寡黙な生徒   作:いえカニ

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初投稿です(迫真


寡黙な生徒の桐藤ナギサ強盗2

ーーー放課後スイーツ部:部室ーーー

 

「んっ?今日は私が1番か」

 

 部室のドアを開けて中を覗くと、まだ誰も来ていなかった。いつもならナツかアイリが先に来ていることが多いのに、今日は珍しく私が一番乗りだ。

 

 窓から差し込む午後の柔らかい日差しが、テーブルの上に置かれたお菓子の袋を照らしている。部室の空気には甘い匂いがほんのりと漂っていて、なんだか少し眠たくなりそうだ。

 

「……ふぅ」

 

 適当に椅子に腰掛けて、ぼんやりと天井を見上げる。こうして静かな時間を過ごすのも悪くない。けれど、やっぱり誰かがいないと少し寂しい気もする。

 

 その時、部室の扉が静かに開いた。

 

「ん?」

 

 振り向くと、そこにはノーネームが立っていた。無言で、だけどどこか柔らかい雰囲気を纏いながら。

 

「ノーネームか。最近はよく来るよね」

 

 彼女は何も言わずに軽く頷く。その表情は相変わらず無口だけど、どこか親しみやすい。

 

「その様子……何か仕事を探してるんでしょ」

 

 私がそう言うと、ノーネームはこくりと頷く。分かりやすい子だ。

 

 でも、友達をパシリに使うのって、なんだか少し気が引けるんだよね。うーん、どうしよう。

 

 考え込んでいると、ノーネームが少し身を乗り出して、私の顔を覗き込んでくる。

 

「んっ? あーいや……友達をパシリに使うのって良いのかなって考えてたんだ」

 

 するとノーネームはくすっと笑って、首を横に振る。その笑顔はまるで『そんなこと気にしなくていいよ』と言っているかのようだ。

 

「その顔は気にするなってこと? ……はぁ、ノーネームってお人好しだよね」

 

 彼女は肩をすくめて、軽く微笑んでいる。……こんな子だから、頼み事をしたくなっちゃうんだよね。

 

「それじゃあさ、期間限定の棒アイスを手に入れて欲しい。近場のお店行ったんだけど、売り切れてたんだよね」

 

 ノーネームは少し考えた後、嬉しそうに頷く。

 

「報酬は……帰りに一緒に食べて帰るっていうのはどう?」

 

「…」(こくこく

 

 ノーネームは再び頷いて、そのまま部室から出て行こうとする。

 

「ちょっと待って。はい、アイス代。足りなかったら言ってね」

 

 小さく畳まれたお札をノーネームに手渡すと、彼女は丁寧に受け取ってから部室を後にした。

 

「……さて、と」

 

 私は部室のテーブルに肘をつき、軽くため息をつく。ノーネームならきっと、頼んだアイスをちゃんと買ってきてくれるだろう。

 

 ……それにしても、最近ノーネームと過ごす時間が増えた気がする。彼女は無口だけど、その分、表情や仕草がすごく豊かなんだよね。

ぼんやりとそんなことを考えながら、他のメンバーが来るのを待った。

 

 

ーーートリニティ総合学園:廊下ーーー

 

 

「ふふふ、私は本当に運が良いですね。期間限定の棒アイスを購入出来るだなんて」

 

 私、桐藤ナギサは開店3時間前から待機をし、ついに念願の期間限定棒アイスを手に入れました。しかも、私の分だけでなく、ミカさんとセイアさんの分も確保済みです。明日の茶会で二人にサプライズとしてお出しするのが楽しみで仕方ありません。

 

「…」

 

「あら、ノーネームさん。ごきげんよう」

 

私がそう言うと、ノーネームはスカートの裾を軽くつまんで丁寧にお辞儀をする。

なんだか、このパターン、以前にもあったような気がしますね……。既視感というのでしょうか。

 

ノーネームは何も言わず、私の手に持っている箱をじっと見つめている。

 

「こちらが気になりますか?これはですね、期間限定の棒アイスなんです。明日、ミカさんとセイアさんに内緒でお出しして驚かせようと思っているんです」

 

「…」

 

ノーネームの視線は、依然として私が持つ箱に釘付けのまま。

 

(もしかして、このアイスが欲しいのでしょうか?)

 

そんな風に思わずにはいられないほど、彼女の瞳は真剣だ。けれど、申し訳ないことにアイスは三本しかありません。

 

「申し訳ございません、アイスは三本しかございませんので、お渡しすることはできないのです。ごめんなさいね」

 

「…」

 

ノーネームは相変わらず無言のまま、ただじっとこちらを見つめている。その瞳にはどこか物悲しさすら滲んでいるように見えた。

 

(……ちょっと罪悪感が湧いてしまいますね)

 

とはいえ、こればかりは仕方ありません。三本しかないアイスを分けるわけにはいかないのですから。

 

ふと、周囲を見渡すと何人かの生徒がこちらを遠巻きに見ていることに気づいた。

 

(……あまり良くないですね。私がノーネームさんと会話しているところを見られるのは)

 

ノーネームには、あまり良い噂がありません。お金さえ払えば何でもするとか、ブラックマーケットに頻繁に出入りしているとか。

 

もちろん、それが真実かどうかは分かりません。ただ、ティーパーティーである私としては、無用な噂を立てられるのは避けたいところです。

 

「早くしないと、アイスが溶けてしまいますので。これで失礼いたしますね」

 

私はノーネームとの会話を打ち切り、足早にその場を離れる。

 

 

ーーーセーフルームーーー

 

 

セーフルームの冷蔵庫に、期間限定の棒アイスを慎重にしまう。前回、お菓子泥棒に遭ったことで、冷蔵庫も棚も新しいものに交換されていた。さらに、冷蔵庫には3つの鍵が取り付けられ、正しい順番で開けなければ警報が鳴るシステムになっている。

 

「えーっと、まずは上、そして下、最後に中央をロック。これで大丈夫ですね!」

 

 桐藤ナギサは満足げに微笑み、冷蔵庫の扉をしっかりと閉める。これで明日の茶会は完璧だ。

 

「ふふ、ミカさんとセイアさん、驚いてくれるでしょうね。明日が楽しみです」

 

 そう呟きながら、ナギサはセーフルームから出ていく。

 

ーーー

 

扉の向こう、ノーネームは静かに廊下の影から現れた。

 

扉に聴診器を当て、冷蔵庫の鍵を操作するナギサの声を注意深く聞き取る。

 

上、下、中央——。

 

鍵の順番を正確に記憶すると、ノーネームはナギサが去るのを待った。そして、足音が完全に遠ざかったことを確認すると、静かにセーフルームの扉を開ける。

 

カチリ、カチリ、カチリ。

 

順番通りに鍵を操作し、冷蔵庫のロックが解除される。

冷蔵庫の扉を開けると、白い発泡スチロールの箱がそのままの形で収められていた。

ノーネームはためらうことなく、その箱ごと両手で抱え上げる。

冷蔵庫を閉め、再び鍵をかける。そして、今度は元とは異なる順番で新たなロックパターンを設定した。

箱をしっかりと抱えたまま、ノーネームは廊下へと静かに足を運ぶ。

 

 

ーーーモモトークーーー

 

 

NO NAME『手に入れた。何処に持ってくればいい?」

 

カズサ『校門で待ってるからそこまでお願い』

 

NO NAME『了解』

 

 

ーーートリニティ総合学園:校門ーーー

 

 

「…」

 

「お疲れ様、ノーネーム」

 

ノーネームは私にアイスの箱と、先ほど渡したお金を差し出してきた。

 

「いいよ、そのお金はあげる」

 

しかし、ノーネームは首を横に振り、お金を返そうとする。

 

「危険を犯して盗ってきたんでしょ? そのお金は追加報酬。もしそのお金を受け取らないなら、そのアイスは元の場所に返してきて」

 

ノーネームはしばらく悩むように視線を落としたが、最終的にはお金を受け取り、私にアイスの箱を手渡した。

 

「よし、それじゃあアイスを食べながら一緒に帰ろう」

 

私はアイスを一本ノーネームに渡し、彼女と横に並んで歩き始める。

 

「流石、限定アイス。すごく美味しい!」

 

「…♪」

 

ノーネームも美味しそうにアイスを食べている。その小さな仕草がなんだか微笑ましくて、私も自然と笑顔になった。

 

(そういえば、ノーネームと二人で帰るのは初めてかもしれない)

 

いつもは放課後スイーツ部の皆んながいるから、こうして二人きりになる機会はなかった。だけど、ノーネームはいつも何も喋らない代わりに、表情が豊かだから気まずい雰囲気にはならない。

 

「ノーネーム、少し聞いてもいいかな?」

 

「…?」

 

「どうして何でも屋みたいなことをしてるの?」

 

「……」

 

「少し噂になってるよ。報酬さえ払えば何でもやって、依頼を完璧にこなす奴だって。銃も持ってないのに、どうしてこんな危険なことを……」

 

ノーネームは足を止め、少し俯いてしまった。

 

「あっ、ごめん。怒ってるわけじゃないんだ。ただ……友達として心配してるだけ」

 

「……♪」

 

ノーネームは微笑んで、再び私の隣まで歩いてくる。

 

「私さ、中学の時、スケバンだったんだよ。毎日喧嘩ばかりしてて、周りからはいつの間にか“キャスパリーグ”なんて異名をつけられてさ」

 

「…✨」

 

「なに、その目……。そんなに面白い話じゃないよ。異名なんて付けられても、何も良いことなんてなかったんだから」

 

ノーネームは目を輝かせて私を見つめる。その瞳に負けて、私は少しだけ中学時代の話を続けることにした。

 

「あの時、スイーツ店の前を歩いていたら、私と同じくらいの歳の子がアイスを食べながら笑っててさ。その姿が本当に楽しそうで、羨ましかったんだよね。私もあんなふうに普通の学生になって、友達と笑い合いながらアイスを食べたいって」

 

あの時見た光景が、今でも心に焼き付いている。思い返すと、その子はアイリに少し似ていたような気がする。

 

「だから、すぐに行動したよ。スケバンを辞めて、高校では普通の学生になろうって。放課後スイーツ部に入って、今はみんなで楽しく過ごしてる」

 

「…」

 

「ノーネームもさ、もし何でも屋が嫌になって、普通の学生に戻りたいって思ったら、いつでも言って。私が協力するから」

 

「…」(こくこく

 

ノーネームは笑顔で頷く。その笑顔を見ていると、なんだか胸が温かくなった。

 

「あっ、それと……私が中学時代にスケバンだったこととか、“キャスパリーグ”なんて呼ばれてたこと、絶対に誰にも言わないでよね! これ、私の黒歴史だから!」

 

「…♪」(こくこく

 

「ふふ……あれ? まだアイスが一本残ってたんだ」

 

「…」

 

ノーネームは首を横に振る。

 

「私が食べろって?……ここは公平に」

 

私はアイスを半分に割り、片方をノーネームに差し出す。

 

「はい。なんだか、こういうことをすると友達って感じがするね」

 

「…♪」

 

ノーネームは嬉しそうに頷き、二人でアイスを食べながら歩き続ける。

彼女は何も喋らないけれど、一緒にいると不思議と安心する。

 

「……こういう時間、いいよね」

 

ノーネームも小さく微笑んで、夜風に髪を揺らしながら一歩一歩、私の隣を歩いていた。

その道のりは、まるで終わらない優しい時間のように感じられた。

 

 

ーーー次の日:セーフルームーーー

 

 

私はセーフルームの扉を開き、中に足を踏み入れる。

戸棚に並ぶお菓子は無事で、少しホッとする。

 

「ふふ、流石の泥棒もこのセキュリティを破ることはできなかったみたいですね」

 

そう呟きながら冷蔵庫の前に立つ。昨日の限定アイスも無事だろう。これで今日の放課後スイーツ部の茶会は大成功間違いなし。

 

「さて、それではアイスを取り出しますか。まずは上を開けてと……」

 

カチリ。

 

しかし、次の瞬間、耳をつんざくようなアラーム音が鳴り響いた。

 

「ビーッ!!!ビーッ!!!ビーッ!!!不正アクセスを確認しました!!!」

 

「えっ?えっ?」

 

警告音に合わせて、冷蔵庫のロックが赤く点滅し始める。

 

「戦闘モードに移行。不審者を排除します!」

 

「ど、どうしてですかーーー!ミカさん助けてくださいーーー!」

 

冷蔵庫のセキュリティシステムが作動し、セキュリティボットが小型ドローンのように天井から現れ、私を追いかけ始める。

 

「ちょっと待って!私は不審者じゃありません!セキュリティ、解除!解除って言ってるでしょ!」

 

しかし、システムは容赦なく警告音を鳴らし続け、冷蔵庫からロボットの足と腕扉が出てきて勢いよくこちらに走ってきた。

 

「これ、どうなってるんですか!?泥棒の仕業ですね!絶対に見つけ出して捕まえてやりますからねーーーー!!!」

 

冷蔵庫ドローン達に追いかけられて廊下を全力疾走している私を見て、楽しそうにミカさんが微笑む。

 

「ナギちゃーん、面白いことやってるね♪」

 

「いいから助けてください、ミカさーーーん!!!」

 

「オッケー☆」

 

 次の瞬間、ミカさんが銃を連射。

 

 バンッ!バンッ!バンッ!

 

冷蔵庫ドローン達が次々と撃ち抜かれ破壊し、冷蔵庫ロボットがミカさんに勢いよく突っ込んでいった。

 

「はぁい、これで終わり♪」

 

ミカさんは華麗に冷蔵庫へと跳びかかる。鋭い拳が冷蔵庫の金属製の足をへし折り、手刀が装甲部分にめり込み、冷蔵庫はガシャーンという音を立ててその場に崩れ落ちた。

 

「さ、ナギサちゃん。これで安心だよ」

 

「は、はぁ……助かりました……。もうダメかと思いましたよ……」

 

私は胸をなでおろす。

 

「ふふっ、それにしても冷蔵庫に追いかけられてるナギちゃん面白かったよ♪」

 

「笑い事じゃありません!これも絶対に泥棒の仕業です!」

 

私は冷蔵庫の中身を確認しようと扉を開ける。

中にあるはずの白い箱はどこにも見当たらなかった。

 

「やっぱり、アイスがありません…」

 

「またやられたんだねー」

 

「絶対に捕まえてみせます!!!」

 

泥棒は一体誰なのか——。

その謎を解き明かす日は、まだ遠いかもしれない。




今の所ペースで早めに十は出来ております。
誤字、脱字、キャラの喋り方が変などありましたらご報告ください。
これからも黒歴史を執筆します。
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