(リメイク版)ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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『出来ない』が理解出来ない

 貴族、それも高位の家の者なら価値観の違いを把握しなければならない。

 

 国、人種、地方、個人って感じにね。自分の方が偉いんだから全部此方に合わせろだなんてボンクラ貴族のやる事で、櫛の歯が抜けるみたいに人が離れて土台が崩れれば大きな建物だってアッサリと終わってしまう。

 

「あう〜。面目ありません……」

 

「大丈夫大丈夫。パニックになって逃げ出さないだけマシさ。寧ろ最初は弱ったのを連れて来て倒すのに慣らしてからが良かったからね」

 

 だから、まあ、これは完全に僕の手落ちと言わざるを得ない状況だろうさ。

 帝国は普通に虫系の魔獣を食べるし、あの程度の奴との遭遇なんて前世で例えるなら車で走っていたらニワトリが藪の中から出て来た程度。

 

 でもさ、虫を食べる文化が王国に無いのは知っていたけれど、それで虫が凄く苦手な人の事を失念していたんだ。

 

 巨大なイモムシが虫嫌いの女の子の前に飛び出して来た結果、腰が抜けちゃって動けない状態だ。

 うん、それに追加でトドメまで入っちゃったんだよね……。

 

「取り敢えず虫が嫌いならさっさと殺すわね」

 

 ワームフラワーの群れを前の悲鳴を上げた彼女を案じてかリアスは動いた、それも迅速に。

 

「しっ!」

 

 最初の踏み込みと同時に振り下ろしたハルバートは中央の一匹を両断、体が左右に分かれる前に右に向かって振り被り、横一文字に振り抜いて残りの頭を跳ね飛ばした後で回転させて血を払った。

 

 この間、一秒にも満たない。アリアさんからすれば隣に居たリアスの体がブレて見えれば良い方だっただろう。

 

 何が起きたのか分からないまま中央の体が左右に分かれて倒れ、飛ばされた頭は左右に飛んで断面を木に貼り付けさせ、残った体は断面を見せて血を吹き出しながら倒れ、足が僅かにバタバタ動いて終わりだ。

 

 当然、さっきのメタルボアと違って死体は消えたりしない。元が土地の魔力だろうが物質として存在したからには当然の結果なんだろうけれど、アリアさんの視点から見たら一連の流れがどう見えるかっていうと……。

 

 虫が苦手なのに巨大なイモムシが現れた。

 

 それの体が一瞬で真っ二つになったり首が飛んだりした。

 

 それで断面や蠢く脚を至近距離で見たアリアさんが立てなくなったから僕が背負ってるってのが今の状況さ。

 

 ……いや、リアスは元気が有り余っているしレキアに魔法で運んでくれって頼めないし、ポチは僕の周囲を飛び回るのが楽しそうだし?

 

「己の優秀さを自覚せず他者にまでそれと同様の基準を求めるのは無能の所業ぞ。愚か者めが」

 

「返す言葉も無いよ」

 

 自分達が直ぐに戦いに順応出来たからってそれを他者にも当て嵌めるな、言われてみれば当然の言葉でしかない。

 

 レキアの言葉は重く肩に伸し掛る。そう、僕は自戒も込めてアリアさんを背負っている。

 だから、お風呂に入り立てでいい匂いがするとか密着した部分から柔らかさが伝わって来るとか……そういった下心は否定させて欲しいな。

 

 役得とか思ってないよ? ……本当だからね?

 

「レキアは優しいね。アリアさんを気に入っていない感じだったのにさ」

 

 アリアさんを背負うからとレキア達には肩から退いてもらったけれど、リアスの頭に乗ってお昼寝を始めたポチとは違い、レキアは少し不機嫌そうに周囲を飛んでいた。

 

 昔から機嫌が悪くなると暫くは黙りこくるってのに、それでも苦言を呈するって事はアリアさんを見て黙っていられなかったんだね。

 

「……別にその女の為じゃない。母上が決めただけとはいえ、仮にも妾の婚約者が不甲斐ない真似をするのが気に入らないだけだ」

 

 そっか、僕の為に言ってくれたんだね。相変わらず彼女には頭が上がらないや。

 僕に照れ顔を見せたくないのか少し高い位置まで飛び上がったレキアは背中を向けている。

 

 これは改めてお礼を言うべきか、それとも余計に照れるから今は止すべきか悩むな。

 

「あれ? またお客様だね」

 

「ひぇ!? ま、また虫ですかっ!?」

 

 木の葉を揺らしながら木から木へと飛び移る影に怯えるアリアさんの腕の力が強くなって余計に密着する。

 あっ、背中に当たってた物が少し潰れて……。

 

「お兄ちゃん?」

 

「だ、大丈夫っ! 虫系魔獣と決まった訳じゃないから……」

 

 うん、少しは役得とか思ってた。だって僕だって男だし、別に良いじゃないか。

 

 妹の絶対零度の視線と言葉を背中に浴びた僕が視線を向ければ木の葉の中に身を隠しながら接近して来た相手が姿を現す。

 見た目はマッシュルームのクッションに物なんて掴めなさそうな手足と顔を付け足した見た目の魔獣。

 指なんか無いのに何故かキノコの混紡を持てている。

 

「ノコー!」

 

「あっ、マシュルーか」

 

「ノコ!?」

 

 アリアさんを背負って手が塞がっている僕を格好の獲物かと思ったのか迷わず飛び掛かって来たのをバックステップで避ければ驚いた顔になり、そのまま顔面から地面に激突してしまった。

 

「じゃあ、彼奴に魔法を当ててみようか。僕が当たる様に調整するから君は真っ直ぐ右手を伸ばして合図したら放って」

 

「は、はい!」

 

 石ころが転がっている場所だった事もあってかマシュルーはその場で悶えて起き上がれないみたいだ。

 アリアさんはそんな絶好の的に向かって手を伸ばした。

 

「今だ」

 

「【シャドーボール】」

 

 アリアさんが放ったのは攻撃魔法の中でも割と基本的な部類に入る物。拳大の魔力の塊を真正面から放つ、イメージも簡単な奴だ。

 彼女の髪と同じ漆黒の魔力は真っ直ぐにマシュルーへと向かい、反応して避けるより前に傘のど真ん中に命中、触れた部分を抉り取って消えた。

 

 成る程、込められた威力に応じて消滅させるのか。

 

 焼け落ちたのでも凹ましたのでも弾き飛ばしたのでもなく、飲み込んだ。

 他の色を塗り潰す絵の具の黒、それが一目で見抜いた特性だ。込めた魔力の量から考えると四属性よりも威力が高いだろうね。

 

「今まで戦いを経験してなかったんだっけ? それでこれなら凄いよ。アリアさんは強くなれるさ」

 

「そうですか……?」

 

「ああ、僕が保証する。もっと頑張って強くなって闇属性だからって五月蝿い連中を黙らせてやろう。優秀な私に嫉妬しているんですね、って感じでさ」

 

 ゲームでのダメージ量じゃ分からない事も実際に見れば少しは理解出来るもんだ。

 今は実戦慣れしていない彼女だけれど、この威力は武器としては十分過ぎる。

 

 ……ただ、バリエーションがね。

 

「他の魔法は使えないんだっけ?」

 

「使う機会が無かったので……」

 

 どれだけ威力が高くても当たらないなら意味が無い。ゲームじゃないんだ、魔法は必中でもないし、初級魔法じゃ頭打ちになる日も遠くない。

 

 経験を積んで腕を磨いて、他人の魔法やらにインスピレーションを受けて魔法は成長して行くけれど、先人が残したお手本になる記録も無ければ教えてくれる人も居なくって、手助けしてくれる誰かは……僕達がやるしかないか。

 

「じゃあ、瀕死の渋滞で痙攣している彼奴で色々試してみようか! リアスも適当に半殺しにしたのを連れて来てくれるかい?」

 

「えぇっ!?」

 

 沢山倒してレベルアップをバンバンしまくって、その強さに慣れつつ魔法を開発する。

 ちょっと……普通に……かなりハードになるだろうけれど。

 

「任せといて、百匹くらい狩ってくれば良いわよね?レキア、調査は後回しよ!」

 

 さーて、頑張ろうか、アリアさん。スパルタ式でねっ!

 

 背中から随分と驚いた様子の声が聞こえて来るけれど、今は聞こえない振りだ。

 今回の勝負だけなら正直言って僕は今みたいに背負って進めば良いだけなんだけれど、彼女の今後は試練が待ち受けているからね。

 

「私、どうなるんでしょう……」

 

 まあ、最終的に神獣と戦える様になってもらう位かな? ゲームのイベントの通りに成長に合わせて段階的に強さの調整をしてくれる筈も無いから大急ぎでね、

 

「僕達もちゃんと支えるから大丈夫さ。互いにルクスに睨まれてるから仲良くやってたら将来大変だとは思うけれど……」

 

「じゃあ、取り敢えず魔法を球体以外で出しましょうか。ほら、こんな感じで【ソード・オブ・シャイン】」

 

 ハルバートを地面に置いて広げた両手に現れるのはリアスの身長とほぼ同じ刀身を持つ光の剣。

 水晶の様に半透明で淡い光を放つソレは並の人が触れただけでも身が危うい高密度の魔力の結晶。

 

 試しにと切っ先で触れたワームフラワーの肉体が完全に消え去る。

 これが光属性の力。影を照らして消し去る消滅の力こそがリアスが振るう力だ。

 

「じゃあアリアもやってみて!」

 

「いや、完全に無理です」

 

 アリアさんは真顔で即答する。するしか無いよね、残念だけれど……。

 

 

 

 

 

「【ダークスライサー】」

 

 薄く伸ばされた黒の円盤は高速で回転しながら宙を舞い、軌道上の魔獣を切り裂いて行く。

 

 筋の影響で横には切り裂き辛いマシュルーの肉体も触れた部分が闇の魔力に変換され、強度なんて無関係とばかりに通り抜け、弧を描いて進む円盤はやがて地面に突き刺さって半分程が地に沈んだ所で崩れて消えた。

 

「操作が甘い。持続時間が短い。これでは及第点すら不可能だ。もう一度だ。操作を誤り自らを切り裂くヘマはするな」

 

「はい!」

 

 僕がアリアさんの成長に貢献しようと決意を固めた十分後、彼女は見事に成長を成し遂げた。

 小さな一歩ではあるんだけれど、それでも成長は成長、最初の一歩が無いと成長は始まらないからね。

 

「先ずは円盤状にした状態を維持だ。最初から望む形にするのではなく、球体を押し潰し広げるイメージでやってみよ」

 

 その成長が僕達じゃなくってレキアの指導っていうのは別に良いと思う、うん。

 何かさ、僕達の指導は見るに耐えないんだってさ。

 

『こうグッとひり出してバッと放つ感じよ!』

 

『円盤状にするのが難しい? じゃあ、出来るまで繰り返そうか』

 

 僕の教え方は最初からある程度出来るのが前提で、リアスは論外だってさ。

 それで魔力の操作に秀でた妖精のレキアが教えてくれている状態だ。

 強くなる為に手を貸すって言ったばかりなのになぁ……。

 

「一応言っておくが妾は作った顔で接する貴様が気に入らん。さっさと追い出す為に助言しているだけだ。王女の思想を得るなど、貴様の子々孫々の代に渡って生涯最高の誉れと知れ」

 

 あくまで渋々と、不機嫌と不満と傲慢を隠す気も無いレキアは腕組みの姿勢のまま僕達を見下ろす。

 目を逸らしたら怒るんだから視線は外さないけれど、普段は今みたいな高度から話しかけない訳で……。

 

 スカートが翻って中が見えそうなんだよね。ロングスカートでもヒラヒラしているし、魔法の余波で発生した風もあるしさぁ。

 

 今も太ももが少し見えたし、更に奥までもう少し。

 

 でも、パンツ見えそうだとか言えないし、露骨に目を逸らしたら逸らしたらで怒って理由を聞き出そうとするのは見えている。

 

 これで平然としている子なら助かったけれど(変な意味じゃなく)、恥ずかしがりながら喚くタイプだし……。

 

 

 

「レキア、さっきからパンツが見えそうよ? お兄様に逆ギレするんだから少し降りて来なさいよ」

 

 恥ずかしくないの? と呆れた様子でビシッと指差すリアスにレキアは一瞬だけ固まった。

 思考も止めた様子だったその一瞬から急変した勢いで僕に視線を向け、続いて慌ててスカートを両手で押さえる。

 

 その顔は耳まで真っ赤に染まり、完全にパニックに陥った様子で僕に詰め寄って来た。

 

 

「きききき、貴様ぁああああああっ!? 見たのかっ!? 妾のカボチャパン……下着を見たのかっ!? と言うか、見えそうな時点で指摘せんかぁあああああああっ!」

 

「見てない見てない。安心しなよ、パンツは見えてないから」

 

 最初は僕に指を突き付けながら腕を振り回し、続いて両手を振り回してポカポカ叩いて来るんだけれど、これは結構痛い。

 前世で観たテレビで空を飛ぶには凄い筋肉が必要だって知ったけれど、妖精も同じなのかって頭を過ぎたんだ、言えないけれど。

 

「ええい! パンツ以外は見たんだなっ!? 責任だ! 責任取れ!」

 

「責任もなにも結婚するじゃないか、僕達って。落ち着きなよ、本当に」

 

 後で羞恥で悶えるのは君なんだから、とまでは言わない。既に頭を抱えて勢いでの発言を悶えているレキアにトドメを刺す事になりそうだからね。

 

 あー、少しお腹が減って来たな。ポチに頼んだら往復に時間が掛からないからってお昼前に来たけれど、思ったよりトラブルが続いて少し遅くなりそうだよ……。

 

 

 

 

「……まあ、妾が言ってやれるのはこの程度なら。後は知らん、ロノス達とどうにかせよ」

 

 先程までの混乱なんて知らないとばかりの態度でアリアさんに向けるアドバイスを聞きながら木の根がそこら辺から飛び出した道を進む。

 

 

「えっと……頑張ります」

 

「あははははは! 擽ったいわよよ、ポチ」

 

「キュイキューイ!」

 

 その姿にアリアさんは気まずそうに目を泳がせ、リアスは余計な事を言わせまいとポチに全力で甘えさせた。

 時々出て来る魔獣はアリアさんが仕留め、そのまま進んで行く道中で僕は足を止める。

 

 

「アリアさん、一応これを飲んでてくれるかい?」

 

 渡したのは小さな容器に入った液体。ゲームではお馴染みの回復アイテムだ。

 赤は体力と傷を癒す『ポーション』青は消耗した魔力を回復させる『マジックポーション』。

 

 何方も妖精の力が込められた薬草を専門家が特別な技術で配合した物で、王国では結構値段が高騰してしまっている。

 緊急時に命を繋ぐ力があるなら仕方が無いんだけれど、王国は妖精と関係が悪化しているからね。

 

 叔母上が嫁いだ事で漸く交渉が叶って材料が少しずつ手に入るけれど、関係断絶期間に職人が大勢引き抜かれたせいで市場に出回っている物の多くは主に帝国の大商会から仕入れた品だ。

 手渡した容器の蓋を開けた瞬間、青臭さを凝縮した様な臭いが溢れ出す。

 ポチなんてリアスの服に顔を押し付けて臭いから逃れようとする位だ。

 

「うっ……」

 

 そんな回復アイテムだけれど、凄く不味い。砂糖とかの甘味料を入れると効果が落ちるとかで効果が高い純正品は薬草の苦味が凄く、逆に薄めて味を整えた物は値段もそれなりだ。

 

 僕は渡したのは当然純正品、苦味が強い代わりに効果も絶大な医者泣かせな品さ。

 アリアさんも顔を引き攣らせながらも必要なので鼻を摘んで一気に飲み干していた。

 

「凄く体が楽に……あっ」

 

 あれ? アリアさん、どうしたんだろう?

 

 空になった容器を僕が出した手に渡した彼女は一瞬身震いして落ち着きがなくなった。

 モジモジしてて周囲を見渡し、何かに耐えている風に見えたんだけれど、チラチラ僕の方を見て……成る程。

 

 察した。でも、だからって口には出せない。

 

「レキア、ちょっと相談があるのを思い出してさ。家の機密事項もあるから……」

 

 この状況であんな様子を見せられたらね、大体分かる。けれど普通にこの場から去って行ったんじゃトイレに行きたいって分かってるのを教えるのと同じだ。

 

 だから気が付いていない可能性を残しつつ立ち去るにはこれだよね、という事でレキアにも協力してもらうよ。

 

 

「チッ! 仕方の無い奴だ。おい、リアス。勝手に動き回るなよ? くれぐれも勝手に動き回るなよ? 待てだからな、待て!」

 

「アンタねぇ。私はまるで落ち着きのない犬かなんかみたいに思ってない?」

 

「犬に謝れ」

 

 さてと、音が聞こえない程度に離れるか。……え? レキアも僕に話があるって?




金さえあればラドゥーンの辺りも漫画依頼するのに

感想来ないし需要無い? 楽しいから良いんだ
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