かなり駆け足だけどね。
原作改変ありですが、よろしくお願いします。
二ツ橋中学校の校門は、夜にも関わらず開いている。校門から堂々と潜入する新一の後ろを私は歩いた。
私の目の前を歩く新一は、何かを警戒するように周囲を見渡しながら、倉庫を探していた。
一分程歩くと新一は立ち止まった。その先には体育館の倉庫らしき建物がある。しかもその倉庫のドアは少しだけ開いていた。
そのドアの隙間から男の声が聞こえる。
「金は百神井公園のベンチの上に置け」
声は電話から漏れた誘拐犯の物と同じ。監禁場所が目の前にある倉庫だと確信した新一は、静かに倉庫の方向へ歩き出す。
不安になった私は、咄嗟に新一の上着の裾を掴む。
「どうするの?」
「あの倉庫に監禁されている女の子を助ける」
「監禁場所が分かったんだから、このことをお父さんに知らせた方が……」
「そんな時間はない」
「そうやって自ら危険な所に行くから、こんなことになったのよ。今度同じことをやったら死ぬかもしれないのに」
「目の前で誘拐された女の子が殺されるかもしれない。それでも……」
新一は何かを言いかけ、目を大きく見開く。気がついたら私たちの前に緑色の帽子をかぶった長身の男が金属バッドを持って立っていた。
「ガキども。どこで誘拐のことを知ったかは知らないが、ただでは帰さない」
興奮している男は私たちに向かい、金属バッドを振り下ろした。
私はそれを受け止めて、男の軸足を蹴ろうと思い、新一の前に立った。
だけど私にはそれができなかった。何とか受け止めた瞬間、体全体に痛みが走り、私は金属バッドから手を離した。そのあとで金属バッドが私の頭に直撃する。
頭を殴られた衝撃に耐えることができず、私はその場に倒れた。
立ち上がろうと目を開けると、新一が男の足を蹴っていた。だけど男はビクともしない。
頭から血を流しながら立ち上がった私は、男の前に駆け寄り、誘拐犯の軸足を蹴る。
思い切り蹴ったつもりだったのに、男は痛がる素振りを見せない。
この瞬間私は理解した。幼児化によって体力や筋力までもが年相応な物になっていることに。
高校生の私だったら、楽に誘拐犯を制圧できたと思う。しかし弱い子供になってしまった私にはそれができない。
「クソガキ」
男は絶望感で一歩も動けなくなった私に対して容赦なく金属バッドを振り下ろす。
その瞬間新一は私を突き飛ばした。私を庇った新一は何もできず男に殴られる。
「バカなガキだ。自ら殴られにくるとは。どこのガキだか知らないが、何人殺しても変わらない」
黒ずくめの男たちに襲われた時と同じ。何もできない私は、また新一が殺される瞬間を見せられる。
それが嫌で新一と行動を共にしたのに。
一瞬このまま新一と一緒に死ねるのなら良かったという考えが頭を過ぎる。
金属バッドが風をきる音が聞こえる。このまま殴り殺されると感じながら、静かに瞳を閉じると、何かが壁に激突する音が聞こえた。
瞳を開けると誘拐犯がなぜか頭に大きなたんこぶを作り気絶していた。
「俺の娘かもしれない女の子を傷つけるなんて許さん」
呆然と立ち尽くす私も前には、お父さんが立っていた。
「お父さん。どうして……」
目を丸くして尋ねるとお父さんは、血塗れになった私の顔をハンカチで拭く。
「直感でここにやってきたんだ」
「直感かよ」
新一が起き上がりながら呟く。その後でお父さんは倉庫へ視線を移した。
「あそこから依頼人のお嬢さんを助けないとな。お前らはそこで待ってろ」
お父さんは倉庫の中から縛られたお嬢さんを助け出した。
その後でお父さんが警察に通報して、誘拐犯の身柄を引き渡す。
それから私たちはお屋敷に戻り、手当を受けた。その最中お嬢さんは、依頼人に真実を告げていた。
「この誘拐事件を考えたのは晶子よ。パパはいつも仕事ばかりで晶子にかまってくれないから麻生さんに頼んで誘拐事件を起こしたの。パパの会社が休みになったら一緒に遊んでもらえると思ったから」
依頼人の娘さんの告白を聞きながら私は同じように手当を受けている新一の横顔を見た。
いつもなら事件を解決して喜んでいるはずなのに、今の新一の顔は深刻な物になっていた。
偽名決めずにここまでやってきたけど、そろそろ限界ですね。
次回までに決めます。