ポッケたちで異能力バトルロワイアル   作:ケンタ〜

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4話 戦い

「っはー! やっぱうれしいなー!」

 

 喧騒あふれる商店街の中、そのうちのとあるお店の中で。

 

 ジャングルポケットは手紙を頭上に掲げながら、それを見つめて喜びの声を上げた。

 

「そりゃあ俺なら招待されるだろって思ってたけどよぉ! 実際に選抜されたってなったら、やっぱうれしいよなぁ!」

 

 一点、前のめりになって、向かいに座るお友達、ダンツフレームに顔を向ける。

 

「ポッケちゃんだったら絶対に選ばれるって思ってたよ。わたしは選ばれるか不安だったけど、ポッケちゃんと出走できるからうれしいな」

 

 あはは、と屈託のない笑みで笑い、ダンツフレームは言葉を返した。

 

「お待たせいたしました、ご注文のにんじんオッチャホイ大盛二点になります」

「おー、どーも!」

 

 机の上に、山盛りに盛り付けられたオッチャホイが並べられた。そしてその頂点には、太い人参が丸ごとぶっ刺さっている。

 

「ごゆっくりどうぞー」

 

 店員さんが去った後、割り箸を手にして、にんじんオッチャホイに手を付け始めた。

 

 ダンツがすぅ、と息を吸い込むと、オッチャホイのいいにおいが鼻腔をくすぐり、おもわず頬が緩んでしまう。

 

「うわぁ、いい匂いだねぇ、ポッケちゃん」

「ああ、じゃあ食うか!」

「「いただきまーす」」

 

 汁っ気をたくさん含んだ麺を箸でとると、出来立てのオッチャホイの湯気が立ち上った。

 

 ぱくりとくわえ、ずるるるるっ、と一気に吸い込む。

 

「んふー! ひあいはにくっはへどううぇ(久々に食ったけどうめ)ー!」

 

 もごもごとしゃべりながらポッケは笑みを浮かべた。

 

「うん! おいしいねポッケちゃん!」

 

 ダンツも微笑みながらちゅるんとオッチャホイをすする

 

「っはー、やっぱこのオッチャホイがいっちばんうめぇなぁ!」

 

 言いながら、すでに箸は次の一口のために動き出し、すでに口のすぐそばまでやってきていた。

 

 ずぞぞぞぞ――――

 

「店員さんおかわり!」

「うわっ食べ終わるの早くない!?」

「そーゆーダンツも腹減ってんだろ? 俺より体デカいんだしさ、遠慮すんなよ!」

「デカ……!? そんなことないってっ!」

 

 顔を真っ赤にしながら身を乗り出し、ダンツは否定した。

 

「お、おお? そうか? あ、気にしてんのか? あー、そっか。ダンツのトレーナー、かっけーもんな?」

 

 にやり、とポッケは笑みを浮かべた。

 

「っ――――! そそそ、そんなんじゃないよぉ! べ、べつにそんなことのためにトレーナーさんになってもらったわけじゃないし、好きとか――――」

 

 はっ! 

 

 ダンツはそこまで言ってようやく口をふさいだ。

 

「お~~~~~~~? 今なんつった?」

「~~~~~! なんでもないっ、なんでもないから!」

 

 ずいっ、とポッケは身を乗り出す。

 

「な、ダンツ。俺たち友達だろ? 内密にするからさ、俺にだけ教えてく――――――」

 

 ぴたっ

 

 ポッケが急に固まった。

 

「? ポッケちゃん?」

 

 ポッケの表情から、感情が抜け落ちていた。

 ただ、その目は大きく見開かれている。

 

「……?」

 

(……耳鳴りがすんな……?)

 

 ポッケは自分の後ろを振り替えった。

 

 しかし特に、そこには何もない。

 

 自分の頭上の片耳を手で触れながら、二度目をしばたたかせる。

 

 ガタッ、とポッケは席を立った。

 

「ぽ、ポッケちゃん? どうしたの?」

「わり、ダンツ。金払っといてくれ。俺先出る」

 

 ポッケはおもむろに財布から二千円を取り出して、机に置いた。

 

「来たオッチャホイ食っといてくれ。あ、あと荷物もわりーけど頼むわ」

 

 そう言って、ポッケは席を後にする。

 ダンツフレームに顔を見せぬまま、店の入り口から出て行ってしまった。

 

 ちりんちりん、と扉の鈴が揺れる。

 

「……ポッケちゃん?」

 

 取り残されたダンツは、何もわからぬままにつぶやくしかなかった。

 

 

 

 ジャングルポケットは商店街の通りを駆け抜けた。

 ここはひとごみ、ウマ娘の全力で走るわけには行かず、人間が自転車をこぐほどの速度で駆けていく。

 

(耳鳴りがすこしずつ強くなってってんな……。こっちか)

 

 商店街の道から逸れ、人気の少ない路地へと入っていく。

 

 この商店街は歴史ある場所だ。昔はもっと規模の大きい商店街で、この人気のない路地にも客がにぎわっていたはずだ。路地の建物のほとんどに、かつて店だったころの名前が書かれたシャッターが下ろされている。

 今でもにぎわっている商店街ではあるが、それは過去と比べればほんの一部の場所のみだろう。

 

 そしてそれはつまり、この路地にはほとんどだれも来ないという事を意味する。

 

 なにかよろしくないことをするには、絶好の場所だ。

 路地独特の薄暗い道の先に、ポッケは怪しい人影を見つけた。

 

「おい! てめぇら、なにしてんだ?」

 

 そこに、誰かがいる。

 

(男二人……と、女一人か? マスクにサングラス、そんで分厚い上着……ベタだなー、こいつら)

 

 その三人が、声をかけたポッケを素早く振り返った。

 そうするや否や、三人は一目散にポッケに背を向けて駆けだした。

 

「あっおい、待て!」

 

 ポッケは駆けだす。

 

 すると三人が散開し、別々の道へと入って行った。

 

 一人が右へと曲がり、もう一人が左へと曲がり、もう一人はまっすぐ狭い路地を走って行く。

 

(あっきらからに耳鳴りの原因はこいつらだな。三人か……ま、何とかなるだろ)

 

 ポッケは思考を始めた。

 

(右に一人左に一人男が行って、そんでまっすぐに女が……いや、あいつ、ウマ娘か。じゃ、まずあいつからだな)

 

 地面を強く踏み込み、ジャングルポケットはスイッチを入れた。

 どくん、と心臓が大きく胎動を始める。

 

 その次の瞬間、ジャングルポケットはウマ娘の背を蹴っていた。

 

「ぐはっ!?」

 

 鈍い音を立て、ウマ娘は狭い路地を転がった。

 

「うっ!?」

 

 立ち上がろうとするウマ娘の背にポッケはのしかかり、両腕を押さえつけた。

 

「抵抗すんなよ、お縄だお縄」

「ぐっ……」

 

 ウマ娘が苦しそうに呻く。

 そのサングラスとマスクに手をかけ、引きはがすと、ウマ娘特有の端正な顔が現れた。

 そして次に髪の毛にも手をかけ引っ張ると、ウィッグが取れてウマ娘の二つの耳がぴょこんと顔を出した。

 

「何者だ、お前……!」

「あ? あー、意外とまだ知られてねーのか……重賞勝ったんだけどな……。ま、俺の名前はジャングルポケットだ。ちょっと眠っててもらうぜ」

 

 懐から手のひらサイズのスタンガンをポッケは取り出した。

 

「心配すんな、護身用だ」

 

 それをウマ娘の首元に押し付ける。

 

 バチッ、とかすかな音がして、ウマ娘の体から力が抜けた。

 

「ふー、まず一人……。あとどこ行った……?」

 

 すっ、とポッケは目を閉じた。そして感覚を耳へと集中する。

 

 キーン、と耳鳴りがまだ続いているのをポッケは感じる。

 その耳鳴りには波のような強弱がある。

 耳を左右に動かすと、耳鳴りの強弱は変化する。

 

(まだ、そんな遠くへは行ってねぇな……)

 

 耳鳴りが一番強くなる方向で、ポッケは耳を止めた。

 

「あっちか」

 

 立ち上がり、ポッケは走り出した。

 

(近くにはだれもいねえな……よっし)

 

 ポッケの走りが一段階加速した。

 

 本気ではないが、ウマ娘本来の、前傾姿勢での走りに移行する。

 

 その数秒後、ポッケの視界に、走る男の背が捕らえられた。

 ヒトの逃げる速度と体力が、ウマ娘の足から逃げられるわけがない。

 

(さすがに蹴ったらやべえよな)

 

 そのままポッケは男を追い越した。

 

 バチッ!

 

「がっ!?」

 

 通りざまにすこしスタンガンを押し付けてやれば、バランスを崩させることくらい訳はない。

 盛大にバランスを崩し、男は路地を転がった。

 

「い、痛え……!」

「はい、じゃー寝てろよー」

 

 呻く男の首にソレを押し付けると、しばし痙攣したのち、動かなくなった。

 

「息は……あるな。じゃ、最後……」

 

(!)

 

 とっさに腕を頭の横に出す。

 

 ガイイ――――ン!

 

 ポッケの腕に金属の棒が衝突した。

 

「いっ……てぇ……!」

「は、はあ!?」

 

 驚く男の声。

 素早くそれを振り返る。

 

 逃げたもう一人の男だ。

 曲がった鉄パイプを見て、驚愕している。

 

「こんのやろぉ!」

 

 鉄パイプで殴られた左腕で、ポッケは男の顔を殴り飛ばした。

 

「ばがふっ!」

 

 悲惨な声を上げて、キレイな弧を描き、男は路地の地面に落下した。

 

「あっ! やっべ!」

 

 とっさに我に返る。

 

 のびた男の側に駆け寄って、顔を覗き込んだ。

 

「あーよかった生きてた……いやよくはねぇか……」

 

 鼻の骨と歯が何本か折れている顔を見て、ポッケは頬を掻いた。

 血で喉が詰まらないように男を回復体位で寝かせる。

 首にスタンガンを押し付けるまでもない。すでに意識を失っていた。

 

 それを確認して、ポッケは耳を動かした。

 

「これで終わり……ってわけじゃないみてぇだな」

 

 まだ耳鳴りが終わらない。

 

 キィーン、と嫌な警告音が、頭の中に響き渡っている。

 

 そして、視線の先にさっき倒したはずのウマ娘がいた。

 

「てめぇ、演技してたな?」

 

 眉根を寄せ、ポッケはききただす。

 

「能力を持っているとは思わなかったからね。本当は気絶しているふりをして隙を見て逃げ出すつもりだったんだけど……気が変わったんだ」

 

 そのウマ娘は頬を吊り上げながら、ポッケに返した。

 

「俺が能力持ち? それがなんか、てめぇがトンズラこかなかったこととなにか関係あんのかよ?」

 

 相手を見つめながら、聞き返す。

 

 ウマ娘は、ますます口端を吊り上げた。

 

「大ありさ……。なあ、きみ、その制服は、トレセン学園のものだよね? きっとそうだ……。だったら、分かるはずだよ」

 

 ウマ娘が講義を始める。

 

「わたしは戦いが好きなのさ。そして、君は私の相手になりうると判断した。それだけさ」

「あ……? 何言ってんだ、てめぇ」

「警察が相手でも、部隊が相手でも……もう退屈なんだよ。相手が欲しいんだ。誰でもいい……」

「!」

 

 そのウマ娘に『パワー』がみなぎった。

 纏っていた季節外れの上着を脱いで道の端に放り投げる。

 

「……やんのかよ?」

 

 上着の下の体は、ウマ娘そのものだった。

 鍛え上げられている。大口をたたくには十分な肉体の仕上がりだ。

 

「そのつもりだよ。トレセン生の厄介さはわかっているつもりだ。逃がしてはくれないだろう?」

 

 ポッケは深く息を吸い込んだ。

 

「はぁ――――――……つもりだけじゃ、どうしようもねぇな」

 

 ポッケの体に『パワー』がみなぎる。

 

 切れかけていた体のスイッチを再びオンにする。

 心臓が大きく胎動し、全身が熱くなってくる。

 

「ふぅ――――――……相手になりゃいいがな」

 

 脚を踏み出した。

 

 拳が一瞬にして敵の顔面を捉える。

 

 生じる鈍い音。

 

 その速度より早く、敵の体は見事なまでにふっとんで行った。

 

 バアン!

 

 壁に着弾したその体は、壁に亀裂を入れ、凹ませた。

 

「がっ……ふっ……ハハ……!」

 

 ウマ娘が笑い声をあげた。

 

「ふふっ……ははははははっ……!」

 

 すとっ、と地面に着地する。

 

「すごい、すごいな……! やっぱり目を付けた通り君はすごく強いウマ娘だ……!」

 

 恍惚とした表情で、そのウマ娘は笑い始める。

 

「ああ、久しぶりだよ……! ああ、君は……! ぼくのこの渇きを、コソ泥に走るほどに乾いたこの体を満たしてくれるのかな……!?」

 

 高らかに、笑い声が響いた。

 

「ふっ!」

 

 瞬時にウマ娘はポッケの懐に跳びこんだ。

 

 脚が閃く。

 

 繰り出される横凪の蹴り。

 

 跳びあがり、ポッケはそれを回避した。

 

「バトルで地面から脚を離すのは禁忌じゃないのか!?」

 

 叫ぶとともに、ウマ娘から拳が放たれた。

 

 拳はポッケの腹を殴りつける。

 吹き飛ぶ体が地面を跳ね、壁にたたきつけられる。

 

「っ……てぇ……」

 

 ポッケは痛みを口にした。

 その膝が地面につく。

 しかしふらりとなんとか立ち上がった。

 

「なんだ、もう終わりか? 君は僕の渇きを満たしてくれるんじゃないのか!?」

 

 拳が閃きポッケの体に強烈な一撃が入り込む。

 その威力でポッケの体は壁に打ち付けられた。ヒビが入り、粉塵が舞う。

 

「がっ……」

「どうした、さっきの威勢は? 相手がなんだって? ただ威勢が良いだけじゃ、どうしようもないだろう!?」

 

 どさり。

 そのまま、ポッケは地面に膝をついた。

 

「……? はぁ……なんだ、期待したのに……。どうした? それとも、僕が本気を出しすぎたのかい?」

「ああ、てめーの本気がそれか?」

「!?」

 

 膝をついたポッケが、にやっと笑みを浮かべた。

 

「なに――――」

 

 声を出すまもなく、ウマ娘の側頭部に衝撃が走る。

 その視界が回転し、全身に痛みが走った。

 一瞬遅れて、ようやく自分が地面をはねていることを自覚する。

 受け身を取って体制を整え、顔を上げポッケの方を見る。

 しかし見えたのは脚だった。

 

「ぶっ――――――」

 

 今度は天を仰ぎ、ウマ娘は数秒の飛行を堪能した。

 

「――――はっ!」

 

 耳に入る人々の喧騒。

 

(な、なんだ……い、意識が飛んでいた……!?)

 

 左右を見回す。

 

 そこは、商店街の大通りの中だった。

 自らがヒビの入った電柱に背をあずけ、座り込んでいることを理解するのに時間がかかる。

 

 周りの人々が、自分を見て、なんだなんだとわめいていた。

 

 そのひとごみを縫って、ジャングルポケットが歩いてくる。

 

「むかついたから、演技させてもらったぜ?」

 

(――――ヤバイ! 実力を測り間違えていた……! 出し惜しみ、している場合では――――)

 

 今度は、靴が目に入った。物理的に。

 

 ポッケはロケットキックでその頭を踏みつけていた。

 

「ッ――――はぁっ!」

 

 再びのしばしの意識の放棄。

 

「あ、意外と丈夫なんだな、お前」

 

 今度は塀に背を預ける彼女の前に、ポッケは迫ってくる。

 

(不味い――――! まずまずいまずい! 完全にミスだ! やられる! 本気で、迎撃せねば!)

 

「ああああああああああああああああああああ!!!」

 

 声を荒らげ、全身に『パワー』をみなぎらせた。

 

 ウマ娘をウマ娘たらしめる『パワー』。それは力の源で、能力の源でもある。

 

 自らの『パワー』を『能力』に流し込み、それを発動させる。

 

 『能力』のオーラが、彼女から立ち上った。

 

 そのオーラが、巨大な狐の姿を形作る。

 

「へー、それがてめーの能力か。ふーん、カッコいいじゃん?」

 

 ポキポキ、とポッケは自らの指を鳴らす。

 

 形を結んだ狐のオーラ。

 

 それがポッケの方へととびかかるように迫ってきていた。

 

「来るなぁあああああ!!」

 

 ポッケは、自らの『パワー』を開放した。

 

「あばよ」

 

 大きく、息を吸う。

 

「――――――――――――――――」

 

(――え?)

 

 狐のオーラがポッケに到達する直前。ウマ娘は、自分が何も感じられなくなったことに困惑した。

 

(あれ? 目が見え……耳も……感覚が……あ違う。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い――――――)

 

 どさり。

 

 自らに何が起こっているのかわからぬまま、彼女は地面と熱い接吻を交わした。

 今度こそ、彼女の意識の綱は完全に切れた。

 

 そのすぐそばに、ジャングルポケットはしゃがみ込む。

 

「はーぁ……ヤダなこの能力……。闘いにならねぇし、受けた側はすげー痛いらしいし……」

 

 そう言いながら、ポッケは懐からスマートフォンを取り出してひらく。

 

 電話をきどうして110と入力し、電話をかけた。

 

「あー、もしもし? 警察っすか? あー、商店街でヘンな奴いたんで、捕まえてもらっていいですか? あー、俺はトレセンの生徒なんすけど……。ハイ。もう終わってます。はーい、じゃ、おねがいしゃーす」

 

 電話を切り、懐にしまい込む。

 

「さ、ダンツんとこもどらねーと」

 

 立ち上がって踵を返し、ポッケは商店街の方へと歩いて行った。

 

「あっ、ポッケちゃん!?」

「おお、ダンツ!」

 

 にんじんオッチャホイの店が見えてきたところで、ポッケの荷物を手にして歩いてくるダンツと鉢合わせた。

 

「ポッケちゃん、今まで何してたの? さっき、すごい音がしたけど……」

「ああ、わり、ちょっと野暮用でさ。ごめんな、お祝いだってのにいろいろ気い使わせちまってさ。オッチャホイ全部食っ――――」

 

 ちらり、とポッケはダンツのお腹をチラ見した。

 

「悪かったな、全部食ってもらって」

「今わたしのお腹見たよね!?」

「いや、だってこんな腹じゃさ」

 

 ぷにゅり、とポッケはダンツの制服の下からはみ出したお腹をつっついた。

 

 ダンツは顔を真っ赤にしてお腹を隠し、後ろに回避する。

 

「ちょっとポッケちゃん触るのやめてよ!?」

「わり、やわらかそうだったもんでつい」

「ちょ、だからってさぁ!」

「いやー、これをいつも触れてるミラ子先輩がうらやまし――――いてっ!」

 

 急に左腕に痛みを覚え、そこを抑える。

 

「って……」

「ポッケちゃん? 大丈夫?」

「さっき鉄パイプで殴られたとこだ……」

「えっ鉄パイプで殴られたの!? ちょっと、早く病院に行かなきゃ! こんなことしてる場合じゃないよ!」

 

 ぐいっとダンツはポッケの右腕を引き、走り出す。

 

「あっ、ちょっと待てよダンツ! 俺まだ腹いっぱい食ってないから口直しでなんか……」

「言ってる場合じゃないよ!」

「ん―……」

 

 鼻を鳴らしたが、ま、それもそうか、とポッケは思い直した。

 

(にしても……ヒトに殴られたくらいで、痛むはずないんだけどな……)

 

 疑念を残しながら、ポッケはダンツの足について行く。

 

 キィーン……

 

「?」

 

 小さな耳鳴りがして、ポッケは後ろを見た。

 

 しかしそこには、ひとごみ以外には何も怪しいものはなかった。

 その耳鳴りもすぐにおさまる。

 

「…………」

 

 ダンツについて走りながら、しばらく後ろをみつめる。

 

(耳鳴りしたんだけどな……)

 

 結局何もなく、ポッケは前に顔を戻した。

 

 

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