転移して田舎でスローライフをおくれない   作:やません

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8 威力実証

 それからルンバの晩飯を作り置きし、屋敷に帰ってきた。

 

 ……エリノラ姉さんの靴がない。どうやらエリノラ姉さんはまだ帰ってきていないようだし、今のうちにバルトロに使い方を教えよう。

 

 

●●●●●

 

 

 ふふふ……どうやら気付かれていないようね。

 魔物退治を早めに切り上げて、潜伏しておいた甲斐があったわ。

 

 私に見られているとも知らずに、アルは呑気に廊下を歩いている。時たま振り返ったり、周囲を見渡したり、耳を済ませているようだけど、そんなんじゃ見つからないわよ。

 ……にしても、雪兎と同じくらい警戒心が強いわね。屋敷の中で何を警戒しているのかしら。

 

 あと、アルの横に浮かんでいる黒いのは何かしら?

 盾……にしても持ち手が変なところにあるし、新しい玩具かもしれないわね。

 

 アルが進むと同時に私も追いかける。やがてアルは厨房に入っていった。

 

「ん、どうした坊主……って、なんだそりゃ」

「中華鍋だよ。新しい調理道具で、一度に大量の食材を調理できるんだ」

「へ~、なるほど。熱伝導が高い素材で作られているな。全く新しい料理にも挑戦できそうだ」

 

 どうやら、あの黒いのは鍋らしい。前に使った土鍋よりもずいぶんと大きくて扱いづらそうだ。

 けれど、頭の中であの黒い鍋で食べる鍋料理を考えると、不思議とおなかが空いてくる。

 

「これだけで焼き、炒め、揚げ、煮、蒸し、スープ、煎り、焚き、再炒め……いろんな調理方法に使えるんだ」

「……ちょっと貸してくれ」

「いいよ。あ、使う前にじっくりと油を十分に加熱する必要があって……」

 

 するとバルトロが野菜を炒め始めた。一瞬「野菜か……」と残念に思ったが、味噌を入れた瞬間厨房に強烈な味噌の香りが充満した。

 ぐ……なんていい匂いなの……!

 

「よし、にんじんとキャベツだけの野菜味噌炒めだ!」

「わ~、中華鍋で作るとまた一段とすごいね」

「ちょっと振り方と混ぜ方にコツがいるが、使いこなせれば一段と調理が楽になるな。さて、さっそく味見を……」

 

 グ~~~……

 

「「「……」」」

 

 厨房に腹の音が鳴り響く。アルとバルトロが目を見合わせ、ゆっくりとこちらに視線を動かす。

 天井に張り付いていた私と二人の目が合った。

 玄関からここまで、アルに気付かれないように移動してきたけど、まさかおなかの音でばれるなんて……

 

「……エリノラ姉さん、何してるの?」

「こ、これは……訓練よ!」

「あ~なんだ、嬢ちゃんも食うか?」

 

 私が言い訳すると、バルトロが味噌炒めを私に差し出してきた。

 

 

 

 肉なしの野菜炒めだったが、かなり美味しかった。

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