痴合戦が開催された。

 

 あと例の件をついでに言ったところ、有馬は騙されたと言ったのを最後に、虚無顔になって白くなった。

 

 騙してなどはいない。

 

 うちに所属するにあたっての条件はちゃんと伝えてあるし、有馬もそれに了承した上で、うちに所属する事を決めたはずだ。

 

 労働誓約書とは別で印は押させたが。

 

 家に帰るとリビングでルビーが項垂れており、それをミヤコが慰めていた。

 

 アクアは少し遠くからそれを見守っている。

 

「わかっているだろう?ルビーがこの程度で止まる訳ないって。次は大方地下アイドル辺りに応募するかもな」

 

「………わかってるよ。あいつが本気な事はとっくに。でも、アイと同じ轍を踏ませる訳には────」

 

「そうならない為に俺達がいる。ルビーがトップアイドルになる前に頂点を掻っ攫らってしまえばいい。あれから随分と時間は流れたが、俺達の目的は何も変わっていないんだから」

 

 ………アクアの復讐の意思も含めて。 

 

「………ルビー、お前本気なんだな?お前が入ろうとするアイドルの世界は大変なところだぞ?」 

 

 考えて、考えて、考えた後、アクアはようやくルビーに対して問いかけた。

 

 ミヤコも俺達がやろうとしている事を察知する。

 

「そうね。売れなくて惨めな思いをするかもしれない。給料面でも厳しい。私生活は常に他人の視線を気にしながら送ることになる。ストーカー被害なんてそこら中にありふれた話。それでも────」

 

「当たり前だよ」 

 

 アクアに問われ、ミヤコから沢山のリスクを聞いてもなお、ルビーはそう返した。

 

「私がんばる。だってなれるんだよ!絶対ママみたいになるんだ!」

 

「………本気か?」 

 

「本気だよ!」

 

 ルビーの意志は決して変わらなかった。

 

 この時点でルビーの運命は確定した。

 

「………なら、もうオーディションを受ける必要はない。その段階は終わった」

 

「えっ………なんで?私、本気でアイドルに────」

 

「苺プロダクションは現時点をもって、アイドル部門を、十数年ぶりに復活させる。その為の準備は進行中だ。本気なら、うちの事務所に入れ。もしそうなら歓迎する」 

 

 俺がそう言ってやると、ルビーは目を見開いて何も言葉を発する事が出来なくなった。

 

 これが現実かどうかを確認している。

 

「そ、そ、それ本当?きゅ、急にどうして?ミヤコさんも社長も、ずっと、やらないって言ってたのに」 

 

「嫌ならやらなくていいぞ」 

 

「嫌じゃないよ!入りたい!今直ぐやりたい!ママと同じ事務所に入りたい!!」

 

 焦ったようにルビーは叫んだ。

 

「計画自体は結構前から持ち上がってたけど、ルビーが大きくなるまでやるか迷ってたの。アクアは最後まで反対してたし」

 

「別に反対はしてない。陽東高校の芸能科に行く口実が生まれて、勉強を全くやらなくなると思ってただけだ」

 

「やるよ!勉強もこれまで通りやる!!」

 

 ルビーの熱量にアクアは複雑そうな顔をした。

  

「本格的な始動はお前の高校入学後だ。今は俺も手は空いてないし、同じグループに入る予定のメンバーも忙しいからな。宣言通りそれまでは勉強に集中するように」 

 

「スカウトまでしてくれたの!?ありがとうミヤコママ!!それでその人の名前は!?」 

 

「有馬かな。通称ロリ先輩」 

 

「なんだ。ロリ先輩か。テンション下がるな」

 

「テンションの落差が酷すぎるだろ」

 

 ミヤコは何か言いたげな表情をしたが、俺は素知らぬ顔でそっぽを向いた。

 

 あくまでこれはルビーの為ではなく、俺が今後動きやすくする為のものであり、感謝なんてされる覚えは全くない。

 

 そもそも言ったところで信じる訳がないだろう。

 

 俺が誰かの為に動いたなんて。

 

 

 

 

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