誰かこのキヴォトスという魔境から逃げる術をくれ   作:よひらぁぁぁぁぁぁ

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イツキが逃げ続けてきた現実、それが引き起こしたお話の序章です。


炎雷

この男の顔を...眼を最後に見たのはいつのことだったろう。

 

最後に手合わせした時だろうか? 否。

 

砂漠にお宝を探しに行った時? 否。

 

三人で水族館に行った時? 否。

 

一緒にユメ先輩の救出に向かった時? 否。

 

ユメ先輩と砂祭りのポスターから言い争いになった時? 否。

 

それとも、砂漠でユメ先輩を探していた時?

 

...きっと、どれも違う。多分だけど、あの時なんだろう。

 

あの時のことは状況も相まって、よく覚えている。

 

ユメ先輩の死から立ち直れないまま秋も後半に差し掛かろうとしていた時。

 

ゲヘナで最悪の『大災害』が起きた。当時からアビドスの外の情報が多く入ってくるわけではないのであまり詳しくは知らないが、ゲヘナ自治区は七割が壊滅状態、さらには当時の生徒会の一部及び生徒会長が「死亡」したらしい。

 

そんなニュースが流れた次の日。

 

奴は....先輩は、帰ってきた。

 

でも、いつものように気には話すなれなかった。

 

いつもユメ先輩にも勝るとも劣らないほどに優しい光を灯していた暗めのブラウンの瞳が。

 

どんな光も一切寄せ付けない、血みたいに深い紅の瞳になっていたから。

 

 

 

 

 

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「ぐうっ....!!」

 

「ちっ....!」

 

私、小鳥遊ホシノと『元』先輩、燈真イツキの戦闘は1分経っても何も変化が無く、私には着実に苛立ちが募っていた。先輩と戦闘した時はいつもそうだった。お互いに攻め手に欠け、最後には先輩に経験の差で負ける....あれでも全治半年の大怪我のリハビリ中だったというのだから驚いた。

しかし、今日の先輩にはあの時程の動きのキレは見られない。体が鈍っているのだろうか?もしくは...

 

舐められている?

 

そう考えた瞬間、私はギアを一段上げた。

 

「....ッ!?」

 

先輩は焦っているのだろうか、眉を歪めて私の動きに呼応するかのように明らかに動きを変えた。それと同時に私ではなく、明後日の方向にナニカを投げた。

 

 

その瞬間、先輩はキヴォトスで『最強』でなくなっても...『最速』の称号を持つに相応しい人間であることを失念していた。

 

「後ろ...っ!!」

 

背後に現れた先輩が打ち出した...矢?のようなものを間一髪で防ぎながら私は唸る。ここからは、さっきまでの近接戦ではない。オールレンジの戦闘だ。

 

私の予想が正しければ、空中に静止した先輩はこのままならそのまま距離を取り、私の上を取りにくるハズ。

ならば盾で防御しながら突っ込むだけだ...っ!!

 

ここで、先輩は私の予想通りに私の防御を抜く気になったようだ。

 

「光の雨」

 

リヒトレーゲン。漢字で光の雨。神秘で構成された矢(もはや銃弾にしか見えないが)を雨のように打ち出す技。予備動作も打ち出す瞬間の癖も神秘の矢の軌道もこの技の『本来の使い手』だって何でも知っている。先輩が得意とし、何百、何千と見てきた技を対処できない訳がないのだ。あの時はともかく...今の、盾を持った私なら。

 

ズガガガガガガガガ!!!!!という凄まじい音を立てながら光の矢たちが盾に防がれていく。だが、軽い。今まで抱えてきた重みに比べたら、こんなもの...!!

 

全て防ぎ切った瞬間、先輩は顔に驚愕の表情を浮かべる。あの人は普段から私...いや、キヴォトスの人間を下に見ている節があった。まるで、私たちが花であるかのように。私は先輩のことが大好きだった。ユメ先輩と同じくらい。それでも、その部分だけはずっと引っかかっていた。

 

先輩が成長したのは身長と嫌味の精度くらいらしい。私が成長しているという可能性を微塵も考えていない。今の光の雨を凌ぎ切った時も、その前のギアを上げた時だってそうだ。

目はいい癖して未来を一切見ていない。

 

だからこうやって。

 

「致命傷を受けるんですよ」

 

そう言葉を発し、先輩の脇腹を正確に撃ち抜く。同時に血飛沫が舞い、先輩は苦痛で顔を歪める。

血を流している時間は短かった。おそらく神秘か何かの技術で止血したのだろう。だが、彼の脇腹はしっかりと抉れている。これなら決着まですぐだろう。ついでに拘束をし、今日この学校にやってきた『シャーレの先生』あたりに引き渡せばいいだろう。そうすればあとはヴァルキューレあたりに連行されるだろう。

 

 

とりあえず盾で抑え、ロープを持ってきてもらうようにシロコちゃんあたりに呼び掛けようとした時。

 

 

 

 

盾に衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

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正直に言うと、舐めていた。

小鳥遊ホシノという人間の力を。

アイツの負けん気の強さを。

 

心のどこかで格下に考えていたのかもしれない。

無意識で俺に全盛期ほどの力が残っていると考えていたのかもしれない。

以前、ビジネスパートナーがホシノの話をするときに使った『キヴォトス最高の神秘』『暁のホルス』という言葉を忘れたわけではない。

むしろ「後輩頑張ってんなーうふふ」くらいは考えていた。

...結果的に俺の驕りに繋がっていた訳だが。

 

事実、俺は右の脇腹を抉られた。...散弾銃でどうやって抉ったのだろう。結構綺麗に抉れている。

そうこう考えているうちに止血はできた。俺が先ほど使用した技で察している人は察しているだろうが『静血装』...滅却師の技術を利用した。

 

滅却師...ひいてはBLEACHという作品に登場する技術は扱いやすいのだ。少々メタな話になるが、『神秘』という不思議エネルギー、その性質を俺は呪術廻戦の『呪力』よりNARUTOの『チャクラ』...それよりもBLEACHの『霊子』に近いと考えている。

これはあくまで主観ということと、俺には生得領域も血継限界も持ち合わせていないことを念頭に聞いて欲しいが、先ほど並べた順番で技術の再現が容易だったからだ。まあ血が滅却師や死神、虚に近かったというだけの話ではあると思うのだが。技術に関しては男の子ならやるでしょ、「卍解!!」って叫ぶとか。そのノリよ。ジジイにしごかれてたからそれに対抗して死ぬ気で覚えたまでの話。

 

話を戦闘に戻そう。先程、俺は静血装を利用して血を止めたと話したと思う。ここで勘のいいBLEACH読者は気づくだろう。

「最初から使っておけば脇腹を抉られることなどなかったのでは?」

と。

いやほんとその通りなのだが、ここに関しては油断と反応速度の違いだろう。

ここで俺は認めないといけない。ギアを上げた『暁のホルス』小鳥遊ホシノは、俺より圧倒的に格上だと。

その上でこの状況を打破し、このきかん坊を止め、話をする必要がある。

 

 

俺は今、自身が格下であるということを認めた。

だからと言って勝ち筋がないわけではない。この状況下においてはホシノの方が勝ち目が薄いだろう。何故って?すぐに分かるさ。

 

 

 

だって

 

 

ほら

 

 

勝ち筋が

 

 

寄ってきた

 

 

俺を抑えておこうと盾を使って封じようとする瞬間。

止血しているのは見られているだろうし、目が開いているのも確認されている筈だ。だが、この技…というか…能力?は例え全身がが押しつぶされていたとしても放つことの出来る、俺のお気に入りだ。

 

「月牙」

 

黒い光が長物のケースから漏れ出る。

 

「天衝」

 

月牙天衝。『神秘解放』の奥義。

 

これを見せるのは、初めてだろうか。神秘の消費は大分どころじゃないくらいキツイが、それに見合った威力はしているはずだ。

 

 

正面から放たれた月牙は盾によって簡単に阻まれる。

 

 

だけどな

 

 

体制は崩れるだろ??

 

ケースがぶっ壊れ、中から現れた白刃の刀をホシノに向けて構える。

 

 

 

「ほら逆転。昔っから詰めが甘いな」

 

戦闘なら、負ける。

 

だが、殺し合いなら?相手の命を刈り取る争いなら?

 

戦闘経験の差。命を奪うことへの抵抗感。命を刈り取る術。

 

少なくとも、俺の手は血で塗れている。

 

まだ、負けるわけにはいかない。

 

 

...しかし、さっきの月牙。

 

 

盾に傷も入らず、地面も抉れなかった。

 

 

仮にも超火力の名を冠しているのだ。

 

 

威力が低すぎやしないか?

 

 

疑問が渦巻き、刀を構える腕が下がる直前。

 

 

「ストおおおおおおおっぷ!!!!」

 

 

ここ最近で嫌というほど聞いた、あの男の声がアビドス高校に響いた。

 

 

 

 




神秘の詳細が明かされることは来るのでしょうか。
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