斎藤家の愚息   作:熊田ラナムカ27

54 / 57
54 ただそれを追い求めて

 

 あれから更に時は過ぎ11月。

 

 夏の面影は既に遠い昔だ。

 

 関係者向け初号試写上映当日。

 

 五反田監督の軽い挨拶があった後、約2時間に及ぶ、一応の完成を迎えたフィルムが上映された。

 

 場内では、関係者のすすり泣きが微かに聞こえる。

 

 そんな中、招かれた俺は、ただぼんやりとスクリーンを見つめていた。

 

 涙を流す訳でも、感動する訳でも。

 

 達成感がある訳でも、不満がある訳でも無く。

 

 彼奴の下らない言葉を、静かに思い浮かべて。

 

「いや、なんていうかさ……五反田監督って凄いね。なみだ、とまらん……」

 

「フリルちゃん!?尋常じゃない泣き方してる!?」

 

「はい、ハンカチ。お前、案外涙もろいよな」

 

 上映が終わった直後、フリルは外でボロ泣きした。

 

 貸したハンカチはあっという間にずぶ濡れになる。

 

 MEMちょは驚いているが、何時もの事だ。

 

 フリルは結構、ベタな泣かせに弱い。

 

 以前、とある犬映画を観に行った時もそうだった。

 

 あの時は、どうしたものかと困り果てたものだ。

 

 とはいえ、切り替えも同じくらい早いのだが。

  

「正直、クオリティどうなるんだろって思ってたんだけど……いやー、すごい。すごい。プロは。下手な演技もそれっぽくしちゃうんだもん。ほんと尊敬する」

 

「下手な演技?一体誰の事だろう?」

 

「アンタでしょうが。編集者がシスコン様々よ」

 

「実際、相当頑張ったみたいだよ。アクたん」

 

「具体的には、目元に隈作ってたっか?」

 

「……それについてはノーコメントで」

 

 アクアは露骨に視線を逸らした。

 

 俺と有馬はその様子に、何とも言えない目をする。

 

 口にしないあたり、本当にシスコンの鏡だ。

 

 嫌気が差すほど、相変わらず妹に甘い。

 

 MEMちょはおおよそ、何時も通りの表情だった。

 

 ユーチューブの編集で慣れているからだろう。

 

 そんなものに慣れないで欲しいが。

 

 此奴は、良い時と悪い時の差があまりに大きい。

 

 ルビーは気まずそうに視線を泳がせる。

 

「まぁ序盤は確かにアレだったけど……終盤の芝居はルビーにしか出来なかったし、結果オーライなんじゃないっすか?ルビーだからこそ、あの演技は出来たもんだと思うし」

 

「ししょ~~♥」「師匠言うな」

 

 そんなルビーを、メルトさりげなくフォローした。

 

 ここぞとばかりに、ルビーはメルトに甘える。

 

 いつの間にやら仲良くなったらしい。

 

 まぁ確かに、メルトの言い分も一理ある。

 

 この映画でアイに最も近かったのはルビーだ。

 

 年齢的にも、境遇的にも、精神的にも。

 

 だからこそ、俺やアクアもルビーを主演に据えた。

 

 そしてルビーは、自分なりの答えを出した。

 

 アイのようにならず、何時かそれを超えると。

 

 あの演技こそが、何よりの証明だ。

 

 それは何があろうと変わらない。

 

 この映画『15年の嘘』が、どういう作品として世間に受け取られるかは、最早言うまでもないだろう。

 

 きっと、悪いものにはならない。

 

 だが、それはそれ。これはこれだ。

 

「てめぇが何処ぞで誰とイチャつこうが、イチャつくまいが勝手だが、とりあえずメルト。このアホをあんま甘やかすな。此奴が調子に乗るとロクなこと起きねぇんだ。甘ったりぃのはそこのシスコンだけでいい」

  

「んだと!?誰がアホだクズ!!」

 

「事実だろ。大人しく一人反省会しとけ」

 

「メルト君、そういう……そっかぁ………」

 

「あの、黒川?何でさっきから、そんな生暖かい目してんの?アクアはアクアで、何でこっちを無言で睨んでんの?すっげぇ怖いんだけど!!」

 

「上映会終わったし、ご飯でも食べに行こっか」

 

「私、近くに良い店知ってるわよ」

 

「ふーん、確かに良さげなお店だね。でも、やっぱ、かなちゃんチョイスだけあって……それなりに高い」

 

「芸能人ならこれぐらい普通じゃない?」

 

「ちょっと!?誰か助けて!!」

 

 何はともあれ、上映会は何事もなく終わった。

 

 その後レストランで、メルトがアクアと黒川の2人に無言で詰められていたが、完全に個人の問題だし、俺は人の恋路を応援も邪魔もしない主義だ。

 

 どうなろうと知ったことじゃない。

 

 そんな事より、推し2人との食事を楽しむ事の方が重要だったので、酒なんて一滴も飲んでいないのにも関わず、酔っぱらった有馬含め、全力でスルーした。

 

 どうせアクアの勘違いだろうし。

 

 黒川は黒川で、姑気分を楽しんでいるだけだ。

 

 わざわざフォローするまでもない。

 

 神木輝は上映会に顔を出さなかった。

 

 鏑木さんに確認を取ったから間違いない。

 

 来ていたのは、彼奴の会社の社員だけだった。

 

 まぁそっちの方が、何分やりやすい。

 

「それでは、インタビューを始めさせていただきます。私も初号を拝見させて頂きましたが、星野アイさんの義弟である真さんにとっても、少しばかり心苦しい撮影と内容だったかと思います。それでもこの映画の副責任者を務め、映画完成に多大な注力をされたのは、故人である星野アイさん。ひいては星野ルビーさん、星野アクアさんの為なのでしょうか?」

 

 株式会社EYESの社員は俺にそう尋ねた。

 

 インタビューは、上映会の翌日の事だった。

 

 神木輝の差し金かどうかは分からない。

 

 例えそうだろうと、答えは変わらない。

 

「無論それも理由の一つです。星野アイという人間に、私は多くのものを受け取った。返せるはずもありませんが、私は確かにそれを返したかった。ですが、それはあくまで理由の一つ。私はただ、彼女の(ねがい)を、呪いで終わらせたくなかった。それだけです」

 

「呪い……ですか?といいますと?」

 

「愛ほど歪んだ呪いはない。誰だったか、そんな言葉を残しました。実にその通りだと思います。実際、多くの人間がこれまで愛という劇薬に身を狂わせ、多くが破滅しました。アイもまた……その一人なのかもしれません。彼女が愛を求め、突き進んだ人生は、見方によっては愚かで、無価値だったのかもしれない。しかし、その全てが、無駄だったはずはありません」

 

 その答えは、とっくの昔に出てる。

 

 彼奴が全て、照らし示してくれた。

 

 その輝きを、消せるはずもない。

 

「人間ほど愚かしい生物はこの世に居ません。私を含め、皆が間違え、苦悩し、嘘を吐き、時に自分を偽り、なお他者には完璧を求め、誰かの作った偶像を傲慢にも押し付ける。ある種、最も醜悪な存在です」

 

「ですが、私達は人間です。人間であり続けなければならない。その愚かしさを持つからこそ、人間は獣のように自らを見失わず、明日の為に生き、神のように他者を見下さず、良き友人として誰かと歩みを共に出来る。例えその道の先にあるものが絶望だったとしても、人は人であり続ける限り、希望を誰かに繋げられる。尤もそれを、人は簡単に忘れてしまうのですが」

 

「彼女の行い全てが正しかったとは言いません。彼女は偶像ではなく人間だ。何処にでも居る、時に間違いを起こす、何処までも嘘に塗れた人間だ。この映画を私が作った理由は……それを知って欲しかっただけなのかもしれません。だって、そうでしょう?そんなごく普通の人間である彼女が、何時までも孤高の星(いちばん)などと呼ばれ続けては……きっと寂しいでしょうから」

 

 この宇宙(せかい)は、一人で生きるには大き過ぎる。

 

 インタビューが終わって俺は外に出た。

 

 時刻は間もなく夕方を過ぎる。

 

 その輝きを見るにはまだ早い。

 

 それでも、あともう少しだ。

 

 見たかった景色は、すぐそこまで迫っている。

 

「俺はずっと、お前の事を───」

 

 だからこそ、その言葉は胸の奥に仕舞い込んだ。

 

 口にすれば、きっと抑えが利かない。

 

 俺はどうしようもないクズでなきゃいけないから。

 

 今はまだ、その時じゃない。

 

 この言葉は、まだ口にしちゃいけない。

 

 何時か来る、その日が訪れるまで。

 

 彼奴もそれを、待ち続けたのだから。

 

 夜空を見上げながらそんな事を、ふと思った。

 

 宇宙(そら)に輝く星は、手が届きそうでまだ遠い。

 

 

 

 

 

 

♦♦♦

 

  

 

 

 

 

 映画『15年の嘘』の上映会を終えてから数日。

 

 私達は、とにかく忙しかった。

 

 先輩は新たに決まった映画の撮影。

 

 MEMちょはサバ読み暴露からの動画配信。

 

 私は私で、各種バラエティ番組への出演。

 

 それに加え『B小町』全体でのライブツアーに、ライブに向けた練習や調整、ズームでの打ち合わせ。

 

 休む余裕も、お土産を買う余裕も、殆どない。

 

 真が恐れる過労死が現実になりそうだ。

 

 ほんと、これでよく誰も倒れていないと思う。

 

「つっかれたー……お兄ちゃんヘルプ………」

 

「おう、お帰り。今日もお疲れ様」

 

「ライブやるだけでも大変なのに、地元のテレビにラジオ出演まで。……しかも、皆して、私をガッチリ囲んでさー。社長なんか元々ヤクザ顔なのに、角でも生えそうな勢いだったし。一人になれる時間も無いよ」

 

「……そうか。それは良かった」

 

「良くないよー……お兄ちゃんが羨ましい」

 

「こっちはこっちで大変だけどな」

 

 私はどうにか差し出されたお茶を飲んだ。

 

 疲れた体に、冷たいお茶がじんわり染みていく。

 

 なんだか一気に、おばさん感が増した気がする。

 

 まだ20歳にもなってないのに。

 

 リビングに目をやると、勉強道具が置かれていた。

 

 参考書含め、全てお兄ちゃんの物だ。

 

 お兄ちゃんはここ最近、仕事を絞ってる。

 

 理由は簡単。あと数ヶ月で大学の受験日だからだ。

 

 やっぱり外科医を目指すつもりらしい。

 

 あかねちゃんも、よく勉強に付き合ってる。

 

 とはいえ、前世がせんせーで、頭が抜群に良いだけあって、余程が無い限り合格は揺るがないらしい。

 

 以前受けた高難易度模試でも、余裕の表情で各教科高得点を次々に叩き出して、周囲を引かせていた。

 

 あまりの点数に、試験官が不正を疑った程だ。

 

 我が兄ながら、流石という他ない。

 

 卒業さえギリギリな私とは大違いである。

 

「そういや真は?また部屋に居るの?」

 

「ああ、何時も通りだ。そろそろ降りて来るは──」

 

「よしっ!!勝ったッ!!前回のマイナス分はこれでチャラ!!逆転プラスコース!!完全勝利!!」

 

「……今度はいくら稼いだ?」

 

「80万ッ!!1円もやらんぞッ!!」

 

「要らないわよ。クズの金なんて」

 

 真はというと、守銭奴から金の亡者に進化した。

 

 正確には、株にどっぷりハマっていた。

 

 以前からやっていたけど、最近はより悪化した。

 

 これまでの業界の仕事で元手の額が、数倍以上に増えた上に、大学での勉強で勝率も上がったらしい。

 

 大学生(むしょく)だけど、多分私より稼いでる。

 

 それだけ大学生ライフをエンジョイして、真面目にやってる証拠なんだろうけど、素直に喜べない。

 

 というか、少しも喜びたくない。

 

 中身は相変わらずケチなままだし。

 

 これならマネージャー時代の方が遥かにマシだ。

 

「やっぱり……教育の仕方、間違えたな………」

 

「アレはもう生まれつきよ……どうしようもないわ」

 

「せめてガキの頃に言い聞かせれば………」

 

 これには社長とミヤコさんも頭を抱えた。

 

 わざわざ私達に内緒で家族会議を開く始末だ。

 

 あんな顔の2人は見るのは初めてだった。

 

 なお、当の本人は反省する気ゼロ。

 

 それどころか、もっと稼ぐ気満々。

 

 何なら意気揚々と、苺プロの株まで買ってた。

 

 ついでとばかりに、鏑木さんの会社の株まで。

 

 同じ転生者として、本当に申し訳ない。

 

「彼奴、前世の境遇が境遇だから……気持ち自体は分からなくもないけどな。明日食う飯にも困ってたらしいし。これっぽっちも……理解したくないけど」

 

「本当に酷い時は、土手の雑草を口にして、公園の水で無理矢理空腹を誤魔化してたんだっけ。金の亡者にそりゃなるよね。……だからって、酷いけど」

  

「あのゲス顔さえ……どうにかなればな」

 

 真の前世の話はアクア経由で聞いた。

 

 てっきりアクアの時みたく、病院の関係者かと思ってたから驚いたけど、その境遇には妙に納得した。

 

 あんな性格になるのも、無理はない。

 

(真は多分、平穏に生きたいだけなんだよね)

 

 その話で、真の根っこが何となく分かった。

 

 金や権利にやたら執着する理由も。

 

 何かにつけてご飯を食べている理由も。

 

 言葉の重さの理由も。

 

 根っこの部分は、私と全く同じだ。

 

 餓えや貧しさや恐怖に、苦しめられる事も無く。

 

 自分が積み上げたものを、奪われる事も無く。

 

 誰からも、脅かされる事も無く。

 

 ただ平穏(しずか)に、生きていたいだけ。

 

 ただ、幸せになりたいだけ。

 

 当たり前みたいで、切実な願いだ。

 

 きっとアクアも、そうなんだと思う。

 

 それどころか、生きている人は皆そう。

 

 幸せになりたいっていう、当たり前の願いさえ叶えるのが難しいなんて、この世界はつくづく残酷だ。

 

 もう全部、何を言っても今更遅いけど。

 

「さーて。溜まりに溜まった金を何に使うか。やっぱりまず、いざという時に現金化しやすい宝石類?最近だと(ゴールド)辺りが狙い目だな。税金対策で小型クルーザーを買うのもアリか。船舶免許取れば乗り回せるし」

 

「お前……そういうのは適当にしとけよ。このままだと有馬より金遣いが酷くなるぞ。色んな意味で」

 

「私達にはびた一文渡さないクセに」

 

「要らないって言ったのはお前だろ。数秒前の自分の言葉ぐらい覚えとけ。金は天下の回り物だぞ?経済回してるんだからありがたく思え。羨ましかったら精々それぐらい稼いでみせろ。()()()()()()

 

「「このクズ……ッ!!」」

 

 まぁそれはそれとして、やっぱりクズはクズだ。

 

 私達はクズの挑発に、思わず青筋を浮べる。

 

 根っこは同じでも、此奴と同じとか絶対嫌だ。

 

 そのゲス顔を今直ぐにでも殴りたい。

 

 少しでも同情するだけ時間の無駄だ。

 

 前世は前世。今世は今世。

 

 それが私達の出した結論だ。 

  

 無かった事にするつもりは一切ないけど、どうしようもない過去をいくら振り返っても何にもならない。

 

 アクアはアクアとしての人生を選んだ。

 

 私はルビーとさりな、両方の人生を選んだ。

 

 真はどっちでも変わらないから、どうでもいい。

 

 それだけで、私達にとっては十分だ。

 

「さてと。そろそろ飯の時間か。今日はミヤコもグラサンも帰って来るの遅いらしいし、こっちで適当に作るか。冷蔵庫の中身は……ほぼすっからかんだな。ちっとスーパーに買い物行くけど、お前達も来るか?」

 

 当然、これまで色々と大変だった。

 

 嫌な思いもしたし、苦しい思いもした。

 

 でも、今は、毎日がすっごい楽しい。

 

 病院の中で生きてた頃も想像出来なかった。

 

 何だかんだで、これまでの全てが楽しかった。

 

「お前に全部任せたら節約料理になりそうだからな。いや、それはそれで悪くないけど、材料費の解説をされるのも面倒臭い。分かった。付いてく」

 

「お兄ちゃんが行くなら私も行く」

 

「よし。人手確保。期間限定、MEMちょクリアファイルの当たる確率がアップした。全て狙い通りだ」

 

「欲しいなら事務所のやつ貰えばいいだろ」

 

「こういうのは買って当ててこそなんだよ」

 

「それで喜ぶの販売企業だけでしょ」

 

 とはいえ、まだまだ人生は長い。

 

 私の芸歴なんて、5年にも満たない。

 

 何もかもが始まったばかり。

 

「はい。ストップ。菓子は2000円までだ」

 

「ぐっ………家計管理の鬼め」

 

「十分過ぎるぐらい譲歩してるだろ」

 

「特売の大根あったぞ」

 

 このまま行けば、ドームに立つ日だって遠くない。

 

 それまでは立ち止まってる暇はない。

 

 その先の未来にしたってそうだ。

 

 慌ただしく、毎日は流れていく。

 

 だって私達は、今を生きてる。

 

「見事に綺麗な狐色だ。揚げ物はこれで完成だな」

 

「味噌汁の味は……これぐらいでいいか」

 

「おい、ルビー。大根おろしは出来たか──」

 

「うおおおおおおお!!ちょっと待って!!」

 

「何やってんの?馬鹿なの?切ってから卸せよ」

 

「……とりあえず、その大根をこっちに貸せ」

 

 天童寺さりなは、もう居ない。

 

 せんせーも、この世界には居ない。

 

 ママも遠い場所に行ってしまった。

 

 一度失ったものは、もう戻って来ない。

 

 転生なんてものが、あろうがなかろうと。

 

 それでも、一瞬一瞬を積み重ねていくしかない

 

 私達は前世も今世も、そうやって生きてきた。

 

 生きるって、きっとそういう事だから。

 

「はぁ……お腹一杯。ごちそうさまー」

 

「人のから揚げにまで手を出しやがって……」

 

「食べ盛りだからな。成長期だし」

 

「これ以上このアホが成長してどうすんだよ。脳みそはどうやったってデカくならねぇぞ。デカくなるのは腹ぐらいのもん───ッ!!すね蹴りやがった!!」

 

「今のはどう考えてもお前が悪い」

 

 私の名前は、星野ルビー。

 

 不器用なお母さんとアイドルのママ。

 

 優しい義母とサングラスの義父。

 

 世界で一番大好きな双子のお兄ちゃん。

 

 そして多分、世界で一番クズの義兄ちゃん。

 

「眠くなってきた……ちょっと寝る」

 

「おう、そうか。なら、好きにしろ」

 

「兄妹仲良く18にもなって膝枕かよ……ブラコン、シスコン共め。まぁなんだ……毛布は羽織っとけよ」

 

 ちょっと普通じゃないけど大切な家族。

 

 そんな家族と何でもない日々を過ごしたい。

 

 そう思うだけの、ごく普通のアイドル(にんげん)だ。

 

 こんな日々が、これからも続けば良いと思う。

 

「じゃあそういう訳で、分かってると思うが12月25日のクリスマス。ライブツアーの最終日。ステージは国立競技場だ。規模で言えばこれまでやって来たライブの中で一番デカい。全員気張らず気合い入れとけ」

 

 そして季節は更に巡り、あっという間に冬。

 

『B小町』のライブツアー最終日まであと僅か。

 

 天気は快晴。夜になれば星が綺麗に見えるだろう。

 

 そんな何でもない日の事だった。

 

「やり残した野暮用を済ませて来る。心配すんな。大した事じゃない。直ぐに終わる。だから、待ってろ」

 

 その日、家族(あいつ)真実(うそ)を、私は見抜けなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。