危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
夜、主人公のアパートの部屋からスタートです。
彼女は精神的に追い込まれている為、行動がおかしくなってます。
ルーシィを俺が契約しているアパートの部屋に連れてきた。
「入りな」
「うん、お、お邪魔します」
ルーシィは少し遠慮気味に部屋に入った。少し緊張しているのかその動きは硬い。俺も異性を部屋に入れるのは初めてだった。
「ふふ、まだ何もないじゃない」
「まだここに来て数週間だからな。すぐ手放すかもだが」
「転々とし過ぎ、でも、そうなるわよね…」
ルーシィをソファに座らせる。彼女は疲れているのか座らされると深く倒れた。
「何もないけど好きにしていい」
「それじゃ遠慮なく」
ルーシィはソファに寝転んだ。精神が限界なのだろう。ずっと気を張り詰めていたんだ。
キッチンに立ち、夕食を作る。1人で暮らしているから料理は下手ではなかった。
「……?」
後ろから音がしない。ちらりとルーシィの方を見るとすうっと眠っていた。よほど疲れていたのだろう。この様子だと妖精の尻尾のチームのメンバーにさえ彼女は気負っている。俺以外誰もいない空間になってやっと安心したと言った所か。
夕食を作り終えたがまだルーシィは眠っていた。起こす気にもならず、明かりを消して布団をかけた。そのまま離れようとする。
しかし突然、ルーシィが苦しそうに悶えた。
「いや…もう止めて…」
小さく聞こえてきた声に足が止まる。ルーシィは布団を強く抱きしめていた。
「もう、嫌だ…み……を……つけないで…」
何かがフラッシュバックしているのか彼女は震えていた。
ヤバそうなのでルーシィの名前を呼びながらその背中を揺する。起こしてあげないと。彼女の手を握った。瞬間、ルーシィが両腕で俺に抱きついてきた。
「駄目…あたし…ら離れな…で…」
その震える身体を抱き返して彼女の背中を擦る。
「ルーシィ…ルーシィ…」
「はっ…」
ルーシィが目を覚ました。正気に戻った彼女と向き合う。真っ暗な部屋だったが、ルーシィの頬に涙が流れているのが分かった。
「ブルー…?」
「ああ、俺だ」
「っ…」
瞬間、俺はルーシィに強く抱き締められた。いや、しがみつかれたと言った方が正しいだろうか。余程怖い夢を見たのだろう。俺はそのまま受け入れて彼女の背中を擦り、頭を撫でた。ルーシィは身体を震わせながらもより強くしがみつく。
「ごめん、急に抱きついちゃって…」
「平気だ、落ち着いたか?」
「少し…ね…」
やがてルーシィは落ち着いてきた。恥ずかしがると思ったが、心の余裕がないのか下を向いてるだけだった。彼女を再度ソファに座らせて飲み物を飲ませた。俺は彼女の横に座る。何もしないのもあれなのでをつける。
「ねえブルー…」
「ん?」
小さな、聞き取れない程の声でルーシィが話し始める。
「あたし、
「その答えはギルドの皆から聞いてるんじゃないか?」
「うん、そうなんだけどね…」
それからルーシィは話し始めた。今回、妖精の尻尾のギルドは正規ギルドと闇ギルドの2度の襲撃で壊滅状態になりかけた。最終的には俺の介入でギルドメンバーの身体は皆健全に戻った。しかし建物はボロボロ。修復は不可能だった。また大量の費用がかかるだろう。
ルーシィは皆に申し訳なくて謝った。それに対して妖精の尻尾の皆は許してくれた。「ルーシィは悪くない。俺達はずっと仲間なんだ。だったら支え合うのが当然だろ」と。
しかし皆の声を聞いても彼女の心は癒えなかった。例え魔法で傷を治してもルーシィの身体は覚えていた。皆が感じてる痛みを、味方が次々に倒れていく恐怖を。ギルドが潰される絶望感を。
もしも彼女の父親の差し向けで、再び敵が襲ってきたら、ギルドは耐えられるだろうか。
否、耐えられるか否かの問題ではなかった。ルーシィは許せないのだ。これ以上自分の問題でギルドの皆が傷付く事を。これ以上護られる立場でいる事を。そして、仲間とギルドが崩れ落ちる事を。
だからナツやエルザに護られながら生活する今、彼女の気は晴れなかった。もっと皆には自由でいて欲しい。自分の事など気にせずに普通の日々を送って欲しい。自分の事情に縛り付けたくないと彼女は思っていた。
いっその事自分が実家に帰って彼女の父親の言う通りに政略結婚をした方が良いんじゃないかと思っていると口にした。そうすれば誰も傷つかないから。
「怖いの、あたしのせいで皆が傷付くのが、あたしが皆の場所を壊しちゃうんじゃないかと思った。あたしもうこれ以上あんなの見たくない…」
そう言ってルーシィは泣き始めた。俺は息を吐いた。
「ルーシィ…、ルーシィのギルドを想う気持ちはよく分かった。その上でだけど…」
そしてそのままルーシィの背中から肩に手を回して彼女の身体を自分の方に抱き寄せた。流れる涙を拭く彼女の右手を左手で包む。
「帰る必要なんかない」
ルーシィの顔が俺の方を向いた。そのまま彼女の身体を擦りながら言葉を続けた。
「ギルドの皆がルーシィを護ってくれたのは仲間だからだけじゃないと思う。きっと皆ルーシィを押さえつけてでもギルドにいて欲しいんだ」
「…なんで…」
「きっと妖精の尻尾の皆はルーシィをそれだけ気に入ってるんだよ。誰にも、何処にも渡したくないんだ。そうだと思う。だってあの時、俺が到着した時、闇ギルドに降伏した人がいなかったから。誰1人として敵に屈しなかったんだ。きっと何かに代えてもルーシィと同じギルドにいたかったんだと思う」
「……」
「もしルーシィがギルドを出て家に帰ってしまったら、それは死力を尽くして戦ってくれたギルドの皆の気持ちを裏切る事になる。それでも帰れるか?」
あの時、闇ギルドに倒された人達はいても敵に寝返った人間は1人もいなかった。きっとギルドの精神だけを理由に戦っていたわけでは無いと思う。大切だから、いて欲しいから皆最後まで足掻いたんだ。
「それに、大丈夫、ルーシィの仲間はもう傷つかない。だって…」
彼女の紋章のついた手を握った。
「ルーシィも君の大切なギルドの仲間も俺が護るから」
柔らかく彼女を包みこむ。
「ルーシィはギルドの仲間が傷付くのを見てられないんだろ?これ以上ギルドの仲間に無償で護って貰いたくないんだろ」
「……」
「だったら俺がルーシィの父親と戦う。そしてどんな敵を差し向けて来ても必ず追い返す。何があっても妖精の尻尾に手を出させない」
「……」
「俺にとってルーシィはギルドとの仲を取り持ってくれたり、俺をギルドで休ませてくれた恩人だ。だからルーシィが俺を必要とする限り俺はルーシィの側にいる」
「なんで…そこまでしてくれるの…?」
俺の行動に疑問を持ったのか彼女が声を上げる。
「そうだな…、俺の事ずっとを気にかけてくれたのもある。けど一番の理由は…」
素直に思っている事を口にした。
「いつか、再び魔道士ギルドに入れる日が来たら俺はルーシィのいるギルドに入りたいと思ってる」
「意味が分からない。なんであたしなんかに…」
情緒が不安定なルーシィを再度抱き寄せた。そしてそのまま両手を彼女の背中に回し、より強く抱き締める。そして、この際本音を言った。
「ルーシィが好きだから」
「えっ…」
嘘じゃない。勿論恋愛的な意味ではないが、俺から見た彼女は1人の人として素敵な人だった。優しさと人の温かさを俺は彼女から貰った。評議院に捕まった俺の事など見殺しにしていいはずなのに気にかけてくれた。そんな人が悪意に潰される光景なんて見たくなかった。きっとギルドの皆も同じ気持ちだと思う。
「だからルーシィにはそのままでいて欲しいんだ。魔道士として弱くたって良い。足りない強さは俺が補う。もしそれでも気がすまないなら、ルーシィが皆を護れるくらい強くなるまで俺が見ている」
「……」
ピンポーンとチャイムが鳴った。俺はルーシィに布団をかけた。
「休んでいてくれ、少し出るから」
「……」
「出る必要はない。俺に任せてくれ」
そのまま玄関に向かう。レンズ越しに外を見る。
「……」
眉が釣り上がる。ドアを開け、外に出ると訪問者が中に入れないように即座に閉めた。ドアの鍵をかける。眼の前には夕方見た人物と同じ人がいた。
「私だ。考えは変わったかね」
「何の事ですか。用がないならお引き取りください」
「そうはいかん。私は娘を連れて帰らなければならないのだ。君には責任を取ってもらわなければならない。娘をあのアパートから連れ出してくれ」
「
眼の前の人物の服を掴みそのまま空を飛行し、高速移動する。
少し離れた公園に着くとその服を離した。魔法に驚いたジュードは後ろに数歩下がった。
「な、ここは何処だ。私をどうする気だ」
「貴方とこれ以上話をする気はありません。家の前にいられても邪魔なので」
「ま、待て…」
そのまま背を向けて去ろうとすると後ろから声がかかる。
「まあ、待て。幾らだ。報酬は幾ら欲しい?金なら幾らでも渡そう。今娘を連れてくるなら2億
「生憎、金に興味ないので」
「なら報酬を倍にしよう。生涯働かなくても良い程の金額だ。危険な魔道士の仕事をやらなくても生きて行けるのだぞ?」
「……」
「君は物事を論理的に捉える事が出来るはずだ。経済的な意味で私と手を組まないか。このまま娘を隠した所で何の意味もないのだ。どうだね?」
「黙れ…」
「簡単な仕事だ。私の娘1人連れてくるだけで君は金持ちになれるのだぞ。隠す必要は無い。人とはお金で動くものだ。この際一生分の富を手に入れて…」
「黙れと言ってるんだ!!」
「うぐっ…」
俺はジュードの胸倉を掴んだ。ジュードの身体が宙に浮き上がる。眼が勝手に真紅に光った。
「貴様に何が分かるか!!仲間を傷つけられる光景を眼の前で見せられたルーシィがどんな思いでそれを見ていたかを!!分からないだろ!!今教えてやる!!その身でルーシィが受けた痛みを味わえ!!」
「ぐっ…ああああああ!!!」
ジュードが苦悶の声をあげた。辺りが闇に染まった。その中でジュードに闇の幻覚を見せた。
「な、レイラだと…」
ルーシィの姿から推測できる彼女の母親の姿を見せる。ジュードは闇ギルドの構成員に押さえつけられ身体は切傷でボロボロになっている状態だ。
「ぐあああああああああ!!痛い、うがあああああ!!や、止めろ、止めてくれー!!なんでもする!!命だけは助けてくれー!!!」
ジュードはあまりの痛みに絶叫する。同時にルーシィの母親が闇ギルドに痛ぶられる光景をジュードに見せた。同時にジュードにも闇ギルドの暴力が続いている。ジュードはたまらず悲鳴をあげた。
「ぐあああああ!!お願いだ!!助けてくれ!!せめてレイラだけでも殺さないでくれー!!」
ジュードはあまりの光景に泣き叫んだ。だがこんなものじゃ俺の怒りは収まらない。
「まだだ、こんなものじゃない。ルーシィが受けた苦痛は、辛さはこんなものじゃなかった。俺は決してお前を許さない…!!精神が狂うまで見せ続けてやる!俺の幻覚の中で一生苦しめ!!」
あの時、ギルドの皆の身体に受けたダメージを肩代わりした俺の魔法、
真紅の眼をより強く光らせ…
「止めて、ブルー!!」
「!!」
突如、悲鳴に似た声が響いた。急に現れた人物に驚いて幻覚魔法を解除した。解放されたジュードは後ろに倒れ、腰を抜かし、大汗をかき、涙を流し、荒い息を吐き、白目になりかけていた。
音源の方を見ると金髪の娘、ルーシィが息を荒げて立っていた。駆け足で追いかけてきたのだろうか。
「ルーシィ、なんでここに…!!」
「大丈夫、パパっ、」
「あっ…、あっ…」
ルーシィは父親に駆け寄った。その身体を起こして揺さぶる。ジュードはルーシィの姿を見てやっと正気を戻してきた。
「る、ルーシィ…なのか…?」
「しっかりして…!!あたしの顔分かる!?」
「…ルーシィ…、誰を庇っているのか分かっているのか?」
自然と声が低くなる。真紅の眼でジュードを睨みつけると腰を抜かしてまた倒れた。
「そいつは君とギルドの皆を傷つけた闇ギルドを差し向けた張本人なんだぞ…」
「分かってる。分かってる。それでも…この人はあたしのパパなの…」
ルーシィは父親を庇うようにして俺の前に立った。
「ルーシィ…」
「ブルー、もう止めて。大丈夫、ブルーが思ってるようにはならないから」
「…そいつと話をする気か?きっと君の自由を奪うことを諦めてない」
「大丈夫、あたし平気」
「何故そう言い切れる」
「本当に大丈夫…あたし…怖くないの」
ルーシィは俺の眼を見た。そして微笑んだ。優しく、柔らかく。
「大丈夫だよ、だってあたし…
ブルーがあたしの味方でいてくれるなら、何も怖くないから」
その眼には涙が浮かんでいた。俺は声を出せず黙っていた。
ルーシィはそんな俺を見ると父親に肩を貸して歩いて行った。
俺はその場に1人取り残された。
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「今日で決着をつけよう、ブルー君」
数日後、俺の前にジュードが現れた。その側にいるルーシィは何処か緊張した様子だった。ジュードは俺を見て震えたが、口を開いた。
「君の意思は分かった。どうやら私に娘を渡したくないようだな。だが、それならば此方にも考えがある」
ジュードの後ろに茶髪の中年男が現れた。鼻筋にある真一文字の傷痕と芽のような頭頂部の髪型が非常に目を惹く豪傑。
背中には光背のような飾りを付けている。聖十の称号を持つ証の徽章。それも序列1位。事実上、イシュガルの大陸最強といわれる魔導士。
「本来ならどちらがより多くの富を稼げるかで決着をつけたかったが、それでは私にあまりにも有利すぎるだろう。だから魔道士である君たちのやり方に合わせてやる」
「全ての魔道士はオレの前に朽ち果てる。君も同じだ」
その眼が俺を捉えた。
「この地方に飽き飽きしていてね。イシュガルを出ようと思ってたんだ。そしたら一枚の依頼書を見つけてね。丁度良い小遣い稼ぎに参上したと言うわけだ」
そして、決めポーズを取った。
「聖十序列1位。ゴッドセレナ、参上」
という訳で、ラスボスの登場です。
次回は当然、バトル回となります。
姿の変わった主人公とゴッドセレナの戦いの行方は如何に!?ルーシィの未来は…!?
どっちが強そう?
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黒髪の主人公
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青髪の主人公