ファンタジー世界にTS転生したけど、自分だけ世界観なんか違くない?   作:ソマー

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1 魔法少女、大地に立つ

 転生というのは、オタク的にはワクワクたっぷりの単語だと思う。

 つまらない人生を送っている今から抜け出して、新しい人生をやり直す。

 そうすれば、きっと自分は上手くいく。

 しかも、生まれ変わった先が美少女だったりしたら。

 

 いわゆる、TS転生というやつをしてしまったら、それはもうワクワクも二倍だ。

 

 TS転生の主人公は性別が変わってしまったことにショックを覚えるタイプが多いけど。

 でも実際にオタクがTSして美少女になったら、それは普通に嬉しいことじゃないか?

 男と恋愛とかは避けたいと思うかも知れないが、美少女になってチヤホヤされたいって感情自体は共感を得られるはずだ。

 少なくとも”私”はそうだ。

 

 というか、気がついたら転生していて眼の前に美しい少女の顔があることに気付いた時。

 それはもう言葉にできない興奮のようなものを覚えたことを、今でも覚えている。

 当時はまだ物心がついたばかりだったけど、それでもこの子は――”私”は将来間違いなく美少女になると確信できるものだったから。

 

 生まれ落ちた世界は、スキルとステータス、それからレベルの存在するライトなファンタジー世界。

 どれくらいライトかって言えば、風呂とか普通に入れるし食事も現代並に美味しい。

 こりゃあもう、人生イージーモード確定みたいなものですよね。

 こんなにもイージーな世界に生まれたのだ、きっと自分にはとんでもないチートが眠っているに違いない。

 それさえあれば、もう前世みたいな社畜生活を送ることもない。

 前世とは真逆のバラ色の人生が待っているのだと、私は期待に胸を膨らませた。

 

 そして、チートはあった。

 確かにあった。

 私だけのチート――ユニークスキルと呼ばれるものが。

 名前の通り、他人とは違う自分だけの特別なスキルだ。

 が、しかし。

 ここで一つ問題が発生した。

 

 なんというかこのスキル――違ったのだ。

 こう、色々と。

 あれや、これやが。

 

 あえて端的に言うなら――

 

 

 世界観が、違ったのである。

 

 

 +

 

 

 その日、私は生まれて始めて冒険者ギルドに足を踏み入れた。

 冒険者ギルド、異世界の定番にして王道。

 そこで冒険者になり依頼をこなすことで成り上がっていくのは、異世界転生のスタンダードと言っても過言ではない。

 

 そんな冒険者ギルドへ、私はついにやってきたのである。

 

 この世界に生まれ落ちてから早十五年。

 ついに、冒険者ギルドに、やってきたのだ!

 いやあ興奮するね、なにせ冒険者だぞ? 異世界に来たのに冒険者にならないとか転生者を舐めてる。

 いやまぁ、世の中には貴族に転生したりしてNAISEIで忙しい転生者もいるだろうけどさ。

 まぁ、チートを持って生まれるのが転生者ならこの世界の転生者はほぼ間違いなく冒険者になるけど。

 仮に生まれが王族だったとしても、ね。

 

 いや、そんなことより。

 まずは冒険者登録だ、ここに来るまでひじょーに長旅だったから、さっさと終わらせて今日は休みたい。

 宿は取ってあるし荷物も置いてあるけど、冒険者登録だけは今日中に済ませたかったからそのままでてきてしまった。

 今は興奮で疲れも気にならないけど、さっさと休んで明日に備えるのが吉である。

 まぁ、今の私は前世とは比べ物にならないくらいタフだけどね。

 

 こほん。

 

「すいません、冒険者登録したいんですが」

「あーはいはい。この用紙に名前とか記入して、また持ってきて。わからないことがあったら近くの職員に聞いていいから」

 

 受付のお兄さん――お姉さんでもおっさんでもない、テンプレだとギルドの受付はきれいなお姉さんかむくつけきおっさんなんだけどな――が案内してくれた。

 私は案内された場所で、書類に色々と記入していく。

 しかしこれ、アレだな。

 役所だな、前世の。

 

 まぁ、今の時期は新人冒険者が大挙して押し寄せてくる時期だ。

 私もその一人なわけだから、特別扱いを求めてもしょうがない。

 画一されたお役所仕事で、ささっと冒険者になるとしよう。

 と思いながら、名前、年齢、性別、出身地、希望するジョブ、他いろいろを書き込んでいって――

 

「……スキル、スキルかぁ」

 

 書類のある部分で手が止まる。

 スキル、この世界において冒険者になるうえで最も重要な部分だろう。

 これがないと、人間はまともに魔物と戦えないんだから。

 魔術を使うにも、その魔術に対応したスキルがないと行けないし。

 とはいえ、私が持っているスキルは一つである。

 スキルは鍛錬や勉学で”習得”することができるとはいえ、生まれつきスキルを複数持っている者も多い。

 一般的に、スキル一つというのは冒険者になるうえでは”非常に少ない”部類に入る。

 まぁ、そのスキルがユニークスキルであれば一つしかなくてもお釣りが来るくらいだし、中にはそのユニークスキルのせいで他のスキルを習得できないなんてこともあるしな。

 実際私もその類だ。

 とはいえ――

 

「…………()()()()()()

 

 書きたくねえ!

 私のスキルを、バカ正直に書類へ書きたくねぇ!

 いやだって、絶対に変な目で見られるんだもの!

 なんだコイツって思われるんだもの!

 それだったらいっそ、書かない方がマシ!

 ここにスキルを書かないと、スキルをもってない無能あつかいされるかもしれないけど。

 もともと私はソロで冒険者になる予定だから、周囲からどう思われても構わない!

 ……の、だが。

 

「あのすいません……スキルって書かなくちゃだめですか?」

「所持していない場合は書く必要はないよ。複数所持している場合は、全てを書く必要はなし。必要だと思うものだけ書いてね」

「……スキル一つしかないんですけど」

「その場合は、そのスキルを書類に記入するのが規則……」

 

 と、そこで何かに気づいた様子で話しかけたお兄さんがハッとする。

 何だ何だ。

 

「……失礼だけど君、もしかしてユニークスキル持ち?」

「そうですけど、どうしてわかったんですか?」

「冒険者の方でスキルを一つしか習得していないという方は、非常に珍しいんだ。スキルの少なさはそのまま冒険者としての素質の低さだから」

「一つしかないのに冒険者になる人間は、ユニークスキルのせいで他のスキルを取得できない人間が多い?」

 

 そうだね、と頷くお兄さん。

 なるほどなー、と思いつつ。

 そこは本題ではないんだろう。

 

「で、ユニークスキルというのは非常に珍しいスキルだから、名前だけだと効果がわからない場合が多い」

「はい」

「――だから、もしそれがユニークスキルなら、この場で披露するのがギルドの規則なんだよ」

「はい。――――はい?」

 

 いやいやまってまって。

 おかしくないその規則!

 

「昔、よくわからないユニークスキル持ちが冒険者になりたいっていい出してね。よくわからないスキルしかもってない人間を危険な冒険者にはできないって話になったんだ」

「はあ……」

「で、じゃあ今ここで披露するからって冒険者がユニークスキルを披露した結果――」

「結果……?」

「それが話題になって、冒険者登録が増えた。だからユニークスキルのお披露目は冒険者を集める効果があるってことで規則になってるの」

「その規則、今すぐ投げ捨てていいんじゃないですかね!?」

 

 思ったよりクソみたいな理由で規則になってた!

 っていうか、きっとその冒険者って転生者だろ!

 この世界に過去何人か転生者が来た痕跡があるの知ってるんだぞ!

 

「まぁまぁ、これも規則だから」

「この人、規則でゴリ押しするつもりだ――!」

 

 はっきり言おう、絶対に見せたくない。

 だってこう、アレなんだぞ?

 いやまて、そもそも私が冒険者になったらスキルを使っての活動が前提になる。

 どうせバレるなら、いっそここで使って最初から周知させたほうがマシか?

 ……うん、そうだな。

 転生者はインパクトが第一とも言うしね。

 解った見せるー(掌返し)。

 

「もう、しょうがないですね……」

「あ、結構ノリノリで見せてくれるんだね……」

「一回だけですよ!」

 

 そう言って、私はスキルを起動する。

 起動した瞬間、手には一つの杖が出現した。

 一言で言えば、ファンシーでマジカルな杖だ。

 

 

「マジカル☆チェンジ!」

 

 

 その言葉とともに、私の周囲が光に包まれる。

 途端、私の服が下着を除いて消失し、代わりに足や手に手袋やブーツが出現する。

 続けて150あるかないかの小柄な背丈の割にでかい胸にジャケットが。

 それからスカート、最後に金の髪をリボンで束ねて完成だ。

 

 いわゆるそれは――変身パンクと呼ばれるものだ。

 故に光の中から現れるのは――

 

 

「希望の夜明けが未来を拓く! 魔法少女アカネ! ここに推算!」

 

 

 最後に、口からこぼれ出た変身口上で名乗りを上げれば、変身は終了だ。

 ちなみにアカネっていうのは、私の名前。

 かくしてここに――世界観の違う存在。

 

 魔法少女が、爆誕した。

 

 私のスキルの名前は、「魔法少女」。

 ファンタジー極まりない異世界にあって、明らか世界観の違うユニークスキルだ。

 その効果は、魔法少女っぽいことならなんでもできる。

 非常にファジーで、見た目以外は融通の聞くスキルだ。

 その見た目だけが、著しく世界に対して似つかわしくないのだけど。

 

 結果として――

 

「…………」

「…………」

 

 沈黙が、周囲に流れた。

 ポーズを取りながら冷や汗を流す私。

 何あれ……とヒソヒソしている女性陣。

 胸に視線を向けながら何だあの露出狂みたいな話をしている男性陣。

 ああ、想定はしていたけれどやっぱりこういう反応は辛い。

 そしてちょっとだけ、視線を集めたことで優越感。

 ……は、更に集まってきた視線で掻き消えた。

 

「こ、これが……私の……アカネのユニークスキル……『魔法少女』……です」

「あ、ああ……」

 

 ――かくして、この日。

 十五歳の少年少女が成人を迎え、冒険者を志す物がダンジョン街へやってくる時期。

 その中に、場違いなユニークスキルを持つものが現れた。

 

 名を、アカネ。

 スキルの名前は「魔法少女」。

 つまり、私だ。

 

 これはそんな私が、場違いな魔法少女のスキルで無双したりする物語だ。

 ……多分。




世界観はゆるめです、主人公以外の転生者が本編に出ることはないです。
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