(リメイク版)ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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シスコン マザコン 合法ショタ

 僕達がアース王国に到着して早数日、いよいよ入学式の日がやって来た。

 

 貴族の面目を守る為か街中の屋敷から向かう馬車が走り回るせいで大忙し。

 数日前から整備点検や清掃に駆り出される人達は大変だよ。

 

 この日ばかりは朝市もお休みで広い街路を馬車が連なって走る事になり、格が高い家用に開けられた追い越し車線的なのを走っている僕達は良いけれど、これなら徒歩の方が早かったって生徒もいるんじゃないのかな?

 

「お兄ちゃ、お兄さん……お兄ちゃま? 時間が来たら教えて……すぅ」

 

「こらこら、二度寝する程の余裕は無いからね? ……仕方ないなぁ」

 

 初日から遅刻なんて以ての外、時間ギリギリも問題外。貴族たる者余裕を持って優雅に振る舞え、そんな感じで身分が高い僕達はそれなりに早く、それでも早過ぎない時間帯に到着して時間待ちをする必要があるんだ。

 

 その結果、普段は朝の修行で早起きしているけれど入学式前日のドキドキで寝付けなかったリアスはコクリコクリと舟を漕ぎ、僕の呼び方だって混乱状態だ。

 

 前世でも小学校入学式の前日に似た感じで、寝ぼけたままのこの子を背負ってお姉ちゃんが小学校まで向かったんだっけな。

 

 地球もこの世界の何方も僕にとっては大切な故郷、どっちが重要かなんてないし、例え中身が別だったとしても同じ位に大切な妹だと接していただろう。

 それが中身が同じなら尚更で……。

 

「リアス、君は僕が守るからね……」

 

 改めて決意を口にする頃、他の家の新入生も続々と集まり出していた。帝国貴族派帝国貴族で、という感じで国別に馬車を停める場所は変わっているけれど離れた場所からでも分かる立派な馬車が到着するのが見えた。

 

「……来たか」

 

 馬車に掲げるのは王国の国章、貴族ではなく王族の証。

 攻略キャラの一人であり僕達を敵視しているであろうアース王国王子ルクス・アースが到着したのを横目で眺める。

 

 僕達の時もそうだったみたいに王国の新入生達が挨拶に向かう中、端の端のスペース、他の国の停車エリアにも接していない場所に停まるボロボロの馬車に視線を送り、直ぐにリアスに視線を戻す。

 

「罪悪感かな、これは……」

 

 貴族社会は綺麗事だけじゃ生きてはいけないからと苛烈な報復を見せしめにした事もあるし、領地内での活性化が隣国の領地の商売のシェアを奪ってしまうと分かっていても推し進める事だってあった。

 

 どれだけ力を蓄え潜在的な敵の力を削げるか、そう考えて他人を利用した回数なんて数え切れないし、これからも増えて行くんだろう。

 

 なのにアリアさんを利用するのを気にしている僕が居たんだ。ゲームの朧げな知識とレナに調べさせた情報だけで生い立ちを理解した気にでもなって、ちょっと関わったからって。

 

 ……あれかな? 女の子の好みとしては容姿がど真ん中だった上に黒髪に日本人の僕が反応してとか?

 ちょっとだけ、本当にごく僅かだけれども好きになっちゃったのかもね。

 

 どっちの僕も初恋は終わらせているし、貴族だから既に決まった婚約者だって二人居る上に仲だって悪くないよ、多分。

 

「僕って気が多いんだな……」

 

 うーん、妹に軽蔑されるタイプの兄にはなりたくないんだけれど、計画に支障が生じない程度には気に掛けるのはセーフだよね?

 ほら、ギブアンドテイクってのは良好な関係の基本だからさ。

 

 そんな風に自分に言い訳している僕を他所にリアスは眠り続け、時間は過ぎる。

 いよいよ入学式、僕達の人生を決める日々の開始が迫っていた。

 

 

 

 出身国関係無く五十音順に整列された新入生一同。用意された椅子は家の格に関係無く一律で、それに不満を持っていても騒ぎに騒げない理由は壇上から声を響す理事長の威圧感だ。

 

「それでは入学式を開始します。皆さん、静粛に」

 

 僕達が通う事となるアザエル学園は当然ながら王侯貴族が生徒であり、働いている人達もそれなりの家の出だったり、長い間貴族に仕えていたりとなっている。

 

 基本理念としては貴族としての地位は関係無しに平等であり、アース王国内に存在するものの各国が運営に携わった中立地帯である。

 

「……建て前よね」

 

 理事長の背後に飾られている絵画、理念を象徴する意味があるのか四属性と光属性の其々を司る五体の神が描かれているのは丸いキャンパス。

 絵の向きを変える事でどの神も頂点に移動するんだけれど、リアスは馬鹿馬鹿しいと吐き捨てる様だ、

 

「しっ! 先生方の挨拶が始まるよ」

 

 だって、あくまでそれは表向きの話であり、学園内ではそれで通っても、子供から話を聞いた実家間や学園を卒業した後の事を考えれば平等だなんて有り得ない。

 

 だからこそゲームではリアスが悪役令嬢として好き勝手に振る舞えた訳だしね。

 

 それを理解しているなら話の途中での私語や建前を否定するのも駄目だって分かって欲しいんだけれどさ。

 

 

「この学園に入ったからには……」

 

 今、その好き勝手に振る舞った理由の一人である学園理事長、そしてアース王国王妃でもある”ナイア・アース”、旧姓ナイア・クヴァイル¥の挨拶が進められていた。

 

 尚、お喋りがバレているのか一瞬鋭い眼光が貫いたよ、怖っ。どうしてこの距離の呟きが聞こえるんだ?

 

「女狐め……」

 

「帝国の犬め。王国を乗っ取らせはしないぞ」

 

 そんな彼女は僕達の叔母なのだけれど、周囲からは敵意を隠そうともしない呟きが聞こえて来た。

 

 あーあ、叔母上ったら王国貴族に嫌われてるなぁ。正確に言うなら先代国王の血筋に忠義を誓う王国貴族か現実を見られない馬鹿貴族にだけれども。

 

 こりゃ僕達だって身内が政略結婚で王妃になったから立場を利用する気だろうって思われてそうだな。

 あの人も僕達もそんな事はしないけれど、周りからすればそうはいかないさ。

 

 普通はそんな事を考えないし、そうだと知っていても何かあれば身内の情が湧くと思うのが人間だ。

 

 理事長の身内だから好き勝手に振る舞える、何かやられても悪者扱いされるのは被害者だ、って感じにね。

 

 でも、情が湧いて公私混同する人じゃないからゲームでリアスが破滅した訳で……うん。

 

 周囲には味方だと思われているけれど、実際は敵意を向ける理由の一つになる中立の人って面倒な存在なんだ。

 

「では、続いては一学年の主任であるマナフ先生からの挨拶です」

 

「新入生の皆様、初めまして。僕が学年主任のマナフ・アカーです」

 

 紹介されて台に上がったのはどう見ても子供な先生。

 銀色の髪に白い肌、モノクルを着けてはいるけれど子供らしさが残る顔付きでは知的な感じはそれ程しない。

 

 そんな見た目だけれど、年齢は僕達よりも年上で、確かゲームでは攻略キャラの中では唯一最初の好感度がマイナスじゃなく、癒し枠だの合法ショタだのとお姉ちゃんは呼んでいた。

 

「……エルフだ」

 

「エルフって初めて見たな」

 

 普段は別の種族とは関わらないエルフの登場だけあって新入生はざわめき立つ。

 僕達はメイド長を幼い頃から知っているから驚かないだろうけれどね。

 

 見せ物じゃないんだから姿を見て変な物でも見たみたいに騒がなくて良いんだけれどね。

 

 

 

 

「あれで大人でしょ? つまり合法!」

 

「あーん、抱き枕にしてペロペロしたーい」

 

 先生の姿を見ながら変な事を口走ってるのがいるよ、うわぁ……。

 

 まあ、エルフって見た目が子供の頃に成人を迎えるって話だし、変な性癖の生徒にだって慣れているだろうさ。

 

 相手は学年主任、それが生徒のアプローチに対応出来ない筈も無いし心配するだけ無駄だろう。

 

「うーん」

 

 時を見ればリアスが彼を見ながら珍しく考え事をしている最中だった。

 

「どうかしたかい?」

 

「いや、エルフって成長が遅いから先生は見た目子供でも大人でしょ? じゃあ、二十代のメイド長って何歳だろ? 聞いた事がないわよね?」

 

「何となくだけれど知ろうとしたら怖い目に合う気がするよ。止めておこうっか」

 

 うん、下手したらってか確実に僕まで会話マナーの勉強を強制させられちゃうからね。

 それにお小遣いの管理もしているから収集癖に差し障る。

 

 

「……にしても叔母上嫌われてるわよね。王国に貢献したのに」

 

「それを認めたくない周囲に嘘でも教わって、それを信じて確かめもしないのさ」

 

 リアスは不服そうにしているけれど、、僕はそれに苦笑するだけだ。真実を知っても認めず敵意を向けるのも居るけれど、とまでは口にしない。

 その筆頭であるルクスの耳に入ったら面倒そうだしさ。

 

 何度か会ったけれど僕は彼奴が嫌いだし、向こうだって叔母上の身内だって理由で敵意を隠そうともしない。

 まあ、将来何かあるにしても今は揉めるのは避けないと……。

 

「そろそろ入学式も終わるわね。帰ったら遊びに行きましょ。ショッピングに付き合ってよ」

 

「良いよ。僕も見に行きたい店があるからね」

 

 この後で教室に行ったら平等性の為にクジで席を決めて、隣の相手と一緒に挑むオリエンテーションの説明で解散だと聞いている。

 さてと、嫌な奴と隣にならなければ良いんだけれど。あのマザコン王子とかさ。

 

 

 

 

 結論から言うと最悪の組み合わせは免れたよ。教室に二組ずつ机と椅子が並べられている中、僕の席は後ろから二番目の窓側。

 窓に面していない方が僕の席だった。

 

「え、えっと。よろしくお願いします。ロノス様……」

 

「うん、宜しくね、アリアさん。今後とも仲良くしようか」

 

 同じ教室にはルクスやら以外にも周辺国の有力貴族の子息子女が集まっているけれど、最悪のパターンは免れて助かった。

 寧ろアリアさんが隣なのはリアスの次にラッキーだったかな。

 

 教室のあっちこちから飛んで来る敵意の視線を知ってか知らずかアリアさんは緊張しながらもどこか嬉しそうにペコペコ頭を下げて来る。僕と彼女も二人共に向けるものだけでなく、近付きになりたかったらしい奴からも向けられるけれど、僕が友好の証にと差し出した手を見て少し驚きながらも握り返した。

 

 不慣れな様子でオズオズと、何か失態をしないか怯えている様にも見える。

 ああ、でも嬉しそうだから何よりだ。

 

「あ、あの、私で大丈夫でしたか? その、私は……」

 

 握手した手を数秒間見つめていたアリアさん入ったら急に不安を募らせた様子で訊ねるけれど問い掛けは最後まで口にはしない。

 大丈夫なのかとは何のことなのか、最後まで言わなくても分かりはするけれど、口に出すのも嫌なんだろうね。

 

「大丈夫さ。僕は強いからね。それに聖女の子孫で次の聖女の兄が闇を扱うだけで相手を怖がってどうするのさ。ああ、それに……」

 

 言葉を区切った僕は適当な仕草で後ろの席に突っ伏して眠っている奴を親指で指差す。

 

 クラスの人数が奇数だったせいで一人だけ隣の生徒が居ない男、燃える様な濃く鮮やかな垢の神を斜め後ろに向けて逆立たせ、胸元のボタンを全部外して逞しい胸筋を晒したヤンキーっぽい同級生。

 

「……あっ?」

 

 声を掛けられて直ぐ起きるのは軍人の家系で受けた訓練のお陰なんだろうけれど、その顔は凶悪だ。

 開いた口から覗く鋭利な八重歯に鋭い目付き、小さい子供が見たら泣くんじゃないかな? 

 

 いや、実際泣いたんだった。

 

「転んだ子供に手を差し出したら顔が怖いと泣かれる様なむさ苦しい男子よりも君みたいに可愛い子が隣な方が良いさ。だろう? フリート」

 

「起き抜けに何言ってやがる。どうせテメェの事だから妹が隣なのが一番とか思ってんだろ、ボケがよ」

 

 彼の名はフリート・レイム。アース王国で代々将軍を任され軍を率いる家系の次男坊で僕の友人だ。

 

「まあ、闇属性だろうがウゼェ野郎が隣よりはマシなのは認めるわな。……俺に敵対しなけりゃ髪が黒かろうがどーでも良いから絡んで来るなよ」

 

「は、はぁ……」

 

 流石は雨の中で捨て猫に傘を差し伸べるのを通り越して飼い猫にする系のヤンキーだ。ぶっきらぼうにアリアさんに言葉を向けた後で再び寝直した彼にアリアさんも困ってる。

 

 

「そこで君も婚約者が隣なのが一番って言えない所が駄目だよね」

 

「……うっせぇ」

 

 自覚があるならちゃんと口にすれば良いのに。分かっていても口に出して欲しい時ってあるのにさ。

 

 

 

「……話がある」

 

 ちょっと婚約者関連でフリートを弄ろうと企んだ時、わざわざ離れた席から近付いて来た相手の声が背中に向けられ、周囲のざわめきを聞きながら視線を向ける。

 

 水色の髪を整えた表情の殆ど動かない長身の美形、アース王国王子ルクス・アースが僕の隣に立って睨む様に視線を向けて来た。

 

「で、殿下!?」

 

 アリアさんったら驚いて立ち上がるなり頭を下げているや.まあ、言っちゃ悪いが貧乏な木っ端貴族と王子じゃ当然の反応だけれども……ちょっと妙だな。

 

 彼女と接していると態度に違和感を拭えない。うーん、何か知っているけれど靄が掛かった状態で思い出せないね。

 

 それにしても何の用だろう?

 

 運良く友人と隣の席になってお喋りをしていたリアスも意識をこっちに向けていつでも動ける体勢になっている。

 僕はそれを手の動きだけで宥めるんだけれど、どうもルクスの様子が変だな。

 

 

 

 

 

「アリア・フェレス。オリエンテーションとして行われるダンジョン探索で私達と勝負しろ。其方が負けた場合、学園での行動を制限させてもらう」

 

 ……おや、僕がターゲットじゃなかった? とも言い切れないか。

 

 

「え? あ、あの……」

 

 アリアさんの戸惑う姿と教室に広がるざわめき、それが学園の理念なんて建前でしかないと告げているみたいなものさ。

 まさか、学園の決まりで校内では平等だから従いません、そんな言葉を弱小貴族が王子に向けられる筈がないからね。

 

 これは勝負の申込みに扮した命令であり、公の場で次期国王はフェレス家を嫌っていると喧伝する行為。

 僕が知る彼はマザコンなのを除けば比較的冷静で考え無しではないだろうに、こんなやり方は暴君として嫌われるよ。

 

 実際、ルクスの隣の席だった眼鏡もアリアさんを疎んでいる感じだったけれど動揺しているし、王国貴族は飛び火を恐れて顔を背けていた。

 

 さてと、此処で何か……。

 

 

 

 

 

「ダッサ! 情けないわね、王子のくせに」

 

 言おうとしたらリアスに先を越された。わーい、流石は兄妹だ。黙っていられないシチュエーションが同じだね。

 

「……何だと?」

 

「あれれ〜? 聞こえなかったの? ああ、その子の持つ力が怖く

ってガクガク震えててそれどころじゃなかったのね」

 

「……はぁ」

 

 一触即発な剣呑な空気、挑発に乗って振り返ったルクスをリアスが更に煽る中、僕は二人の間に割って入った。

 

 国境でのイザコザの燻りが漸く解消したっていうのに何をやっているんだか。

 

 

 

「リアス、見かねたのも分かるけれどそこ迄だ。ルクス殿下、そっちも強引なんじゃないかい? こんな大勢の前で自国の貴族を甚振る真似なんかしてさ」

 

 本当に嫌われてるなあ。これは傍観でいられる範囲を超えてしまったよ

 

 不安そうにするアリアさんに笑顔を向けるけれど、僕の内心は最高に最低な気分だった。

 

 

 




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