寡黙な生徒   作:いえカニ

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おまけ的な感じです。
そして初投稿です(大嘘


桐藤ナギサ強盗
寡黙な生徒の桐藤ナギサ強盗


ーーートリニティ総合学園:放課後スイーツ部ーーー

 

 

放課後の穏やかな日差しが、トリニティ総合学園の校舎を温かく照らしている。

いつものように私は、柚鳥ナツは放課後スイーツ部の部室にやってきた。

 

扉を開けると、室内にはまだ誰もいなかった。

窓際のカーテンが風に揺れ、机の上には昨日使ったお菓子の包み紙が一つだけ残されている。

 

「今日は私が一番か」

 

私は冷蔵庫から牛乳を取り出し、ストローを差して軽く一口飲む。

ほのかに冷たい牛乳が喉を通り過ぎると、少しだけリラックスした気分になった。

 

ふと視界の端に金髪がちらりと見えた。

 

「あっ、ヨシミかな?」

 

そう思い扉を開けたが、そこに立っていたのは無言の少女――ノーネームだった。

彼女は金色の髪を揺らしながら、静かにこちらを見つめている。

 

「やあやあ、ノーネーム。今日はどうしたのかな?」

 

「…」

 

いつものように返事はない。それでも、彼女の澄んだ瞳は真っ直ぐこちらを見つめていた。彼女は喋らないけれど、表情はとても豊かだ。驚いた顔、嬉しそうな顔、時には拗ねたような顔――無言の中にもたくさんの感情が見える。

 

「まだみんな来てないんだ。良かったら座って待ってなよ?」

 

「…」

 

ノーネームは小さく首を横に振る。その仕草には、言葉以上の意味が込められていた。

 

「もしかして、何か仕事を探してるって感じ?」

 

「…」(こくこく)

 

小さく頷くノーネーム。その動きには迷いも揺らぎもない。

彼女はこうして時々部室を訪れ、「仕事」を求める。その度に私はスイーツを手に入れてほしいと依頼をして、持ってきてくれたスイーツをノーネームと放課後スイーツ部の皆んなで食べるというのがいつもの定番だ。

 

「うーん…そうだなぁ。」

 

私は考え込むふりをしながら、少しだけ悩む素振りを見せた。

 

「かなり難しいお願いになるけどさ、最近話題の『ミラクル5000』を手に入れてくれないかな? とっても美味しいって噂のケーキなんだ。もし持ってきてくれたら、皆んなで一緒に食べる権利をあげよう。どうかな?」

 

「…」(こくこく)

 

彼女は一瞬の迷いもなく頷いた。

 

「ありがとう。それじゃあこれ、ケーキの代金ね。」

 

私はポケットから用意していたお金を彼女に渡す。

ノーネームはそれを受け取り、小さく頷くと静かに部室を出て行った。

 

 

ーーー静かな廊下ーーー

 

 

「ふふふ…ついに手に入れました! ミラクル5000!」

 

廊下の向こうで、桐藤ナギサは白い箱を胸に抱え、満足げに微笑んでいた。

その箱に収められたケーキは、明日のティータイムを彩る特別な一品。

 

「ミカさん、セイアさん、そしてヒフミさん、きっと喜んでくれるはず…!」

 

ナギサの足取りは軽く、その顔には明るい期待が浮かんでいる。

しかし、その表情は廊下の先に立つ一人の少女を見つけた瞬間、わずかに曇った。

 

そこにはノーネームが静かに立っていた。

金色の髪が光に照らされ、その瞳は真っ直ぐにミラクル5000の箱を見つめている。

 

「…あら、あなたは…」

 

ナギサの言葉に、ノーネームはゆっくりと顔を上げた。

その表情には何の悪意もなく、ただ静かで、少しだけ興味深そうな色が浮かんでいる。

 

「ノーネームさん…ですね。本名でお呼びしたいのですが、分からなくてごめんなさい。」

 

この人は何処にも属さず、周りからはノーネーム、寡黙な人、などと呼ばれている。

そして本名は何故か誰も知らないという、学園名簿にもノーネームと書かれておりティーパーティーである私達でも本名は知らない。

 

「…」

 

ノーネームは一瞬、口元を小さく引き締めた後、小さく笑ったような表情を浮かべた。それは、言葉の代わりに「気にしないで」と伝えているように見える。

 

ナギサは小さくため息をつき、再び箱を抱え直す。

 

「それでは私は急いでいますので、ごきげんよう。」

 

ナギサは軽く頭を下げ、ノーネームの前を通り過ぎる。

ノーネームはその場で静かにお辞儀をし、道を開けた。

 

その瞬間――

ノーネームの視線がわずかにミラクル5000の箱に向けられた。

その目には、明確な目的と僅かな探るような視線が宿っていた。

しかし、その表情は一瞬のことで、すぐにいつもの穏やかな無表情に戻る。

ナギサはその視線に気づかず、そのまま足早に去っていった。

 

 

トリニティ総合学園は静まり返り、廊下には夕日が斜めに差し込んでいた。

その中を、ナギサは慎重な足取りで歩いている。

 

彼女の視線はしきりに左右を確認し、その足取りには警戒心が滲んでいた。

 

その後方、廊下の影の中にひっそりとノーネームが立っていた。

彼女は静かに、しかし確実にナギサを尾行している。

足音はほとんど立たず、まるでそこに存在していないかのような佇まいだった。

 

しばらくして、ナギサは人通りの少ない奥まった廊下へと足を踏み入れた。

 

ナギサは鍵を取り出し、扉の前で立ち止まる。

周囲を確認した後、鍵穴に鍵を差し込み、扉をゆっくりと開け扉の奥へと進んだ。

 

数分後、扉の向こうからナギサの足音が再び聞こえた。

扉がゆっくりと開き、ナギサが外へ出てくる。

 

「ふぅ…これで大丈夫ですわね。」

 

満足げな微笑みを浮かべながら、ナギサは扉に鍵をかける。

鍵をしっかりと確認し、彼女はその場を離れていった。

 

ナギサの足音が完全に遠ざかり、廊下に静寂が戻る。

 

ノーネームは音もなく柱の陰から姿を現し、扉の前に立つ。

彼女の瞳は鍵穴を見つめ、懐から細い針金を取り出した。

 

「…」(カチャ…カチャ…カチッ)

 

数秒後、鍵がわずかに動き、扉が少しだけ開いた。

ノーネームは周囲を一度確認し、扉をゆっくりと押し開ける。

壁際には大きな冷蔵庫が堂々と鎮座しいるのを確認し、ノーネームは一瞬だけ部屋を見渡してゆっくりと冷蔵庫へ向かう。

取っ手に手をかけ、扉を静かに開ける。

中には、純白の箱――ミラクル5000が中央に置かれている。

箱の中身を空けて確認すると美しい装飾、透き通るようなクリーム、宝石のようなフルーツ、箱を閉じバッグに慎重に収め、冷蔵庫の扉を静かに閉める。

 

次に、ノーネームは金色の取っ手が輝く戸棚の前に立った。

扉をゆっくりと開けると、その中には豪華なお菓子が整然と並んでいた。

 

金色の包装紙に包まれたチョコレート、鮮やかな色合いのゼリー菓子、宝石のように輝くキャンディ――

まるで美術館の展示品のような美しさだ。

 

ノーネームはバッグを広げ、一つ一つ丁寧にお菓子を詰めていく。

バッグがいっぱいになると、彼女は静かに戸棚の扉を閉じた。

 

彼女はセーフルームの扉に近づき、針金を鍵穴に差し込む。

 

「…」(カチャ…カチャ…カチッ)

 

扉が静かに施錠され、ノーネームは再び鍵を元通りに戻す。

最後に、振り返ることなく部屋を後にした。

 

 

ーーー放課後スイーツ部:部室ーーー

 

 

「ミラクル5000が食べれるって本当?」

 

部室に入るなり、杏山カズサが疑った様子で私に詰め寄る。

 

「ほんとほんと、少しは信用してよ、キャスパリーグ」

 

私がふざけた口調で言うと、すぐに後ろから強い力で首を締め上げられた。

 

「その名前で呼ぶなっ!」

 

「く、苦しいぃぃ…! さ、酸素…っ!」

 

「カ、カズサちゃん! 落ち着いて! それ以上締め上げたらナツちゃんが本当に気絶しちゃうよ!」

 

栗村アイリが静止しようとする。

 

「まあナツが気絶してくれたら、その分のミラクル5000は私たちで分けられるし、それもいいんじゃない?」

 

絞められてる柚鳥ナツを見て伊原木ヨシミが笑いながら言う。

 

「よ、ヨシミちゃん! 冗談でもそんなこと言わないの!」

 

杏山カズサはようやく力を緩め、私は机に崩れ込む。

 

「はぁ…はぁ…死ぬかと思った…。キャスパリーグ恐るべし…」

 

「なんか言った?」

 

「いえっ! 何も言ってないです!」

 

部室はいつも通り賑やかだ。そんな中、扉が静かに開かれた。

 

「…」

 

そこに立っていたのは、金色の髪を揺らすノーネームだった。

 

「おお、ノーネームお帰り! もしかして…持ってきてくれた?」

 

ノーネームは無言で白い箱を差し出す。

その箱に描かれたエンブレム――まさしくミラクル5000だ!

 

「これ…本物だ…!」

 

ミラクル5000を見て驚く私達、そしてノーネームは他の皆には見えないように、私にそっとお金を返してきた。

 

(…そうか。これは、やっぱり普通じゃ手に入らなかったんだね。)

 

少しの罪悪感と、同時にノーネームへの信頼感が入り混じった複雑な気持ちが胸に広がる。

 

「あんた、本当によくミラクル5000を手に入れたわね…」

 

「こんなの、開店直後に行っても手に入らないレベルなのに…」

 

カズサとヨシミが驚きの声を上げる。

 

「どこで買ったの?」

 

カズサが少し前のめりになって尋ねると、ノーネームは視線をそらす。

 

「まあいいじゃない。ノーネームが持ってきてくれたんだからさ。 早く食べようよ」

 

私が話を切り替えると、ノーネームはカバンを開け、大量のお菓子をテーブルに並べ始めた。

 

「ちょっ…これって…!」

 

「すごい! 全部最高級品のお菓子だよ!」

 

「こんな高級そうなお菓子、見たことない!」

 

テーブルの上には、金色の包装紙で包まれたチョコレート、透明なガラス細工のようなゼリー菓子、リボンがかけられた小さなキャンディボックス――

まるでお菓子の宝石箱が広げられたかのようだ。

 

「さっすがノーネーム、気が利くねぇ、約束通りみんなで食べようか」

 

ノーネームは頷き静かに椅子に座る。いつもの無言ながらもどこか満足げな表情を浮かべていた。

 

甘い香りが漂う部室。テーブルにはミラクル5000と色とりどりの高級菓子が並べられ、紅茶の湯気が静かに立ち上っている。

賑やかな笑い声が部室に響き、心地よい時間が流れていた。

 

そんな中、杏山カズサがチョコレートを口に運びながら、ふと手を止めてノーネームに視線を向けた。

 

「ねえ、ちょっと気になったんだけどさ。」

 

ノーネームが目を向ける。

 

「ノーネームって、なんで喋らないわけ?」

 

カズサは真正面から尋ねた。

その言葉に、部室の空気が一瞬だけ静まる。

 

ノーネームはカズサの顔をじっと見つめた後、視線をゆっくりと下げる。

小さな肩がわずかに揺れ、その表情にはどこか申し訳なさそうな影が浮かんでいた。

 

「あー、ごめん別に怒ってるわけじないよ」

 

カズサは慌てて手を振る。

 

「ただ…ちょっと気になっただけだから」

 

その声はいつもの強気なカズサとは少し違い、どこか優しさがにじんでいた。

 

ノーネームは小さく首を横に振ると、柔らかい笑みを浮かべるような表情を見せた。

その目元には「大丈夫」と言わんばかりの穏やかさが滲んでいる。

 

「ノーネームはさ、きっとこういうキャラなんだよ。ミステリアスで、みんなを引きつける感じ?」

 

ナツはフォークでシュークリームを指差す。

 

「まるでね、中に甘くてクリーミーなカスタードクリームが隠されてるシュークリームのように――」

 

ナツがフォークをくるくる回しながら言うと、カズサが思わず吹き出した。

 

「ナツ、それ例えになってる?」

 

部室に笑い声が広がる。

ノーネームも小さく肩を揺らし、微笑むような表情を浮かべた。

 

テーブルにはミラクル5000が輝き、甘い香りが部室を満たしている。

全員の顔には笑顔が浮かび、温かな時間が流れていた。

 

ふと、栗村アイリが静かにノーネームの方を向いた。

紅茶のカップを置き、真剣な瞳で彼女を見つめる。

 

「…でもね、私、いつかノーネームちゃんとお話ししたいです。」

 

部室が少し静かになる。

 

「大切なお友達ですから。」

 

その言葉に、ノーネームは少し驚いたように目を丸くする。

しかしすぐに、その瞳が優しく細められ、口元には柔らかな笑みが浮かんだ。

 

彼女は静かに自分のミラクル5000を手に取り、ナイフで半分に切り分けると、その一切れをアイリに差し出した。

 

「えっ! だ、だめです! これはノーネームちゃんの大事な分なんですから!」

 

アイリは両手を振って拒否しようとするが、ノーネームは小さく首を横に振る。

その動きには「いいから受け取って」と言いたげな優しさが滲んでいた。

 

「じゃあ、代わりに私がいただいちゃおうかなー♪」

 

伊原木ヨシミが冗談めかして手を伸ばすと、すかさず杏山カズサがそれを払いのける。

 

「こらっ! 横取りしようとすんな!」

 

「冗談だってばー!」

 

二人のやり取りに笑い声が広がるが、アイリはまだ困った顔をしていた。

 

「…でも、悪いですよ。」

 

ノーネームは微笑むように口元を緩め、ゆっくりとフォークを手に取ると、自分のケーキを一口分すくう。

そのままアイリの方にフォークを差し出した。

 

「え、ええっ!?」

 

「ほら、アイリ。受け取ってあげなよ。」

 

柚鳥ナツが優しく背中を押す。

 

「貰っときなよアイリ、ノーネームは友達だって言ってくれたのが嬉しくてお礼したいんだよきっと」

 

部室が静かになり、ノーネームのフォークの先に乗ったケーキが揺れている。

アイリは少し迷った後、ゆっくりと顔を近づけてそのケーキを口に運んだ。

 

「…っ! 美味しいです…!」

 

アイリの顔が一瞬で真っ赤に染まる。

 

「ふふっ、アイリ、顔が真っ赤だよー!」

 

「まるでストロベリーケーキみたい」

 

ヨシミとナツがからかうように言うと、アイリは耳まで赤くして抗議する。

 

「からかわないでくださいっ!」

 

部室には再び笑い声が広がり、紅茶の香りとケーキの甘さが空気に溶けていく。

 

 

ーーー次の日:セーフルームーーー

 

 

朝の陽光がトリニティ総合学園の廊下を明るく照らしている。

桐藤ナギサは軽やかな足取りでその廊下を進んでいた。

 

「今日は素敵な一日になりそうですね」

 

彼女の両手にはセーフルームの鍵がしっかりと握られている。

その表情には充実感と期待が滲んでいた。

 

ミラクル5000――この特別なケーキが、きっとミカさん、セイアさん、ヒフミさんを喜ばせる。

彼女たちの笑顔を思い浮かべるだけで、ナギサは自然と笑みを浮かべてしまう。

彼女は胸を張り、優雅にセーフルームの扉を開ける。

 

「……っ!」

 

ナギサは目を見開いた。

戸棚にしまっていたお菓子は空っぽになっており何も残っていなかった。

 

「どっ…どういうことですか、これは……!?」

 

冷蔵庫に駆け寄り、その扉を一気に開ける。

中は冷たい空気だけが虚しく広がり、そこには何も残されていなかった。

 

「ミラクル5000が…ない…っ!」

 

ナギサの手が震える。

彼女は急いで戸棚もを開けるが、お菓子は一つも残されていない。

大切に、丁寧に並べられていたお菓子たち――それらはすべて持ち去られていた。

 

ナギサの胸には、怒りと屈辱、そして静かな炎が灯っていた。

 

「これは私たちティーパーティーへの冒涜です」

 

彼女はゆっくりと立ち上がり、扉の前に立つ。

その瞳には鋭い光が宿り、唇は強く結ばれている。

 

「絶対に犯人を見つけ出し、その罪を償わせてみせます!」

 

その言葉には揺るぎない決意が込められていた。

 

 




ナギサ様の部屋とか高級な物とかあって強盗のしがいがありそうですよね。
こらからも黒歴史書いていきます。
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