はじめまして! 私は『マシュ・キリエライト』。社会人2年目、普通の日本人OLです
趣味は法螺貝集め。美術品みたいな美しい貝で音を鳴らすのは悪いことをしているようで快感です! 問題点があるとしたら一個の値段が(ピンキリだけど)高いことでしょうか…………
現在15時、仕事も終わったので巨大商業施設に来てます。欲しかった法螺貝は集めきってしまい、若干燃え尽き症候群気味…………
まあもしかしたらいい法螺貝があるかもしれません。そんなことを考えながら、法螺貝ショップに行こうとエレベーターに乗って、
間違えてカードショップに来てしまいました!?
ショップの看板には『Queen Anne's Revenge』って書いてあります。だいぶ物騒な名前ですね。というかこの店、階層丸々一個カードショップでそれが2階層もあります。…………こんなに大きいお店なんですか
平日なのに結構お客さんいますね…………というかおじさんとかお兄さんとか男性客ばかり。なかなか場違い感強い。うーん、目をつけられないうちに階を移動しますか
「私のターン!!!!!!!」
んっ!? すごく大きな声! というか女性の声でしたね。声の方向にはカードで遊ぶエリアが広がってました。そこの一角に2人、女性がカードをしていたんです。…………というか片方私が知っている人でした
私が知らない方の人。彼女は三つ編みの長いおさげを一本ぶら下げ、メガネをかけ、耳はバチバチのピアス、ゆっさゆっさな豊満なバストをはじめとした身体のラインがこれでもかとでまくっているドスケベなドレスを着ています
知らない方の人はアームロング・グローブをつけた手に持っているカードを一気に広げてました
「『墓の駐屯兵団・兵馬俑』を出して、その効果で墓地の『迅雷銃士』を再度場に召喚! また『達筆なる大将軍・孫子』をコストに『秘伝・孫子の兵法』を唱える!! 誘発効果によって私の切り札『一騎当千の覇王・項羽』を召喚するわ!!!!」
何を言っているのかさっぱりわかりません。所々中国ぽい用語が聞こえてくるのは分かるのですがそれの意味するところは想像できませんね…………
「あ〜❤︎項羽様! いつ見ても凛々しいお姿❤︎何度召喚しても飽きない最高のカード❤︎」
メロメロうっとりと言ったところでしょうか? くねくね動く知らない人は側から見てて恐ろしさすら感じます
「ふふん? 後輩! 私のこの布陣は無敵よ! これの前に何ができる?」
ニヤつく顔を前面に見せて私を知っている方の人を煽ってます。だいぶ見苦しいですね…………
私が知っている方の人。オレンジ色の髪にアホ毛とサイドテール。プルプルの豊満なバストを挟み込むことでこれでもかと強調する2本のベルトがついた白の上着に黒いスカート、細く見せる黒のレギンスを着てもなおむっちりふとましい太もも
間違いありません。彼女は『藤丸立香』。私が勤めている『カルデア社』の1年先輩です。活動的でみんなから人気を集めているドスケベな先輩です。私も先輩と普段から交流がありますが、まさかこんな趣味があるなんて思いませんでした
先輩は自分の持っているカードを軽く見てさっと一枚出しました
「えーと、『オペレーション・アイビー』でミサイルトークン作って、『投石創造・デヴカリオン』に乗せて、効果発動して、パイセンの盤面を全破壊」
「ぎゃばぁ?!」
あっ、私が知らない方の人が白目剥いて口を開けて倒れました! その間に盤面にたくさん広げてたカードが先輩の手であっという間に片付けられていきます。何というか哀れですね…………
知らない方の人は全身をプルプル震わせて何とか立ち上がりました。余程ショックなのでしょう、若干涙ぐんでます
「ちょっと立香?! あんた、アルゴー・ビートのくせに何水爆積んでんのよ!?」
「いやーっ、パイセンになら突き刺さるかなぁって」
「本当ムカつく!! 環境デッキに要らないもの入れちゃってさぁ!」
「それが私の楽しみなんでねぇ! へいへい、どんな気分? いっぱい連鎖して盤面整えたのに更地にされた感想聞かせてくださいよぉ〜!」
先輩がすっごいいい笑顔で知らない人煽ってますね。…………あのニヤケ顔、普段とのギャップでキュンとします
「ひぃっひっひっひっひっ…………あっ」
あっ笑ってた先輩と目が合いました。ものすごい形相でこっちに走ってきます
「ま、マシュ?! どこまで見てたの?! …………っていうかいつからきてたの!?」
先輩は私の肩を掴んで揺さぶってきます。私が先輩を懇願させている? …………ふぅ
「あ、えーと、先輩が向こうの人の盤面を吹き飛ばしたあたりでしょうか?」
「結構見てる〜!?」
ジタバタ喚いている先輩を写真に収めたい衝動を抑えつつ、私は先輩を起こしました
「気にしてませんよ先輩!」
「ぐすっ…………カードゲームで性格悪いこと誰にも言わない?」
「言いませんよ。私の心にしまっておきますよ」
「本当?」
「本当ですよ! 本当」
先輩は落ち着いたように涙をティッシュで拭いて鼻をかみました。ただのはなかみも先輩がすれば絵になりますわ…………
「ちょっと後輩一体どこ行ってるのよ全く。感想戦途中で行くなんて!?」
「あーすいませんパイセン。あっマシュ、この人『虞美人』。私がやってるカードゲームの先輩でいい年して親の遺産で生活してるニート。パイセン、こっちはマシュ・キリエライト。うちの会社の後輩で、可愛い茄子ちゃん」
「ふーん? つまり後輩の後輩なわけね? よろしくね」
手を差し出してきたので私は握り返しました。うわ、ほっそい
「しかし、大きなカードショップですね」
「そりゃあね! マシュ、ここは関東で一番大きなカードショップなのよ」
「関東で!?!?」
「びっくりするのは早いわマシュ後輩。ここに通う人間は常連で500人くらいはいるわ」
「虞美人さん。すいませんがそれ多いのかいまいちわかりません」
しかしこれほど規模がでかいものだなんて知りませんでした。一体何がそんなに惹きつけるのでしょうか?
「先輩。ここのカードショップって何を取り扱って?」
「おっ? マシュ、もしかしてカードに興味が?」
「恥ずかしながら…………ちょっと湧いてます」
「いいね! プレイヤーは多いほど楽しいからね」
そういうと先輩は私を引っ張っていきました。目の前に広がるのは、カードがガラスのケースに散りばめられている場所です
「このショップで取り扱っているのは『Fate/civilization』だがだね。マシュは知ってる?」
「有名なカードゲームですよね? 確かアニメとかゲームとかもある」
「ふっ、パンピーにも知られているいいカードゲームよ。もちろん項羽様も有名よね?」
「いやそれは知りません」
私の返事に落ち込んでしまった虞美人さんを無視して先輩は話を続けます
「ここら辺にあるカードを40枚以上集めて、相手と戦う戦略ゲームだね。『Fate/Civilization』、略して『FC』ていうんだけどね。このカードゲームのいいところは人口が多いことかな」
「あーなるほど。遊ぶ相手が多いからいいんですね」
「マシュは飲み込みが早いなぁ」
頭を撫でられました! 嬉しい…………
「日本で業界シェアNo.2。世界大会もよく行われてるほどの大人気カードゲームだからね。今から始めても全然遅いなんてないよ!」
「はえーそうなんですね。…………そういやここのケースに入ってるカードは何ですか?」
「ここはレアカードを売ってるコーナーだね。強いカードだったり単純に封入率が低いカードとかはここに売ってるよ」
「因みに項羽様もここにあるよ、マシュちゃん」
「今はないけどね」
「何でないんですか?」
「そこのパイセンがすぐに買っちゃうんだよ」
「強いカード何ですか?」
「いや微妙…………ネタ人気はあるけど」
「ふっ! 項羽様はカードパワー、デザイン、性能が全てに噛み合っている神カードなんだよなぁ」
「それ言ってるのパイセンだけっすよ!」
中指突き立て合う2人を私は何とか抑えて、話を戻しました。煽り合うのは勝手ですが何とかしてほしいですね本当に…………
「先輩、強いカードの基準とかあるんですか?」
「うーんそうねぇ。まあ色々要因があるんだけど、割と可愛いカード、もしくはかっこいいカードだったら強いカードの可能性が高いかなぁ」
これかなと先輩は言いつつ例を指さします。『災厄に座る者・ギャラハッド』というカードですね。キラキラしているし盾持って座っている騎士もかっこいいです。値段は…………20万?!
「高い法螺貝が買えるくらいの値段じゃないですか!」
「…………法螺貝って結構するんだね」
「それはこっちのセリフですよ先輩! …………しかしこのカード随分高いですね」
「当然でしょマシュちゃん。このカードはね。アニメでも大活躍したキャラクターを限定デザインでカード化した物なんだから。強い上に封入率も低い。だから高いのよ」
虞美人さんの説明に感心してしまいました。この人、項羽とかいうカードが絡まなければ割とまともなのではないでしょうか?
「まあこのギャラハッドは別としてここのゾーンにあるのは大体5-10万くらいかしらね?」
「安いカードは幾らくらいなのでしょうか虞美人さん?」
「あー、10円くらいかな」
「安すぎますね」
「まあそんなに強くないし、たくさん刷られているからね」
そう言いながら、束になって置いてあるカードに近づくと、虞美人さんは全部みて、数枚引き抜きました。…………あれ?
「弱いカードなのに買うんですか?」
「ん? …………ああっそうね。私の思うカードゲームの面白いところはね、弱いカードも状況に応じちゃ刺さる可能性があるところなのよ。今選んだこの50円のカード、正直強くはないわ。でも私の使う項羽様とは相性がいいカードなの。これでもっと項羽様を強くさせることができるのよ❤︎」
またくねくねし始めました。この人カード基準は項羽様で回っているのでしょうか?
「マシュ、せいかーい!」
「先輩?! 私の心を読んで…………!」
「ふっ! 可愛い後輩の心理なんてお見通しなんだぜ」
イケメーンっ…………!
「ということは先輩にもカードを選ぶ基準があるんですか?」
「ああそうね。私は基本的に『環境デッキ』かなぁ」
「環境デッキ?」
「うん。カードゲームって定期的に新しいカードが入るんだけどさ。そのカード全て込みで一番安定して勝率が取れるデッキを環境デッキで言うんだよ」
「なるほど…………さっき虞美人さんが言ってたアルゴー・ビートというのも」
「うん、今の環境デッキの一つだね」
「あれでも先ほど虞美人さんは文句言ってましたよね?」
「よく聴いていたね…………うん、私捻くれててさ。ただ環境デッキ使うのつまんないから一部カードを入れ替えたりしてるんだ」
「それでいいんですか?」
「うーんまあ丸くはないけど、カードゲームの遊び方は自由じゃない? 私は勝ちたいけどちょっとそのまま使うのは嫌だってへそ曲がりがあるからね。今のスタイルが私に一番あってるよ」
そう言いながら目をキラキラさせてカードをいじる先輩は普段の仕事しているかっこいい先輩とはまた違った魅力に光っていました
…………私もやってみたい。先輩と同じ世界にいたいな
「先輩、私Fate/civilizationをやりたいです」
「…………本当? 本当に?」
「はい! 今欲しい法螺貝正直ありませんし…………新しい趣味を始めるにはいい機会だと」
「嬉しい…………!!」
「いい後輩持ったじゃない立香…………!」
ジーンと感動する先輩と虞美人さん。互いに握手してます。なんか妙に息が合ってて面白いですね
「あっそうだ。始めたいんですけど、何から買えばいいのかわからないんですが、御二方どうすれば?」
私の質問に答えたのは虞美人さんでした
「んー。まあまずは構築済みの公式デッキが丸いでしょうね。この『スタートデッキ』てやつがおすすめよ」
虞美人さんの手には三つほどの長方形の箱がありました。赤、青、紫がそれぞれ塗られています
「どれがいいとかあります?」
「この三つはまあどれも同じくらいの強さだね、マシュ。まあそれぞれカードデッキの特性は違うけど」
「そうなんですか?」
私のハテナに答えを返したのは先輩の方です
「赤は『花の戦争デッキ』。とにかく攻撃をしまくるデッキだね
青は『勝利のケルトデッキ』。相手の行動を阻害して粘り強く戦うデッキよ
で最後の紫は『ルネサンスの目覚めデッキ』。先二つのデッキの中間で万能に立ち回る器用な感じかな。好きなの選べばいいよ」
好きなのを選べばいい。この言葉は悩みますね。右も左もわかんない赤ちゃんな状態の私。ここはフィーリングで選ぶ感じで行きますか…………
「じゃあ、この美人さんが表紙の『勝利のケルトデッキ』にします」
「おっいいデッキ選んだねマシュ。じゃ私は『花の戦争デッキ』買うか。あっパイセンは『ルネサンスの目覚めデッキ』買ってくださいよ」
「えっ? なんで?」
「マシュが買ったんだから買ってください!」
「ええ…………」
「わたしがさっき勝ったんだからいうこと聴いてくださいよ」
「はい」
こうして私たちは三つデッキを買いました。値段は一つ1000円。お手頃価格です
せっかく買ったということで私たちは対戦もすることになりました。手取り足取りルールを教えてもらえて私はその時点で満足です!
今は先輩と戦ってます
「私のターンね。場にある『イーグルの戦士』2体を生贄にして、私の切り札『ジャガーの戦士長』を産み出すよ!」
…………ん? この動きもしかして
「虞美人さん、さっきの動きこのカードの効果に入ります?」
「入るよマシュちゃん。よくわかっているね」
「じゃあこのカード使って、その動きを妨害します!」
「なにっ?!」
唖然としている先輩。どうやら私の動きが想定外のようですね!
そして次のターン、私はデッキの切り札である『勝利の女王・ブーディカ』を出して勝ちました! 初対戦に初勝利です!
「構築済みデッキとはいえあんたが負けるとはね」
「いやマシュ、マジでいいセンスしてるよパイセン」
「まだ時間ありますよね? 今度は虞美人さん、やりましょう!」
「ええ〜しょうがないねぇ! 項羽様入ってないデッキ使うのは今回が最後だから!」
「その次はまたやるよマシュ!」
こうして私は負けて勝ってを繰り返し…………
『終わりですぞ〜今日はもう締めますぞ〜』
「あっ黒髭店長の声だ。閉店時間ね」
先輩がスマホをつけて時間を確認しました
21:00、だいぶ遊びましたね…………
「もう少し遊びたかったです…………」
「楽しい時間はあっという間に過ぎるものよ」
「わかるマシュ、私も時間を忘れてやりまくってたわ。…………あっそうだ」
先輩は私と虞美人さんの方を見ていいます
「この近くでいい店あるから終電くらいまで飲み行かない?」
「いいねぇ立香! 今日は新しいプレイヤー誕生日だしね」
「あっ、カードの話する時は私の悪かったところ教えてください! 今後の参考にしたいです」
「…………マシュ、君まじ強くなるよ」
外はすっかり暗くなり、ギラギラとネオンが街を照らしていました。私たち3人はひたすらに飲み明かすと酔い潰れた虞美人さんを送ることになりました
この日を境に、私はカードゲームという沼にどっぷり使ることになるのです
人物紹介
マシュ・キリエライト
カルデア社社員。24歳。主人公。ショップランク未登録。真面目だが天然なところもある。下戸。158cm、Mカップ
藤丸立香
カルデア社社員。25歳。マシュの一つ上の先輩。ショップランク3位。活発的な性格。下戸。161cm、Lカップ
虞美人
不動産管理で生活しているニート。年齢不詳(少なくとも立香が子供の頃から今の姿だった)。ショップランク64位。項羽様命。意外と面倒見がいい。極めて下戸。160cm、Kカップ
黒髭
カードショップ『Queen Anne's Revenge』の店長。38歳。ショップランクなし(参加資格がない)。古すぎるオタク。紳士なところもある。酒豪。210cm