よろしくお願いします
「さて、料理を作りますか」
みんなが練習している間、俺は天王寺の食生活を心配して、ご飯を作ることにした。そして現在、調理室にいる。
土曜日ということもあり、他のメンバーは弁当を持参している。
しかし、ご飯を作る前にふと考えた。
天王寺って何が好きなんだ?
「うーん、無難にあれにするか」
俺はハンバーグを作ることにした。理由は、みんなの分も作れるからだ。
3人が出来立てを見れば、他の人も欲しくなると思ったからでもある。
しばらくして——
コンコン
「失礼します」
扉のノック音とともに、扉が開いた。
その音に反応して、俺は振り返る。
「京平さん、練習終わりました」
呼びに来てくれたのはせつ菜だった。
「わざわざ来てくれてありがとう。今から行こうと思っていたところだ」
俺は用意したハンバーグを持って、せつ菜とともに部室へ向かう。
「今日も美味しそうですね」
作ったハンバーグを見て、せつ菜が褒めてくれた。
「ありがとう。サイズは小さいけど、みんなの分も用意してあるよ」
「作ってくれたんですか!?」
せつ菜は驚いた様子で言う。
「そりゃ、全員揃ってるからな。それに、みんなで一緒に食べた方が美味しいだろ?」
俺は3人分だけでなく、みんなが一緒に食べられるように多めに作った。
「でも、材料費とかかかるじゃないですか?」
「心配するな。お金ならどうにでもなる」
そう会話をしながら部室にたどり着いた。
扉を開けると、ほかのメンバーはすでにご飯の準備をしていた。
「京平、遅いよ」
侑が文句を言いながら座っていた。
「そうか?急いできたつもりなんだけどな」
各テーブルには、みんなそれぞれ弁当を広げていた。
「ハンバーグ?」
歩夢が俺に質問してきた。
「あぁ、運動した後だからハンバーグにした」
俺は歩夢、侑、天王寺の前にハンバーグを置いた。
「いい匂い」
「美味しそうです」
天王寺の隣に座っていたかすみが、ハンバーグに見惚れていた。
ちなみに、お米は家から持ってきている。俺の分を天王寺に渡した。
「他の人の分もあるから安心しろ、かすみ」
俺はほかのメンバーにも小さいハンバーグを配った。
「さすが京平先輩!かすみんのこと、よく分かっていますね!」
かすみは嬉しそうにハンバーグを見つめる。
「それじゃ、いただきましょうか」
せつ菜の号令で、みんな揃って「いただきます」をした。
みんなで食べる食事。それは久しぶりの感覚だった。
目の前に置かれたハンバーグを見て、私は思わず唾を飲み込む。
箸で一口サイズにして、口の中に入れた。
食べた瞬間、口の中いっぱいに広がるお肉の旨味。
ソースが絡み合い、絶妙な味を生み出している。
「おいしい」
この感覚は久しぶりだった。
温かいご飯があることの幸せを、改めて実感する。
「京平、今日も美味しいよ!」
高咲先輩が、川木先輩にグッジョブのポーズを送る。
「いつもと同じように美味しいです」
「本当ね。ねぇ川木君、私の専属料理人にならない?」
みんなが次々と感想を言う。
「侑いつも通りだよ。しずくもありがとう。最近は作ってなかったよな
果林先輩、俺は料理を仕事じゃなくて趣味にしたいので、無理です」
川木先輩は、嬉しそうに微笑んだ。
「りなりー、どうしたの?」
中須さんの反対側の隣に座っている愛さんが、私に気づいて声をかけてきた。
「なんでもない。美味しくて感動していただけ」
「本当、きーくんの作る料理美味しいよね」
私はこの時感じた。
この人なら信用できるかも。
「ねぇ、愛さん」
「どうしたの?」
「午後、うちに来てほしい」
午前中で練習が終わっていたこともあり、私は愛さんに午後の予定を伝えた。
「ここが天王寺の家か」
昼ご飯をみんなで食べたあと、家に帰ろうとしたとき、愛が午後の予定を聞いてきた。
特に用事がなかった俺たちは、天王寺の家に招かれ、一緒に向かうことになった。
「大きいマンション」
「ちなみに言うけど、うちのマンションも大きいからな」
侑の発言に、俺は答える。
「みんな東京に住んでるから感覚がずれてると思うが、周りはみんなお金持ちだぞ」
「そんな感覚なかったよ」
「魔法使いも普通はいないからな」
「その感覚も普通になってるよ」
侑は俺の能力を改めて実感している。
ここまで来たのも、魔法を使ってきたからだ。
ちなみに今いるのは、愛、歩夢、侑、そして俺。
「本当、魔法って便利だね」
「私もその感覚、なくなってきてるよ」
愛は初めて魔法を目の当たりにして興奮していた。
一方で歩夢は、侑の発言に考え込んでいた。
「今日ついてきてもらったのは、ライブ用の映像を作ってみたから、意見が欲しいんだ」
「もうできてたのか、早いな」
会話をしながら、天王寺がエントランスで鍵を開ける。
「スマホで開けるなんて、ハイテクだね」
「家のことは全部これでできるようにしてある」
俺たちは天王寺に案内され、家の中へ入った。
「お邪魔します」
「家族の人はいないの?」
挨拶を終えたあと、侑が質問を投げかける。
「うん、2人とも仕事で忙しいから」
なるほど、それでいつも食事が固形物やパンばかりだったのかと納得する。部屋を見渡しても、料理をした形跡はまるでなかった。
「というか、男の俺が部屋に入ってよかったのか?」
ふと疑問に思い、天王寺に尋ねる。
「うん。今日の料理で少し安心できた」
「安心?」
「そう。誰かのために作っているという安心感があった」
「そうか…」
感じ方は人それぞれだ。彼女の言葉に、なぜか少しホッとする自分がいた。
「すごい機材とパソコンだね!」
先に部屋へ入った侑が驚きの声を上げる。
「親が買ってくれたんだ。スクールアイドル同好会の話をしたら、喜んで揃えてくれたの」
「すごいな。最新のパソコンから音楽機材まで完備されてるのかよ…」
俺も部屋に入り、まるで仕事部屋のように整った設備を見て驚く。親の財力、すごすぎる。
「私、小さい頃から表情を出すのが苦手で、ずっと一人だった。でも、高校生になってスクールアイドル同好会に入って、こんなに毎日がワクワクするなんて思わなかった」
天王寺の言葉に、俺たちは思わず立ち尽くす。
「だから、みんなにすごく感謝している。だからこそ、ライブ頑張るよ!」
彼女の目には、しっかりと覚悟が宿っていた。
「うん! いいライブにしよう!」
愛が嬉しそうに天王寺に抱きつく。
それからの日々は特訓の連続だった。天王寺は毎日の練習に真剣に取り組み、ライブに向けて着実に成長していった。彼女が作ったキャラクターも宣伝され、注目度は日に日に高まっていた。
「天王寺さん! 練習、頑張ってるね! もうすぐライブだよね!」
クラスメイトが私に声をかけてくれる。
今の私なら、きっと変われるかもしれない。そう思った。
「もし、よかったら……よかったら……」
窓に映る自分の姿に目を奪われる。
『私はいつまでも私のまま』
そう言われている気がした。
クラスメイトは何か言いたげにしていたが、私は言葉を飲み込む。
「……なんでもない」
「今日は帰るね」
せつ菜ちゃんと中須さんにそう伝え、私は帰った。
『私は、変われない』部屋のカーテンを閉めて引きこもりをした
「あれ、天王寺は?」
俺はおやつを持って戻ってきたところだった。
「天王寺さんなら、体調が悪いのか帰ってしまいました」
せつ菜が答えてくれる。
「仕方ないか。なぁ、そこの君たちは天王寺のクラスメイトだったよな?」
「はい、そうです」
「なら、たくさん作ったから持って行ってくれ」
俺は作ったお菓子を、天王寺のクラスメイトに手渡した。
しかし天王寺はライブ前日まで練習に来なかった
「今日も来てないのか」
同好会のメンバーで集まっていた広場で天王寺を待っていた
「えぇ、練習始める?」
朝香先輩がみんなに聞く
「でも璃奈ちゃんが」
「来ないでしょ、連絡しても返事来ないんだから」
朝香先輩は腕を組みながら言う
その言葉にみんな返事が出来なかった
「なんでですか!りなこのライブは明日なんですよ!あんなに頑張って準備していたのに」
かすみが大きな声を上げた
「そうだよな。一体何があったのか、、」
俺も腕を組みながら考える
「一応お弁当は毎日届けて、食べてはくれていたぞ」
俺は来ない日もお弁当を作って家まで持って行った。インターフォンを押しても返事はなかったけどエントランスの鍵は開けてくれた。なので部屋の前に置いていた
「やるか、やらないか決めるのは璃奈ちゃんよ」
不機嫌そうに答える朝香先輩はさらに続ける
「今日はもう解散にしない?」
「果林ちゃんもしかして拗ねてる?」
エマさんが耳打ちをする。
「なんで私が」
「図星だった。」
「京平!」
朝香先輩は俺に八つ当たりをしてくる
「だって明日はモデルの仕事入れないようにしたもんね?」
「そうなんですか?果林先輩はかわいい所もあるんですね~」
エマさんに続いて、かすみも言う
「お黙り」
そういってかすみのほっぺを抓る
「ねぇ、きー君」
袖を掴みながら愛が俺に声をかける。
「連れて行って、ちょーー特急スピードで、りなりーの家まで」
「任せろ。なんていったって俺は魔法使いだからな」
愛の言葉に俺は魔法をかけて飛ぶ準備をする
「しっかり掴まれ。」
「うん」
「待って私も行く!」
その言葉に驚き、振り向くと侑が飛んできた
「ちょっと侑、危ないぞ」
必死に侑をはがそうとするが離れてくれない
「良いじゃん!このまま飛んでいくよ」
レッツゴーという掛け声を出しながら侑は腕を上げる
「ちょっと待って私も行く!」
さらに歩夢まで近くに来た
「京平さんの魔法で行くんですか?」
「その方が早いからね!」
その光景を見ていたかすみが大きな声で質問し侑が答える
「まぁ、ほっとけないよね。でも京ちゃんの隣は譲らないよ」
彼方さんも俺の左腕に抱き着いてくる
「結局みんなで行くのね」
果林先輩もため息をつく。
「行かないですか?」
せつ菜が質問する
「行くわよ。」
にっこりと笑う果林先輩の姿があった
「みんなで行くなら新しい魔法使うか、侑降りてくれ」
「え~いいじゃん」
「恥ずかしいだろ。少しは恥ずかしさをお前も持てよ」
「女の子匂いがついていいでしょ」
「いつも一緒にいるから匂いは気にしたことない」
「ぶぅー」
文句をいいながら降りる
「みんなそのままでいろよ」
俺は周りを水の塊でみんなを囲った。シャボン玉のように丸くして、そのまま空に上がる
「すごいですね」
浮き上がることでしずくは感動していた
「みんなが一気に移動できるように開発した」
これなら一人一人飛べる魔法を使わなくて済むからだ
「流石京ちゃんだね」
歩夢が褒めてくれる
「ありがとう。さぁ、特急スピードで行くぞ」
そうして天王寺の家まで向かった
次回天王寺編完結です!