危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
主人公のターンです。
俺の目の前に映るのは悪魔の眼を開眼し、赤眼となった敵ギルドのマスター、ハデス。先程俺が魔力を解放した余波で大きなダメージを受けたにも関わらず。何とか立ち上がろうとしている。
(完全に倒さないと立ち上がってくる…)
真紅の眼の力を解放する前に何度も致命傷を与えたはずだったが奴は倒す度に復活していた。まるで闇の幻影と戦っている感覚だった。倒しても倒しても復活する敵。
(真紅眼の力は長続きしない…)
俺のこの能力は簡単に言うと自身の魔力と攻撃力を上げ、更に発動した時に自身の傷を全て回復させるが、時間は限られている。早く決着をつけなければならない。
手に魔力を込める。
向こうも立ち上がって来た。
行くぞ…!!!
「裏魔法、
ハデスの掛け声と共に悪魔が再び生成される。
俺は駆け出す。左手の魔法陣を発動する。
「
魔法陣を発動する。闇の魔法陣は大きく広がり、空に届く程のサイズになる。中央が真紅に光っている。その魔法陣から先程とは比べ物にならない量と太さの闇のレーザーがハデスの作った化け物達目掛けて降り注ぐ。
ドドドドドドドドドッ
「何っ!!!」
大量に生成されたハデスの悪魔をレーザーが飲み込み消滅させる。先程とは比較にならない威力にハデスも驚いたようだ。
その隙にハデスの眼前に迫る。驚きながらもハデスも魔法陣を発動させようとしていた。俺は右手の魔法陣を発動する。
「
「
真上の空が光る。天から降り注ぐ魔法に向かって闇の巨翼を振るう。数十mにも及ぶ漆黒の闇翼。真紅の電撃波を纏っている。紫黒の雷が降り注いだ。巨闇翼を振るう。
オオオオオオッ
その魔力と風圧に降り注いだハデスの雷は吸収あるいはかき消された。敵は眼の前、そのまま左手で魔法陣を発動。
「
「がっ…!!!」
ハデスの四肢に闇の大鎌を振るう。巨大な鎌は周囲の木々や岩を巻き込んでハデスを切り刻んだ。
血飛沫が飛び散る。
ハデスが倒れた。
「
闇の巨剣を生成する。空中に10数mサイズの剣が4本場に現れた。それが降ってくる。
そのまま倒れたハデスの四肢に突き刺さる。
「がああああああっ!!!!」
痛みはあるのか苦悶の声を上げる。これで拘束出来た。
そのまま闇の大鎌をハデスの首に当てがう。
「くっ…」
「首を飛ばせば幾らお前でも倒せるはずだ」
殺生はしたくなかったが、この闇ギルドマスターは放置して置いては危険だった。ウルティアさんの事を聞きたいが生憎そんな余力は無い。剣で拘束しているが、また復活する可能性もある。魔力拘束具を俺は持っていなかった。部下に連絡する時間は無い。
「止めを刺す。恨むな」
「ま、待てっ、貴様っ、評議員である貴様が儂を殺すのかっ!!!」
「生憎何度も復活するお前を拘束する術を持ってない。力で抑えきれない以上こうするしか無い」
そのまま首を跳ねようとする。
「待てっ、お前の知りたい事を教えてやる、ウルティアの事、そしてジークレインの事だ!!!」
首を刈る寸前にハデスが声を上げた。反射的に手が止まる。
「余計な御世話だ。お前を殺して自力で見つける」
「無駄だ、ジークレインは兎も角、ウルティアの正体に気づくはずが無い」
ウルティアさんについて何か知ってる事があるのだろうか。
剣を強く突き刺す。
「がああああっ」
「良いだろう、どうせ倒すんだ。話をするなら早くしろ」
「ぐっ、教えた瞬間殺す気じゃ無いだろうな」
「お前次第だ」
ハデスは首に鎌を当てられている為喋りにくそうだ。
しかし命には代えられないのか話し始める。
「まず初めに教えてやろう。評議院にいるお前の上司…
ウルティアは儂の部下だ。」
「!!!」
「あやつには儂の作ったギルドマーク、
「…そんな話信じると思うか?」
「信じ無いならそれでも良い。ここで儂を殺してウルティアに報告すればお前はどうなるかな?」
「……」
そんなはずは無い。ウルティアさんは俺の上司だ。共に上の評議院に仕事を押し付けられ、仕事では同じ班になった事は無いが苦楽を共にしてきた仲間だ。
こんな浅はかな虚言を吐くと言う事はウルティアさんを捕まえてはいないのだろう。
「…お前を殺してから後の事は考えれば良い」
「ふははははっ、まだ儂の話は終わっとらんぞ」
「……」
「ウルティアが評議院に潜入しているのは、ある目的があるからだ。それはジークレインによるRシステムの建造だ」
「…!!!」
「ジークレインにRシステムを建造させている内に儂らは影で様々な活動をする事が出来た。Rシステムの存在は儂らの動きに対して評議院への目眩ましとなった」
Rシステムだと…ジークレインさんが?
Rシステムという塔の存在は俺も知ってる。
黒魔導士ゼレフを神と崇める黒魔術教団の過激派が計画した天まで届くほど巨大な塔であり、フィオーレ王国沖合に浮かぶ無人島に建設されているものだ。
教団だけでは人手が足りず、彼らは孤児院などを騙して子供を攫い強制的に働かせ、それでも足りない人手不足を補うべく近隣の村を焼き払い逃げ出した人々を捕まえ奴隷化して強制労働させていたらしい。
楽園の塔とも呼ばれるRシステムの役割は死者をあの世から蘇らせるというもの。これにより、黒魔術教団は死んだと思われている伝説の黒魔道士ゼレフを復活させようとした。
そんな塔の建造にジークレインさんが関わっているだと…
剣を刺す力が強くなった。
「出鱈目を言うなっ、ジークレインさんもウルティアさんも俺の上司だっ!!!ウルティアさんは俺にお前達を倒すように命じた。俺はウルティアさんを信じる」
「ふっ、ウルティアが何故お前に儂らを倒せと言ったか分かるか?それはここでお前を潰す為だ」
「何っ!!!」
「お前を儂らの手で葬る為に儂らのギルドに差し向けて来たのだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「……」
そんなはずは無かった。そう信じたかった。
2人とも俺の面倒を見ているはずだった。常にジークレインさんは忙しく思念体でいるほどだ。ウルティアさんは仕事をよこしてくるもよく話しかけてくれた。2人が悪人な理由が無いと思った。
「……」
「くくくっ…ジークレインはウルティアに操られているのを知らないようだな」
ハデスが不気味に笑った。
そんな中俺の脳内に1つの考えが浮かんだ。
もしも、もし仮にこいつの言葉が本当ならどうなるだろうか。ジークレインさんは常に思念体でいる。
…もしも、仕事で忙しいのではなくRシステムの方に本体が行ってて評議院にいるのが思念体だとしたら…
頭を振る。あり得ない話だった。今度こそハデスを倒すために鎌を振ろうとする。
「待ってっ」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
片目でそちらを見る。そこにいたのは…
「ウルティアさん?何でここに?」
「マス……、ブルー、何してるの?」
「見ての通り、敵ギルドのマスターに止めを刺すところです。何故ここにいるのですか?」
「……仕事が終わったから見に来たのよ」
ウルティアさんは俺とハデスを交互に見ていた。そして俺の方を向いた。
「ブルー、駄目よ、殺さないで」
「しかし、拘束具が足りないのです」
「…私が持ってるわ」
そう言って懐から魔力拘束具を取り出した。
…俺はそれを受け取り、ハデスの手を一本ずつ拘束する。
「ありがとうございます。ウルティアさん」
「……」
そのまま通信を入れて評議員の部隊を呼んだ。
全員を拘束する。ウルティアさんの魔法で辺りを元に戻してから本部へと
本部に戻ると俺は上級評議員から褒められた。
バラム同盟の一角である
牢獄に彼らを入れる際にウルティアさんがじっとハデスを見ていた。俺はそんな彼女に声をかける。
「ウルティアさん」
「っ…ブルーね。何かしら」
少しビクッと肩を揺らした彼女が俺の方を向いた。
「昨日はありがとうございます。ウルティアさんが来なかったらあのままやってたかもしれません」
「…大丈夫よ」
そう言うと再び前を向いた。
「…少しいいですか?」
「何かしら」
「その、ウルティアさんは俺の味方なんですよね?」
「当然よ」
「そうですか、良かったです」
俺の方を見てちゃんと答えてくれた。彼女が敵なはずが無かった。ウルティアさんはジークレインさんと同じ俺の一番の上司だ。疑ってはいけない。
「……?」
後ろに気配を感じて振り返る。
ジークレインさんが俺の方を見ていた。
一瞬目が合った。
「……」
何故か分からないが少し睨んでいた気がした。が、それも一瞬で直ぐに元の顔に戻った。そのまま俺の方に来る。
「ブルー、良くやった。大手柄だぞ」
「…はい、ありがとうございます」
「そう固くなるなって、俺とお前の仲だろ」
「…そうですね」
やはり思念体だった。怪しく思えてしまう俺はおかしいのだろうか。
「暫くの間評議院を休んで良い、結構辛い思いさせたからな」
「…平気です」
今回の敵は強大だったが勝てない相手じゃなかった。そう言う俺にジークレインさんは少し笑った。いつもとは少し違って見えるのは気の所為だろうか。
「1週間程お前に休みを与える。明日からだ。充分な休養を取るように」
そう言ってウルティアさんに話し掛けに行った。
俺はそれを見て、持ち場の机に戻った。今回は色々と書類を書かなければならない。
と言う訳で悪魔の心臓との戦いが一段落つきました。
まあ彼らもこれで終わる理由がありません。
ウルティアもいますしね。