新一は私から離れて、黒ずくめの男がよじ登ったという木の前まで歩いている。その時番犬が吠えた。新一は番犬の鳴き声に驚き、木から離れる。
その後で新一は、庭に転がっていたボールでリフティングを始める。
私は新一が考えごとをしている時にリフティングをすることを知っていた。ここは話しかけるべきではないと思った私は小さくなった新一のリフティングを見守る。
五十回ほどリフティングを繰り返した新一は、何かを思いついたかのように、ボールを落とした。
ちょうどその頃、執事が静かに依頼人から離れようとしていた。
その執事に新一が駆け寄り、無邪気に尋ねた。
「どこ行くの?もしかして女の子を隠しているところ?」
その質問を聞き、執事は驚いたように目を見開かせ、沈黙した。
私は改めて新一の顔を見る。その顔は真実を見抜いたように頬を緩ませた表情だった。
それから新一は依頼人に近づく。
「ねえ。この屋敷の番犬って他所の人なら誰でも吠えるみたいだね」
新一が依頼人に尋ねる。
「ウチの番犬は優秀だからね」
新一と依頼人の会話を聞いたお父さんは、何かを思いつく。
その直後、再び執事が静かにお父さんたちから離れようとする。
「どこに行くんですか、麻生さん?」
お父さんがどこかに行こうとする執事を呼び止める。執事はその声を聞き、立ち止まった。
「何か変ですな。あなたが言っていることは。犯人があの木を登って逃げたのなら、番犬が吠えるはずだ。だが後で駆けつけたお手伝いさんは、あなたの叫び声以外何も聞いていない。それに犯人を見たはずのあなたの証言は曖昧だ。そもそも黒ずくめの男なんて最初からいなかったんじゃないですか?」
お父さんの推理を聞き、執事は突然その場に座り込み、土下座した。
「申し訳ございません」
執事が謝ると依頼人にが怒鳴った。
「何のためにこんなことをした。誰かに頼まれたのか」
「これは私が一人でやったことです」
事件はこれで解決するはずだった。この誘拐事件に私と新一を襲った黒ずくめの男は関与していなかったことを知り、私は肩を落とす。
その時、一人のお手伝いさんが受話器を持ち、慌てて依頼人の前に現れた。
「旦那様。大変です。電話に出てください」
お手伝いさんが依頼人に受話器を渡す。
『三億円は用意できたかな?』
このような声が受話器から漏れて、依頼人は目を大きく見開いた。
「誰だ。お前は」
依頼人の大声が屋敷中に響く。
事件はまだ終わっていなかった。
私の隣で新一は、険しい顔つきになる。
前回より短くなったかな?
一部原作の描写を割愛したけどね。
案外近日中に改稿するかも。
あれ?
今回は蘭ちゃんのセリフがなかったような。
そもそも前回もあったっけ?
これでいいのだろうか?