「お待たせしました。大丈夫ですか?」
場所はエルガドから少し離れた森の中。
比較的人里が近い場所で傀異化したモンスターが現れたとの連絡を受け、
今先程、狩猟を終えたところである。
近隣の住人に万が一、怪我人や病人がいた時の為にタドリさんも
同行してくれたが、様子を見ると大事はなさそうだ。
「ええ、住人の皆様も異常は確認されませんでした。また狩猟も迅速で…
流石は猛き炎ですね」
「やめてくださいよ、気恥ずかしい。コウヅキでお願いします」
里のみんなからは『猛き炎』と呼ばれているが本当に気恥しいのである。
もう間もなく生まれて20年になろうという歳だが、二つ名に憧れていた時には、
頂けず年頃の病が落ち着いた所で二つ名を賜ったのはなんとも言えないむず痒さがある
「わかりました。コウヅキ殿」
この人は本当に人間が出来ている。人間ていうか竜人族なんだけどヒノエさんみたいに団子欲バグってないし、ミノトさんみたいに姉様至上主義じゃないしカゲロウさんは見た目がアレだしバハリさんは説明不要だ。一緒にいてこれほど安心できる竜人の人はそういない。うん素晴らしい
「ところでコウヅキ殿…もう日も落ち移動は危険です。よければ今夜はキャンプで
過ごし日の出から帰還しようと思いますが」
ハンター生活していると身の危険などそうそうなく大抵のモンスターはやりすごせるがタドリさんがいる以上、そうもいかない。
「そう…ですね。じゃこの辺りで食事でもして早めに休みますか!」
気を緩めた途端、急に腹が減ってきた。携帯食料以外の何かを食べたいところだが
「さて…では先にいただきますね」
そう言ってタドリさんが懐から取り出したのは緑色の小さな…草だ。
草を食べた。飲み込んだ。また草を取り出して…食べた
「あの…何食べてるんですか?」
「草ですね。」
「え?草?なにかあの…薬草??」
「いえ、なんの効果も無い草です。薬草は薬にしますので」
「…おいしいんですか?」
「草の味です」
「なんで食べてるんですか?」
「今日はバハリさんのお弁当を忘れましたので」
「弁当ないと次の選択肢が草??…あの…料理とかされない系です?」
「料理と呼べるほどのものではありませんが…」
すっと懐から瓶を取り出してきた。なにそれ
「あの…その手に持たれている禍々しい液体は何ですか?」
「これですか?これはイヌイ汁です」
わからぬ。さっぱりわからぬ。本当に料理と呼べるものじゃない。
何故この人はさも当然のような顔をしているのか
「すいません、えーと俺馬鹿だからかもしれないすけど、
よくわからなくて…イヌイ…汁?ってなんですか?」
「これは私が研究の結果生まれた薬品でして、『イチモクラブの甲殻の粉末』
『ヌリカメの生き血』『イッタンモンシロの鱗粉』とその他数種類の生薬を配合した薬
頭文字を取って【イヌイ汁】と呼んでいます」
駄目なヤツだ。これ駄目なヤツな気がする。データは無いけども駄目な気がするぞ
「あの…料理ってか…薬?え?毒じゃなくてです??」
ゴア・マガラと戦ってる時に見るあのモヤモヤが液化したようなヤツを料理とも、
ましてや薬とも表現するのはなんていうかこう…許しちゃいけないと思う
「はははっ。流石は猛き炎殿。薬も過ぎたるは毒となる…成程。そう言われれば確かにこの薬も毒かもしれませんね」
違う、そうじゃない。俺の言ってる事がキレアジの鱗一枚分も伝わっていない。
というか何がおかしいのか?おかしいのは俺なのか
「わかりました」
「わかっていただけましたか」
「今日のご飯は俺がご馳走します」
そういって俺は肉焼きセットを光の速さで展開した。
「ハンターの料理と言えば狩り場で焼き上げるこんがり肉!
カムラで鍛えた腕前をとくとご覧あれ!」
忘れよう。あの瓶は忘れよう。恐怖を鼻歌でごまかしつつじっくりと肉を焼いていく
額から流れた落ちた嫌な汗はタドリ=常識人という認識と共に炎の中へ消えていった