寡黙な生徒のアビドス初仕事
「そろそろ来るか…」
SNSでダチが今日、トリニティからこのアビドスに来るって聞いて、一緒に遊ぼうってことになった。だから駅で待ち合わせしてるんだけど……お嬢様学校の子だし、乗り間違いとかしてないよな。
[大丈夫か?乗り間違いとかしてないか?]
[問題ない、いま到着した。]
出口を見ると、金髪の少女が改札を出てきた。こっちに気づいたダチが手を振りながら歩いてくる。
「よっ、よく迷わなかったな。お嬢様学校の子だし迷うんじゃないかと心配したぞ……それにしても」
写真で見た通り、金髪で青い目。身長はそんなに高くないとは聞いていたけど……
「背は小さいと聞いていたけど、思ったより小さいな。私の半分くらいなんじゃないか?」
「…」
私がそう言うと、ダチは少し眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな表情になる。身長の低さを気にしてるのかもしれない。
「ごめん、悪かったよ。ラーメン奢るから許してくれ」
ダチは微笑んで頷いた。
「よし、じゃあ早速ラーメン屋に行くぞ。ただ、ひとつだけ注意な」
「…?」
ダチは首を傾げてこちらを見る。
「ここにはアビドスの生徒が店員として働いてるんだ。ダチはトリニティのお嬢様だから浮いちゃうかもしれないけど、あんまり気にするなよ」
「…」
ダチは少し表情を引き締めたが、頷いてついてきた。
ーーー柴関ラーメン屋ーーー
「ここがアビドス唯一のラーメン屋、柴関ラーメンだ!」
ダチが興味津々で店内を見回していると、奥から店員が声をかけてきた。制服ではなく、柴関ラーメンのオリジナルエプロンと帽子を着用している女子生徒――アビドス高等学校の生徒だ。
「いらっしゃいま――って、アンタ……!」
「あ、やっぱりアビドスの生徒か。いや、今日はただの客だよ。ラーメン食べに来ただけだから」
「……ふん、食べに来ただけなら多めに見てやるわ。でも、絶対に暴れたりするんじゃないわよ!」
「分かってるって。大将、柴関ラーメン2つお願いしまーす!」
「おう、毎度!」
ダチは少し不安そうな顔をしているけど、すぐに気を取り直して笑顔を見せる。
「大丈夫だよ。ここのラーメンは最高だから、お前もきっと気に入るはずだ」
「…」(コクコク)
大将が厨房から顔を出し、ダチを見てにこやかに声をかけてきた。
「おっ、新顔だな。嬢ちゃん、どこの子だ?」
「私のダチで、はるばるトリニティから遊びに来たんだ」
「へぇ!そんな遠くからわざわざ来たのか。よし!嬢ちゃんには大盛りサービスしてやるよ!」
「おー、良かったな!」
「…」(ニコッ)
ダチが嬉しそうに微笑む。この表情を見ると、喋らなくても何を考えてるのかだいたい分かるんだよな。
ーーー数分後ーーー
「はい、柴関ラーメン2丁、大盛りね!」
「うわ、すごい量だな!さすが大盛りサービス!」
ラーメンの山のような盛り付けに目を輝かせながら、ダチは早速食べ始める。
「どうだ?柴関ラーメン、トリニティの料理と比べてどうだ?」
「…」(コクッ)
ダチは大きく頷いて、満足そうな笑みを浮かべる。
「そっか、気に入ったなら良かった……ん?ダチどうした?」
ダチはラーメンを食べながらも、ちらりとカウンターで働くアビドスの生徒と私を交互に見ている。
あー、私がアビドスの生徒たちと険悪な関係なのが気になるのか。まあ、ダチには話してもいいだろう。
「大きな声では言えないが、私たちカタカタヘルメット団は、ある企業の依頼でアビドス高等学校を襲撃しているんだ。それでアビドスの生徒には警戒されてるってわけ」
ダチは「なるほど」という表情で頷いている。
ていうか、もうラーメン全部食い終わったのかよ!
「お前なら大丈夫だと思うけど、絶対に誰にも言うなよ。秘密だぞ!」
ダチは小さく頷いた。喋らなくても、何となく信頼してくれてるのが伝わってくるのが不思議だな。
「大将、ダチに餃子もお願いしまーす!」
「あいよー!」
厨房で大将が手際よく餃子を焼いている間、カウンターのアビドスの生徒が私たちにじとっとした視線を送ってきた。
「ほんと、よく働くよなーアビドスの連中も」
ぼそっとつぶやいた私に、店員の彼女がすかさず答えてきた。
「ふん、襲撃するような連中に言われたくないわよ。ラーメンを食べるだけならまだしも、あんまり怪しい事をしてると追い出すからね!」
「あー、分かってる分かってる。ほら、今日は喧嘩売りに来たわけじゃないからさ」
警戒心は相変わらずだ。まあ、仕方ないか。
「はい、餃子一丁お待ち!」
「ありがと、大将!」
ダチも餃子を一口食べて、笑顔を浮かべている。
ほんとに美味そうに食べるな。
〜♪〜♪
私のスマホから着信が鳴る。
画面を確認すると部下からの連絡だった。
今日はダチと遊ぶから連絡するなって言っておいたんだが……
「もしもし?あーどうした……なるほど、そりゃ見逃したくないな。他に動ける奴いないのか?……リーゼント共に襲撃されてそれどころじゃない!分かった、私が行く。あと、もう一つの武器取引の襲撃か……」
私はダチの顔を横目で見る。
ダチはトリニティのお嬢様だし、荒っぽいことなんてやれそうにないが……まあ頼んでみるか。
「ちょっと保留にするぞ……なあ、仕事をする気ないか?かなり荒っぽい仕事だ。スケバンどもがこのアビドス地区で武器の取引をしてるらしい。しかも二箇所同時だ。私は強欲でさ、どっちも逃したくないんだ。一箇所の襲撃は私が行く、もう一箇所の襲撃をお前に任せたい」
「…」
ダチは無言で私を見つめている。
「トリニティのお嬢様にこんなこと頼むのも悪いと思ってる。けど頼む!やってくれないだろうか!」
ダチは少し考えるそぶりを見せるが、あまり悩む様子もなく頷いた。
「えっ、良いのか!ありがとう!成功したら報酬は弾むからな!……もしもし、私だ。取引の襲撃はこっちでなんとかする。リーゼント共はそっちで任せたぞ!」
ピッ!
電話を切った後、ふとダチに向き直る。
「あ、そうだ。銃は持ってるよな?」
「…」(ふるふる
ダチは首を横に振る。
「えっ、持ってないの?」
「…」(コクコク
こいつ、銃も持ってない状態でよくキヴォトスを歩けるな……まあお嬢様なら仕方ないか?
「ほら、私のサブウェポンのハンドガンだ。それじゃあ頼んだぞ!あっ、それと危なくなったらちゃんと逃げろよ。ダチが無理して大怪我する姿なんて見たくないからな!」
ダチは受け取ったハンドガンをしっかりと握り、小さく頷く。
「よし、それじゃ行動開始だ。ダチ、気をつけてな!」
私は残ったラーメンを一気にかき込み、席を立った。
そのままレジのカウンターへ向かい、ダチの分の料金を支払い店を出た。
ーーー柴関ラーメン屋・セリカ視点ーーー
「ねえ、そこのアンタ」
「…」
ラーメン屋のカウンターで支払いを終えた直後、あのヘルメット団と一緒にいた金髪の女に私は声をかけた。
すると彼女は無表情のまま、じっと私を見つめてくる。
さっきからずっと気になってたけど、この子、本当に一言も喋らないのね。ヘルメット団とつるんでる時も同じ感じだったし……正直、不気味なのよ。
「ヘルメット団と関わってるみたいだから言っとくけど、また私たちの学校を襲撃しに来たら、絶対に許さないから!」
「……」
私の言葉に、彼女は無言のまま小さく頷いただけだった。
その後、立ち上がると特に何を言うでもなく店を出て行く。
「……ほんと、一言も喋らないし、不気味な子ね……」
私は彼女の背中を見送りながら、心の中で呟いた。
それでも、なんだか妙に印象に残る子だった。
ーーーアビドス裏路地ーーー
「ほら、約束の金だ。ブツはちゃんと持ってきたか?」
「ああ、重火器に軍用車だ」
「よし、取引成立だな……ん?なんだあのチビは」
取引が進んでいたその時、突然現れた金髪の少女が静かに立っていた。誰も気づかないうちに近づいてきたのか、異様な静けさを放っている。
「おい!ここは関係者意外はて…ッ!!」
私の言葉が途切れると同時に、スケバンの一人が頭を撃たれ、急にその場に崩れ落ち、金髪の少女が一気に突進してきた!
「チ、チビを撃て!!」
「は、はい!」
しかし、スケバンたちが反撃しようとするも、金髪の少女の速度に追いつけず、ほぼ全員が次々と倒れていく。
「おい、あのガキ、どうなってんだよ!?」
その状況に焦るスケバンたちが慌てて銃を放つが、金髪の少女の動きはまるで風のように速く、弾はどれも彼女を捉えられない。
「クソ!お前ら、何やってんだ!撃て!!」
焦る声とともに、スケバンたちは必死に引き金を引くが、金髪の少女が立ち回りながら次々と反撃し、すぐにその場を制圧していく。
「よし、あのガキがスケバン共に構っているうちに武器を…」
カチャッ
その音が響くと、私はすぐに振り向いた。金髪の少女が、メインコンピュータの前に立ち、銃を私に向けていた。何も言わず、ただ銃口をこちらに向けるその瞳が冷たい。
「な、何なんだお前は!何が目的でこんなことしてるんだ!!」
金髪の少女は無言で銃を連射し、メインコンピュータの近くを撃ち抜いていく。衝撃で部品が壊れ、機器が震えながら動作不良を起こす。
「や、やめてくれ!分かった、武器か!武器が欲しいんだろ!アビドス砂漠の○✖️廃墟に隠し倉庫があって、そこにもっと武器がある!だからもう勘弁してくれ!」
金髪の少女は無言のまま、オートマタを撃ち抜き、昏倒させた後、倒れているスケバンの1人の所に向かい、胸倉を掴んでビンタをする。
「んっ!ぶっ!!ガッ!!!はぁ、はぁ……げっ、お前は!?」
私が目を開けると、金髪の少女が私の胸ぐらを掴んで、鋭い視線を送ってきた。
「な、何が目的なんだ!金なのか!」
金髪の少女は無言で一歩踏み込んできて、力強くビンタをした。大きい音が響き、私の顔が歪んでしまう。
「い、痛い!何が目的なんだよ!金じゃなければ、何なんだよぉ!」
金髪の少女は再びビンタを始め、私の顔が赤く腫れ上がっていく。その間にも、彼女はその冷徹な眼差しを外さず、私の言葉を待っている。
「や、やめて!やめて!金じゃないなら、私達のアジトが知りたいのか!」
「……」
金髪の少女は一度も言葉を発せず、ただ私を睨み続ける。その圧力に耐えられず、私はついに言ってしまう。
「そ、そうなんだな?お、教える。私達のアジトは○○にある!」
金髪の少女は何も言わず、私の手を縛り、無言で軍用車両に押し込んでいく。その手際は迅速で、まるで機械のように正確だ。
私に続いて他のメンバーも縛られ、次々と軍用車両に乗せられていく。
ーーーモモトークーーー
[片付いた。金と武器は何処に持って行けば良い?]
[ダチ凄いな!アビドスのここにあるカタカタヘルメット団前哨基地に送ってくれ! https://○○○]
[了解、それとアビドス砂漠の○✖️廃墟に隠し倉庫があり武器があるそうだ。それとアビドス地区○○にスケバンのアジトがある役に立てて。]
[いや、どっから情報掴んだんだよ]
[お話ししたたげ]
[よし、詳しく聞くのはやめとく、とにかくよくやった。到着したら報酬払うよ]
[それと捕虜も捕まえた。取り扱いは任せる]
[あぁ、うん、ありがとう]
ーアビドス地区:カタカタヘルメット団前哨基地ー
遠くから砂埃が舞い上がるのが見えた。やがて、一台の車がスピードを落としながら私の前で停車する。運転席から現れたのは、金髪の少女――ダチだった。
無言で軍用車から降りる彼女の姿を見て、私は自然と口元が緩む。
「おっ、来たなダチ!いや、しかしお前が軍用車を運転してくるなんて、なかなか様になってるじゃないか。」
ダチは車から静かにアタッシュケースを取り出し、私に手渡してきた。ケースを開けると中には現金がぎっしり。さらに荷台を確認すると、目と口を縛られたスケバンたちとオートマタが数名、そして大量の武器が積まれている。
「思った以上の成果だな、ダチ!雇った私も正直驚いてるよ!」
「……」
「捕虜の扱いとか、私には正直あまり詳しくないんだが……まあ飯と水をやって、用済みになったら解放すれば大丈夫だろう。それにしても、すげえ量だな。ダチ、お前本当に一人でやったのか?」
ダチは無言で頷く。冷静なその態度に、少し感心すると同時に怖ささえ覚えた。
「さて、それと約束通り、今回の報酬だ。」
現金の入ったアタッシュケースをそのままダチに差し出すが、彼女は首を横に振り、受け取ろうとしない。
「敵の情報、スケバンの取引相手の武器の隠し場所の情報……それに、私の無茶振りに付き合ってくれた分も含めた報酬だ。受け取ってくれ。」
私はダチの手を取り、無理やりアタッシュケースを握らせる。彼女はしばらく黙っていたが、やがて少し困ったような表情を見せながら、しぶしぶそれを受け取った。
「私はこれから、ダチが集めてくれた情報を元に作戦会議をするつもりだ。それに、捕虜たちがもっと詳しい情報を持ってるかもしれないから、そっちの“お話”もしないといけない。今日は本当に悪かったな。こんな面倒なことに付き合わせてしまって……本当は、ダチが行ったことのないゲーセンとか、ショッピングとか、もっと普通の楽しいことを一緒にしたかったんだよ。」
ダチは微笑みながら、私の肩を軽くポンポンと叩いてくる。その仕草は、まるで「気にしなくていい」と言っているようだった。
その後、ダチは私が貸したハンドガンを取り出し、私に差し出してきた。
「銃を持ってないんだろ?そいつはやるよ。私たちの友情の証だと思って、受け取ってくれ。無くすんじゃねえぞ?」
この銃は私よりも彼女の手の中にある方が、役に立つ気がする。
「また今度連絡するから!次は一緒にゲーセン行こうな!」
ダチは軽く手を振り、静かにその場を去っていった。その背中を見送りながら、私は一つ息をつく。
「……なかなか見込みがある奴だな。」
彼女の背中は、少し小柄なはずなのに、妙に大きく見えた。
少女お暇なので書いてみました。
かなり変かと思いますが、ある程度楽しんでいただければ幸いです。
頑張って黒歴史作ります。