危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
前回までのあらすじ
妖精の尻尾、幽鬼の支配者の抗争の一件後、評議院に身柄を拘束された主人公。
そんな彼、ブルーは上級評議員の1人ジークレインの計らいによって彼らの下で働く事になる。
そんな中、ジークレインの側近ウルティアからとある依頼を頼まれ…
連日の仕事で疲れ切ったブルーは評議院を抜け出して外に出るが…
今回は依頼前の僅かな休息の間に起きた事です。
評議院の建物を出た主人公があのキャラクターと再会します。
主人公の話を聞く彼女は…?
「疲れた…。」
俺は評議院ERAの外に出ていた。
与えられた僅かな休息の時間。
隙をついて抜け出して来た。
「はあ…」
溜息が漏れる。
連日の仕事で俺は気分が疲れていた。
空は曇っていた。ビュウっと強風が吹与く。
落ち葉や、木屑など色んなものが飛んでいた。
空き缶がガラガラなっている。
俺は腕を伸ばす。黒い袖が目に映った。
「久しぶりだなこの格好。」
今の俺は元の服装、黒を基調とした服を来ていた。
やはりこの服が一番落ち着く。
この身体に合う。
評議員の白い服装は俺の身体に似合わない気がした。
歩を進める。
「敷地外だ…。」
ERAの敷地を囲う柵を通り抜けた。
評議院の敷地の外に出る。
辺りの歩道を歩く。
護衛用の馬車があちら此方に動いていた。
その間をすり抜ける。
「あっ、おいっ」
遠くで声がした。
近くのベンチを探そうと思い辺りを見回す。
「おい、待てっ」
さっきより大きくまた声が聞こえた。
人探しだろうか。
人通りの多いこの空間では逸れてしまうのも仕方無いだろう。
「………。」
思い返す。
ジークレインとの会話を。
…次の仕事はかなり大変そうだ。
闇ギルドの中でも最高クラスに危険な集団らしい。
あの2人曰く生きて帰れるか分からないと言っていた。
一応無事を祈ってると言われたが。
今回の敵はこれまでより強力だと言っていた。
聖十大魔導士のジークレインが言うのだから相当な敵なのだろう。もしかしたら彼らより強敵である幹部がいるのかもしれない。
「お前だ。」
「ぐえっ」
急に襟首を掴まれたと思ったら強引に引き戻された。
後ろを振り返って声の主を確認する。
緋色の髪が揺れた。
「うっ…、貴方は…」
「やはりお前か、ブルー。待っていたぞ。」
彼女はそう言うと以前と変わらない鋭い眼で俺を見詰めた。
燃えるような紅髪を揺らし、鎧を着た女性。
かつて俺が敵として接触したギルド。
この人の名前は確か…
「えっと…名前は…」
「…そう言えば自己紹介がまだだったな、
私はエルザだ。エルザ・スカーレット。ギルド
「どうも…ブルー・インフェルノ…改めて…」
彼女が手を差し出してきたので俺も握り返す。
エルザ・スカーレット…
ジョゼが言ってた
魔法はこの前に見た時は確か鎧に関する換装魔法だった。
風の噂で100種類以上の鎧を保有していると聞いた事があるが…
俺は取り敢えず思った事を口に出す。
「…どうして貴方がここに。」
「お前が釈放されるのを待っていた。
他のメンバーは兎も角、ルーシィが責任を感じていたからな…、私のせいだと嘆いていた。だから交代でERAを見張っていた。」
どうやら、彼女を含めた
…俺は仕事でこの門から外に出る時もあった。
しかし、仕事以外では基本外に出ない上、評議員の服装をしていた為彼等は気づかなかったようだ。
随分と心配をかけてしまったようだ。
取り敢えず、身の安全だけでも話しておこう。
「俺は元気だ。今出てきたが釈放されたのは割と早かった。」
「そうか、なら良い。行こう、レビイ達も待ってる。」
「まっ、待ってくれ。」
そう言って俺の手を引こうとする女騎士。
俺は慌てて待ったをかける。
「何だ、ここは長く滞在する場所じゃない、行くぞ。」
「エルザさん、すまん、ちょっと待ってくれ。取り敢えず話を聞いて欲しい。」
「何だ早くしろ。」
ここに居たくないのか早口で捲し立てる彼女を止める。
危うくこのまま連れて行かれる所だった。
「すうっ…落ち着いて聞いてくれ。
実を言うと俺は…
この度評議院の一員となった。」
「なっ、何だとっ」
評議院という言葉に鋭い反応を見せる彼女。
雰囲気が重たいものになった。
眼で続きを言えと言っている。
「俺を釈放する際に奴らは条件を付けてきた。その条件が評議院で働く事だった。それで今俺はここにいるんだ。」
「…っ…そうなったか…。」
俺の言葉に歯痒そうに口元を歪ませるエルザさん。
彼女も評議員に対して良い感情は持ってないようだ。
その為彼らの中のS級魔導士は評議院から直々に危険な依頼を押し付けられる事が多い為、直接圧迫をかけられていると言える。
当然、此等は無視できるものでは無く不満に思う者も多い。
エルザさんもその1人なのだろう。
歯ぎしりをしながら再度俺の眼を見て言う。
「…だが、お前はそれで良いのか。
奴等に上から抑えつけられて、このまま下で働く気か…。」
「確かに俺は評議員が嫌いだ。
…その気になれば実力で奴ら如き吹き飛ばして逃げられる。だがそうすれば…」
「……犯罪者として指名手配されギルドに依頼が回ってくるか…。」
彼女の言う通り評議員はギルドを統括する組織だ。
もし俺が脱走すれば奴らは俺を牢獄に戻そうとする。
奴らはギルド全体を動かす事が出来る。
直ちに捕縛依頼が全ギルドに回ってくるだろう。
犯罪者の捕縛に大半のギルドは進んで協力する。
そうなると
「面倒だな…厄介な事になったな。」
「ああ、ギルドの戦いに土足で踏み込まなければ良かったと思う。」
「……時期が悪かっただけだ。戦争を引き起こした
俺にフォローを入れるも無言になるエルザさん。
敵だったのに真剣に俺の事を考えてくれている。
初見では厳しい印象を受けたが思いの外、情のある人なのかも知れない。
ここは1つ少しでも安心させる為に言っておこう。
「そう心配しないでくれ、不幸中の幸いだが俺の上司は理解のある人間だった。」
「……。」
俺の言葉に無言になる彼女。
暗に続けろと言っている。
俺は話を続ける。
「俺と歳が近いのもあって、俺を上の老人から庇ってくれる人達だった。その人達と仕事をしているから思った程苦痛では無い。」
「……。」
脳裏に青髪で刺繍の入った青年である直属の上司を思い浮かべながら話す。
仕事がキツかったり常に思念体だったりと、色々と胡散臭い部分が多いがそこは言わない事にしよう。
彼の立ち位置も言えば尚安心するかも知れない。
「評議院の上級魔導士10人に選ばれてる。
更には大陸中で最も優れた魔導士の称号、聖十大魔導士の称号を持っていて、」
「お前っ、そいつは……」
聖十大魔導士と言う単語を口にした瞬間、エルザさんの眼がカッと開く。
その表情が強張り、何処か焦りを見せる。
「な、何だ?」
「い、いや…すまん、何でもない続けてくれ…」
一瞬、表情を変えたが、続きを催促するエルザさん。
彼女の反応を俺は疑問に思ったが続ける事にした。
気の所為だろうか。
何処か空気が締まった気がした。
何を言おうとしたんだっけ…
あっ、えっと…
「…常に忙しい人達だ。
俺と同じく上から仕事を大量に押し付けられているらしい。本体は常に外にいて俺と会う時はいつも思念体でいる程だ。」
「………!!!…」
ピクリとエルザさんの眉が動く。
彼女の警戒の色が強まった気がした。
張りつめた空気に一瞬言い淀む。
「………思念体…、ジークレインが…まさかな………」
俺はその反応に違和感を覚えた。
何かをブツブツと呟く彼女。
何だ?
彼女からは不信感だけでなく憎悪、敵意すら見えた。
歯噛みする彼女を前にする俺。
…続ける事にした。
「…俺はその人から依頼の一部を寄越されているが、どれも普通の魔導士には不可能なものだった。
依頼では部隊を寄越されているが、正直使えない。」
「……。」
調子が狂い…フォローするつもりが逆に愚痴のようになってしまった。
仕方無い、俺だって疲れているんだ。
「……!!!」
時計を見る。休憩時間は終わりだった。もう戻らねば。
硬直するエルザさんに声をかけて俺は行く事にした。
「時間だ…、それじゃ、俺は行く。そんな訳だから心配かけてすまなかった。ルーシィさんにも伝えてくれ。」
「まっ、待て、」
戻ろうとする俺の肩をエルザさんは掴んで止めた。
「お前、いや、何でもない、また会おう。
次会えるのは何時だ、」
何かを言おうとしたが止めて、俺の眼を真剣に見据える彼女。
俺は正直に言う事にした。
「正直いつ会えるか分からない。
…上司曰く俺が次に受ける依頼は非常に危険なものらしい。戻れるか分からないと言っていた。」
「……。」
無言になる彼女。
折角の味方らしき人物なので俺も合わせたいが、不確定な打ち合わせは出来ない。
「すまない、そういう事なんだ」
「……一応聞いておこう、お前、此処に来てから何の仕事をしている。」
立ち去ろうとしたが、念を押すようににそう聞かれた。
俺は正直に答える。
「闇ギルドの捕縛、それも恐らく上級のギルドだ。
連日のようにな。俺は此処に来てからそれをやっている。」
「!!!!……」
彼女がハッと目を見開いた。
……。
何故か悪い予感がした。
気の所為だろう。きっと彼女も危険な依頼を押し付けられた事があるのかも知れない。評議院への印象が良くないのも相まって怪しく思えるだけだ。
今度こそ戻ろうとする。
「…待て、お前、次の依頼場所は何処だっ」
さよならを切り出して戻ろうとする俺をエルザさんは止めた。俺の肩を掴んで離さない。
「……。」
「言えっ、何処だっ」
頑なに離さない彼女。
俺は彼女の肩を叩いた。
返して貰えなさそうなので話すことにする。
「ヴェルズの渓谷、バルトーン街だ。くれぐれも来てはくれるな。」
「…っ……」
「俺を信じろ。大抵の敵に俺は負けない。」
俺はそう言って踵を返した。
後ろで歯ぎしりする音がした。
「……レインめ…ブルーを……す気か…」
「………。」
後ろから聞こえてくる声がしたが俺はそのまま歩いた。
何かが起こる。
その予兆な気がした。
無視できない何かが起こる気がした。
ウルティアの依頼…
俺はそこに待ち受ける敵を、まだ知らない…
難しかったです。
主人公はまだ気づいてはいません。