転移して田舎でスローライフをおくれない   作:やません

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原作にない要素が多々含まれます。
伏線回です。


12 エルナ母さんの魔法講座

 母さんがとってきた本には『魔法属性 初級』と書かれていた。昔読まされたことがあるような……気がする。

 ……やっぱり覚えがない。本当にこんな本読んだかしら?

 

「顔に『こんな本読んだかしら?』って書いてあるわよ。まったくもう……」

 

 表紙に書かれた謎の魔法陣を見つめていると、母さんに鼻をツンと指された。考えていたことを当てられ、少しだけ調子が悪くなる。

 ……考えていることがバレてちゃ、母さんには一生勝てないわね。訓練でなんとかなるかしら。

 

 なんて考えていると、目の前で本の表紙が開かれる。最初のページの左側には火、水、風、土の絵と変なグルグルマークが書かれていた。多分最後のグルグルマークは無属性を表しているのだろう。

 

「この世のあらゆる物には少なからず魔力が宿っていて、必ずこの5つの属性のどれかを持った魔力に分類されるわ。水には水属性の魔力、地面には土属性の魔力、人間の体にはその人の適正によって流れる魔力が異なるの。そして魔力を放出すると属性に応じた効果が魔法として現れる……ここまでは大丈夫?」

「……」

「……はぁ。それじゃあ、各属性について簡単に説明するわね」

 

 母さんがため息をつきながらページをめくる。次のページには火属性について書かれていた。

 

「火属性は『発火』と『熱操作』関係の魔法が発動するわ。発火で火をつけて、熱操作で炎の温度を変える。熱操作の技量が増すと燃え続けたり、爆発したり……攻撃性が増すわ」

「うんうん」

 

「水属性は『水生成』『状態変化』ね。この状態変化がいわゆる氷魔法、水属性は水の温度に関してだけ火属性魔法を使わずに変えることができるわ。そのかわり修得がすごく難しいけど」

「う、うんうん」

 

「その逆で風属性は『空気生成』『気圧操作』の2つを極めれば風魔法は完璧といってもいいわね。応用として『音』なんて魔法もあるけど、これを使う魔法使いはほとんどいないわ」

「う……ん……」

 

「土属性は『土生成』『物質変化』。生成した土に限り土の状態を変えることができるわ。鉄のように固くしたり、粘土のように柔らかくしたり。戦闘には関係ないけど、土の栄養素をあげることもできるわ。かなり自由度が高い魔法ね」

「………ぅぁ」

 

「最後に無属性。これは『念』と『操作』って言って、学者によって呼び方が一番異なる魔法ね。念は目に見えない力場を作り出す魔法、操作はあらゆる物質を動かす魔法。一見似ている様だけれど、念はシールドみたいに触れることができて、操作には触れることはできないわ。他の4属性で出来ない魔法はだいたい無属性で出来るわね」

「…………」

 

「これらの5つの属性の魔力は人間に流すことであらゆる効果を及ぼすことも確認されているわ。火属性の魔力なら筋力向上、水属性なら回復、風属性なら俊敏力、土属性なら防御力、無属性は特別で精神に影響を及ぼすわ。これも無属性だけ特別に見えるかもしれないけど、他の属性も同じように情熱的になったり、非情になったり、冷静になったり、頑固になったり……いろいろと精神影響を与えたりすることも注意が必要ね。回復魔法で瀕死状態からよみがえった人間が以前と異なる性格をしているなんて事件もよくあるわ」

「ーーーー」

 

「さらに異なる魔法の組み合わせによって雷なんかの複合魔法も使えるわ。といってもこれに関しては数百年前の筆頭応急魔術師が晩年になってようやく作り出したもので、未だに使える者はいないとされるわ。そもそも雷の仕組みも解明されていないし、科学屋と魔術師は仲が悪いせいで有益な情報交換もされないのも問題ね。それでも研究者によれば雷魔法は単一の方法によって生み出されるものではなく、いろんな方法で再現できるという考えもあって、熱操作魔法と状態変化魔法による『熱の雷化法』、物質変化魔法と操作魔法による『雷生成法』。それと属性は5つではなく雷を加えた『六属性説』なんて考え方もあるけど……最後の説はあまり信じる必要はないわ。科学屋が結構な確率で提唱する説だけど、あいつらって魔法使えないのに魔法に口だしてくるし、そのくせ魔法使いをズルだとか卑怯者だとか卑下しまくるし、なぜか金持ちも多くて魔法素材や魔道具なんかが値上がりするのもあいつらのせいだし──」

「………………ぁ………………」

 

 

●●●●●

 

 

 いつの間にか机の上には『魔法属性 上級』『複合属性と近代魔術師のあゆみ』『スッゲマホ・ツカイーノの魔法独学』と様々な本が広げられ、母さんは笑顔で魔法うんちくを垂れ流している。もはや自分の娘に魔法を教えることなんて忘れてしまったのではないだろうか。

 

「──特に無属性に関しては使い手が少ないこともあって、未だに解明できていない謎も多いわ。古い文献には『無属性の魔力で亜空間を開き~~』って言葉がたまに見られるんだけど、誰もその亜空間を開いたことはないわ。説によっては『亜空間の知識が足りずアクセスできない』って人もいれば『そもそもの魔法の技量が足りない』『亜空間は嘘、無属性の幻覚を見た人の戯言』『海の底に亜空間を開いたせいで亜空間の容量がなくなってしまった』なんて説を唱える人もいるわ。この魔法さえあれば離れた所を一瞬で移動することも可能とされて、これまでのインフラ問題が全て解決──」

「あぅあぅあぅ~~……えっ!?一瞬で移動!?」

 

 机に顎を預けてだらけていると、母さんの口から聞き逃せない言葉が聞こえてきた。

 

 ……忘れていた。そういえば最初の目的はアルに勝つことじゃなくて、隠していた魔法を使わせることだった。

 離れている所に一瞬で移動する魔法。キッカで裏路地に感じたアルの気配やこの前の謎の魔法、そしてやけに多いアルとのすれ違い。アルの謎が全てそれで解決してしまう。まるで頭を打たれたような衝撃にクラクラしてきた。

 

「母さん!その……一瞬で移動するって魔法についてもう少し詳しく教えて!」

「あら?エリノラもやっぱり古代魔法が気になるのね。それじゃあまずは歴代最強にして最古の魔法使いとされるアトリビュート・ゼロの出自から説明する必要があるわね」

「え?いや、その魔法だけで……」

「いいのよ!シルヴィオはあまり関心示さないし、アルは話してる途中でどっか行っちゃうし、ノルドに説明するなんて恥ずかしくてできないし……とにかく、付き合ってもらうわよ!」

「あ、ハイ……」

 

 もうしばらく続きそうだ。と思いながら私は静かにため息をついた。

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