足が棒になりそうな道のりを二十分程歩き、私たちは新一の家の前に辿り着く。
その場所で私たちに立ち塞がったのは、鉄製の門扉。高校生の体なら楽に開けることもできるけれど、小さなこの体では手を伸ばしたとしても届かない。
何とか門扉を開ける方法を考えていると、突然、隣の家から爆音が響く。
その音を聞きつけ現場へと向かうと、白煙の中から白鬚に太った体型の男が出て来た。
私たちは目の前に現れた知り合いの名前を揃えて口にする。
「阿笠博士!」
個性豊かな発明品を作る阿笠博士だったら、私たちの体を元に戻す薬を作ることができるかもしれない。
私は藁をもすがる思いで、博士に駆け寄る。新一も同じ考えのようで、私たちは博士に事実を打ち明ける。
だけど、阿笠博士は、私たちの話を信じない。突然現れた見覚えのない小さな子供の話を、大人たちは信じない。
変な薬を飲まされて、小学生になったなんて、誰も信じるわけがないんだ。
これから、どうしたらいいんだろう?
頼りになるのは、私と同じように小さくなった新一しかいない。
だけど、お互いに見た目は小学生だから、何もできないんだ。
不安になっていると、隣にいた新一が私の右肩を優しく叩き、阿笠博士に推理を伝えた。
「博士。あなたはさっき、レストランコロンボから帰ってきましたね?」
直前の行動を言い当てられ、阿笠博士は驚き、目を見開く。
「どうしてそれを……」
阿笠博士が尋ねると、新一は推理の根拠を伝えていく。
「博士の服ですよ。前の方が濡れた痕がないけど、後ろはそれがない。雨の中走ってきた証拠です。それにズボンに泥が跳ねている。この近辺で泥が跳ねる道路は工事中のレストランコロンボの前だけ……」
その新一の推理に阿笠博士は図星だったかのように驚く。
そして、阿笠博士は納得したのか、急に目を丸くする。
「まさか。本当に新一君と蘭君なのか。まだ信じられんが、とりあえず話は中でゆっくり聞こう」
阿笠博士は疑いの目を私たちに向けつつ、新一の家へと私たちを招き入れた。
なんとか新一の家に入ることができた私が、玄関先でブカブカになった靴を脱ぐと、同じように靴を脱いだ新一が私に声をかける。
「蘭。手当が終わったら、適当に服を選んで、風呂場に行って、シャワーを浴びて来い。俺は書斎で博士に詳しい事情を説明するから」
「うん」
私が小さく頷くと、阿笠博士が救急箱を持ち、私たちの前に姿を現す。
そうして私たちは、玄関先で手当を受けた。私たちの頭に包帯が丁寧に巻かれ、傷口が止血されていく。
一分ほどで手当てが終わり、私は二階にある新一の部屋へと足を進めた。
私は新一の部屋のクローゼットを開ける。その中にある洋服タンスの棚、丁寧に『小学一年生』というようなシールが貼られていた。
その棚を開けると、大量の子供服が収納されていた。
どれも小さい頃新一が着ていたものばかりで懐かしい。
私はタンスから適当に長袖Tシャツと長ズボンを取った。
その瞬間、私はハッとした。
ここには男の子の下着しかないんだ。
あの薬を飲まされる前まで着ていた下着は大きすぎて、今の私には適していない。
仕方ないと溜息を吐き出した私は、顔を赤くしたままで、男の子の下着を着替えと一緒に掴み、浴室へと向かう。
それから、浴室へと辿り着いた私は、大きくなった服を洗濯籠に入れ、浴室でシャワーを浴びる。
目の前の鏡に映るのは、小さくなってしまった自分の姿。
これが現実だと思い知りながら、私は汗を洗い流した。
毛利蘭の偽名。まだ決めていない。次回には決めたいと思う。
次回は、感想をくださった方のご指摘を受けて、小五郎さんの所に挨拶に行きます。