危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
今回は評議員の青年との会話です。
案内人に連れ立って階段を登って行く。
エレベーターもあるが、使用中だった。
ERAの階層は高く、かなりの階をまたいだ。
登って行き、1つの階に辿り着いた。
案内人が息を荒げている。
広い廊下があった。
「この廊下を真っ直ぐ行くんだ。」
広い廊下を歩いた。
廊下の窓から外が見える。
下の方に街が小さく映っていた。
反対側を見る。
1つの大きな建物が目に映る。
マグノリアの街の教会、カルディア大聖堂だった。
「……。」
無言でそのまま広い廊下を進む。
人影が待っていた。
1人の青年だった。
「…!!!」
「…?」
その人物を見るなり案内人の脚が止まる。
それにつられて俺も止まる。
「ジークレイン様、ただいま参りました。」
案内人はそのまま片膝を付いた。
彼の態度からは青年がどれ程高い地位にいるのかが伺える。
俺もお辞儀をした。
そして青年の方を見る。
白を基調とした服に、青い髪。左眼に刺繍があるが整った顔立ちが特徴的な青年だった。
その佇まい、姿勢からは彼の持つ自尊心の程が伺える。
彼がジークレインと言う評議員らしい。
「来たか。」
ジークレインは俺の方を見て歩いて来た。
そのまま近づいて来て、
俺の三歩前で止まる。
「……。」
思念体か…。
本体は仕事で外出中だろうか。
評議員の仕事は多岐に渡る。
魔導士や、悪人の検挙といった治安に関する仕事だけでなく、評議員自ら実際に現場に向かう事もある。
彼らにも色々あるのだろう。
黙っているのも何なので俺は口を開いた。
「…俺に何用ですか?」
取り敢えず、ここに呼び出された理由を聞く。
それに対して相手はふっと鼻で笑う。
無言で言葉を待つ。
…相手が思念体であるだけで怪しく見えてしまう俺はおかしいのだろうか。
「そう警戒するな。俺はお前の味方だ。」
「は、はい……」
目の前の青年はそう言って両手を上げる。
俺は肩の力を抜こうとするが抜く気にならない。
警戒していない訳では無かったが、相手はそれを解くように言って来た。
警戒している俺に溜息を吐いて青年は言葉を続ける。
「昨日お前の身柄の処遇について審議があった。
上の老害共はお前を禁固刑にしろと煩かった。」
「……。」
やれやれと言う様に目の前の青年は話し出す。
どうやら俺の処遇について昨日裁判が行われていたらしい。
確か主要の評議員は10人いると聞いた。
彼らを中心として会議を開いたのだろうか。
…彼らの会議を勝手に想像する。
…確かに評議員の老人達は俺を弁護しない気がする。
彼らの腰は非常に重たく、魔導士に対して厳しい。
危険分子を捕らえれば始末する方向でいくだろう。
…到底理解がある人達とは思えない。
目の前の青年は続ける。
「だが、俺はお前を弁護した。
魔導士として新人であるお前にそこまでの責任を擦りつけるのはいかがなものかと思ってだな。可能な限り減刑を求めた。」
「…あ、ありがとうございますっ…」
言葉通りなら、目の前の青年はどうやら俺の刑を軽くしてくれたらしい。
あの老害共から俺を庇ってくれたようだ。
なら、少なくとも、俺にとって都合の良い青年と見て良いのだろうか。
「ふっ、あの老害共は最後まで中々認めなかったが、粘った結果お前の釈放が決まった。
但し、条件付きでな。」
「……。」
緊張が走る。
1番気になる所だった。
一体どんな形で、俺の釈放を勝ち取ったのだろうか。
「条件は1つ。
お前は評議員の監視の元、働く事が決まった。」
「!!!……。」
ジークレインの言葉に俺は警戒を強める。
評議員の監視の元…だと…!!
常に評議員が付いているということだろうか。
所属する組織も既に決まっているということだろうか。
彼らの意図は一体…
「その手っ取り早い方法として、お前は我々の部下、
…つまり、評議員として働く事になった。」
「評議員っ!?」
急に発せられた彼の言葉を聞いて俺は困惑する。
評議員だと!?
俺が!?
あの毛嫌いしていた評議員になるのか?
混乱する俺に構わず目の前の青年は続ける。
「そして、俺はお前の直属の上司となった。
ジークレイン・フェルナンデスだ。」
「!!!」
彼の言葉に内心同様する。
所属する場所まで決められていた。
…まじかよ。
こいつが、ジークレインが俺の上司だと…!!
いや、老害共よりは明らかにマシだろうが…。
う〜ん、何と言うかな〜。
思念体であるせいで胡散臭く見えてしまう。
「そういう訳だ。これからお前は俺の下で働いて貰う。
異論は無いな?」
「は、はい…俺からは無いです。」
断れる訳も無く俺は了承した。
仕方無い、俺に発言権など無い。
首を縦に振るしか無かった。
いや、まだ怪しいと決まった訳では無い。
裁判で俺を弁護したなら悪い人では無いはずだ。
「それではよろしく頼んだ。」
「こちらこそ。」
取り敢えず握手をする。
「では、早速働いて貰う。
まず制服に着替えて来るように、着替えはそこの案内人が持っている。」
「は、はあ…」
ジークレインはそれだけ言うと背を向けた。
「お前、凄い人に目をつけられたな…」
案内人が俺に呟いた。
凄い人ね…
俺はそれを聞いてボソリと呟く。
「悪…じゃなければ良いんだけど…」
「ふえ?」
つい発せられた俺の言葉を聞いて、案内人のカエルは疑問符を頭に浮かべた。
廊下歩く俺の中で1つの言葉が思い浮かんだ。
『碌な目に合わない。』
牢獄で呟いたジョゼの言葉が頭をよぎる。
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「上手く行ったな…」
刺繍の青年、ジークレインはそう呟きERAの一室に戻る。
「お疲れ様です。ジークレイン様。」
部屋にいた1人の女が青年を出迎える。
女は20代前後で、今が1番美しい時期だ。
「居たのかウルティア。丁度今終わった所だ。」
和服を着た黒髪の女性に対してジークレインは笑い、席に座る。
ウルティアと呼ばれた女性は紅茶を淹れていた。
2人向かい合って座る。
「それで、どうなりましたか?
あの青年とは、」
「思いの他、上手く行ったようだ。
評議員の老害共の話をしたら俺の話をホイホイと信用した。」
「それはそれは、」
呆れたように笑う青年。
…実際、評議院の会議でブルーを弁護したのは老齢評議員のヤジマであった。
評議員の一部、オーグやミケロを除いて評議院の大半は彼を弁護する方向でいた。
ジークレインが行ったのは寧ろブルーを自らの管轄下に入れる為の誘導。
『ミケロ老師、どうしても彼が信用出来ないのならここは一つ、』
評議員が彼を弁護する中、オーグとミケロは反対し続ける。
それに表立って賛同せずに助け舟を与えた。
『彼を我々の管轄下に置くのはいかがでしょうか。』
その案に渋々、彼らは頷き、他も同意したのだった。
…ウルティアはジークレインから聞いた青年の様子を聞いて笑みを浮かべる。
「そうでしたか、それならば、ジークレイン様の計画は無事遂行されますね。」
「恐らくはな、問題は…」
部屋の外を見る。先程青年が話していた場所を見た。
「あの男が
青年の言葉にウルティアは表情を固める。
ジークレインは
彼の脳裏に浮かぶのは
ウルティアはふっと笑うとジークレインの懸念を払う。
「その可能性は薄いと思われますよ。」
「ほう?」
感心を寄せるジークレインに対して紅茶を片付けながらウルティアは話す。
「彼が妖精の尻尾と関わったのは一度だけ、それも対
此方の話をする余裕などございません。」
「…だかな…。」
ジークレインは警戒している。
あの男は自分と同じ称号を持つ男を倒した。
もし自分の身がバレたら、此方も只では済まない。
懸念を振り払えないジークレインを見てウルティアは少し考える。
そして、1つの策を思い付く。
「ジークレイン様、どうしても不安なのであれば私の方から1つ策があります。」
「ほう、なんだ?」
青年がずいっと身を乗り出して来た。
ジークレインの耳元でウルティアは囁く。
青年は目を見開いた。
「成る程、だが心辺りはあるのか?」
「ジークレイン様の為なら…そうですね、一肌脱がせて頂きます。」
全ては伝えず、自分の作戦を聞いて乗ってきたジークレイン。
ウルティアはそれを見て釣られたと内心微笑む。
「彼を必ず止める大物を知っております。」
自身満々に答えるウルティアに対してジークレインも笑みを浮かべる。
「俺の夢が叶う時が来るのも後少しか…」
「勿論です。」
ふふっと笑う2人の評議員。
方や自分の夢が叶うと、
もう片方は自分の計画が遂行されると。
女の方…ウルティアはジークレインを見て内心ほくそ笑む。
「全てはジークレイン様、いえ、あの方の為なら…」
という訳でジークレインと絡ませて見ました。
ウルティア登場。
彼女の思惑は如何に?