「んん、」
気絶していた俺は、三十分ほどで目を覚ました。
視界にまず入ったのは、柔らかい陽だまりみたいなエマさんの表情。そして——大きな山。
俺膝枕されてる?
「おはよう、京ちゃん。」
「天使だ、天使が目の前にいる」
「もう、変なこと言わないの」
エマさんは笑いながら言ってくる
身じろぎすると、体中がまだ少し痛む。
「他のみんなは?」
「帰ったよ?みんな用事あるみたい」
「すみません。俺のために待っててくれて」
「いいの。私が勝手にやってることだから」
エマさんはニコニコしながら言う
「それにしても、まさか、バリアが出ないなんて思わなかったよ……」
俺は思わず魔法の方程式を空中に展開し、計算しはじめた。
何度見直しても、公式は合っている。なのに——原因が分からない。
「今はわからなくていいんだよ?いつかわかるから」
「エマさん、答えわかってるんですか?」
「うん!私も女の子だからね」
「女の子って本当にわからない」
俺ははっーとため息をしながら立ち上がる
「本当に助かりました」
立ち上がりエマさんにお礼を言う
「この恩は忘れません」
「気にしなくていいよ。私が好きでやってるだけだから」
「いえ、、それでも足痺れたでしょ?よければなんでもお礼しますよ」
「それなら……今度、私とお出かけしてほしいな」
少しだけ照れた顔で、でもはっきりと言った。
「分かりました」
「約束ね?」
「エマさんとの約束は……死んでも守りますよ」
そう言って、俺は部室をあとにした。
「ただいまー」
家に帰った京平は誰もいない家で挨拶をする。人が居てもいなくて癖になっているので声を出す
「おかえり~」
「おかえりなさい。」
「あれ?侑と歩夢いたのか」
いつもならもう少し遅くうちに来るのに、今日は早いみたいだ
「京平が気絶しているうちにやる事やってきたよ。そして今いるの」
侑はうちにあるお茶を飲みながら言う
「そうですか。」
俺は帰りに買い物をしてきたのでキッチンに物を置いた
「京ちゃん…その、やりすぎてごめんね」
歩夢は部室のことを話す
「いいよ。あれは俺が悪いし。でもなんで発動しなかったのか気になる」
「あれ? 気づいてないの?」
侑はテレビを見ながらスナックをつまむ。
「え?」
「京平言ってたじゃん。『心を……』」
侑が言いかけた瞬間——
「侑ちゃん! 口にお菓子ついてるよ!」
歩夢が慌てて侑の口を塞ぐ。
「でもさ、これ黙る意味ある? 京平絶対—」
「侑ちゃん、言わなくていいことが、世の中にはあるの」
小声で押し切る歩夢。
俺はキョトンとしながら、
「あの二人が心を許してるわけないだろ? そんなのあったら俺、今ごろモテモテだぜ?」
と、ドヤ顔で語る。
そしてスイッチ入ったのか、妄想トークが始まった。
「もし彼方さんと結婚できたら毎日幸せだな〜。子供は……まあ三人くらいで、璃奈と結婚したら俺、IT系で働き始めるかもな」
未来予想図を当たり前のように語る俺。
その瞬間——。
「歩夢、私も一発殴っていい?」
侑は拳を握りしめて立ち上がる。
「いいと思うよ? 私も手を出すから」
「え、ちょ、二人とも? 落ち着こう? 俺、別に悪いこと——」
次の瞬間。その日二度目の、男の悲鳴が家に響いた。
「私と歩夢の二人で結婚したら、毎日が幸せだよね?」
そう京平が余計な一言を言った瞬間、彼の頭に“げんこつ2つ”が同時に落ちた。
そして——罰として京平は、黙々と夕飯を作らされている。
「大人になっても、今と状況変わらないだろうな……」
今日の料理は生姜焼き。昨日漬け込んだタレが上手くしみこんでいて、後は焼くだけの状態。京平はキャベツを切ってる
「私はこの時間結構好きだよ」
侑はテーブル席で湯のみを手にしながら言う。
歩夢はその向かい側で本を読みつつ、小さく頷いた。
「俺も好きだよ。この時間が一番」
京平は言いながら、二人の横顔を見た。キッチン越しに見る、何気ない笑顔。
その光景が胸の奥をじんわり温める。
——誰にも邪魔されない、静かで温かい夕暮れ。こんな日常が、ずっと続けばいい。
侑と歩夢が笑っていられる未来。
それが自分にとって、この世界で一番大事だと、小さい頃、心の底から思った。
命に代えても二人を守る——そう決めたことを、二人には言わない。
ただの“京平の中の約束”として、大事に持ち続けているだけだ。
「できた。悪いけど食器の用意してくれないか?」
「任せて!」
侑が元気よく立ち上がり、歩夢も笑顔で手伝いに向かう。
さっきまでのドタバタが嘘みたいに、夕飯前の部屋には、ゆるくて優しい空気が満ちていた。
「さて、寝ますか」
お風呂も上がった京平は寝る準備をしていた
「京ちゃんおまたせ」
パジャマ姿でいたのは歩夢だった。罰として一か月寝ることになったからである
「いいのか?俺と一緒に寝て、年頃の女の子に親も何も言わないのか?」
布団の準備をしながら京平が質問する
「言わないよ?それに京ちゃんならうちの親はいいよって」
「ちくしょ、これが今までの信用か」
歩夢の親がいいよと言えばうちの家ではオッケーという事になる。俺が親だったら今頃泣いている
「というか侑は?」
「侑ちゃんなら帰ったよ?」
「てっきり泊まるかと思ったよ」
布団を敷き終わり京平は呟く
「じゃあ、俺たちだけか……」
歩夢は敷き終わった布団ではなく俺の布団に寝た
「いやそっちで寝るのかよ」
「一緒に寝るって言ったでしょ?」
ほら?早くと言わんばかりに歩夢は言う
「本当にいいのか?」
京平は悩みながら布団に入る
「ふふ、暖かい」
天井に向かって寝ている俺に歩夢は右手を握ってくる
「俺も暖かい」
「いつも守ってくれてありがとう」
「どうしたんだ?いきなり」
京平は目を瞑りながら歩夢と話す
「ちょっと考えちゃってね」
さらに歩夢は続ける
「夜だから考えちゃうんだけど、もし、私と侑ちゃんが喧嘩して話さなくなったらどうする?」
「お前ら二人が喧嘩することなんてないだろう」
今までの事を振り返っても歩夢と侑は喧嘩したことがない。幼稚園から一緒にいるけど見たことがない
「もしもの話だよ」
「そうだな、う~ん、止めやしないよ」
「え?」
歩夢は驚く
「だって二人が喧嘩する理由は、お互いに譲れないものがあるとかだろう。気にくわないとかで喧嘩とかしないと思うし」
「確かに」
その言葉を言って京平を見る
「京ちゃんって前までは私と侑ちゃんばっかりだったに今では同好会に囲まれているよね」
「ほんと、前までは考えられなかったよ」
「さらに、料理を作っていたことは少し嫉妬しちゃうな」
歩夢は自分たちの知らないところで料理を作っていたことに怒っていた
「その件は許してくれ、少しでも美味しい料理を研究していたんだ」
「しょうがないな、じゃ今晩は抱き枕になってね」
そういって手を離して、俺の右腕を掴んできた
「ずっと離さないからね。」
「大丈夫だ。俺も離さない」
そうして夜が更けていった
次回も来週の月曜日に更新します!