危険な勧誘 作:ダークネスドラゴン
ゴッドセレナ戦、後編です。
主人公が覚醒しています。
「まだ、決着が着かないか…」
カメラマンの中継による魔水晶の映像を見ながらジュードは呟いた。彼は早くゴッドセレナに決着をつけて貰い、縁談を進めたかった。
映像を再度見る。魔道士でも戦士でもないジュードだったが、どちらが攻勢に出ているかは何となく分かった。明らかにジュードの雇った聖十大魔導士、ゴッドセレナが攻撃をしていた。ブルーはそれを防御したり、ガードしたりと防戦一方だった。
「ふん、さっさと降参すれば良いものを。こっちはフィオーレ1の魔道士を雇っているのだ。万が一にも勝ち目は無いと言うのに」
その足で妖精の尻尾がいる観客席へと向かう。
「っ…、ルーシィの父親だ!!」
気付いたグレイが振り返り、警戒心を顕にする。他の妖精の尻尾の皆もジュードに敵意を向けた。
「
「するわけないだろ!!まだ勝負は決まってねえ!!」
「「そうだ、そうだ」」とルーシィを除いた全員が抵抗の意思を向ける。
ジュードはルーシィに眼を向ける。
「ルーシィ、お前は良いのか。あの青年が傷付く姿をこれ以上見ているつもりか。勝負等初めから決まってる。私が雇った彼はフィオーレ1の魔道士だ。世界に認められた魔道士なのだ。彼に万に1つの勝ち目も無い」
「ブルーは負けない!!言ったんだ、あたしを護ってくれるって!!誰が相手でも勝って帰ってくる!!」
ルーシィは強い声で言い返してきた。ジュードには分からなかった。何故、あの青年をそこまで信じられるか。一方的にやられてると言うのに。
「そうか、映像を見ろ、私の傭兵が止めを刺すぞ」
ゴッドセレナが八色の魔力を込める。ラクリマ越しだが、その輝きはまるで虹の魔法のようだ。対してブルーの身体はボロボロだった。防御魔法の姿勢すら見せない。
「ブルー、諦めたのか!!」
「んな訳あるか!!ルーシィの運命がかかってるんだぞ!!」
「ブルー!!戦いをやめるなー!!」
「負ける事は許さん!!」
各々空に向かって声をあげる妖精の尻尾の仲間達。ゴッドセレナの魔法が放たれた。
瞬間、ラクリマが破壊され、映像が消えた。
「どうなってる…!?」
空を見上げる一同。爆発が消えていき、姿が徐々に現れてくる。
彼らの眼に映ったのは巨翼、そして、巨大な竜の前腕。
「なんだ!?あの翼は…!!」
「あれは…!!」
「ERAの時と同じ…!!」
姿を現したブルーに妖精の尻尾の面々は驚いた。特にERAにいた面々は激しく動揺した。何故あの姿になっているのか。否、彼自身危険性は分かっているはずなのに何故なったのか。
いや、…以前とは何かが違う。魔力を吸収してない。暴走してない。
驚く一同を意に返さず、再びブルーが元の姿に戻った。
妖精の面々が驚く中、空からブルーが彼、彼女がいる方を見た。そこには彼の真紅の眼が光っていた。
「あっ…」
その真紅の眼を見た時、ルーシィは悟った。あの時とは何かが違うと…。たったそれだけだったが彼女の胸の中は激しく高揚した。そして…、勝てると確信した。
再び戦いが始まろうとしていた。
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「俺の魔法を耐えただと…!!」
ゴッドセレナは思わず後ろに下がった。自分の最大の魔法を耐えられた事に対する驚愕と狼狽えが見え隠れしていた。
「先程の姿はなんだ。どうやって俺の魔法を耐えた」
「……」
「くっ…答えろ!!化け物になってまで足掻いて、何が君をそこまで動かす」
「約束したんだ。彼女が強くなるまで俺が護るって」
ブルーは改めて自分の拳を握りしめた。この戦いの意味を自分に言い聞かせるように。
「どんな手段を使ってでも、お前を倒す」
同時にブルーの身体が青く光る。それはまるで様々な属性が融合されたエーテリオンの光のよう。いや、それだけでは無い。
「っ…」
「!!」
一瞬、ブルーの背中に竜翼が見えた気がした。直後、ブルーの姿が消えた。次の瞬間、ゴッドセレナは吹き飛ばされていた。
「ごふっ…」
その直後、腹に強い衝撃が襲ってくる。攻撃されたのだと分かった。唯の一撃ではない。恐ろしく硬く、強力な攻撃だった。
「っ…金剛竜の硬化!!」
ゴッドセレナは身体をダイヤモンドのように硬質化させた。彼の身体がダイヤモンドに変化する。
これでブルーの攻撃威力を殺し、カウンターを狙う算段でいた。青の光がゴッドセレナに突撃してくる。数発の攻撃構わずゴッドセレナに命中した。
ドガガガガガガガッ
「があああああ!!!」
硬質化した筈のゴッドセレナの皮膚が破壊された。破壊されたダイヤモンドの鱗が辺りに落ちていく。恐るべき速度と攻撃力だった。
「馬鹿な、これがエーテリオンの力だと…!!それに何故だ…!!さっきまでボロボロだったはず、あの体力の人間に押されるはずが…!!」
「普通はな」
「はっ…!!」
ドゴオオオオオオオッ
ゴッドセレナの背後から声が聞こえてきた。その直後に背中に上からの攻撃が命中する。背中の光輪が破壊された。
「でも今の俺は普通じゃない」
落ちていくゴッドセレナだが、耳は良いためその声は届いた。「普通じゃない」と言う言葉がゴッドセレナの中で何度も繰り返された。
自分で破壊した闘技場の地下へとゴッドセレナは落ちて行った。
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空を飛んでいる片方が闘技場の地下へと落とされた。もう片方はそれを追いかけてこれまた地下へと突っ込んでいく。
「おい、ナツ、撃墜されたのはどっちだ!!」
「……」
「おい、返事しろナツっ!!」
「だー!!うるせえな!!敵に決まってるじゃねえか!!」
「なっ、聞いたかブルーが勝ってるってよ!!」
「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」
「なっ、ゴッドセレナが押されてるだと…!!」
試合を見ていた人達はその言葉に驚いた。聖十大魔導士の称号を持つ男が何の称号も持たない男に圧倒されてる。その事実が信じられなかった。
「まさか、何かの間違いだ。そんな筈は…!!」
そして信じられないのはルーシィの父、ジュードも同じだった。
『任せろ、俺は聖十序列1位の男、ゴッドセレナ。俺に勝てる魔道士なんでこの世にいない』
あの時確かに彼に言われたことであり、加えて聖十大魔導士の称号について調べたジュードは彼を信用していた。
しかし、その彼は今やられてるらしい。それも何の名声もない1人の青年にだった。その事実が信じ難かった。
彼にとってこの勝負に負けると言う事は縁談が成立しないと言う事。即ち、事業に失敗すると言うことだった。
「いかん、何があっても勝って貰わねば…!!」
ジュードは身を乗り出した。
「ゴッドセレナ君!!私は君を信じて雇ったんだぞ!!私の期待を裏切るなー!!」
闘技場の地下にそう叫んだ。聞こえたかどうかはジュードには分からない。
顔を上げる。妖精の尻尾の皆がジュードを見ていた。その中でジュードの眼に1人の人物が映る。
「……」
「はっ…」
それは悲しげな顔で自分を見詰めるルーシィの姿だった。その時ジュードは何故かそれが別の人物に見えた。数年前に命を落とし、自分を置いてこの世から去ってしまった人物。
「レイラ…」
その顔が今のルーシィと重なって見えた。ジュードの中で何かが激しく動いた。同時にもう自分の娘の顔を見られなくなり、眼を背けた。
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闘技場の床から青く光るエネルギー弾が空目掛けて飛んでくる。色んな属性の混じった強力なエネルギーだった。そのエネルギーに吹き飛ばされていたのはゴッドセレナだった。彼が食えない魔力がそのエネルギーには含まれていた。
「馬鹿な…!!オレが負けるだと…!!」
ボロボロになりながらゴッドセレナは魔力を込めた。そして、エネルギーの塊から離脱した。「はあ、はあ」と荒い息を吐いた。
オレはイシュガル1の魔道士だったはず…!!そしてこの大陸を見限った!!あんな魔道士如きにやられるわけが…!!
宙で何かを否定するゴッドセレナに向かって下から青の光が向かってくる。その光はまるで竜が翼を広げたかのように大きな波紋を放出していた。
ゴッドセレナにはその姿が人間には見えなかった。そしてついさっきまで自分に追い込まれていた人物には思えなかった。もっと強くて強力で恐ろしい何かが向かってきたと感じていた。
ドゴオオオオオオオッ
ゴッドセレナに突撃する青の光。再び吹き飛ばされた。
身体に痛みを感じながらもゴッドセレナは思った。何故、自分は押されているのだろう。何故、自分より強い魔道士がこの大陸にいないと思ったんだろう。何故、一度この大陸に見切りをつけたはずなのに、自分はこんなにも動揺しているのだろう。
青の光が再びゴッドセレナに襲いかかる。
ゴッドセレナは魔法を放った。
その隕石が中央から爆発し、辺りに光のコロナの波紋が広がる。太陽が星に近づき大爆発を起こしたような威力に思えた。
その隕石の爆弾が大量に辺りに吹き飛ぶ。眼の前の敵は避け切れずその隕石と光炎の攻撃を受ける。ゴッドセレナも余波に襲われるが滅竜魔道士である彼にはこの属性の攻撃は効かない。
「…ごふっ…」
しかしゴッドセレナは再び吹き飛ばされた。敵がゴッドセレナの魔法を耐えきり、そのまま突撃してきたのだ。青の光が竜の飛翔の如く、高速で移動し、ゴッドセレナを吹き飛ばした。先程はダメージを受けて防戦一方だった相手に何故、自分の魔法が通用しないのか。
「はあ、はあ…」
眼の前の敵、ブルーが荒い息を吐いてる。身体には無数の傷があった。回復魔法は持っていないのだろうか。それとも別の理由があるのだろうか。
しかし、対象的に魔力は増幅していた。まるで先程自分が放った魔法が全て吸収されたかのような感覚だった。
荒い息を吐くブルーが自分を鼓舞するように何かを呟いた。
「負けたくない…、誰の力を使ってでも、勝ってあの娘の未来だけでも作る…俺の代わりに自由になって貰う…、俺はもう人との繋がりを壊したくない…!!」
「!!」
そう言うブルーの背後に一瞬、ルーシィの姿が映ったように見えた。それは自分が未来を奪おうとしている娘。その娘の未来の為だけにこの青年は戦っていた。
一体何が彼を強くしたのか。一体何がここまで彼を動かすのか。一体強力な何が彼の背後にいるのか。
それがあの娘に対する想いだけではない事がゴッドセレナには分かった。もっと強力な何かが彼の後ろについている。世界をひっくり返ず程の力を持った何かが彼を動かしている。
知りたい。ゴッドセレナはそう思った。
知りたかった。もっと彼について知って見たくなった。もっとこいつの世界をオレも味わってみたいとゴッドセレナは思った。
そして同時に何かが壊れた。
「ふっ…、その力。もっと知りたいな」
眼の前の敵に対する恐怖が消えた。そして知りたかった。何処まで自分はコイツに食らいつけるのかを。何処まで戦えるのかを。
もう金なんて関係ない。後は全力をコイツにぶつけるだけだと彼は確信した。
「滅竜奥義、光闇獄竜の
光と闇の混じった煉獄の炎が放たれた。空が赤黒く染まる。もうゴッドセレナに迷いはない。
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「くっ…」
真紅眼の魔力を消す。俺の眼の色が青に戻る。敵が発した魔法が闇属性に変わる。それを身体が勝手に吸収していく。意識はまだ残っている。吸収したら真紅眼の魔力を元に戻す。
それを繰り返した。
そして、物理攻撃で眼の前の敵をどんどん削っていく。確実に敵の体力を奪っていく。
…あの時、俺のなかに眠る奴の力を借りて塔の魔力、
「行け、ブルー!!」
「あと少しだ!!負けるなー!!」
妖精の尻尾からの声が聞こえてくる。人の声はこんなにも力になるのだと今気付かされた。
吹き飛ばしたゴッドセレナが宙で止まった。その姿はボロボロだったが彼はそのまま魔力を高める。敵も勝負に出たようだ。
奴の魔力が一層高まる。八つのエレメントの魔力が奴の周りに発生する。まるで極地のオーロラを見ているかのような光景。そしてそれはあまりにも爆発的、破滅的で恐ろしいもの。
八色の魔法がゴッドセレナの周りに放出される。虹よりもカラフルな多数の光が集まったように見えた。それぞれの属性の魔力が凝縮し、ゴッドセレナの手に集まる。
「滅竜奥義…、
再び空がカッと光る。虹の光のような魔力が放たれる。掛け声と共に八色の破壊光線が俺に放出された。眩い程の光が辺りを包む。触れたものを消滅させる巨大で強力なその光は俺に向かって放たれる。
対して俺も魔力を高める。竜の幻影のようなものが俺の背後に現れたように見えた。そしてその幻影が俺に力を与える。それは竜と同等、それ以上の力だった。その力を推進力に俺はゴッドセレナの発した光の魔法に突っ込んでいった。竜の身体が一瞬だけ実体化する。
「
瞬間、クロッカスの空が大爆発を起こした。
…その日クロッカスの人々は見た。
爆発が止んだ空から1人の青髪の青年が、聖十大魔導士序列一位の男を担いで空から降りてくる姿を。
それは、聖十大魔導士序列一位の敗北を意味していた。
そしてそれは、新たにフィオーレ1の魔道士が現れた事を意味する。
そのあまりにも壮大な光景に声を発する者は殆どいなかった。
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動けなくなったゴッドセレナを担いで空からゆっくりと降りる。闘技場の観客席まで向かう。そのままある場所へと移動していく。
「約束通り、彼女は魔道士として生きる道を選びます」
「…っ…」
それだけ言って背を向けた。ジュードは何故か追ってこない。ならばもう、言葉は必要無かった。
妖精の尻尾の面々が俺を取り囲む。
「凄えぞブルー!!」
「聖十のトップに勝っちまったー!!」
「ブルー!!俺と勝負しろー!!」
「これが…あいつの実力だと…!!」
反応は様々だが、妖精の尻尾の面々は俺の勝利を祝福してくれた。
そんな中、俺は少し離れた場所を見た。そこには金髪ヘッドホンの男が俺を見ていた。
その口元が釣り上がっているのが分かった。
「くくくっ…聖十を倒したか…、凄えぜ…いつか潰してやる…!!」と言う声が聞こえてきた。そのまま去って行った。戦意を失ってない彼を見送る。
「凄い!!ビッグニュースです!!聖十序列1位の男が1人の青年の前に倒れました!!」
同時に俺達の周りをカメラマンが囲む。「今の心境は?」とか「どんな気持ちで戦ってましたか」とか色んな質問が飛んでくる。
煩いカメラマンを押し退けようとして1人の娘と目が合った。
何か言いたそうな彼女と眼を合わせる。そのままそっと彼女に笑いかける。すると答えるように彼女も笑顔を返してきた。同時に視界をカメラマン達に遮られた。
見えなくなった彼女の笑顔を思い浮かべながら、気を取り直す。今は、互いの勝利を喜ぶだけで良かった。
「ブルー・インフェルノ、お前うちのギルドの魔道士にならないか!?」
「いや、うちに入ってくれ!!」
俺の事情を知らない顔すら初めて見たギルドマスター達が勧誘してくる。俺はそれを押し退けながら会場を抜けようとしていた。
という訳で無事、勝利しました。
まあ、何の対価もなしに力を得た訳ではないですね。
楽園の塔で起きた事も次かその次辺りには書いていきたいと思います。
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