危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
原作キャラが苦悩します。
まあ、多分今作の幽鬼の支配者戦(実質的に主人公vs幽鬼の支配者、妖精の尻尾)で物語が解決していたら彼女は成長しなかったと思います。
短めです。
ギルドの壊れた屋根の上で座ったまま俺は周囲を見ていた。
戦いが終わった夜の次の日の明け方、妖精の尻尾の面々はギルドの地下室で眠っていた。全員、回復させた肉体は兎も角、精神の限界が来ていたのだ。ギルドの中で各々熟睡しており、あと数時間は起きないだろう。
「流石にもう来ないな…」
俺はというと1人ギルドの見張りをしていた。敵は追い返したが、また新たな敵が来る懸念からギルドの見張り役を引き受けた。妖精の尻尾の面々は俺に悪いと言っていたが、暴走を止めて貰った挙句、ギルドで休ませてくれたギルドメンバー達への恩返しをしたいと言うと納得いかない表情をしながらも見張り役を任せてくれた。
明け方になり、外が少し明るくなってきた。
「ん…?」
ギルドから出ていく人影が見えた。金髪の娘…、
ルーシィだった。
俺は屋根から立ち上がった。そのまま地上に降りる。
着地した音に彼女が振り返る。
「よう、大丈夫か?」
「あ…、ブルー…」
そのまま彼女の横に並んだ。
「もっと休んだ方が良いと思う。今、精神が限界だろ?」
「うん、そうだね…」
彼女は俺の言葉を聞いているのかどうか分からない空返事を返した。そのまま振り返ってギルドの方を見ていた。
潰されたギルドがルーシィの眼に映る。彼女は今何を考えているのだろうか。ちらりとルーシィの顔を見ると凄くいたたまれない表情をしていた。
見かねた俺は彼女の肩を優しく叩いた。
「ルーシィ、今はあまり深く考えない方が良い。絶対に君のせいじゃないから」
「……」
答えは返ってこない。俺は構わず続けた。
「こうなったのは俺のせいだ。妖精の尻尾の皆に聞いた。評議院に捕まった俺を気にかけてくれていたんだって?それで実家に帰れなかったんだろ」
「……」
「もしも、あの時俺が上手くやって捕まらなかったら、君は父親と話をつけられた。そしたら結果はまた違ったと思う。だから少なくとも原因の1つは俺にあるんだ。だから俺に出来ることがあったらなんでも言って欲しい」
「……大丈夫だよ」
「そうか、これ、受け取ってくれ。俺の住所と通信ラクリマだ。いつでも連絡してくれ。どんな事でも良い。絶対出るから。家に来ても良い」
「うん…」
彼女にメモ用紙と通信ラクリマを握らせる。もう一度軽く肩を叩く。ルーシィは下を向いた。
(あの時、評議院が来る前に逃げてれば良かった…)
ギルドメンバーから密かに聞いた今回の騒動を振り返る。
数週間前に幽鬼の支配者をギルド肉体差し向けたハートフィリア家の主、ルーシィの父親が再び金と権力を使ってルーシィを家に引き戻そうとした。
王国や、正規ギルドの大群、更にはどう繋がったのか分からないが闇ギルドの軍勢を娘を家に引き戻すと言う目的だけの為に、彼らを使って妖精の尻尾を潰しにかかった。
妖精の尻尾はその度に戦い、ルーシィを護ろうとした。しかし連日押し寄せてくる敵達に彼らの体力は限界を迎えた。
現に、数時間前に妖精の尻尾と闇ギルドの間に俺が入らなければ妖精の尻尾は壊滅し、ルーシィは敵に奪われていた。
戦いに割って入った時は焦った。ギルドが燃え、潰されており、妖精の尻尾の面々は皆既に倒れているか、敵に囲まれて集中攻撃され潰される寸前だった。
こうなった原因を探る。その答えは案外早く見つかった。
ルーシィが父親に話をつけに行けなかったからだ。
彼女が父親と会って決別出来ていれば、少なくとも闇ギルドを使って妖精の尻尾を襲撃する事にはならなかっただろう。
そして何故、ルーシィが父親と決別出来無かったのか。その原因は明確だった。
原因は俺だった。俺が幽鬼の支配者と妖精の尻尾の戦いに状況を知らずに入り、散々暴れ回ったせいで評議院に逮捕されたからだ。
優しい彼女は俺の事を気にかけて実家に帰れなかった。それどころか釈放された後も様々な事態が重なり、ルーシィは父親と決別する機会を失ってしまった。
娘と会えない父親は手段を選ばなくなり、今回のような非情な手段に出てしまった。結果妖精の尻尾のギルドが潰されてしまいルーシィは今凄く苦しんでいた。
ルーシィを見ていたら彼女が俺の方を向いた。
「ブルー、心配しないで大丈夫だよ。あたし、今度こそ話をつけに行くから。これはあたしの問題だから気にしないで」
「……」
「絶対にギルドに帰ってくるから」
そう笑って再び前を向くルーシィ。俺はそんな彼女を見て心に誓った。
(何があっても、絶対にルーシィにギルドにいて貰わないと…)
自分の失態で起きた惨状を埋め合わせる為にも俺は決意し、暗い思考を振り払った。
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あれから数日経った。妖精の尻尾のギルドは新しく再建中だった。
ルーシィはと言うとナツとハッピー、グレイとエルザの3人と1匹と共に生活しているようだ。再び強力な敵が襲って来た時に即座に対処できるようにする為だった。ギルドの皆に護られながら彼女は日々を過ごしていた。実家に帰って話をつけられたかは分からない。
俺はというと新しい仕事を捜索中だった。評議院の壊滅と共にその原因であるジークレイン(ジェラール)とウルティアの部隊は即日解雇され、王国の魔道士関連の仕事から永久追放令が出された。即ち俺はギルドに入れなかった。
なんとかこの魔力を活かした仕事に就きたいと思っているのだが、中々次の仕事は見つからなかった。貯金がある限り仕事を探すが、もしも見つからなかった場合、フィオーレを出るかも知れない。取り敢えず適当な仕事をしながら日々の生活費を稼いでいた。
そんなある日だった。
いつも通り、アパートに帰って来た。すると部屋の前に誰かが立っていた。中年の男だった。
「うちに何用ですか?」
男が振り返る。金髪のやたら身なりが整った男だった。
「君が私の娘に手を出している噂の魔道士か」
「何の事ですか」
「とぼけても無駄だ。私の娘を返せ。大事な縁談があるんだ」
どうやら、話からしてこの男はルーシィの父親のようだ。俺は顔をしかめた。男の話は続く。
「私は今回の件を妨害された。お陰でギルドを雇った金が沢山吹き飛んだ。依頼が上手くいかなかった原因は君にあると聞いている。君にはそれを補う義務がある。その為に私の娘を連れて来て欲しい」
「お断りします。俺は貴方の行いに賛成出来ません」
「君の意見を聞いているのではない。さっさと娘を私の元に連れて来い。明日までにだ。私はまたここに来る」
「俺にその気はありません」
「なら、私の娘の縁談が上手く行ったらお前にも金を出してやる。これでどうだ」
「受け入れる気はありません。お引き取りください」
「君にとっては高額の報酬だ。明日までに考えておけ。君の考えが変わっている事を願うよ」
それだけ言うとルーシィの父親は去って行った。
俺は去っていく方向を見た。そして部屋に入ると即座に通信ラクリマを起動した。そのまま通話する。
『はいは〜い、ブルー?どうしたの?』
「急用が出来た。今直ぐに迎えに行くから南公園に来てくれ」
『えっ…ちょっと…』
明るく振る舞う声を無視して通話を切る。この嘘つきが。あんな父親がいるなんて信じられなかった。身支度を整える。
駄目だ。ルーシィを放置出来ない。そのまま俺は公園に向かった。辺りは真っ暗だった。
「まだか…」
公園についた俺は再び通話ラクリマをかける。直ぐに明るい声が帰って来た。
『もしも〜し♪』
「公園に今着いた。ルーシィ、今何処にいる?」
「ブルーの後ろ〜♪」
笑顔でそう言って俺の肩に手を置いた。
「どうしたの?あたしに何か用?エルザ達に話つけるの大変だったよ。ご褒美欲しいな〜」
「……」
「ねえ、あたしにこの服装似合ってると思わない?感想の一つぐらい言って欲しいな〜」
「ルーシィ…!!」
何処までも笑顔を作る彼女の両肩に手を置いた。
「あんな家、帰らなくて良い」
瞬間、彼女はビクンと肩を揺らした。そのまま動きが止まった。俺は構わず話続ける。
「父親に会った。あんな人と話をする必要なんてない」
「……そう…なんだ」
ルーシィは下を見て小さく呟いた。俺は彼女の手を引いた。
「俺の家に来い。お前をずっと俺が護る」
「ブルー…」
公園から出る。下を向いてるルーシィを離さないようにしながら俺は家に向かった。
次回も引き続き、この話を書いていこうと思います。
ブルーが生きてた原因は間章の最後辺りに書こうと思ってます。
どっちが強そう?
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