斎藤家の愚息   作:熊田ラナムカ27

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8 脳破壊ほど酷い文化はない

 

 

 

 

『今日あま』の撮影からしばらく経ち、桜が咲き誇る季節へと月日は流れた。

  

 今日は陽東高校の新学期初日。

 

 俺と有馬は学年が上がって3年と2年となり、アクアとルビーは晴れて陽東高校の普通科と芸能科の1年になった。

 

 なお、ルビーの入試結果は割と悲惨だった。

 

「緊張してきたー」

 

「緊張する必要なんかないわよ。ここは養成所でも撮影所でもなくて普通の学校なんだから、普通にしてればいいのよ」

 

「それって本当にこいつに使える言葉か?受験生の8割からノー勉でも解けるって言われてるうちの入試を、全科目平均合格点ギリギリだった奴だぞ。普通とはかけ離れたとんでもない馬鹿だぞ」

 

「うっさいわね!?あんたはいつまでそれを引きずってるのよ!確かに目標の7割には届かなかったけど……最終的に入学できたんだからいいじゃない!」

 

「これでもかなりマシになった方だけどな。あと地味に気にしてたのか」

 

「前言撤回。あんた等に普通を求めるのはお門違いな気がしてきた」

 

 いつものメンバーで軽く騒ぎながらも、俺と有馬で道中の軽い案内をしつつ、アクアとルビーの教室へと向かった。

 

 余談ではあるが、それなりの大所帯だったので、教室に着くまでの過程で周囲からそこそこの視線を集める事になった。

 

 有馬に言われて仕方なく来たものの、やっぱり案内なんていらなかった気がする。

 

 ルビーの教室である1-Fには座席表が張り出され、そこには大量のイケメンと美女が集まっていた。

 

 芸能科の教室特有の事ではあるが、全員が芸能人って事もあって、揃いも揃って顔面偏差値が高い。

 

「あそこにいるのは絶賛売り出し中のアクション俳優。そこで話をしているのは某アイドルグループのセンター。そんでもってあっちが歌舞伎役者。見れば見るほど金のなる木だらけで……今直ぐにでも声を掛けたいッ!!媚を売りたいッ!!………だが、入学初日から行くのは流石に駄目だ。警戒される。せめて明日以降にするべきだ。しかし、気を付けろ。時間を置きすぎるとグループが出来て声が掛けづらくなる。声を掛けるタイミングは入学した直後の浮足が収まってかつ、グループが出来るか出来ていないタイミングだ。慎重に様子を見ろ。チャンスを見逃すな。金のなる木を何があろうと逃すな………ッ!!」

 

「傍から見て今のクズってただの不審者よね。今すぐ通報しようかしら」

 

「警察の方々に迷惑だからやめろ。それにしてもこのクズの媚売りに……本当に見境は無いらしいな。救いようがない」

 

「マネージャーの身でありながら私達をほっぽり出して、パーティーで延々とお偉い方々に媚を売るような奴だもの。救いようなんてある訳ないじゃない」

 

 誰が不審者だって?

 

 やかましいぞ。俺はただの一般人だ。

 

 誰が救いようがないだって?

 

 そんなものは興味ない。

 

 邪神(やつ)に救いを求めるくらいなら、迷わず地獄に向かって落ちるに決まっているだろう。

 

 あんな奴の助けなんて誰が求めるものか。

 

 アクアと有馬に生ゴミを見る目を向けられつつ、教室の外で俺は後日媚を売る相手についての選定作業を再開した。

 

 ルビーも大概アイの血を継いで顔は良いと思っていたが、こうも顔が整っている奴等が多いとついつい負けているのではないかと思えてしまう。

 

 流石は芸能科の顔面偏差値。

 

 全力で媚を売る甲斐があるというもの。

 

 そんな折にルビーが指定された席に座ると、時を同じくして桃色の髪の女子が隣に座った。

 

 端的に言って胸の圧が凄まじい。

 

「あれは確か、グラドルの寿みなみ。ルビーと同じクラスとは思ってなかった。それにしても………実際に見ると迫力すげぇな」

 

「わざわざ口に出さなくていいから。言いたい事は分かるけど。あとアクア。あんたは見惚れすぎ。あんな感じの人が………好みなわけ?」

 

「違う。勘違いするな。俺は見惚れてなんかいない」

 

「明らかに図星じゃねぇか。ムッツリかよ」 

 

 アクアは必死になって俺の後ろで否定し、有馬は遠くを見つつ負のオーラを出し始めた。

 

 ムッツリ野郎のアクアはともかくとして、有馬は何故自ら傷つく道を選んでしまったのか。

 

 全く以て理解が出来ない。

 

「っていう感じ友達になったみなみちゃん。この人が私のお兄ちゃんのアクア。そんでもって………認めたくないけどこの人がもう一人のお兄ちゃんの真。こっちは仲良くしなくていいから」

 

「初対面で人の経歴をググりやがった非人道的ウーマンにクズ呼ばわりされるとは心外だ。俺はクズである事に誇りを持っている。それと心配せずとも俺はお前を妹と思っていないから安心しろ。お前みたいな馬鹿が身内だと思われるのは御免だからな」

 

「それならよかった。私もあんたみたいなクズと身内なんて嫌だったもの。これで遠慮なくこれからあんたを他人扱いできるみたいで安心した」

 

「えっと、アクア君。2人って………仲悪いん?」

 

「悪くはないが良くもない。いつもあんな感じだ。それとあのクズを兄だとは俺も一切思っていない」

 

「そ、そうなんや。世の中色々あるんやな」

 

 顔合わせの時間も終わって昼休みになり、俺達と寿さんはルビー経由で顔合わせをしていた。

 

 いつもなら有馬もいるところだが今日はいない。

 

 教室で相変わらず負のオーラを出して、自己肯定感を高める為にエゴサしてるからだ。

 

 あいつほど拗らせてる奴は中々いない。

 

「初めまして、寿みなみさん。苺プロダクションでマネージャをしている、斎藤真です。もしもお仕事で困った事があったらこの電話番号に1本連絡を。最高の結果をご提供するので是非ご贔屓に」

 

「みなみちゃん、騙されちゃ駄目だよ。何度も言うけどこいつはクズだから。仕事は間違いなく出来るんだけど、自分の事しか考えていないような奴だから」

 

「俺の知り合いに騙された哀れな被害者もいる。こいつに仕事を任せるのは止めておけ。忠告はしたぞ」

 

「ご、ご丁寧にどうも。よろしゅーな」

 

 機会を伺って媚売りを仕掛けようとするも、アクアとルビーにブロックされた。

 

 何故だ。何故邪魔をする?

 

 俺の仕事は苺プロダクションの利益となり、回りまわってお前達の利益にもなるというのに。

 

 それ以上に俺の利益になる事も確かだが。

 

「改めて俺は星野アクア。よろしく頼む。何はともあれお前に友達が出来て何よりだよ。これからこいつとは仲良くやってくれ」

 

「そう語っているアクア君ですか、俺の見た限りでは友達がまだいません。現状とても可哀想な方です」

 

「誰が可哀想だって?俺を哀れむな」

 

 強い視線でこちらを睨んでいるが、アクアに関して俺は本気で哀れんでいる。

 

 だって、こいつの場合────

 

「俺は別に友達作りにこの学校に入った訳じゃない。話し相手がいるくらいで充分だ。男子はいきなり友達認定とかしねぇから。元より一般科はそっちと違って中高一貫だから。それなりに交友関係してて交友深めるの時間掛かるんだよ。別に入学ぼっちとかじゃねぇし。分かる?」

 

 ガチで友達がいないんだもの。

 

 周囲が馬鹿な事で盛り上がっているというのに、アクアだけ一人で黙々と本を読み続ける。

 

 見ていて本当にぼっち感が凄い。

 

 話し相手は確かに作ったようだが、それは後々グループワークで困らないようにする為のもの。

 

 相手は誰でもいいに違いない。

 

 それと周囲の交友関係が完成している云々は、正直あまり入学ぼっちとは関係ない。

 

 同じ普通科の俺が初日に友達を作れたのだから。

 

「ちょっと中二病だけど、あいつは悪い奴じゃないんだ。友達を作るのが、絶望的に下手なだけなんだ。これだけは分かってくれ………」

 

「アクアってマジでぼっちなんだね。こいつと同意見なのは嫌だけど………仕方ない。みなみちゃん。アクアとも友達になってあげて………」

 

「あはは。ええですよー。アクア君。これから仲良くしてこーな」

  

「友達のお裾分けすんな。全員生暖かい目をやめろ」

 

 つい先ほどの険悪っぷりは何処へやら、俺とルビーは生暖かい目で静かにキレるアクアを見た。

 

 ………良かったな。友達が出来て。

 

 寿さんが………本当にいい人で良かった。

 

 有馬は多分………余計拗らせるだろうけど。

 

「俺の心配はいいから自分の心配をしろ。特殊な環境だし勝手も違うだろ」

 

 話を変えようとアクアはルビーの心配を始めた。

 

 つくづく分かりやすい奴である。

 

「そうは言ってもプロも所詮ここではただの一介の学生。会話の内容も意外と普通だし案外話せば仲良くなれる。やらない損よりやってからの損って言うだろ?学校の中くらい先入観なんて捨てちまった方がいい」

  

「そうだよ。緊張する必要なんてないよ。ここは養成所でも撮影所でもなくて普通の学校なんだから、普通にしてればいいのよ」

 

「おおっ。真さんもルビーちゃんも凄く先輩感がある。どっちもカッコええ」

 

「ルビーはどっかでまんま聞いた台詞だけだけどな」

 

 胸を張ってドヤ顔しているが、アクアの言う通りルビーは有馬の言葉をパクっただけである。

 

 本人がいたら間違いなくキレていたに違いない。

 

「そういえば、うちのクラスに凄い人居たんだよね。凄く目立ってた」

 

「そうそう。初回の授業に遅れてきて、みんな注目してた。びっくりしてた」

 

 大はしゃぎの2人曰く、その人は突然やって来た。

 

 月9のドラマで大ヒット。

 

 歌って踊れて演技もできるマルチタレント。

 

 美少女という言葉を聞いたら、殆どの人がまず思い浮かべる人物。

 

 そんでもってルビーの今最推し。

 

 不知火フリルがクラスに居たとのこと。

 

「ふーん。そっか。それは良かったな」

 

「ふーんて!アクアは興味ないの!?」

 

「興味ない。俺の最推しは今も昔もアイだけだし」

 

「そりゃ私もそうだけど………それはそれ、これはこれ!」

 

 ルビーは強く豪語した。

 

「真さんも興味ないんです?」

 

「興味ないというか、偶然って凄いなとは思ったが」

 

「というと?」

 

「あっ……!ほら!あそこに実物!はぁー遠目でもかわいー」

 

 俺が返答しようとしたタイミングで、ルビーが入り口の方を指差した。

 

 確かに不知火フリルがいる。

 

「あっ、真君だ。久しぶり。元気してた?」

 

「「んっ?」」

 

 フリルの言葉に少し遅れて、ルビーと寿さんが同時に気の抜けた声を出した。

 

 2人の視線がフリルに釘付けとなる。

 

「直接顔を合わせたのは2ヶ月ぶりか。今朝も生放送ご苦労様。こっちはまぁまぁって感じだ」

 

「「…………んっ?」」

 

 少し遅れて、ルビーと寿さんは同時に気の抜けた声を出した。

 

 更に2人の視線が今度は俺に層釘付けとなる。

 

 その表情は笑顔で固まっていた。

 

「その2人がアクア君とルビーちゃん?聞いていた以上に目の保養になるね。多分視力0.5位良くなったと思う。最高って感じ。かなちゃんは今日一緒じゃないの?」

 

「あいつは絶賛ネガティブモードだ。ブツブツ言いながら教室でエゴサしてる」

 

「何それおもろ。超見たい。」

 

「「……………」」

 

 ルビーと寿さんは遂に何も発さなくなった。

 

「そういえばこないだMEMちょの配信見た?マジで神回だったんだけど」

 

「予想以上にドジョウ鍋が美味くて絶句してたやつな。すんげー良い表情してた。今年のMEM顔ランキングベスト10に入るんじゃね?」

 

「あり得るね。ランキングの変動が凄く楽しみ。けど、私としては信じてるから。いつか来るMEMちょの乙女ヅラが………ランキング1位を見事掻っ攫うって。大体的に宣言したっていいよ」

   

「それ去年と一昨年も言ってたろ。宣言祭りじゃねーか。お前って本当にいい性格してるよな」

 

「真君には負けるけどね」

 

「「ちょっと待って。一体どういう状況?なんであの2人が和気藹々と友達感覚で話してるの?なんで2人が昔からの親友みたいな雰囲気を出してるの?私達は冷静さを欠こうとしています」」

 

「落ち着け。俺に言うな。本人達に言え」

 

 表情も言葉も何もかもが固まっていた2人はようやく動き出し、遠くから俺とフリルの様子を静観していたアクアに何故か詰め寄った。

 

 アクアは本当に一切関係ないというのに。

 

「俺がこの高校に入ってマネージャー業を始めるにあたって、あちこちの事務所に挨拶回りしたんだよ。フリルの事務所もその一つでその時に知り合った」

 

「私はその時芸能活動を調度始めたタイミングで、真君とはその時にたまたま会ったんだ」

 

「フリルの顔を初めて見た時に俺はこう思った」

 

「真君の顔を初めて見た時に私はこう思ったの」

 

 顔をまじまじと見合わせながら互いを指を差す。

 

「「この人………俺/私にとって最高にめちゃくちゃタイプな顔してるなって」」

 

「凄く運命的だけど激しく俗世的な急接近!??!」

 

「頭が………ッ!!脳が破壊される…………ッ!!」

 

 寿さんはエセ関西弁を放り捨てて標準語になり、ルビーは頭を抱えてその場で悶え苦しんだ。

 

 改めてこうして見ると、やっぱりフリルは俺のタイプの顔をしていてとても良い。

 

 昔は可愛くて良かったが、今は綺麗って感じ良い。

 

 この子を産んでくれた親御さんには、国宝級の感謝を捧げて恐れ敬いたいくらいだ。

 

 俺をフリルに引き合わせてくれた顔に産んでくれたミヤコにも、勿論それと同じくらいの感謝を捧げる。

 

 グラサンはまぁ………どうでもいいけど。

 

「聞けば聞くほどルッキズム的な出会い方したよな、お前等って。俺も直接顔合わせるのは初めてだが」

 

「お………お兄ちゃんは…………知ってたの…………?」

 

「前にこいつのスマホ見た時に偶々フリルのラインを持ってるのを見て、その時に経緯とか色々と教えてもらった。有馬も似た感じの理由で知ってる」

 

「わ……私だけ………知らない…………。不知火フリルの………ラ……ラインを………クズが…………持ってる……………?」

 

 ルビーはそう言いながら白目を剥きそうになった。

 

 今にも泡を吐いてぶっ倒れそうになっている。

 

「アクア君って『今日あま』に出てたでしょ。苺プロ新人がいいって界隈に上がってて観た。良かった」

 

「…………ありがとう」

 

「かなちゃんのガチ恋顔見たんでしょ。間近で見てどうだった?恋しちゃった?私は恋しそうになった」

 

「………いい演技をしてたとは思う。実際に恋するかどうかは別として」

 

 唐突にフリルは突然アクアに話し掛けた。

 

 基本フリルは自らの興味を最優先して動くので話にあまり脈絡がない事が多い。

 

 アクアは初見でよく対応したと思う。

 

 まぁ今の言葉は本人に言った方が良いと思うが。

 

「あっ……そちらの方はミドジャンの表紙で見た事があります。みなみさんでしたっけ?」

 

「は、はいっ!そ、それで、聞きたいんですけど………。フリルちゃんと真さんは………恋人同士だったりするんですか?」

 

「ううん、全然。顔はタイプだけど真君って性格が突き抜けてるから。推しの親友ってだけ。そういうところも好きなところだったりするけど」

 

「グハ…………ッ!!」

 

 ルビーは吐血寸前になった。

 

 俺もほぼ同意見で、親友でいたいとは思うが、フリルを恋人にしたいかといえばそうは思わない。

 

 こいつの行動はあまりにも予想外の事が多過ぎる。

 

 そういうところも好きなところの一つだが。

 

「ルビーちゃんは………ごめんなさい。何をしてる方ですか?」

 

「ア……アイドル候補生を………」

 

 殆ど死に体でルビーはどうにか答えた。

  

 だが、フリルがこんなところで止まる訳がない。

 

「アイドル候補生って事は………まだ何もしてないって事?そう。えと………頑張って?」

 

 完璧な死体蹴りでフリルはトドメを刺した。

 

 惚れ惚れするほどの容赦のなさ。

 

 ルビーの意識はそこで途切れた。

 

 目の前が真っ暗になった。

 

「ミヤえもーーん!早く私をアイドルにしてよーーー!!」

 

「急かさないで………。アイドルグループ作ります、スカウトも出来ました、即刻アイドル活動開始って訳にもいかないの。各所に宣伝をしたり、どういった形で売り出していくか決めたり、当面の目標を定めたりとかの段階が必要なの。少しずつ進めてるからもう少し待ってて」

 

「でもこのままじゃ……!このままじゃ一生あのクズの妹って扱いのまま!私だけ仲間外れ!そんなの嫌だ!!」

 

「あんた………ルビーに何したのよ?」

 

「何もしてない。ただの冤罪だ」

 

 学校が終わって直ぐにルビーはミヤコにすり寄って大泣きして、幼い駄々っ子のようにアイドルをやりたいとひたすらゴネた。

 

 俺はミヤコにジト目で見つめられるが、本当に無罪なのでどうしようもない。

 

 強いて言えば、こいつがフリルに対して勝手に脳を散々焼かれるのが悪い。

 

「あははははは。世の中全部生まれで決まるのよ。私は所詮負け組よ。ただの敗残兵。あの重装甲に負けたの。私の紙装甲じゃ勝目無しってね。笑いたきゃ笑いなさい。惨めなこの体を」

 

「笑えねーよ。普通に怖いわ。さっきから一体何の話してるんだ」

 

 エゴサをした結果自己肯定感が大暴落したらしく、ネガティブモードが悪化して有馬はぶっ壊れていた。

 

 授業の時間が終わっても教室から出てこないので、様子を見に行った時には既にこうなっていた。

 

 偶然にもこいつの開きぱっなしのスマホの画面を見たところ、検索履歴には『有馬かな』『胸』というワードが多数残されていた。

 

 どうしてこいつは………自ら傷つく道をわざわざ選んでしまうのだろうか。

 

「どうやって収拾をつける?苺プロの新生アイドルグループ、活動を始める前に勝手に自滅したぞ。最早勝負する以前の問題だ。土俵にすら立ててないぞ」

 

 片方は幼児退行。もう片方は精神崩壊。

 

 言葉にすると本当に酷い。

 

「時間が解決するのを待つしかないだろ。何より俺はお前のマネージャーであって、もう有馬専属のマネージャーじゃない。こいつ等のマネージャーはミヤコだ。手が空いた時にフォローはするが今はそうじゃないしな。主にお前が持ち込んだ仕事のせいで」

 

 本格的に苺プロダクションのアイドル部門復活計画が始まりつつある事で、当初からの予定通り俺は有馬の専属マネージャーを降りてアクアのマネージャーとなり、B小町のマネージャー経験があるミヤコにルビーと有馬のマネージャーを任せる運びとなった。

 

 有馬かなというビックネームを使えなくなったのは痛いが、今はこいつから目を離す事はできない。

 

 自らの勝手でドラマ出演をした挙句、俺の目が少し離れた隙を突いて、アイのことを知る為とはいえ、鏑木プロデューサーに対して取引をするというとんでもない事をしたのだ。

 

 これ以上、アクアが復讐に身を落とす事だけは………何としても防がなくてはならない。

 

「アクアの次の仕事って一体なに?今度は何するの」

 

「ん……あるにはあるよ。ねぇ、アクア?」

 

「ん?何か渋い顔。しかも真やミヤコさんまでそんな顔するなんて珍しい」

 

 どうにか喋れるぐらいにまで回復した有馬はアクアの次の仕事を聞くが、アクア以外の全員が顔を背けてとても渋い顔をした。

 

 本当に………こいつは間が悪すぎる。

 

「これが例の次の仕事。一応言っておくと見ない方がお前の為だ。絶対に後悔する」

 

「何よその脅し文句。どれどれ………って、えっ?………アクアが恋愛。真まで……企画に参加………?

 

 手渡したタブレットに映っていたのは、俺とアクアを含め計7人の男女で撮った写真であり『今からガチ恋始めます』と横にデカデカと書かれていた。

 

 有馬の目から光が消えた。

 

 そしてその直後、頭を軽く押さえる仕草をした後、有馬は白目を剥いてソファーにぶっ倒れた。

 

 だから後悔するって忠告したのに………。

 

 

  

 

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