(リメイク版)ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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フライにタルタルソースも捨てがたい

 ……矢っ張りな。レキアを紹介した時のアリアさんの表情の僅かな変化に予感が確信に変わった僕は僅かに肩を竦める。

 

 何故今まで忘れていたのかは分からないけど、彼女の普段の顔は表面上の物。

 ゲームでは確か少しずつ年頃の女の子らしさを取り戻して行く……だったっけ?

 

 所詮は傍目に何となく見ていた興味の無いゲームだし、そんな物の知識や記憶なんて年々薄れて行く。

 前世の僕じゃなくロノスとしての僕にとって現実ってのもあったけれど、どうも転生前の記憶でゲームに関する事は靄が掛かった部分が多かった。

 

「おいっ! 妾は貴様を許嫁と認めてはおらぬぞっ!」

 

「うんうん、レキアは理想が高いからね。今の僕じゃ無理だろうさ」

 

 何時もの様に僕の顔の近くに差し出した手の甲に座ったレキアは声を荒げて指差した手をブンブンと振り回しながら抗議して来る。

 昔からこれだからなあ、ずっと仲良くしているのに、レキアは僕達を友達未満の腐れ縁程度としか口では認めないんだよね。

 

 まあ、それでも会話してたら笑顔を見せてくれるし、本当なら立ち入るのを邪魔出来るのに、自分は認めない、とか言うだけで邪魔しない上に会いに行ったら顔を直ぐに見せてくれるんだ。

 

 

「彼奴、あんな事を言ってる癖にお兄様が小さい頃にあげたペンダントを今でも着けてるのよ。面倒でしょ、横から見てて」

 

「は、はあ……」

 

 こらこら、そんな事を言ったらレキアが余計に意固地になっちゃうじゃないか。

 

 リアスの丸聞こえなヒソヒソ話にアリアさんも困ってるし、レキアなんて恥ずかしがり屋で意固地だから真っ赤になって手足をバタバタ動かしているけれど声が声になってない。

 

 僕としてはもう少し素直になって欲しいんだけれどね。まあ、少なくても仲良くはしてくれているから別に良いか。

 

「ええい! 対価だ、対価! 妾が約定に従い祝福を与えてやっているのに、先んじて渡された対価を放棄するなど有り得ぬからな!」

 

「まあ、そんな訳さ、アリアさん。誕生日に贈ったペンダントを気に入ってくれてね。僕の誕生日にポチと話せるっていう力を与えてくれたんだ」

 

「……おい。妾を無視して他の女と話すとは良い度胸であるな?」

 

 ただ、こうしてちょっと嫉妬深いのが困り物で、会話の途中でアリアさんに話し掛けただけで耳を引っ張って来るんだからさ。

 

 顔を見なくても今の彼女がどんな顔をしているのかはよく分かる。少し拗ねた寂しそうな顔だ。

 

「ごめんごめん。でも、そもそも説明の為に出て来て欲しかったのもあるから声を掛けたんだしさ。一番は君と話したかっただからだけれどね」

 

「……ふんっ。あの様な女にわざわざご苦労な事だ」

 

 頭に僅かに重みが加わって上から声が聞こえて来る。手の甲か頭の上がレキアの定位置で、僕には見えないけれどリアス曰く随分とご機嫌な表情だとか。

 

 良いなぁ。少し意固地な子だから喜びはしても喜んだ表情は滅多に見せてくれないのにさ。

 

「えっと、あの様って王国とか闇属性の事ですか?」

 

「それ以外にあるだろう。妾達は高貴なる種族、妖精。闇だの光だのに拘るのは神獣と人間だけだ、ヘンテコ女め。それと貴様王国貴族か」

 

 

 戸惑いながら問い掛けるアリアさんへの返答は少し不機嫌そうな声、その理由こそがヘンテコって呼ぶ理由なんだろう。

 何故これを連れて来た、そんな風に怒りながら頭をペシペシと叩かれrた。

 

 本心を隠して取り繕う、それこそ仮面を被って別人みたいに振る舞うだなんて貴族社会では珍しくもないけれど、妖精社会はちょっと違うみたいだからね。

 

「そんな事はどうでも良いじゃないか。それよりも君にお願いがあって来たんだけれど……」

 

 その仮面はレキアを紹介した時に一瞬剥がれたけれど、指摘する必要も無い。

 隠し事をせずに本心で話せ、だなんて道徳の授業じゃあるまいし。

 アリアさんが自分から曝け出さないと意味がないだろうにさ。

 

「何だ? 言ってみろ。無論、無償で妾の助力が得られると思うなよ? まあ、今日の妾は機嫌が良い。それ程思い対価は不要としてやろう」

 

「そうかい? ありがとう」

 

「お兄様がお願いする時に何時も同じ事を言ってるわよね、アンタ」

 

 感謝するのだぞ? と薄く笑いながら僕の手の甲に戻るまでは良かったのに、リアスが余計な事を言っちゃった途端にムッとした表情になる。

 

 やれやれ、思っていても言わないで欲しいよ。レキアは優しくて親切だけれど見栄っ張りというか素直に振る舞えない所があるんだからさ。

 

「……さっさと要件を告げよ。祝福の更新か? それなら一級品の茶菓子と茶葉で構わんぞ」

 

「え? 祝福の更新なら出国する前にしてくれていたよね? 何故か僕が寝ている間にさ。……気になったんだけれどどうやったの?」

 

 普段は手の平を重ねて互いに呪文を唱えて終わりなのに、あの日は寝て起きたら終わっていた。

 更新のついでにお話ししたり、お茶や散歩を楽しむのが普段なのに妙だと思ったんだよな。

 

「……知らん。知らん知らん知らん、知らんと言ったら全く知らんっ!!」

 

「わっ!?」

 

 少し気になったから教えてもらおうとしただけなのに、レキアは手の甲から飛び上がると真っ赤な顔で両手をバタバタ振り回しながら怒鳴る。

 

 え? そんなに言いたくない方法だったの? じゃあ、なんで普段と変えたのさ……。

 

「仕方無いなぁ。じゃあ、この話題は忘れるから領域のモンスター相手に訓練をしても良いかい?」

 

「訓練? 今更あの程度の……ああ、得心がいった。そのヘンテコ女、アリアだったか? アリスでもダリアでも構わんが鍛える必要が出たと」

 

 理解はしたけれど納得はしていない、腕を組んでアリアさんを睨む姿からはそんな風に感じられた。

 レキアからすれば演技を続けて接して来る相手、それも数少ない友達の友達かも知れない相手なんて気に入らないだろうし、ましてや王国の貴族だ。

 

 帝国とも妖精とも色々あったから手を貸す理由が分からないってのもあるんだろうし、手を貸したくないんだろうけれど……。

 

「レキアはルクス王子を知っているだろう?」

 

「ルクス? ……あの女の息子か、忌々しい。貴様とて下らん理由で敵視されているのだろう? 話題に出すな、不愉快である」

 

 吐き捨てる様に言うレキアの気持ちはよく分かるんだよ。現王妃である叔母上と母親が比べられて批判されるとか、そもそも出会いからして悪かった。

 

 十歳の時くらいだったかな? 周辺国の貴族から十歳の代表者を出して剣術を競わせるって奴。

 優勝、僕。ルクス相手に圧勝。その後でルクスの母親が文句を言って来たりしたんだよな。

 

 しかもその後に何処かの誰かが僕に刺客を送ったし、そもそも事前に薬が盛られそうになってたんだよね。

 

 

 いやいや、何処の王妃がやったんだか。フリートは僕の強さを認めて普通に仲良くなったのにさ。

 

「その王子がアリアさんに詰め寄るって形で僕に勝負を申し込んで来てね。席が隣の者同士でペア組んで学園が管理するダンジョンを攻略するのさ」

 

「成る程な。なら、貴様等が勝てば一応はアリアとやらの勝ちになるのか。くっくっく、王子が惨めな様よなあ。……良いだろう、使う事を許可する。ちょうど面倒な事態になっていて、妾の役に立つという栄光を与えてやる予定だった所だ」

 

 別に困ってるなら力になるのに回りくどい真似をするね、君。相談してくれたら力になるし、長い付き合いなんだからさ。

 

 あくまで立場が上なのは自分であると振る舞うレキアは逆に大変そうだなって思ったけれど、ルクスに一泡吹かせられるってのが気に入ったのか許可を出してくれたし、何か余計な事を言って怒らせる前に……。

 

「え? 何かトラブルが起きたなら普通に頼みなさいよね。これだからツンデレ妖精は困るのよ」

 

「黙れ脳筋洗濯板娘」

 

 あーあ、間に合わなかったか。本当に相性が悪いよ、この二人。

 

 睨み合う二人の間に火花でも散っていそうなのを感じ取りながら森の方へと視線を向ける。

 中央の一際高い木の上から誰かが僕達を見ている気がした。

 

 

 

 

 

 リアスとレキアが火花を散らし、森の中の木の上に立って様子を眺めている者が居た。

 

「おやおや、これは随分と変わったお客様達が来ましたね。お馬鹿さんのせいで警戒されるでしょうし……困った困った」

 

 白いスーツに白いシルクハット、顔に目玉模様の黒い布を巻いて肌を全て隠し、手足が異様に長い長身。奇妙な事に周囲に響く大きな声を出して居るにも関わらず顔に巻いた布が一切動いていない。

 

「さて、我々ネペンテス商会のモットーは”今をお嘆きのお客様へ、心から願う商品を”ですからね。……ヒャ、アヒャヒャヒャヒャヒャ! ほーんとうに面白そうな人達ですねぇ! ……グチャグチャの肉塊にしたい程度には」

 

 腹を抱えて笑いを堪える仕草をしていたのも束の間、長い手足を広げての大笑い。

 最後の呟きに呼応してか森全体が震える程の騒めきが起きる。鳥が飛び立ち獣は駆け回り、そして自然から無数の影が這い出した。

 

 

 

 

 

 

 

「妙な気配があった? それで僕に相談したんだね、レキア」

 

「相談する迄も無い。妾は手をこの程度で煩わせる必要が無いと判断したまでだ」

 

 小さくなったポチを右肩に、レキアを左肩に乗せて進むのは森の中。木々の間には歩き易いけれど入り組んだ道が出来ていて、澄んだ空気と森の香りが居心地の良さを与えてくれる。

 

 前衛は僕でリアスに背後の警戒を任せ、アリアさんには中衛をお願いしている。

 魔獣が出た場合は積極的に戦ってもらうよ? 時間が足りないから見学は後回しだ。

 

「それにしても相変わらず居心地良いわよね。ねぇ、覚えてる? 鬼ごっこで私を捕まえられずにレキアが半泣きになった時の事」

 

「……貴様の妄想だ」

 

「その後でリアスも釣られて泣き出しちゃったでしょ? 七歳の時だし仕方無いさ」

 

 やれやれ、相変わらず仲が良いのか悪いのか、基本的にどっちかが仕掛けて口論が始まるんだから。

 それでも昔から遊んだとしているんだから悪くはないんだろうけれど、間に挟まれてるアリアさんが困っているからね?

 

「あ、あの……」

 

「大丈夫さ。此処がどんな場所か分かってるから二人共油断はしてない」

 

 此処はダンジョン『妖精の森』。妖精の領域内に発生したそんなに強い魔獣の出ない、ランク付けするなら下の方だろう。

 

 実際は他の場所に大地の魔力が回っていて、残り滓が溜まった結果が此処らしいんだけれど、小さい頃は遊び場にしたし、最初の修行場でもあった。

 一見すると記憶のまま、下手すれば目を閉じでも歩き回れるかも。

 

 ああ、でも確かに言われてみると……。

 

「大地の魔力が乱れてるね。これじゃあ変な所に溜まって淀みそうだ。君が管理する場所にしては珍しい」

 

 ダンジョンにとって流れる魔力は血液みたいな物だ。全身に栄養や酸素を行き渡らせるみたいに力を与え、それが偶々集中しやすい場所があって特殊な鉱石や薬草の類が発生する。

 

 魔獣は循環で力を使い果たし、新しい魔力と入れ替わる際の魔力の残り滓が形になった物。

 管理者が処理する事で強力な個体や異常な数の発生を抑止出来るし、逆に魔力を吸い上げる存在が居座れば残り滓が本来以上に発生し、上記の問題が起きる。

 

 どうして魔力が生物になるのかって? さあ? テュラが力を行使した結果だって伝わってるだけだから。

 

 

 集中して探ってみれば感じるのは魔力の乱れ、ほんの僅かではあるけれど僕は小さい頃から通ったから知っていて、だから気が付いたら。

 

「貴様も知っての通り、領域に通じる門とでも呼ぶべき場所は幾つも存在するが、この森周辺に繋がる門を妖精の助けも無しに通った気配がした。……神獣の気配だったな」

 

「気配の主は見たのかい?」

 

「いや、どうも妖精によって招かれたらしいのでな。何処ぞの神が使いを出したのだろうと母上の報告だけはしておいたが……」

 

「その結果がこれって訳ね。随分間抜けな神獣寝て。立つ鳥……立つ鳥……何とかって言うじゃない?」

 

 それにしても神獣が何の用なんだか……。

 

 リアスの勉強不足は今は良いとして、妖精の手引きで入ったなら其処まで深刻じゃないのかな?

 

 ラドゥーンの顔が頭に浮かんだけれど、彼処迄の高位の神獣が関わったなら女王様に連絡があるだろうし、万が一洗脳や脅迫が絡めば察知しない方じゃない。

 

 神が地上で力を振るえば少なからず影響が出るからとの理由で派遣されるのが神獣だ。

 そんな存在が何の為にってのは気になるけれど、今は異変の原因を調べないと。

 

「お兄様、多分あっちよ」

 

 僕の問い掛けに立ち止まったリアスが指差したのは道から外れた方向、木と木の間を進む必要があるからアリアさんは大変そうな道だけれど、同時に目的達成の近道だろう。

 

「え? あの、あっちっていうのは?」

 

「魔力の乱れの原因があっちに有りそうなの。私、探知能力だけはお兄様以上なんだから」

 

 凄いでしょ? と腕組みをしつつのリアスに少し困り顔になるアリアさんだけれど、信じて任せて大丈夫さ。

 言葉の通り、リアスの魔力探知範囲と精度は僕が知る中で群を抜いて高いんだ。

 

 本人は何となくって感じで方向を口にするから初見だと疑うのは無理が無いけれど、今まで外した事は無いからね。

 

 野生のか……んんっ、此処で止めておこう。あの子なら何となくで察する私、絶対に拗ねちゃうからさ。

 

「正しく野生の勘だな。獣に近いのではないか?」

 

「はぁああああっ!? 何言ってるのかしらね、このおチビさんは!」

 

 レキアもこうなるって分かってるんだから言わないでくれたら嬉しいんだけれどな。

 僕は二人に仲良くして欲しいのに……。

 

「じゃあ、進むわよ!

 

 僕が心の中で溜め息を深く吐き出す中、リアスはハルバートを肩に担いで迷う事なく意気揚々と道から外れて進もうとして急に動きを止めた。

 

「お客様か。……面倒な」

 

 木の幹から幹へと弾みながら接近する緑の塊、それが地面に降り立って正体をハッキリと見せた瞬間、リアスとアリアさんは同時に叫び声を上げる。

 

 それは三十センチ程の少しヌイグルミっぽいデフォルメがされたイモムシ。

 頭には色鮮やかな青い花が咲き、イモムシの動きに合わせて揺れている。

 

 フラワーワーム、見ての通りの魔獣で……。

 

「わあっ! デッカいフラワーワームねっ! 美味しそうっ!!」

 

「む、虫ぃいいいいっ!? デカい! 怖い! 虫は本当に駄目なんですっ!?」

 

 リアスは目を輝かせ、アリアさんは腰を抜かして顔を青ざめているし、これは仮面が剥がれた状態なのかも?

 

 初めて見た素顔がこれかぁ、別に良いけれどさ。

 

 ワームフラワーは軽快な動きでピョンピョンと跳ね回り円な瞳を僕達に向けてくる。

 それにしても随分と大きいし丸々太って脂が乗ってそうだ。

 

 

 ふぅ、それにしても虫が嫌いなのか。お昼ご飯に招待する予定だったけれど止めた方が良いかもね。

 

 それは兎も角、森のダンジョンで鍛える以上は怖がって動けないんじゃ危ない。

 

 さて、この情報で動けたら良いんだけれど。

 

 

「ワームフラワーは輪切りにしてバターで焼いたら海老みたいで美味しいよ?」

 

「私はスパイスたっぷりの炭火焼きが良いなー。小腹も減ったままだし、ちょっと火を起こして炙り焼きだけでもしない?」

 

「食べませんよ、絶対にっ!?」

 

 王国は虫とかそんなに食べないんだっけ? 食文化の違いって大きく出るよね。

 

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