危険な勧誘   作:ダークネスドラゴン

26 / 51


今回も悪魔の心臓編です。

やはり軽い展開ではないですね。






重力と闇渦

 

ERAのある街。

 

空に浮かんでる戦艦を見ながら俺は1人の男と対峙していた。

 

 

(…結構キツイ…)

 

 

目の前の男から発される魔力はかなりのものだった。加えて体躯も良い。負ける気はないが結構苦戦するかもしれない。

 

悪魔の心臓(グリモア・ハート)にはマスターであるハデスの他にも強大な魔道士がいると噂されている。彼の通った後には雑草すら残らないと言われる程の大魔導士。その強さはかつて8万の兵を1人で滅ぼしたと聞くほどだ。

 

強大な魔力を持つ目の前の男を見て、俺は長考した。こいつに足止めを喰らってる余裕は無いが、放置する訳にもいかない。出来るかどうかは分からないが、即ち短期決戦が望ましいと。

 

 

「…堕ちろ…!!」

 

「!!」

 

 

目の前の髪を後ろで束ねた長髪男はいきなり魔法を撃ち込んで来た。一気に俺の身体が重くなる。

 

ピシピシッと周りの地面が割れていく。

 

 

「!!…っ…貴様っ…」

 

「ほう、潰れなかったか…中々骨のある男だ、だが俺の重力魔法で全て押し潰してやる」

 

 

身体にかかる負担が倍増する。同時に俺の周りの物が崩れていく、建物が崩壊し、ガラガラとガラクタのように潰れていった。

 

だが、この程度では何の問題も無い。自信過剰かもしれないが、俺の揚力は決して低くは無い筈だ。

 

 

「…そんな攻撃じゃ俺は倒れない」

 

「俺の重力を耐えやがっただと…!?なら、これで潰れろっ…!!」

 

 

奴は更に魔力を放出した。俺の身体に更に負荷が掛かり、辺りの地面が陥没していく。

どうやら周りの重力を倍化する魔法のようだ。

 

 

(重力操作…、闇光(ダークネス・レイ)が使いにくい…)

 

 

光は質量がゼロ。一見重力の影響を受けないように思えるが、エネルギーと運動量を持っているため、重い物体によって歪んだ時空(空間と時間)に沿って進むことで、結果的に進路が曲がってしまう。これは、光が重力に直接引かれるのではなく、重力源が作り出した空間の道が曲がっているため、光も曲がって進むのだ。

 

故に、闇光(ダークネス・レイ)を発動させると奴の重力の影響で曲げられてしまう。

 

真紅眼(レッドアイズ)の力を解放し、魔力の差で押し切る事も出来なくは無いが、目の前の男にそれを使いたくない。

 

しかし、この男との勝負を長引かせて、街にこれ以上の被害を与えたくない。

 

 

なら、一先ず、近接戦闘、及び、肉弾戦で奴が魔法を使いにくくなるほどダメージを与えるしかない。

 

 

「っ…潰れるかよ…!!!」

 

 

闇の魔力を縫う。身体へかかる負担が半減される。

 

 

「うらああっ!!」

 

「なんだとっ…!!」

 

 

奴の重力を気にせずに俺は突っ込んでいった。ほぼ全速力に近い速度だ。敵が慌てて防御しようとするが遅い。

 

 

「喰らえっ…!!」

 

「がはっ…」

 

 

一瞬で距離を詰めて、油断仕切ってるその腹に拳を叩きつける。吹き飛び、崩れた建物に突っ込んでいく長髪男。

 

同時に重力魔法が解除される。

 

 

「今だ!!」

 

 

そのまま奴が突っ込んだ建物に突撃しようとする。

 

 

「はあああああっ!!」

 

「!!!」

 

 

長髪男が一気に瓦礫から飛び出して空に浮かび上がった。重力魔法を逆手に利用して奴が周りの瓦礫諸共、空に浮かんだ。

 

 

「俺の重力下で動き回るとは…受けろ!!」

 

 

そのまま空から攻撃してくる。浮かんでる周りの瓦礫の重力を操作して俺目掛けて落下させて来る。建造物の破片が俺目掛けて飛んでくる。

 

 

闇の黒渦(ダークネス・ホール)!!」

 

「何っ…!!」

 

 

俺も闇の渦を発動させる。俺目掛けて奴が落としてきた瓦礫が全てブラックホールに吸い込まれる。

 

 

「っ…面白い、飛べそうだなぁ!!」

 

 

驚いた長髪男が重力を更に倍加する。身体への負担がより大きくなるが、無視する。

 

飛んでる敵ごと吸収する為に強力な暗黒の魔法を発動する。

 

 

闇の超黒渦(ダークネス・オーバー・ホール)

 

「なっ、うおおおっ!!!」

 

 

そのまま巨大なブラックホールを続けて発動させる。魔法、そして魔力を持った者全てを吸い込む闇の渦に奴の重力操作の魔法諸共吸い込んでいく。

 

事実浮いている長髪男の身体は重力操作を利用して飛んでいるはずなのに下に堕ちていく。

 

 

「くっ…なら俺もだっ…ブラック・ホール!!」

 

「っ…闇の球体(ダークネス・スフィア)!!」

 

 

展開していた魔力吸収体のブラックホールの魔法陣の下に闇の球体を発動する。2重に大きな魔力を発動させた為、身体に大きな負担が掛かった。街中を闇の球体が覆う。

 

 

「はははっ…!!無駄だあ!!ブラックホールで全て吸い込まれろぉ!!」

 

 

奴の黒の球体が一層強く辺りの大気を吸い込んでいく。俺も魔力吸収用の闇の渦の威力を上げて対抗する。

 

 

「はははっ…!!飛べえ、飛べえ!!」

 

「…周りを見ないで魔法を発動したようだな、後ろ見ろよ」

 

「なっ…うあああああああっ!!!」

 

 

空に浮かんでる長髪男が悲鳴を上げる。彼を真っ黒な影が覆っていた。

 

背中から巨大な戦艦が落下してきた。

何と空に浮いている巨大な戦艦が俺達の魔法で引きずり込まれて行き、その高度が大きく下がっていた。

 

直前に長髪男の真上まで来ており、彼が魔法の発動を続ければ一気に堕ちていくのは確定だ。

 

 

「空中で発動させたのが間違いだったな、魔法と共にそのまま墜ちるが良い」

 

「ま、待てっ…魔法を止めろぉ!!!」

 

「悪いが俺には止める理由など無いっ、闇の渦に吸い込まれろ」

 

「うわああああああああっ!!!」

 

 

直後、長髪男が作ったまだ小さなブラックホールが、俺の発動する闇の渦に吸い込まれていった。

 

 

「うおおおおおっ、俺のブラックホールがああああっ!!」

 

「お前と俺の合体技だな。その威力を味わうが良い」

 

「ゔあああああああ!!」

 

 

奴のブラックホールの威力までが融合し、超魔法となった俺の闇の渦が長髪男を飲み込んでいった。

 

 

「「「「「うわああああああ!!!」」」」」

 

 

同時に長髪男の後ろに迫っていた巨大戦艦を飲み込んで行く。戦艦自体に魔力があるのか、構成員ごと引きずられてるのか分からないが戦艦は構成員諸共一気に吸い込まれていった。

 

更に奴のブラックホールの性質が加わった。ブラックホールは物を飲み込めば飲み込む程大きく広がっていく為、どんどん巨大化し、やがて街の空を覆う程になった。

 

 

飲み込まれた奴らは何処かで落とされる(魔力0で吐き出される)

 

 

「「「「「「うわああああああ!!!」」」」」」

 

 

ERAの方から悲鳴が聞こえてくる。どうやら無事落ちて行ったらしい。

 

彼らが吐き出される場所はERAの前にしておいた。本当は少し離れた郊外に落としたいが、魔力を大きく消耗する為出来なかった。ERAの前に大量の戦艦の破片と構成員が落ちているはずだ。

 

 

「頭が悪くて助かった…」

 

 

真紅眼(レッドアイズ)の力を抜きにした状態の俺とは、揚力は兎も角、素の魔力では大差無い相手だった。

 

本来ならもっと手こずっただろう。奴は周りを見ずに魔法を発動し、そして自分の魔法の威力を俺の魔法に利用され自滅した。お陰で此方は余計な魔力を使わずに奴を倒す事が出来た。

 

 

「よし、後は、脱獄者達の確認だ」

 

「ブルー!!」

 

「!!」

 

 

数人、此方に駆けてくる音がした。振り返るとエルザさんとルーシィ、ナツとグレイが来ていた。

 

 

「来てくれたのか」

 

「当たり前だろっ、悪い奴らは何処だ!?俺がぶっ飛ばしてやるっ!!」

 

 

俺の言葉にナツが真っ先に反応する。戦意があるのは実に頼もしい。

 

 

「っ…、そうだ、ERAの前に落としたんだ。行かないと」

 

「私達も行くぞ」

 

「…同行願おう」

 

 

闇の鳥(ダークネス・バード)」。闇の鳥を3羽造形し、目的地まで飛行する。俺が真ん中の鳥、ナツとグレイが右の鳥、エルザさんとルーシィが左の鳥に飛び乗る。

 

 

「ねえ、ここに来るまでに凄い魔力を感じたけど、あれ、ブルーがやったの?」

 

 

ルーシィが気になったのか俺に聞いてくる。

 

 

「…俺の魔力と敵の魔法が融合したんだ。結果、超魔法と化してな」

 

「そうだったのか…空に浮かんでる大きな戦艦が黒い渦に吸い込まれて行くのは見えたが…ここまで強いとはな…私にもそれだけの力があれば…」

 

 

エルザさんが少し悔しげに歯噛みをする。恐らく彼女は「楽園の塔」の皆の事を考えているのだろう。

 

 

 

…ERAの前に降り立つ。案の定、皆、倒れている。近づいて確認しようとして気付いた。誰かが此方に駆けてくる。

 

 

「ブルーさんっ…街中の火を消してきましたっ…あっ…」

 

「貴方はっ…」

 

「…っ…」

 

 

落ちた闇ギルドの構成員をどうしようか考えていると街中の火を消したらしいジュビアが駆け寄ってきた。

 

しかしルーシィと目が合い、互いに固まってしまった。

俺は取り敢えず両手を叩く。

 

 

「ジュビア、本当に助かった、ありがとう」

 

「い、いえ…ブルーさん、あの、この人達は…」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々を見て固まるジュビア。それはルーシィも同じ様子。

 

 

「な、何で幽鬼(ファントム)の、エレメント4の貴方がここに…」

 

「待て、ジュビアは、彼女も今は味方なんだ。ジュビアは街の火を消してくれた」

 

「えっ、そうなの?」

 

「あ、はい…」

 

「ほう?中々良い仕事してるな」

 

 

取り敢えず彼女をフォローする。グレイは街を救ったジュビアに興味を持った様子。彼女をじっと見詰める。

 

 

「あっ…///」

 

 

顔立ちが整ったグレイに見詰められて少し照れるジュビア。何やらフラグが立った様子だ。

 

…ERAの前にいる評議員達が倒れてる悪魔の心臓(グリモアハート)の構成員を見てどうするか迷っている。

 

 

「魔力拘束具を持ってこい、全員捕らえろ」

 

 

彼らに指示を出して拘束させようとする。評議員共はびびりながらも拘束し始めた。

 

 

「…何だか頼りないわね…」

 

 

ルーシィが思わず呟いた。それに頷いてしまった俺は悪くないだろう。

 

拘束具を持ってきた評議員達が戻って来る。悪魔の心臓の面々を拘束し始める。

 

 

 

まだ安心出来ない。牢獄から脱出した奴らを捕らえねば。周辺に漂う魔力を辿って…

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

「ふ、船の瓦礫が…っ…」

 

 

評議員達が慌てふためく。

 

辺りに散らばり、積み上がっていた船の瓦礫が光ると同時に全て浮き上がった。そしてERA街の空中に全て浮かぶと同時にバラバラだった破片が集まっていき、形を形成していく。見る見る内にそれは元の大船を形どって行く。そして、一気に光った。

 

そして…

 

 

「ふ、船が…」

 

「なっ…元に戻っただと!!」

 

 

驚く評議員。再び街の空を覆う巨大な戦艦の影。街にいる人全員にもその光景が見えていた。

 

 

 

俺はこの魔法を知ってる。

 

 

時のアーク・レストア。

 

壊れた物を元通りに全て修復する魔法。つい数日前にハデスとの戦いが終わった後に見た魔法だった。こんな魔法を使えるの人物を俺は1人しか知らない。

 

信じたくなかった現実が本物になってしまった。

 

 

「っ…だが、ここにいる奴らは逃がさないぞ!!」

 

 

エルザさんが叫んだ。俺達の目の前には悪魔の心臓の構成員達が倒れている。少なくともここにいる奴らは逃げられない。

 

 

「…逃がすかよ…」

 

 

俺は空に手をかざした。恐らく船を再生したからには逃げる気だろう。それ以外に再生する理由等無い。

 

しかし一部始終を見ている俺がそれを放置する理由は何処にも無い。再生したのなら再び破壊すれば良い。魔力が尽きるまで何度でも壊してやる。闇の魔法陣を形成する。船の方に照準を合わせる。

 

 

「破壊してやる。闇の破壊光(ダークネス・デストロイ)…」

 

「何か来るぞ!!ERAの上階の方からだ!!」

 

 

船を破壊する魔法を構えようとしたら、魔道士の気配に気付いたグレイが叫んだ。

 

ERAの上の階から人が出て来る。後ろを振り返る。

 

 

「全員動くな。これよりERAは我々悪魔の心臓(グリモア・ハート)が占拠した」

 

「!!!」

 

 

聞き覚えのある声に嫌でも身体が反応する。数日前に俺と死闘を展開し、しのぎを削った男の声だった。そちらを見やり、その姿を目に捉える。

 

 

「ハデス!!」

 

「くくくっ…、数日ぶりだな、若造よ…」

 

 

何とERAから出て来たのはマスター・ハデスだった。此方を嘲笑うように見下ろしている。しかも手に魔法陣を構えていた。それだけではない。

 

 

「っ…脱獄兵だ!!」

 

「全員いる!!」

 

 

評議員の誰かが叫ぶ。ハデスの後ろには一度捕らえたはずの悪魔の心臓の面々が勢揃いしていた。そして更に最悪な光景が俺達の眼に映る…

 

 

「上級評議員が…」

 

 

なんと悪魔の心臓の構成員が上級評議員の大半を人質に取っていた。ヤジマ老師やベルノ老師もいる。恐らく牢獄を破った後にERAに突撃し、上級評議員達を撃滅し、捕らえたのだろう。文字通り、ERAを乗っ取ったも同然だった。

 

ジークレインとウルティアの姿は無かった。2人の魔力を探りたいが生憎そんな余裕は無かった。目の前のハデスを見やる。

 

 

「っ…その魔法は…」

 

「くくくっ…どうやら貴様も知ってるようだな。この魔法の恐ろしさを」

 

 

ハデスが構える魔法陣には見覚えがあった。マスター・マカロフの発動させた超魔法…

 

 

「あ、あれはっ…」

 

「じっちゃんのと同じ…!!」

 

「マスターの超絶審判魔法…!!」

 

 

エルザさん達も気付いた様子だ。俺を苦しめたあの魔法にそっくりな魔法陣。

 

 

「くははははっ!!!一歩でも動いたら、悪魔の法律(グリモア・ロウ)を発動させる。儂が敵と見なした者を全て葬る魔法じゃ、街中の皆を救いたければ動かない事だな!!」

 

「くっ…」

 

 

勝ち誇ったように高らかに嗤うハデス。無意識に俺の眉が釣る。此方を嘲笑うハデスに俺は強く歯噛みした。

 

 

 

 

 






感想及び、高評価してくれた方達、本当にありがとうございます。

非常に励みになりますね。


早くガジル君辺りも再登場させたい。何とか彼には活躍して欲しい所です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。