ファンタジー世界にTS転生したけど、自分だけ世界観なんか違くない? 作:ソマー
まぁ、ありふれた話なのだけど、私はこの世界の端、開拓村と呼ばれる村で生まれた。
辺境の、人なんて殆どやってこず、同年代の子供も全くいない環境で。
開拓村というだけあって、定期的に……具体的に言うと週一くらいで魔物が襲撃してくる以外は、至って平和な村だ。
その魔物も、大人たちがサクッと倒したり、「魔法少女」のスキルを使えば私でも倒せる程度。
この世界の文明レベルは高く、具体的に言うと辺境の開拓村でも風呂に入れたり、美味しいものが食べれたりするのもあって。
まぁ、特に不自由なく私は成長することができた。
そして十五歳、この世界における成人の年齢になると冒険者になってダンジョンへ潜ることとなった。
なぜわざわざダンジョンに潜るかと言うと、私がそうしたいから――というのもあるが、この世界のシステムも関わってくる。
この世界にはレベル、ステータス、スキルといった一般的なゲーム風異世界に存在するものが概ね揃っている。
だが、この内スキル以外の二つは
理由は後述するが、これもあって冒険者に限らず肉体労働をする人間はダンジョンに潜ってレベルとステータスを上げるのがこの世界の常識。
貴族も王族も、私みたいな辺境の村人も、例外なくダンジョンへ潜るのが普通なのである。
ちなみに、スキルだけはダンジョンの外でも身につけたりすることができる。
これはスキルとは、技術や才能をステータスの上で可視化したものであるからだ。
魔術、剣術、他にも色々、中には鍛冶スキルなんかもスキルとして扱われる。
これらを磨き、鍛え上げることでステータスにスキルとして反映されるのだ。
才能が豊富だと鍛えなくても反映される。
というわけで、私も周囲の大人に負けないレベルを身につけるべく、ダンジョンへやってきたのだ。
……が、その初手で大失敗をかまして周囲から残念な人を見る目で見られることとなるのだけど。
これ、私が悪いのかなぁ。
+
気を取り直して、私はダンジョンへ潜るべくギルドへやってきた。
ダンジョンはギルドが管理しており、入口もギルドにある。
そんなギルドの一画で私は周囲の視線を一身に浴びつつ、今日出来上がったばかりの”ステータスカード”を眺めていた。
「これが私のステータスカードかぁ」
ステータスカード、ギルドに登録した際もらうことのできる、冒険者としての身分証のようなもの。
そこにはレベル、ステータス、そしてスキルが記載されている。
これ、純粋な身分証として使えるだけでなく、名刺としても使える。
冒険者が自身の能力を見せるだけでなく、鍛冶スキルとかを持ってる鍛冶師が、どんなスキルを持っているか相手に教えるためにも使うのだ。
なので、冒険者でなくともとりあえずステータスカードを作る人間は多い。
「そしてスキル欄にデカデカと記載される魔法少女の文字。何もこんなにデカく記載しなくてもいいじゃん!」
TCGでカードのテキスト欄が余ってるから、文字が大きくなってるみたいになってるよ!
ちょっとダサいYO!
ともあれ、そんな魔法少女の私は周囲からそれはもう注目を集めている。
違うんですよ、聞いて下さいよ。
別に集めたくて集めてるわけじゃないんですよ。
女性からは、可哀想……みたいな視線を向けられて。
男性からは、胸に視線を向けられてうお……でっか……みたいに見られて!
いや、普通に衣装が可愛いって思ってくれる人も男女問わずいる感じなんですけどね?
そうじゃない視線のほうが気になるんですよ、悲しい性!
「ええい、今は気にしている場合じゃない。さっさとダンジョンに潜るぞ」
ともあれ、気合を入れ直してダンジョンに向かう。
私に声をかけてくれる冒険者はおらず、ぼっちダンジョン探索となることは確定的だが。
それはそれとして、最初からソロで活動するつもりだったので、めげない、泣かない。
なんでソロかって言えば、私は最終的に故郷に戻って開拓の手伝いをするつもりだからだ。
周囲との付き合いを気にする必要があまりないのである。
それに人付き合いって……面倒だしね……(陰キャの嘆き)。
「で、ここからダンジョンに向かうわけだ」
寂しさに耐えかねてぶつぶつ独り言をこぼしつつ、私はダンジョンの入口に立つ。
入口は、宙に浮かぶクリスタルだ。
ゲームとかによくあるやつ。
それに手をかざすと、ダンジョンに入場できるというわけ。
さっそく私は、ダンジョンに入った。
「んー、オーソドックス」
視界に映るのは、レンガ造りの迷宮だった。
ダンジョンといえばまさしくこれ、みたいな作りである。
とはいえ、油断は禁物。
いきなり魔物が襲ってこないとも限らない。
早速私はスキルを起動して、あるものを呼び出す。
一つはステッキ、これがないと変身できないんだ。
早速、ステッキをふって変身を済ませる。
この間、結構隙だらけで危険じゃない? と思うかもしれないけど大丈夫。
私は魔法少女だから。
「希望の夜明けが未来を拓く! 魔法少女アカネ! ここに推算!」
自分が開拓村の出身であることに由来する前口上を口にしつつ、変身。
次に呼び出すのは――魔法少女特有のアレだ。
「来て、マップル」
『やーっとよばれたっシュ』
現れたのは、りんごみたいな形をしたマスコット。
名前はマップル。
「早速だけどマップル、色々よろしく」
『アカリはマスコット使いが荒いッシュ』
マップルは便利だ、開拓村では特に大活躍だった。
具体的にできることを言うと、周囲の気配探知、宝箱とかの探知。
そして一番大きいのが――マッピング。
マップルが自動でマッピングをしてくれて、ナビゲートまでしてくれる。
非常に便利なやつなのだ。
名前の由来も、マップとアップルをかけたものである。
他にはマジカルとかマスコットとか、まぁ色々。
『近くにモンスターはいないッシュ。宝箱は近くにありそうッシュ』
「助かるよ。とりあえずしばらくは適当に歩くから、何かあったらよろしくね」
『了解ッシュ』
なんて話をしながら、歩き出す。
ぶっちゃけ探索はマップル任せだから、私がやることは出てきた魔物を倒すだけ。
非常に簡単なお仕事だ。
あと、マップルがいるおかげでソロでも何ら心配がいらないのもある。
「なんというか、気配がおとなしいね。流石に初心者向けダンジョンの第一階層だからか、あんまり魔物が殺気立ってる感じがしない」
『開拓村と一緒にしちゃダメッシュ。油断もダメッシュよ』
「はいはい。そういえばマップル、冒険者ってランキング制度があるって知ってる?」
『知らないッシュ。なんでそんなものがあるッシュ?』
「冒険者ギルドを作った人が、エンタメ性とか競争心をあおるために用意したんだって」
絶対その人転生者だよ。
創作とかで、肩書にランキング何位とかあると興奮するタイプのオタクだよ。
私は詳しいんだ。
「個人的には、そこそこ上位を目指したいね。開拓村の代表として」
『マップルはランキングより身だしなみを気にしてほしいッシュ。何もしなくても顔がいいからって、アカリは横着しすぎッシュ』
「外からわからなければいいでしょ、ちゃんとマップルが見れくれてるから私は大丈夫だって」
さて、そんなマップルだが、見ての通りお節介焼きだ。
私の女子力をやたらと気にしてくる。
とはいえ、元男性の私からすると、女性の化粧とかおしゃれとかさっぱりわからんからね。
そういうところをジャッジしてくれるのは素直にありがたい。
なのでまぁ、効率よくマップルアドバイスを活用していくのが吉だ。
さて、そんなことを話ながら歩いていると――
「いや――――!」
ふと、少女の悲鳴が遠くから聞こえた。
私の魔法少女スキルが、他者のピンチを聞き取ったのだ。
「マップル!」
『解ってるッシュ! こっちッシュ!』
魔法少女スキルには、変身して戦ったりマスコットを呼び出したりすることの他に、困っている人を遠くからでも見つけることのできる能力がある。
ただ、その人を助けるかどうかは、私の自由だ。
無視したって、マップルが咎めるくらいで誰も文句を言ったりはしない。
それでも、基本的に困っている人がいたら助けるようにしている。
それができる力があって、助けたほうが達成感を得られるからだ。
というわけで私は、今日も魔法少女らしいことをするために、声のした方向へ急ぐのだった。
魔法少女なので人助けは嗜みです。