ポッケたちで異能力バトルロワイアル   作:ケンタ〜

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6話 狙撃

 数時間後――――

 

 

「合流地点まであと30、20――――」

 

 サーティバスキンは、建物の間の道路の上、その低空を飛行していた。

 

 その後ろからは、四肢の各部位に車輪の付いた、ロボットのような物体。

 

 全高は5メートル以上あるだろうか。両腕両脚を地面につけ、アスファルトの道路を車のような速さで疾走していた。

 

「10――――ポッケさん! 今だよ!」

 

 大通りの十字路に差し掛かかったとたん、声を上げる。

 

「おう!」

 

 バチン!

 

 建物の影から現れたポッケとハイタッチを交わし、バスキンは建物の影へとと高度を上げた。

 

 ロボットのターゲットが、視界から消えたバスキンからポッケへと移行する。

 両脚の車輪と勢いで体を支え、上半身を持ち上げ、車輪の付いた両腕を振り上げた。

 

 常人の胴体ほどの太さがある大質量の両腕が、クロスするように振り下ろされる。

 

 直前に地を蹴り、真上に回避する。そのスピードのまま迫りくるロボットの頭部に、両足をつけた。

 

「すぅぅぅぅぅ――――――――」

 

 大きくのけぞり、肺にいっぱいの空気をとりこむ――――

 

 そして、全身にパワーをみなぎらせた。

 

「――――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 爆音が、ポッケの喉から発せられた。

 

『ギギッ……!』

 

 その瞬間、まるで誤作動を起こしたかのように、ロボットの動きが鈍くなる。

 

「っチッ! 流石に無理か……ダンツ! げっほ!」

 

 スタン状態にあるロボットの頭部を蹴り、その場から離脱する。

 

「うん! ポッケちゃん!」

 

 すぐ近くの建物の頂上から、ダンツフレームが飛び出した。

 その頭上には、巨大なバトルアックスを振りかざしている。

 

「ふっ――――!」

 

 ロボットの頭上に降りかかるとともに、それを振り下ろす――――

 

 轟音を立てて、ロボットがアスファルトへとめり込むように押しつぶされた。

 

「ダンツ離脱しろ!」

「うん!」

 

 見るも無残な形状になったロボットから離れたとたん、ドオオオオオオンとロボットが大爆発を起こした。

 

「うおっ! あぶねっ!」

 

 眼前に両腕をかざし、塵と爆風を避ける。

 

 それが終わり、その場に黒い焼け焦げたあとと残骸しかないことを確認すると、ポッケとダンツはハイタッチをした。

 

「やったなダンツ!」

「やったねポッケちゃん!」

「ふりとも、やるじゃん!」

 

 建物の影からバスキンが戻って来た。

 

「おーうサーティ!」

「バスキンさん!」

 

 バスキンが両手を広げると、ダンツとポッケがパチンとその手にハイタッチをした。

 

「二人とも、すごいね! かなり難易度の高い敵をこんなに簡単に倒しちゃうなんて!」

「いや、お前んアドバイスのおかげだよ」

「はい、バスキンさんのアドバイスのおかげで、とってもたたかいやすかったです!」

 

 バスキンは見るからに赤くなり、後頭部を掻いた。

 

「い、いやーそうかな? そういわれるとお姉さんうれしいなーぁ!」

 

 あはは、とバスキンは上機嫌に笑った。

 

 それを横目に、ポッケはダンツの耳にひそひそと話した。

 

「そういや大学生っていってたな……。年上だってこと忘れてたぜ」

「あんまそういうこと言わない方がいいよポッケちゃん……。確かにすっごくかわいい人だけど……」

 

 その時、ピロン、と通知音のようなものが鳴った。

 

「お、さっそく来たみたいだね。今とどめを刺したのはダンツさんだから、ダンツさんのかな。開いてみてよ」

「あ、ハイ! えーと……。どうやるんでしたっけ?」

「『ウィンドウオープン』っていうんだよ……あ、わたしのヤツが開いちゃった……」

 

 バスキンの正面に、ホログラムの窓のようなものが出現した。

 

 そこには、バスキンにまつわる、バトロワの情報もろもろが書き記されている。

 

 自らの名前、現在のバトルランク、登録されているバトルアイテム、その他もろもろ……。

 

「『ウィンドウクローズ』……ほら、やってみて」

「あ、ハイ。『ウィンドウオープン』!」

 

 その時、ダンツの目の前に、同じようなホログラムの窓が開いた。

 

 全く同じような項目の中に、『バトルアイテム』とある項目の下に、新しいものが追加されていた。

 

「あ、ホントだ、追加されてますね。えーと……『回復アイテム・ロイヤルビタージュース』……?」

「げっ!」

 

 その名前を口にしたとき、バスキンが見るからに嫌な顔をした。

 

「ど、どうしたんですか?」

「いや、その……」

「なんかわりぃアイテムなのか?」

「いや、そうじゃなくて……すっごく強力なアイテムなんだけどね……。ほら、ちょっとそれ押してみて」

 

 言われた通りにダンツがその『ロイヤルビタージュース』を押すと、その説明文のウィンドウが表示され、その下に『使用/キャンセル』という項目が出現した。

 

 それを見て、バスキンが解説を始める。

 

「これはね、使用者の体力を、完全に回復することができるんだよ。体力っていうのは、パワー、スタミナ、根性全部のことで、外傷はだめなんだけど……」

「なんだよ、ずいぶん強力じゃねぇか? なにがまずいんだよ?」

「いやぁ、それがね……まずいんだよね」

「あ? だから何がだよ」

 

 ポッケはいぶかしげな顔をした。

 

「もんのすごく、まずいの。つまり、すっごくおいしくないの」

 

 ものすごく説得力のある、真剣な形相で、バスキンは口にした。

 それに対しポッケが聞く。

 

「なんだよ、経験したことあるみたいな口ぶりだな」

「うん、経験したから言ってるんだけどね……はぁ、高難易度のミッションクリアしたから、何が出るかと思ったけど……これかぁ……うーん、見合った効果の代物だけど……素直に喜べないなぁ……」

「そ、そんなにやる気が下がるほどおいしくないんですね……こんなにすごい効果なのに……」

「うん、その時になったらきっとわかるよ……。一応頼もしい効果だから、最後の保険ぐらいに考えといた方が良いと思うよ……。じゃ、ちょっとミッションも終わったことだし、これからのこと考えよっか」

 

 スイッチを切り替え、バスキンは話題を変更した。

 

「とりあえず、まずは移動――――」

「ん、待て、サーティ動くな」

 

 ポッケがバスキンを手で制す。

 その耳がぴくりと動いていた。

 

「! どうしたの?」

「位置バレて――――――」

 

 ポッケがバスキンの頭を押さえ、地面に組み伏せる。

 

 ついさきほどまで頭があった場所を小さな何かが通り過ぎていった。

 

 轟音が響く。

 

「い゛っ!」

 

 思わずポッケは声を上げた。

 

 そのすぐ近くの地面にあるものを、ダンツフレームが目にし、声を上げる。

 

「弾丸だよポッケちゃん! スナイパーがいる!」

「っどこだ!? 耳が……」

「見つけた! ふたりとも、あっち!」

 

 バスキンが指をさす。

 

 そこには、都市フィールドの中でも目立つ高層ビルがあった。

 

「屋上! ウマ娘一人いる!」

「遠すぎんだろ! あれじゃどうしようもできねぇ! 行くぞ! ダンツ!」

 

 バスキンは首肯して立ち上がった。

 

「うん、今はいったん退却して」

 

 そのとたん、ポッケとダンツはビルへと向かって走り出した。

 

「え!?」

「何してんだよサーティ! スナイパー相手には近づくしかねーだろ!?」

「ええ!?」

 

 とっさに二人の後を追って走りだす。

 

「ちょ、ちょっと、スナイパー相手になんで近づくの!?」

「逃げてもしょうがねーだろ! バトロワなんだから倒さねーと!」

「それはそうだけど……ちょっと危なすぎない!?」

「じゃねーと優勝なんてできねーだろーがよ!」

「えっ……」

 

(優勝……?)

 

 一瞬、バスキンの思考はその言葉に支配された。

 

(え、優勝するって……)

 

 正直、全く――――――

 

「おい! バスキン! 相手どうなってる!? お前たぶんめっちゃ目いいだろ!」

「えっ? あっ……」

 

 思考から急に引き上げられ、戸惑う。

 瞬時に言葉を整えて、ポッケに返す言葉を探した。

 

「う、うん! ていうかそういう能力(スキル)だけど」

「相手今どうなってんのか教えてくれ!」

「わ、わかった……!」

 

 バスキンの体に、『根性』がみなぎる。

 

 『パワー』と『根性』と『スタミナ』。ウマ娘の『能力』行使にかかわる根源的な三つの力。

 

 パワーは『力』を司り、根性は『精神』を司る。スタミナは、それらを行使する『体力』のようなもの。

 

 能力行使はそれら三要素の合わせ技。そしてその三要素をどのように配分するかで、能力がどう発揮されるかが変わってくる。

 

 『パワー』を多く配分すれば、能力はより物理的に、より単純に。『根性』をより多くすれば、能力をより複雑に行使できる。『体力』が高ければ高いほど、一度に操れる『パワー』と『根性』の量が増し、より強力で、複雑な能力の行使に耐えられるようになる。

 

 サーティバスキンの能力(スキル)は、『減速(ディセラレーション)』。

 

 自らを含めるあらゆるものを減速させ、停滞させる能力。

 バトロワ開始時の落下の時に減速していたのは、彼女のこの能力によるものだ。

 

 

 ただし、今の彼女の技量では、自ら及び自らに触れたものにしかその能力を行使できない。

 

 単純で、攻撃や闘いに向かない能力と発動条件。身体強化系でもなく、自らの体にはマイナスにしか働かないその能力。それを別の方向へと伸ばすことで、彼女は多様な拡張能力を発揮させていた。

 

 根性を能力に流し込み、複雑な操作を行う――――

 

「『空気の目(セムズアイ)』」

 

 自らに触れた空気たちを、決まったタイミングと程度で停滞させ、密度の違う空気の層を自分の『眼』の前に構築する。

 

 そうして生み出された即席の望遠鏡で、バスキンはビルの上を見た。

 

 長身の、青毛の褐色肌のウマ娘。耳は大きく、緑を基調とした勝負服を身に着けていた。

 その手にしているのは、スナイパーライフルか。どこかからか銃弾を取り出して、銃へと装填をしようとしていた。

 

「装填してる……もう一発くる!」

「くそっ、耳が……」

 

 いつも危機感知に利用している耳が働かない。

 先ほどの銃の音のせいで、耳がマヒしている。

 

 いつ来るか、タイミングが分からない。

 バスキンは思考した――――さすがに、銃がだれを狙っているのかまではわからない。それにこの距離から狙撃してくる銃だ。音速を数段軽く超えてくる凶弾だろう。合図してよけろと言うんじゃもう遅い……。

 

「わ、わたしの後ろに入って!」

 

 思考から引きあがり、バスキンは声をあげた。

 

「あ!? そんでどうすんだよ!」

「良いから、もう来るよ!」

 

 装填が完了した。

 

 スコープを覗き込み、ちょうどこちらに狙いを定める。

 

 ちょうどその時、ダンツとポッケが自らの後ろに来た。

 

 銃爪に指をかけ、そこに力がこもった瞬間、バスキンは声を上げて跳びあがった。

 

「わたしのことは良いから倒しに行ってね!」

「あ!? サーティ――――」

 

 轟音が鳴り響いた。

 

 ポッケの頭上を抜けて、バスキンの体が後ろへと飛んでいく。

 

 どさり、とバスキンの体が地面に落ちた。

 

「――――――おい!!」

 

 ポッケが悲痛な叫びをあげる。

 

 脚を止めかけた瞬間、地面に横たわったバスキンは叫んだ。

 

「大丈夫死んでない! げほっ、能力で止めた! ていうかバトロワで死人は出ないから! 意識あるから脱落もなし! 早く行って!」

 

 その軍服の勝負服の腹部には、血がにじみ出ていた。

 しかし、それはすぐにぴたりと止まる。『減速』の能力があれば、止血や応急処置は問題外だ。

 

「――――ビビらせんなサーティ!! ありがとうな!!」

「ありがとうバスキンさん!」

 

 体を前に戻し、ポッケとダンツは速度を上げた。

 

 あとビルまでは目算で千メートルほどもある。

 バトロワフィールドひとつは一番長いところで二千メートルほど。今ポッケたちからビルまではフィールドの端から中心部への移動に匹敵する距離にもなる。

 普通のウマ娘の足では一分ほどもかかるだろう。さすがにそこまで時間をかけてしまえば、次の一発がまた来てしまう。

 

「ダンツ、もう一回ギア上げるぞ!」

「うん、ポッケちゃん!」

 

 ポッケは体にパワーをみなぎらせ、能力へと流し込む。

 そこに複雑な操作(根性)はいらない。なぜならば、今回使う能力を制御するのは、自分の体の動きそのものだからだ。

 

「――――『突撃魂(ぶっちぎるぜ)』!! オオオオオオオオオオオオ!!」

 

 ジャングルポケットの速度が、途端に数段階上昇する。

 

 能力を通した彼女の走りはもはや普通のウマ娘のそれではない。

 

 ダンツフレームも自らのパワーを練り上げ、ポッケほどではないものの、彼女の走りについて行く。

 

 その時、キーンと耳鳴りがした。

 

(俺狙いか――――!)

 

 地面を蹴り、横っ飛びに回避する。その瞬間、直前まで居た場所を弾丸が通り過ぎ、アスファルトをえぐった。

 

「ダンツ気を付けろ!」

「うんわかった!」

 

 ビルもすぐ目前まで来た。

 

 回復してきた耳を澄ませ、相手の気配を探る――――まだ、ビルの屋上にいる。

 

(どう向かうか……内部からちまちま上ってやる義理もねぇ、ぶっちぎるぜ!!)

 

「ダンツ、俺をブン投げろ!!」

「え!?」

「良いからブン投げろ! できンだろ!?」

「わ、分かった!」

 

 ポッケが一瞬速度を落とし、ダンツがその前へ。

 

 そしてすぐさまポッケを振り返り、ダンツはバレーボールのレシーブのように手を構えた。

 

「いいよポッケちゃん」

「おうよ!」

 

 ポッケがダンツへ飛び込み、その足でダンツの手を捉える。

 

「ふぅっ――――――――!!」

 

 ボッ!

 

 次の瞬間、ポッケの体は宙を舞っていた。

 

「いよ――――――っしゃあ!!」

 

 ダンッ!!

 

 その脚が、ビルの最上階の床を踏んでいた。

 

 そこにいる褐色肌のウマ娘が、驚愕に目を見開く。

 

「よお、ずいぶんとやってくれたじゃねぇか……! さあ、やろうぜ!!!」

 

 バチンッ、とポッケは拳と拳を体の前で打ち付けた。

 

 




捕捉設定コーナー

ジャングルポケットがサーティバスキンのことを『バスキン』ではなく『サーティ』と呼んでいるのは、バスキンという単語が覚えられず『サーティ』の部分をサ〇ティワンアイスと結び付けて覚えているから、という設定です。パフェとかアイスとか好きだから合っているかと……。

それと、バスキンさんが『減速』っていう能力のくせに冒頭で空飛んでんのは何だったんだよ! と思っている方がいるかもしれませんが、お気持ちはわかります。
説明すると、アレは飛んでるのではなく、どちらかというと滑空している、が正しいと思います。重力による下方向への加速を『減速』でキャンセルさせて滑空しているっていうイメージだと、理解しやすいかもしれません。
いろいろと能力で器用にやっているのです……(もともと飛行能力設定だったのを途中で変更したけど冒頭書き直すのがめんどくさかったというわけではない。決して)


思い出したので補足

ダンツフレームがジャングルポケットをバレーボール投げでぶん投げたシーンがあったんですけど、実際どんな強さでぶん投げたんでしょうかね? ということで計算してみました。

ジャングルポケットを70kgの球体として仮定して、高層ビルが60メートルの高さだとします。ビルの屋上に着地したので、ジャングルポケットの最高到達点を65mとし、重力加速度を9.8m毎秒だとして計算してみると……
初速度は秒速35.7mになりました。

時速に直すと時速128.52km。
つまりダンツフレームは体重70kg(仮定)ポッケさんを剛速球並みにぶん投げたということです。

その際のエネルギーは44590ジュール。どんぐらいかといいますと、TNT爆薬10kgぐらいの威力です。ビルの解体では、コンクリート1㎥当たり200gの爆薬が使われるらしいので、50m³のコンクリートをぶっ壊せます。つまり3.6m四方の自分の身長の倍近いデカさのクソデカコンクリートをダンツさんは一発で破壊できます。すごいね。
また、7kgの砲丸に置き換えると、650mくらい投げれるっぽいです。東京スカイツリー超え!

以上、セルフ空想科学でした。
別に毎回毎回科学的にどうなんだーとか考えて書いてるわけではないので、お遊び程度に考えといてくださいー

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