ジリジリと鳴り響くのは目覚まし時計の音だった
「んぁ?」
寝ぼけながら時計の音を止める
「あぁ~」
と大きなあくびをしながら起きようとすると重くて起き上がれない。隣には歩夢がいた
昨日から一か月泊まりに来ることを思い出し、起こさないようにゆっくりと腕を離していく
「ん?京ちゃん、、」
少し目を開けて喋る歩夢
「もう少し寝てていいよ。朝ご飯とお弁当作るから」
「私も起きる」
「大丈夫だ。ついでに自分の朝の支度もするから」
歩夢の頭を撫でて眠りを促す
「わかった」
歩夢はもう少しだけ寝ると言って目を瞑った
「ご飯作るか」
朝は侑と歩夢の分を用意して、お弁当は4つだ。璃奈と菜々の分がある。作るのに慣れている為4つでも構わない、そうして朝の時間が過ぎていく
「「いただきます」」
朝の支度を終えて3人でご飯を食べている
「今日、一年生組と出掛けるから遅くなる」
「珍しいね。かすみちゃんたちと出かけるの」
ご飯を食べながら侑が話す
「昨日強制的に言われてな」
「しずくちゃんの事もあるから気をつけてね」
「怪我はさせないから大丈夫」
「京ちゃんもだよ」
歩夢が心配そうに話す
「わかった。悪いけど夜ご飯は冷蔵庫に入っているから食べてくれ」
「ありがとう」
侑はにっこりと笑いながら言う
「いつもごめんね」
歩夢は申し訳なさそうに言う
「大丈夫だ。それに歩夢もごめんねよりありがとうの方が嬉しいよ」
「わかった。ありがとう、京平ちゃん」
そして3人はご飯を食べた後に支度をして外に出た
『私の歌は誰にも届かない。子供のころのこと、覚えてる?
“少しだけ違う”——ただそれだけで、ずっと怖かったんだよね。』
黒い衣装の“もうひとりの私”が、影のように足音もなく近づいてくる。
『誰かに笑われてるんじゃないか。引かれてるんじゃないか。嫌われてるんじゃないか——って。だから本当の自分を箱に閉じ込めた。そうしたら楽になったでしょう?』
影の私が、私の耳元で囁く。
『でもね、そのままじゃどれだけ歌っても届くわけがない。“本当の私”を出せない人間の歌なんて、誰の心にも触れないよ。』
「うるさい……私は、これから——」
『素直になるって言いたいんでしょう?』
影の私が、すっと前に出て、私の顎に触れる。
『今さら素直になったって遅いの。あなたが隠してきた“嘘”も“弱さ”も、ぜんぶバレるだけ。それを見た同好会のみんなはどう思うと思う?』
私は息を呑む。
『きっと優しく笑ってくれる?ねぇ、ほんとにそう思ってるの?』
黒い瞳が、私の奥の奥まで刺さる。
『そして——一番残酷なのは京平さん。』
名前を出された瞬間、胸が締めつけられた。
『あなたの本当の顔を見たら?京平さんはどう思うと思う?』
影の私が唇を歪めて笑う。
『“そんなしずく、知らない”って。“気持ち悪い”って。“面倒くさい”って。
きっと距離を置かれる。その瞬間、あなたは終わるの。だって——あなた、もう気づいてるでしょう?』
耳元に、ひどく甘い声が落ちる。
『京平さんに嫌われたら、あなたは全部壊れるって。』
「……っ……」
胸が苦しくなる。声が出ない。
『ねぇ、認めなよ。あなたは“嘘のしずく”でしか、誰にも必要とされない。
本当のあなたは、誰にも求められてないの。——特に、京平さんには。』
その瞬間——
私は飛び起きた。
視界が滲む。呼吸が荒い。
朝から、最悪な夢を見た。
放課後
「しずこ~確保!!」
帰り道に来たのはかすみさんと璃奈さんだった
「京平さん!早く!!」
かすみさんが京平さんを急かすように話す
「わかった。わかった、しずくは逃げないだろう」
「璃奈ちゃんボード確保!」
璃奈さんもかすみさんの真似をして顔の前に璃奈ボードを置いた
「これじゃ前が、、」
「気をつけて歩けよ。サポートはするけど」
「京平さんまで」
「それじゃ出発!」
かすみの一言で4人で歩き出した
4人で放課後に遊ぶことになって最初に来たのはパンケーキ屋
テーブル席で2対2の状態、かすみと璃奈、しずくと京平となっている
「なんだこれは」
目の前に出てきたのはマウンテンパンケーキ
「これが伝説の」
「本当に食べるの?」
璃奈としずくは驚いていた
「マウンテンパンケーキ0勝5敗のかすみんが皆に完食の極意を教えてあげる!」
「負けてんじゃねーか!!というか5回も来ているのかよ」
京平は驚きながら言う
「へへ。1人だと食べきれなくて」
かすみは照れながら言う
「ひたすら食べるべし!いざ!!」
璃奈とかすみは一気にナイフで切っていく
「「おいし~」」
2人はほっぺが落ちそうな感じで美味しく食べている
「じゃ俺も」
京平は口に運ぶ
「うまい!!」
隣のしずくは手が止まっていた
「ほらしずくも食べてみろよ」
京平が一口サイズに切ってしずくの口に運ぶ
「おいしい!」
しずくも笑顔が生まれた
そうして食べ進んでいく
「「「はぁ~幸せ」」」
「よかった。しかも無事完食」
京平がお金を払っていたので最後に出てきた
「ごちそうさまです!京平さん!」
かすみがお礼を言う
「「御馳走さまです」」
続いてふたりもお礼を言った
「よかったんですか?お金払ってもらって」
しずくが申し訳なさそうに言う
「いいんだ。こいうのは男が払うもんだろ?しかも後輩にお金を払わせる先輩はいない」
「そうだよ!しずこ。京平さんには遠慮したらだめだよ」
かすみががにっこり笑って言う。
「お前は遠慮しろ」
かすみの頭にチョップを入れる京平さん
「そんなこと言うんですね!歩夢先輩に言いつけますよ!」
「おいやめろ!本当に怒られる!!」
「逃げろ!!」
かすみと京平の追いかっこが始まり、2人は置いていかれる
「あの2人元気だね」
「本当ですね」
璃奈としずくは少し羨ましい目で見ていた
そのあと4人で色々店を周った
休憩として広場で飲み物を選んでいた
「う~んいっぱいありすぎて、可愛いかすみん困っちゃう」
「何言ってんだ。早くしろ。お前の分ないぞ」
すでにしずく、璃奈は選び終わっている
会計をしている間、璃奈としずくが話をしていた
「好きなの?昔の映画?」
ポスターの前でしずくが立ち止まっていたため、璃奈が聞いた
「もしかして、しずくちゃんが演技始めたのってこいうのを見ていたから?」
「そうかな、、それもあるけど、私ね演じてる時が一番堂々としていられるの。誰の目も気にならないし、自分が桜坂しずくだってことを忘れられるの」
「自分が嫌なの?」
「ごめんね!変な話をして忘れて」
必死にしずくが忘れてと手を振りながら言う
「あ!!また暗い顔をしているスマイルだよ。しずこ」
「かすみさん」
後ろから来たかすみにしずくが驚いていた。京平はまだお会計をしている
「今日は嫌な事全部忘れて、遊ぼう!!それで元気出たらオーディション頑張って主役取り返そう!」
その言葉にしずくはハッとしたような顔をした
「知っていたんだ」
「でも別に内緒にしなくてもいいじゃん。私たち応援するし、それにもししずこが落ち込んでるなら話を聞くぐらい」
「大丈夫。心配しないで私は平気だから」
「なんの話だ?」
京平が帰ってきた
「なんでもないです!それより京平さんありがとうございました。」
「全然大丈夫だ」
「今日はもう帰らなきゃ。それじゃ失礼します。2人もありがとう」
そうしてしずくは帰っていった
「なんの話をしていたんだ?」
残っている2人に京平は先ほどの話を聞いた
しずくはスタスタと歩きながら、胸の奥が少しだけ苦しくなるのを感じていた。
かすみさんの明るさも、璃奈さんの優しい目も、全部が眩しくて――
「私だけ、わたしのままでいられない。」
そう小さくつぶやいた瞬間、胸の奥に影が差した。
スタ…スタ…
自分の足音と重なるように、もう一人の“影の私”が背後から声をかけてくる。
『やっぱり怖いんでしょ。本当の自分を見せるのが。』
しずくは返事ができなかった。歩きながら、視界が少し揺れる。
『嫌われたくないんだよね?京平さんにも。みんなにも。』
「……それは……」
喉の奥に言葉がつかえて出てこない。
『歌いたいんでしょう?みんなの心に届く歌を。』
影の私はゆっくりと回り込み、しずくの正面に立った。
『そのためには、自分をさらけ出さなきゃ。“桜坂しずく”を受け入れなきゃ。』
さらに一歩、間を置くように静かに――
……すん。
世界が一瞬、音を失った。
影の私は、まるで儀式のように手を伸ばす。
『――受け入れて。』
伸ばされたその手が、息を飲むほど静かに、近づいてきた。
「できないよ。さらけ出すなんて、大嫌い。こんな私」
壁によしかかって私は座り込む
「こんにちは」
顔を上げてみるとこの前の昼休みにいた虹ヶ咲の男子生徒だった
「大丈夫ですか?」
穏やかで優しい笑顔。しかし、しずくは警戒していた
「なんでも……ないです……」
そう言ったのに、男子生徒は歩み寄り、しずくの横にしゃがみ込んだ。
「そう言う人ほど、本当は大丈夫じゃないんだよ」
「……え?」
「さっき、自分のこと嫌いって言ってたよね。聞こえちゃったんだ」
――聞かれてたんだ。
恥ずかしさより、不気味さが先に浮かぶ。
「僕もね、似てるんだ」
男子生徒は静かに続ける。
「みんなの前だと本当の自分を出せないんだ。嫌われたら怖いし……」
しずくの呼吸が止まる。まるで心の奥を触られているようで。
「だからね、無理に見せないでいいんだよ。本当の君なんて」
「……え?」
男子生徒は優しく笑う。
その笑顔はあたたかいのに、どこか底が見えない。
「君の弱さも、怖がる気持ちも……全部僕だけが知っていればいい」
しずくは一瞬だけ、ふっと心が軽くなるのを感じた。理解されている――そう錯覚するほどに、言葉が甘い。
「無理に強くならなくていい。無理に笑わなくていい」
男子生徒はそっとしずくの手を取ろうとする。
「大丈夫、僕がちゃんと守ってあげるから」
しかしこの前と同じように水の魔法が発動した。しずくは我に返って発言をする
「本当に大丈夫です。私には私を助けてくれる人はいるので!!」
やっぱりこの人嫌だ。しずくは走って逃げる
「あー、行っちゃった」
男は髪の毛を掻きながらいう。
「見えなくなったか、まぁ、いい。学校で殺すか」
男は明日がしずくの運命だと呟いた
また、次の月曜日にお会いしましょう