(リメイク版)ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「もー! お兄ちゃんったら相変わらずなんだから!」
気にしている胸の事を口にした罰として渾身のローキックを叩き込んだけれど怒りは全然治らず、メイド長に見付かったらお小遣い減額三回目を喰らいそうな乱暴な足取りで屋敷の中を歩いていた。
時折、すれ違うメイド達が左右に分かれてお辞儀をして去っていくけれど、その胸は多少の差はあれど私より大きいのばかり。
いや、そもそも私より小さい相手って幼児とか程度?
見習いとかには子供だっているけれど、そういう子達は主人一家の見えない所で勉強中だし、自分の胸をペラペラ触る。
揉むのはちょっとコツがいるのよね、なんで?
「肖像画を見てる限りじゃ遺伝しても良い筈よね?」
階段の踊り場に飾られた家族の肖像画、金色に近い黄色の髪をしたお母様は胸がそれなり、私はペタペタ。
成る程、詰め物か盛って描かせたのね、多分。メイド長なら絶対真実を知ってるわ。今度聞き出しましょう。
私の胸の大きさが遺伝だと分かった所で次はお兄ちゃんへと思考を移す。
優しくって守ってくれて助けてくれる最高最強のお兄ちゃんだけれど、大きな胸が好きなのよね。
いや、異性としては見てないから別に良いんだけれど、妹が持たない物に強い関心を抱くってのにモヤモヤするわ。
それと私達の知り合いで一定以上の付き合いがある奴ってそれなりにあるのよね。
あのチビっ子には胸囲が何センチかで確実に勝っているけれど、レナとかには微妙な差で負けてるもん。
これが前世なら未だ勝機は……駄目だ、多分負ける。
前世のお母さんは覚えていないけれど、お姉ちゃんも年齢の割に小さかった。
「え? 私って生まれ変わっても巨乳とは無縁なの?」
頭に浮かんだのは絶望の疑問。下を見れば視界を遮る物は殆ど無く足元が見えた。
流石にねぇ……? ほら、可能性は残ってるし?
腕を組んでウンウン悩むけれど胸が小さいと邪魔にならないし、激しく動いても揺れない胸は戦闘の妨げにはならないから胸なんて小さくて別に良いのだけれど……。
「そんな事よりも小腹が減ったわね.……」
口寂しさを覚えてお腹を摩る。朝ごはん食べ足りなかったのよね。
お昼ご飯には時間があるし、こう肉とかガッツリした味の物をパンで挟んだ奴とか食べたいんだけれど、メイド長が絶対許してくれないだろうし……。
「財布さえ持ってれば帰りに買い食いしたんだけれどね」
貴族令嬢とか聖女って結構面倒な物よね。服とか放り出して下着丸出しでベッドに寝転がりながらお菓子食べたりしたら怒られるし、人前で大欠伸したり勉強中に眠りこけても駄目だし。
実家なら部屋にお菓子とか隠しているんだけれど(直ぐに掃除のメイドに見付かるけれど)此処は数日前にやって来たばかりの別荘。
使用人は馴染みの子達を集めてくれているんだけれど、だから下手な真似しても直ぐにバレちゃうわ。何も言わなくても大抵の事はやってくれてるってのは助かるんだけれど。
特にメイド長! 何処からともなく現れて悪さを見抜くんだから!
そろそろお小遣いで新しい服を買いたいし、読みたい本の続きだって出る頃。
なのに今月はメイド長に二回も減額食らってるし、お兄ちゃんにお金の事で頼りたくないのよね、他は良いけれど。
正直私はゲームの事なんて殆ど覚えていないし、今後の情勢とか暗躍する敵の対応? とかその手の事は大体お兄ちゃん任せにするんだもの。
でも、その代わりに私は思いっきり暴れるの。お兄ちゃんなら大抵の事はどうとでもなるし、そこに私が加われば最強無敵ってもんでしょ?
その為に強くなったんだもん。これで一緒に居られ……あれ?
「あのぉ、私が若様のお背中を洗うというのは如何でしょうか?」
「おや? 倉庫の整理が終わったら屋根の掃除までしたいとは張り切ってますね」
空気の入れ替えの為に開けていた窓の外を見れば、レナがメイド長に首根っこ掴まれて裏庭の方に連れて行かれている所。
つまり少しの間はメイド長の手が埋まってる?
よし! 調理場に忍び込んで摘み食いのチャンス!
そうと決まれば抜き足差し足……何だっけ? 千鳥足……じゃなかったわよね? 勇み足?
あ! 忍び足よ、忍び足!
「駄目ですよ、お嬢様」
あ、うん。掃除中のメイドも顔馴染みなせいで考えが読まれてた。
そろりそろりと調理場に向かい、扉近くの壁に背を当てて中の様子を音で伺う最中、聞こえた声に流石に諦める。
ええ、今はね。夕ご飯の時こそ絶対に成功させてやるんだから!
「またメイド長に叱られますよ?」
「……うん、分かった」
あーもー! うちのメイドって本当に優秀よね。また考え読まれちゃったじゃない。
「うーん。今から街に飛び出して買い食い? でも礼儀作法の勉強があるし……」
部屋に戻ってお気に入りの絵本をベッドの上で読みながら悩む。
レナは仕事を与えれば投げ出さないだろうし、他の用事を済ませたメイド長が来るまで時間はそんなに無いわよね?
お小遣い減額か今の小腹か、ちょっと迷うわ。
お兄ちゃんじゃなくレナにお金を借りようかしら? でも、前にバレて怒られたのよね。
「ああ、でもお兄ちゃんが……」
何か計画してるみたいだし、私を頼るのは間違いないから残っていた方が良いわよね。
ぶっちゃけ考えて動くのは面倒だし、聖女のお仕事の時はカンペとかアドリブでどうとでもなっているから直感で動けば良いって思ってる私だけれど、お兄ちゃんが何かを考えていたなら別よ。
邪魔はしたくないし力になりたい、なんなら頼られたい。
そんな訳でお兄ちゃんがお風呂から上がったら詳しく話を聞こうと思って部屋を飛び出して廊下を進んでいると客用の浴室からアリアが出て来た。
お風呂でお世話されたのか一緒に居るメイド達に戸惑っている様子だけれど……分かる。
ほら、前世では未だお姉ちゃんに髪の毛洗ってもらってたし、今でも髪や体をメイドが洗って全身ピカピカもツルツルにしてくれるんだけれど、偶には一人でのんびり入りたいのね。
修行で山奥の小屋に行った時とかは同行するレナにお願いして一人で入浴するんだけれど、屋敷ではそうは行かないのは困り物。
「あっ、お風呂いただきました、リアス様」
ペコリと頭を下げた時に揺れる、レナに匹敵する大きさの胸が。
お風呂上がりで顔は少し赤く染まり、ほんのり上気したお肌、ちょっと色っぽいわね。
「そう。湯加減はどうだったかしら?」
「久し振りにお風呂に入れて気持ち良かったです。お湯加減もちょうど良くって……」
うん? お風呂が久し振り? 女子寮にもお風呂ってある筈よね?
ちょっとした疑問が浮かぶけれど、アリアの背後でメイドが首を左右に振るから口には出さない。
うーん、気になるから本人が居なくなったら理由を聞いてみましょうか。
嬉しそうなアリアの様子からして多分聞いちゃ駄目な事だろうと一旦他所に置いておく事にして、この後で疑問を直ぐに忘れた私が気になったのは呼び方だから。
「別に様付けじゃなくって良いんじゃない? 学生の間は平等ってなってるじゃない、一応」
「い、一応……」
よく分からないけれど、お兄ちゃんが隣の席って事は今後も授業とかでペアになるんだろうし、確か強くなってもらわないと困るのよね?
その程度は覚えているわ、何となく。
「どうせ今後も関わるんだし呼び捨て……は駄目か。さん付けで良いわよ。私は呼び捨てにするけれど」
「は、はあ……」
よーし! じゃあ、お兄ちゃんの為にも私だってこの子の強化に手を貸しちゃいましょうか。
「オリエンテーションに向けて今から鍛えるんだし、装備を整えましょうか。ほら、ついて来て」
「わっ!?」
勉強をサボる大義名分は手に入れたし、思い立ったら行動あるのみだと、私はアリアの手を取って走り出す。
ちょっと躊躇いがちに握り返された手の力はか弱いし、オリエンテーション迄に石を握ってヒビを入れられる程度には強くなって欲しいわよね。
それにしても柔らかいし細い手ね、この子。
「あ、あの! リアスさ….んは私が嫌じゃないんですか? だって私って闇属性で……」
「甘いわね。私なんて光属性よ? そしてバリバリ鍛えているし、このまま初代を超えて世界で二番目に強くなるの。今から貴女が頑張っても追い付けない強さなのに、何を嫌がるのよ?」
本当に何を言ってるのって感じじゃない? 私、天才。そして努力してる。
そりゃ闇属性って攻撃的な性能してるんでしょうし、主人公なら才能も凄いけれど、私は絶対もっと凄いもの。
「えっと、世界で二番目? じゃあ、一番は?」
「お兄様に決まってるじゃないの」
そんなの決まってるじゃないの。私の大切な自慢のお兄ちゃんなんだから絶対世界一強いわよ。
「な、成程。確かにあの人は頼りになりますよね。……素敵な方ですし」
お兄ちゃんを自慢する様に胸を張って鼻を鳴らす。自慢? いやいや、当然の事実を言ってるだけよ?
アリアだって笑いながら納得した感じだし間違って無いでしょ、絶対。
それにしても素敵な方、か。うん、分かってるじゃない。
「あっ! いえ、その、素敵な方というのはですね……その」
「はいはい、分かったわよ。それでアリアの得意な武器ってある?」
「武器ですか?」
「そう、武器。モーニングスターとかメイスとかバトルアックスとかバスタードソードとか」
「いや、そんな重量系の武器とか使えませんよ? 騎士じゃないんですし……」
アリアの家って貧乏みたいだし、兵士以外に回す予算とか無かったのかしらね。
私は全部使える上でハルバートが一番手に馴染んだし、取り敢えず全部試してみないと始まらないわよね。
魔法メインなら動き回らないから装備もフルプレートの鎧とかの重量級でも問題無しでしょうし。
でも素人にあまり無茶させるのも……。
私は自分が優れてるって自覚有るし、それを基準にしたら駄目だと思う。
武器って使い方を間違えたら自分で自分を傷付けちゃうし、別にそれはそれで慣れれば良いだけの話なんだけれどね。
「アリアって何十キロ迄なら一時間位身に付けて飛び跳ね回れる?」
王国の貴族がどれだけ動けるか知らないけれど、これが基準よね。四十……いえ、三十キロ程度なら楽勝でしょうけれど。
「そもそも一時間も飛び跳ね回るのが無理ですけれど!?」
え? マジで!? 体力無いわねー。私なら三百キロのお守り身に付けて半日飛び回りながら戦っても平気なのに。
いや、違うわね。アリアってちょっと手足が細いしご飯が足りてないのよ。
じゃあ、出掛けて帰って来たらご飯用意させようかしら。寮の居心地が悪いなら食欲湧かないでしょうし。
そうと決まれば善は急げ……メイド長に捕まる前に出掛けないと。
時間は殆ど残ってないでしょうし、近くのメイドに口止めをした私はアリアの腰に手を回した。
「ごめん! ちょっと急ぐから舌噛まない様に注意して!」
そのままアリアを荷物みたいに肩に担ぐ。
腰細いし軽いわね、この子。なのに胸だけはあるってどうなってるの?
栄養とか全部胸に行くタイプ?
ゲームの私が敵対していた理由ってそれなんじゃないのかと思いつつ少しだけ前傾姿勢。
この先の廊下にメイドの気配は無いし、確か飾りとかは無いからぶつける心配も無い。
つまり……。
「へ? それってどういう……ひゃぁああああああっ!?」
次の瞬間、私は何も心配する事無く風になった。目指すは武器保管室、それなりの広さを持つ屋敷で現在地とは端と端だけれども、私の足なら強化無しでも二十秒!
それにしても軽いわねー。筋肉足りてないんじゃないの? 鍛えて肉食べなさいよ、肉!
まあ、そんな訳でやって来た武器保管室。そこでアリアに色々と武器を試してもらったんだけれど……。
弓……引けない。弓の弦に指が食い込むだけだし、プルプル震えて狙いなんか定まらない。
剣……持ち上がらないか、持ち上がってもフラフラしてて危なっかしい。
鈍器……剣と同じ
「うん。無理! 筋トレから始めましょう!」
「う、腕がプルプルします……」
防具も鎧の類は転けて起き上がれないし、これは仕方無いわね。えっと、アリアでも使えそうな武器は……。
取り敢えずとばかりに選んだのは少し厚い布地の純白のローブと先端に光る石が嵌め込まれたワンド。
「わあ! これ、凄いですね。このローブは羽みたいに軽いですし、ワンドは持つだけで魔力が漲って来ます」
うんうん、なんかお兄ちゃんが言うには聖獣? とかの毛を使ってるとか、世界樹? の枝を使ってるとかだったわね。でも、うちには実家にあるのと合わせて二個ずつあるから別に貸し出して良いでしょ。
「じゃあ、行きましょうか。……メイド長が来る前に」
ローブとか取る時に鍵とか少し壊しちゃったし、見つかる前に逃げ出さないと……。
感想待ってます