『あまり話が見えてこないんだけど……』
『消えたのよ!こう……お父さんが本気出したときの剣筋みたいに、ヒュン、スッ……って!で、気が付いたらいなくなってたの!』
風魔法によって遠く離れた屋敷から俺のもとへエリノラ姉さんとシルヴィオ兄さんの声が届けられる。エリノラ姉さんはどうにか説明しようとしているようだが、うまく伝わっていないようだ。
そりゃあいきなり「弟が消えた!」なんて言っても伝わらないだろう。
それにしてもエリノラ姉さんは何がしたいのだろうか。てっきり「いままで隠していたことを後悔させてあげるわ!」みたいな感じで俺を探しているのだと思っていたのだが。
『もしかしたらゴーストとか、カミカクシってやつに襲われたのかも……』
……ひょっとして、転移能力がバレてないのか?
たしかに何も知らない人からすれば、目の前で人が消えた=転移能力を持っているとはすぐに結びつかない。それよりかは白昼の幽霊の
仕業とかの方が受け入れやすいのだろう……だろうか?
だとすれば……まだ巻き返せるかもしれない。
『それはないんじゃないかな。だってうちには父さんがいるし、そんな邪な魔物なんて屋敷どころか領地に近づく事もできないんじゃないかな』
『……それもそうね。だとしたらどういうことよ』
『ただの見間違いか、それともアルの魔法じゃないかな』
どうやら魔物の仕業説は否定されたようだ。さすがの僕も「ゴーストに連れ去られたけど自力で脱出してきた」なんて言い訳をするつもりはない。辻褄合わせや証拠作りとか面倒くさいし、何より心配させるのはあまり好きじゃない。
それにもし本当のゴーストが出たときにあてにされても困る。
で、あればだ。僕が目の前で消えたのは僕の魔法のせいとして片付けるのが一番楽だろう。それなら無属性魔法のライトで自分の幻を作ってただとか、土魔法で自分の人形を作ってたとか色々言い訳が思いつく。
うん、そうしよう。
『アルの魔法……って言うことはっ!』
「!?」
どうやって魔法で誤魔化そうかと思考していると、いきなりエリノラ姉さんがこちらに視界を向けた。驚いた僕は思い切り体を伏せ、地面と同化する。
まずい、エリノラ姉さんのパニックが解けたことで感覚が鋭敏となったようだ。このまま遠くから見ていればそのうちバレてしまうだろう。
……よし、さっさと森の奥に篭ろう。そしてエリノラ姉さんを騙せるような魔法を完成させるのだ。
頭の中で山の奥をイメージする。無駄に徒歩で行く必要もないし、エリノラ姉さんには勘違いだったってことで納得してもらおう。
次の瞬間、視界が切り替わり──
『……また消えた』
『え?何が?』
『今さっきまであそこからこっちを見ていたのに、また消えたのよ』
『もしかしてアルがあそこにいたの?』
『間違いないわ。だとしたらベッドの上から消えたのも本物のアルね』
『覚悟してなさい……あたしに隠していたことを後悔させてあげるわ……!』