#3分で読めるノベル企画
お題「感謝(敬意、誠意を含む)」へ
投稿した作品となっております。
「嬢ちゃん、また来たのかい」
「ええ、ご理解頂けるまでは何度でも。今日はこちらをお持ちしました」
コンベアからは様々な素材や加工された武器防具が流れ、鉄やモンスターの素材を
溶かした炉は赤く輝き、肌をヒリつかせる程の熱を放っている
桃色のギルド制服は高い通気性を誇るものの、この工房の熱の前では無力に等しい。
しかしこの服を脱ぐ事は無い。何故ならこの制服は職員としての戦装束。
顔からの汗は根性で抑え、涼しげな表情で資料を渡す。
片目を眼帯で覆う二期団の団長さんは太く鍛え上げられた腕をこちらに伸ばし、
持参した資料を受け取ってくれた。
「この度予定している『感謝の宴』。そこで作っていただきたいのが、
この【フルドレスシリーズ】なのです。白を基調にした防具にして正装。
普段戦われているハンターさんを『パーティーの主役』にして感謝を伝えたい!
そんな想いが込められておりまして…」
これでもう何度目かわからない。企画を総司令に出し防具についての提案は
了承してくれたけども最終的には工房のOKが無ければ、どうにもこうにもならない。今回の資料はかなりの力作だ。これでダメなら…
「これじゃダメだ嬢ちゃん。俺はやらねぇ」
広げられた資料を丁寧ににまとめ、こちらに返させる。見た目から粗雑な印象を
与える団長だがこちらが誠心誠意作成した物に対しては敬意を払って扱ってくれる。
返された資料を受け、束ねられた羊皮紙の端を取り強く握りしめた
「…なんでですか」
思わず口をついて言葉が零れ落ちた
「何故ダメなんですか!納得できません!なんで…」
やれることはすべてやった。激務の隙間を使い編纂者の人や流通関係の方の話を聞き
睡眠時間も削って何度もデザインのラフを書き上げた。
噛み締めた唇の端からは声にならない声が漏れ、頬から流れ落ちた雫は、
熱せられた床へ。そして瞬く間に蒸発し溶鉱炉から上る煙の中に溶けて行った。
「この資料は良くできてる。実現可能かつコスト面との兼ね合いや、デザイン性には
俺も思わず関心するような箇所もあった、だがこの資料には足りてねぇモンがある」
「足りてない物…なんでしょうか…」
何回も見直したのだ。足りないところなど全く思い浮かばない。
「魂だ。お前さんの本音と言ってもいい」
「本音…それはハンターさんを主役に…」
「そうじゃねぇだろ。」
団長は厳しい目をしていた。それと同時にとても優しい目をしていた。
無言で頷き、本当の心を…魂をここでさらけ出せと雄弁に語りかけている。
「…たい…」
そうだ。
「…き…星さん…の……たい…」
私は…
「青き…星さんの…が…み…たい…!!」
私の本当の心は…
「導きの青き星さんのォォォ!!!!燕尾服が見てェェンだよォォォォ!!!!」
そうなのだ。いうなればそれが全てなのだ。夜空に輝く星を意識した白と金色をベースに、それでいて下品になりすぎないように精錬されたデザインのジャケット。胸のやや上あたりから垂らした上質なリボンは鍛え抜かれた大胸筋の質感をより主張させながらも「あのリボンの下には乳首が…」と溢れ出る妄想は脳内を一瞬で瘴気やられ状態にする事請け合いである。スラっと見えながらも股間のあたりをやや窮屈にしているスラックスはエリアに入った瞬間、周囲の人間からの見ーるストームは止まる事が無いだろう。誰だってそーする。私もそーする。タイはネクタイか蝶ネクタイか三日三晩悩んだ末、発熱までしたが、蝶ネクタイにして寂しくなる胸元はウエストコート。そうベストの丈で調整して、窮屈に閉じられたボタンが弾け飛ぶ様を想像すればそれだけで今の気分はドキドキノコ。迷ったら食ってみろ(意味深)の精神が沸騰してくる
そうだ…このデザインには機能性やら装飾の美しさなどを書き連ねているが本音は…私の心は…
「…見たいんです。私がこの性癖を詰め込みまくった性装というか正装を…
推し…我らが『青き星』が着てるのを…」
何層にも施された理性の鎧の下に残った心は、ただただ純粋な欲であった。
不純な欲望の結晶であるが不純もそれが100%の純度であればそれはむしろピュアだ。
純粋なのだ。ここに至って彼女はまた一つの真理を得た。
気が付けば二期団の団長はその目に光を宿し、ハンマー等々を準備し始め…
「それを聞きたかった」
このあと、滅茶苦茶テストモデル作成した
※ ※ ※ ※
ご飯の味も分からなくなるくらい多忙なデスマーチを超えて迎えた「感謝の宴」当日。
我らが『青き星』は神話になった。青い星が今、胸のドアを叩いてる(気がしている)
こちらに気付いた青き星さんは少し恥ずかしそうにはにかみながら帽子を上げ、
軽く会釈をし微笑みかけてくれた。ふーん、えっちじゃん(存在全てが)
私はカウンターの定位置にて営業スマイルを顔に張り付けたまま、
打ち上げられる花火と共に情緒を無事爆散させた。尊すぎて気が遠くなってきたぞ。
薄れゆく意識の中で、このような聖法衣を作り上げてくれた団長もとい心の師匠へ、
深く深く、龍結晶の地底よりも尚深く、敬意と感謝を捧げる私であった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝といえば「感謝の宴」そして感謝と言えばフルドレス。
あのフルドレス装備開発の裏側に迫った(という妄想)のお話です。
いいよねあの服。最高です。いままでこういうタキシード系はすごく限られていたのでしっかり礼服なのは本当にいい。語彙力が消滅する。
ここまでお読みいただきありがとうございました