Infinite Universe 【成層圏を超えろ】 作:MUGEN Χ
某サイトで書いていたものの設定だけを切り取って、あとは完全に作り直しです。
原作なんてなかった。
シリアス分が不足する予定。
恋愛、出来るといいな。
水色と緑の微妙なグラデーションを描く星、地球。
太陽系の環を沿って振り回される地球。この星は銀河最大級の奇跡の星と言っても過言ではない。
ここまで生命体が溢れ返っている星など、広大な銀河でもこの星ぐらいであろう。
太陽との距離、惑星との位置関係、古代に重なり続けた偶然……これらの要素をすべてクリアした星が地球であり、これらの奇跡を体現している生命体こそ、人間である。
高い知能、知的好奇心、複雑な感情。ここまで高度な生命体が、ここまで面倒な生命体が他にいようか。エゴイズムに洗脳され、無益な争いを繰り返し、他の生命体にまで圧迫的な影響を及ぼす人間。ここまで厄介な生命体が他にいようか。
恐竜も恐ろしいだろう。毒蛇も畏怖の対象として祀られている。しかし、何より人間が恐ろしくてたまらないのだ。
珍しく図書室で、何気なく読んでみた本の一節だ。なぜかはわからないが、この一節が頭から離れなかった。別に本の虫でもない。だからこそなぜかがわからなくて仕方なかった。
思えば、この一節は一つの『予言』だったのかもしれない。
これから俺達青少年及び少女達は、社会の荒波にのまれなければならない場面もあるだろう。どれだけ理不尽でも、どれだけ矛盾していても、もしかしたら気づきもせずに、俺達はそれらと付き合わなければならないのかもしれない。
それらに立ち向かうためには、俺達は知識を蓄えなければならない。数学でも文学でもなんでもいい。無駄な知識なんてないはずなのだから。
そして俺、
(人間って、恐ろしい。特に女子)
ここはIS学園。国立の学園では一番の有名どころだ。とある人工島の上に建てられたIS学園は、日本どころか世界的にも注目されている、時代の最先端を先取りする教育機関である。これが過言じゃないから困る。
そんな世界的教育機関の講義堂に俺、というより俺達は居る。空調もばっちり、長い時間待たされているはずなのにみんな辛そうな様子など見受けられない。快適で何より。
施設も真新しいかつ広い。学園が創立されてからまだ間もないのも理由にあるが、やはり管理が行き届いている証拠だろう。
そしてその講義堂を埋める人、人、人……入学式にふさわしい、学園の制服に身を包んだ女子達の顔は、どこか誇らしくも見えてしまう。うらやましい。
やはり圧巻だな。こうも女子ばかりの式典は……ここに俺以外の男子が居ればどれだけ幸せだっただろうか。
そう、俺は今、たった一人の男子生徒としてこの学園に入学してしまうのだ。きっかけは不慮の事故、というか、不注意によるなんとかかんとか。俺もこんな女子の園に突入する気などさらさらなかったのだが、お国から直々に強制されれば仕方ない。ああ、一人の人間はなんとも無力なことか。
ここIS学園は、とある理由で女子しか入学できないはず。そう、そのはずなのだ。教職員に一部男性教員はいるが、それでも教員ですらほとんど女性。男子禁制の女の園、と言えば聞こえはいいか。
そんなところに、たった一人男子である俺が放り出されたのだ。その場合、どんな現象が起こるか、それが今の現状であろう。
視線、視線。噂話に俺への格付け。女子陣の興味対象は一気に俺へとシフトし、溢れだす好奇心は俺へと集約する。
特に女子はうわさ好きな生物(と友達の本に書いてあった)らしいので、この興味が尽きるのは当分先の話になるとか。
好奇心は猫を殺す、という言葉があるが、確かに今、俺が好奇心に殺されそうです。これだけの人数の視線を集めると、もはや兵器レベルである。
現在は入学式が進行中なのでまだこちらにむく視線は少ないが、それでも視線が尽きることはない。一番危険を感じた時は会場に単身で乗り込んだ時か。人間ってあれほど動きがシンクロするものか、と仰天したものである。
一斉に向かれる顔、顔、顔。挙句には式に参加した保護者までこっちに注目するものだから、あのまま逃げ出したいとまで思った。
この状態がずっと続くとなると……俺は無事に家へと帰れるでしょうか。
(『学園生活が辛くなったらこっちに来いよ』と冗談半分で言われたけど……)
俺の実姉である千冬姉の友人の言葉がリメンバーされる。案外それもいい選択かもしれない。向こうだったらその人が手厚く歓迎してくれるだろうし。
そういえば、春の内にIS学園に来るって言ってたけか。その時まで辛抱しよう。頑張ってみよう。
「それでは、学園おこし委員会による、新入生歓迎イベントを開催したいと思います」
(……ん?)
学園おこし? 聞きなれない単語である。おそらく村おこしと同じようなニュアンスなのだろうか。
歓迎イベントって言ってるし、学校行事を取り仕切る委員会……でいいと思う。
これは意外だ。厳格なことで有名な学園だから、こういったことをしてくれるイメージはなかったのだが。
これは純粋に楽しめるかもしれない。このイベントとやらである程度他の生徒と打ち解けられれば幸い。そうでなくとも、今俺に集約している興味がこれで分散すること間違いなし。
「学園おこし委員会委員長の、まーりゃん先輩からの開会宣言です」
まーりゃん? いや、おそらくこれは中国人系の名前か。
中国人の知り合いがいるから、語感的にはどこか懐かしさを感じる。字はなんだろうか。
『
俺を含め皆がステージに注目する中、ふんぞり返りながら歩いてきたのは……高校生?
高校生というより、中学生に見えてしまうような低身長な女子生徒が歩いてきた。
しかも俺より年上なはず……っと、体の事でとやかく言うのはマナー違反か。
「こほん。えー、まずは皆の集。この学園に入学してきてくれたことを俺はうれしく思う。皆は映えあるこのIS学園の生徒となった! まずは皆でそれを喜びあおうではないか」
あまり女性っぽくないしゃべり方だ。しかし内容はまともである。まぁ、俺みたいに強制的に入学させられた人もいるのだけれども。
「特に今年は、なんと! 喜ばしいことに新時代のニューカマーがやってきた! そうだろう? 織斑一夏くん?」
(いっ!?)
完全に油断していた。まさかこのタイミングで話を振ってくるなんて。
そして予想通り、ざわめき立つ観衆と、俺に集まる視線。講義堂内は女生徒達のざわめきに支配される。
「みんなは知っての通り、このIS学園は『インフィニット・ストラトス』という現代においての最強の兵器を扱う世界唯一の学園である。武装を四次元ポケットの中に入れちゃったり、なんかとんでもねぇことを起こせるトンでも兵器だ」
この言葉は決して誇張なんかではない。証拠に、全世界がそれを認めている。
『白騎士事件』――ハッキングされ、日本に向けて発射された幾多のミサイルを無力化し、挙句には攻撃した各国の戦闘機や戦闘艦を撃沈したIS。
これらの出来事を世間では畏怖を込めてその名前で呼んでいる。
一日にして、世界はISに対し白旗を上げ、ISが現行兵器の覇権を握ったのだ。
「しかぁし! そんなISにも兵器として決定的な欠点があった! それが『女性にしか扱えない』こと!」
ISにはISコアという心臓部みたいなパーツがある。ISに扱うにも適性があり、ISコアが反応する、つまり適性がある女性でないと扱えないのだ。
そしてこのISコアというものは、なぜか男性に対してはうんともすんとも言わない。男性には扱えない無用の長物となってしまう。
理由は不明。理由が解明されればIS研究者も対処する余地はあるのだろうが、不明なものはしょうがない。
ここで考えてほしい。現行兵器最強のISは、女性にしか扱えない。ISはもちろん、ISを扱える女性も各国の軍は欲しいはず。核兵器のように、それらを所持している数=防衛力へと直結する。
政府はISを扱う女性をかき集める。ここで女性に対して媚を売ることも非常に大事となる。ただ釣り針だけをたらすのではなく、ちゃんと餌も大事だ。
政府は女性へのご機嫌どりとして、各国は今までの態度と一変して女性を尊重するようになった。
さらには、差別化することによってさらに女性の地位を上げた。すると比較対象となる男性陣はどうだろうか。
ISが扱えず、挙句には世界中が女性と男性の力関係の均衡を崩した。女性は重宝され、男性はないがしろにされる世界へ変貌した。
『女尊男卑』――ISの負の副産物といわれる現代社会の風潮の完成だ。
例の千冬姉の友人からティーチされた講義の内容の一部を思い出す。常識とは言え、やっぱり前知識は大事だと改めて実感した。
「――女尊男卑の社会が完成された中! その常識を覆す存在が現れた! それがそこにいる織斑一夏である!」
「う゛っ!?」
いきなり壇上の委員長に指をさされ、思わず奇声をあげてしまう。
再び集まる興味と視線。しかも先ほどとは倍以上の視線を感じるような気がする。来賓の人も、教員も、保護者も皆、俺を凝視している。
春先にマスコミが家の前であふれかえったときもかなり息苦しかったが、これはそれと段違いだ。
「なんと織斑一夏は、男であるにも関わらずISの適性を持っていた! これに関しては連日のニュースで分かっていると思う。これはとんでもない事態だ。常識を覆す存在なのだからな」
確か、アメリカの新聞で『常識を破壊したイレギュラー!』なんて異名が付けられたっけか。
すごく仰々しい二つ名だけど、俺は改造手術を受けた怪人でもない。ただの健全な男子学生だったのだ。
ここで過去形なところを注目してほしい。
「――っていうお堅い話はおいといて☆ 皆の衆! いや、ここにいるぴっちぴちの女子生徒達に問う!」
(おいといた!?)
妙に説得力のあるアドルフ・ヒトラーばりの演説だったのだが、一気に空気が柔和されてしまった。
あれは演技だったのか……女性は恐ろしい。
「皆の衆! 正直そんな話題の人物! 織斑一夏について気になっちゃうかー!」
「……お、お~う」
「むしろ恋愛対象としてアリかー!」
「おーう!」
「アメリカに行きたいかー!」
「「「おーう!」」」
話が変な風にそれているような気がする。恐ろしい、人間とはこんなに早く空気を切り替えられるのか。
さっきまでの真面目な雰囲気はどこへやら。どこぞやのクイズ番組ばりに式に参加している生徒たちは中心人物であるまーりゃん先輩に向けてリコールを繰り返している。
てか、アメリカ関係ないし。
「よっしゃあー! ということで! 今年のビッグな新入生歓迎イベントはぁ――」
ドコドコドコドコ……。
どこぞやから響くドラムロール。緊張感が高まる中、ステージの奥ではなにやら何人かの生徒が動いている。
ドンッ!
そしてドラムロールが終わりを告げた時、ステージ上の垂れ幕が解放された。
その幕には――
「『新入生ナンバーワン決定戦』!! 新入生から選ばれし生徒同士でISで戦ってもらい、文字通り新入生のナンバーワンを決定してもらう! そしてそのナンバーワンには、なんとぉ! そこにいる織斑一夏と戦えちゃう権利を贈呈しようではないかー!」
「「「おーっ!!」」」
「……え?」
一体なんのことやら、完全に理解するまで時間がかかったことを追記したい。