Vと花   作:上代わちき

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・花ちゃんとVってなんか雰囲気似てるなぁって思って、かつ名前も偶然みを感じて、つい花ちゃんをVちゃんスタイルでバトルさせたくなりました。そんだけの一発ネタです。

・時系列は5のM20直後ぐらい。

・基本的にゲーム媒体の情報のみ参照。
・「v flower」には、厳密にはいくつか名義があったりしますが本作では演出の都合もあるため「V flower」で固定しています。


前編

 

 

 

 私、V flowerは喋る鳥と出会った。

 

 

「Vチャン。おい、Vチャン!」

「うるさいなぁ、グリフォン。……それに私は"V flower"って言ったでしょ」

「さっきも言ったけどよぉ、その"ブイ フラワー"っていうのややこしいんだよ」

「じゃあ"花"って呼んでよ。みんなはそう呼ぶ」

「ヤダ。"Vチャン"の方がイイ!」

 

 

 しかも、なんかまとわりついてくるようになった。

 おまけに私のことを花ではなく"V"って呼んでくるし。

 

 住んでいた街は滅茶苦茶になるし、本当に嫌になる……。

 

 

 

「それよりグリフォン。約束は覚えている?」

「あったりめぇーよ。俺達は悪魔。契約にはきちんと応えるさ」

 

 

 それでも、幸運の女神は私のことを見捨てなかったらしい。

 

 

 

『ぐるるぅ……!』

「おっと危ねぇ。クリフォト本体はもう無力化されて切除を待つばかりだってのに、まだ悪魔どもはいやがるのね……」

 

 

 この街には、悪魔っていう化け物がまだ蠢いている。

 一時は私も殺されかけた。

 

 でも助けられた。

 他でもないこのグリフォンに。

 

 たまたま、このグリフォンの飼い主が持ってたっていうこの"杖"を拾っていたっていう縁のおかげで。

 

 

 

「……グリフォン」

「わーってるって。近づいてくる奴はそこの猫ちゃん"シャドウ"に任せな。遠くの奴は俺がバーベキューにしてやんよ。……その代わり、俺達は"悪夢"でしかないからトドメを刺せない」

「だからこの"杖"でトドメを刺せ、でしょ。やってやる……!」

「上等だ、Vチャン。……これであの"本"があれば完璧なんだがなぁ」

「私は花って言っているでしょ! それと、その"本"を探すための約束だよ!」

 

 

 

 

 

 

 私は、どこにでもいる学生だった。

 ロックバンドで名を馳せたくて、音楽大学に通っている。

 

 でもその日常は崩れ去った。

 街は危険地帯となった。

 

 街の外にさえ出られたら頼る場所はある。

 でも脱出手段は殆どなくて、私はずっと陸の孤島に閉じ込められていた。

 だからしばらくは避難所で支え合って過ごしていたけど、それもここ最近なくなった。

 

 

 

 頼りになる人も場所もみんななくなって、悪魔に襲われて、たまたま拾った杖で牽制するぐらいしかできないまま、殺されそうになって。

 そうして、グリフォンに助けられた。

 

 

「おいVチャン! そっちに一匹近づいてるぜ!」

「わかってる! シャドウ、私を助けて!」

『がうっ!』

 

 

 曰く、グリフォンは私が拾った"杖"を探しに来たらしい。

 

 彼自身悪魔であり、直近で実は"一度死んだ"らしいのだけど、色々あって失くした"杖"と"本"だけがどうしても気がかりで気合で化けて出たらしい。

 それが、私を救ってくれた理由。

 

 私が拾ったこの杖が、グリフォンの探し物の一つだったみたい。

 

 

 

「そいつは任せたぜ猫ちゃん! ほらVチャン! 次は俺が助ける番だ」

「ありがとうグリフォン。……でも私はVじゃないから!」

 

 

 当然、まずは杖の返却を求められた。

 でも私にとってこの杖は、いざという時に身を護る唯一の武器だった。

 

 私に銃は使えない。

 グリフォン曰く剣の方が悪魔によく効くらしいが、そんなものに縁はない。

 だからやっぱりこの手ごろな長さの杖は、私にとってちょうどいい護身用の武器。

 それを手放せと言うのだ。

 

 かといって、代わりにバールか鉄棒の類を手に入れられる保証もない。

 だからしばらくは待って欲しいとグリフォンに告げた。

 

 

 

 

「シャドウ、突進!」

『がぅ!』

「っ! 今だVチャン!」

「わかった! ……食らえ化け物!」

 

 

 その対価として、私は"本"を一緒に探すことになった。

 その間だけ、杖だけじゃなくグリフォン達の力も借りることができるという約束で。

 

 

 私は"街からの脱出"を目指し、グリフォン達は"本"を探す。

 その目的が交差している間だけ、私達は一緒に戦う。

 

 それが、私とグリフォンの約束。

 

 

 

「上出来だ、Vチャン。こりゃ悪魔狩人としても食っていけるんじゃねぇの?」

「冗談。貴方達の力がないと勝てない。……それと、私はVじゃないって何度言わせるの」

「いやだってさぁ……なぁ猫ちゃん」

『ぐるるぅ……ごろごろ』

「あ、ちょ……舐めないでよシャドウ。うへぇ、またベタベタだ」

「……詩人ちゃんの時より懐いてんだよなぁ。これが人徳って奴なのかねぇ」

 

 

 

 

 

 

「アァー……道理で悪魔が蔓延るわけだ」

「どうしたのグリフォン」

「悲報だ。"クリフォトの根"がまだ一個だけまともに残ってやがる。こいつを駆除しねぇとこの一帯から出られねぇ」

「クリフォトの根?」

 

 

 私の頭上には、大きな樹が二つ空に浮かんでいる。

 一つはなんだか青白くて、大きいけど今にも壊れそうな気配がある。

 グリフォン曰くこれがクリフォトの本体で、でも放っておいて問題ない方らしい。

 

 問題は、それより近いところにある赤くて小さい方の樹だ。

 

 

 

「一言でいえば、クリフォトの子分だ。本体に力を与える外部装置的なもんなんだが……今となっては独立して暴走しているな」

「やばいの?」

「勿論。マジヤバでちゃけぱねぇ。……あれのせいでこの辺りに変則的な結界がはられてる。見えない壁のようなもんだ、あれを壊さないと街から出られねぇ」

「何とかする方法は?」

「ああいうのには、だいたい門番がいる。そいつをぶっ飛ばせれば自然と根も崩れる。当然俺達を閉じ込める結界もおしゃかだ」

「また戦わないといけないのか……」

 

 

 私はこれからその根を駆除しないといけない。

 大抵その近くにいる悪魔は強大な力を有するそうだが、今の私……いや、私達には"切り札"がある。

 それで何とかするしかない。

 

 

 

 

「……っと。もうひと仕事だぜVチャン」

「Vじゃないって言ってるでしょ。……また悪魔?」

「……いや、少し毛色が違うな」

 

 グリフォンが警戒する方へ、杖を構えて凝視する。

 すると、今度はなんだか白くて神々しいナニカがやってきた。

 

 ……なんとなく悪魔っぽくない。

 

 

 

「驚いた。奴ら"アフィニティ"だ……"掃き溜め"でもねぇのに天界の奴らが出張ってくるとは」

「天界?」

「ソ。テンカイ。この辺りじゃ"光の人間界"と"闇の魔界"の二世界論が一般的で、知ってる奴も時折話を合わせたりするもんだが。……いるんだよ、それとは別の光の勢力ってのも」

「光の勢力……」

「ま、本来なら無関係の存在だ。魔女ならともかく。……だから一般的な悪魔狩人は天界に一切関知しない。だからさっきの二世界論がこの辺りの主流派になるわけだが」

「それより……なんかやばそうだよ」

「クリフォトが暴れすぎて気が立ってんだろうなぁ。おまけにVチャンは俺達を連れてる。天使ちゃんにとっては無視できないだろうな」

「……結局、敵ってことか」

 

 

 仕方なく、またシャドウを影から出す。

 彼に助けてもらうためだ。

 

 この子の体から出る刃や針は、強力だ。

 私にとって心強い。

 

 

 

「おっと待て待て。せっかくだからもう少しだけ盛り上げようぜ」

「何が言いたいの?」

「こういうのは腰がひけてちゃダメだ。前のめりに行っちまった方がうまくいく。軽口や挑発を交えるならなおイイ」

 

 

 そんなシャドウと同じぐらい頼りになるグリフォンも行かせようとしたが、止められた。

 さっきからずっと私の腕に止まったままで身動きが取れないのに、動く気がなさそうだ。

 

 

 

「また変なこと言って……そこまで言うなら手本を見せてよ」

「ほう、手本か。……そうだな、詩人ちゃんの例を見せてやろうか」

 

 あえて促したら、それでようやくグリフォンは飛びだった。

 

 

 

「詩人ちゃんは言った。"空は鳥 海は魚のためにある如く"」

 

 かと思ったら、無言で杖を突きだすように指示された。

 それもタイミングを合わせるように。

 

 

 

「"下劣なる者には軽蔑を!"……ってなぁ!」

 

 そのまま杖の先を、天使達へ向けてやった。

 それが、戦いの始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁお下劣なテンシちゃん。お前らじゃ相手にならねぇってことを見せてやるよ! バーベキューターイム!!!」

「いいすぎだよ。あいつら怒っちゃってるじゃん」

「そういうのがいいんだよ。どうせなら排除は速攻、それが最高! 怒ればだいたいの奴は護りがおろそかになるってもんだ!」

「簡単に言う。……ありがとうシャドウ。まずは一体だ!」

 

 

 天使……グリフォンが言うところのアフィニティ……の一体を杖で突き刺す。

 それで天使の一体はその場に倒れ込んで、血をまき散らしながら爆発四散する。

 

 ……天使にも血とかあるんだ。

 

 

 

「言っておくが、奴らは世間一般で言う天使とはちょっと意味合いもイメージも違う。中身は普通にR指定だぜ!」

「先に言ってよ。ちょっと血で汚れちゃったじゃん!」

 

 それはともかく、天使はまだ残っている。

 残り二体。

 

 そのうちの一体が、槍みたいなものを私の方へ振り下ろそうとしている。

 

 

 もちろんまともに受けるわけにはいかない。

 すぐシャドウを足元に呼び寄せて、流体の影みたいなその力で滑るように遠くにまで逃げる。

 それで危機は脱した。

 

 

 

「あ、ヤベ」

「グリフォン?!」

 

 かと思ったら、もう一体の槍がグリフォンを貫いた。

 するとグリフォンは勢いよく地面に叩きつけられて、そのまま黒い球体みたいになった。

 

 

 

『がるるぅ!』

「シャドウ?! ……うん、わかった。グリフォンは任せて!」

 

 するとシャドウが実体化して、目線でグリフォンの方へ行けと言われた。

 どうすればいいのかまるでわからないけど、シャドウを信じて向かうことにした。

 

 

 

「……!」

『がるっ!』

 

 当然天使はそれを邪魔しようとしてくるけど、シャドウが大きな槍のような形態になって天使を貫いた。

 これで邪魔はもう入らない!

 

 

 

「グリフォン、大丈夫!」

「……ア、アァ。その杖のおかげでな。もうすぐ元に戻れるぜ」

 

 球体になったグリフォンに近づくと、声が聞こえた。

 どうやら意外と大丈夫らしい。

 

 

 

『ぐ、ぅ……!』

「え、シャドウ?!」

 

 だがまだ窮地は続く。

 今度は、シャドウも球体になってしまった。

 

 それだけ天使の力というのが強いみたい。

 

 

 こうなったらどうしようもない。

 私ひとりじゃ、トドメを刺す以外にできることはないのだから。

 

 

 

 天使達が私の方に向かってきているのが背中に感じるが、正直何もできる気がしない。

 

 

 

 

「お前ら、女子供には優しくしろってママから教わらなかったか?」

 

 でも、なんとか間に合った。

 グリフォンが元の姿に戻り、そしてそのまま私を中心に電気の結界を放ってくれた。

 その赤い電気は、私だけ護り、外にいた天使達を弾き飛ばす。

 

 

 

「さぁて、意外に苦戦しちまったがそろそろ仕上げだVチャン。その杖に宿った魔術を使ってみな。今なら魔力が有り余ってる!」

「あぁもう、イチイチ名前を訂正するのも面倒! これなら満足?」

 

 

 それに合わせて、私も杖に意識を込める。

 杖が白く輝いた気がしたか思うと、体が勝手に動いて浮き上がり、それに呼応して杖が私を中心に分裂。

 

 分裂した杖はそのまま地上にいた二体の天使に突き刺さり、そのままトドメとなった。

 

 

 あとは流れのまま直地して、いつの間にか一つに戻りつつ目の前に実体化した杖をキャッチするだけだ。

 

 

 

 

「シャドウ……!」

「待ったVチャン。……まだ終わってない」

「え?」

 

 そうして球体になったシャドウを助けようとしたところで、グリフォンに止められた。

 それからほぼ時をおかず、頭上が黄金に輝きだした。

 

 それはすぐ天使として実体化し、私の目の前に着地した。

 

 

 大きい天使だ。

 その手には、巨大な斧を携えている。

 

 

 

「"ビラブド"。天使でいうところの中ボス枠だ。まさかこんな奴まで出張ってくるとは、相当クリフォトの影響がでかいんだな。……ダンテの奴、いつまで遊んでんだが」

「ど、どうしよグリフォン……!」

「腰がひけてちゃダメ……ってのは流石に酷だな。中ボス枠とはいったが、俺達にとっては立派な脅威だ。……仕方ねぇ、やるぞ!」

「……っ! でもあれはクリフォトの根の門番のために……」

「その通りだが、今はこの場を脱するのが先決! プルガトリオ抜きで実体化してやがるんだ。奴の気性の荒さは普段とは別物だぜ」

「……わかった!」

 

 

 その巨躯から迸るやばさは、さっきの比じゃない。

 シャドウもまだ復活できていない。

 

 だから、やっぱりグリフォンの言う通り切り札の切り時なんだろう。

 

 

 

「お願い、"ナイトメア"!」

 

 グリフォンから教わった指ならしの要領で魔力を解放。

 それと同時に空から巨大な隕石が飛来して、そのまま巨大天使の頭上に激突。

 

 巨大天使は地面に沈み、そしてその上では隕石が黒くて大きな泥の人形のようになる。

 一つ目の巨人"ナイトメア"。

 それがグリフォンから教わった、私達の最大の切り札だ。

 

 

 

「さぁナイトメア! てめぇの力を見せてやりな!」

 

 グリフォンがそう呼びかけるや否や、ナイトメアはその一つ目から地面の巨大天使へ向けて光線を発射。

 その光線を食らった巨大天使はたちまち苦しみだし、最後には大爆発した。

 

 これで、今度こそ天使は全滅だ。

 

 

 

 

「やれやれ、何とかなった」

『がるぅ』

「シャドウ! よかった……!」

「そりゃ今の切り札は自動的に魔力を放出するからな。だから俺達もその魔力のおかげで元気になるってわけだ。覚えとけよ」

 

 

 

 

 

 

『――』

 

 刹那。

 空気が重くなった。

 

 今度は悪魔が現れたからだ。

 

 

 顔には奇妙な仮面を被り、複数の腕を持つ。

 何より特徴的なのは、その背中にある六本の剣だ。

 

 明らかにこいつは"違う"。

 さっきの巨大な天使よりも"怖い"。

 

 

 

「あー……今度は天魔"スロース"かー……」

「……やばいの?」

「多分今回の根の門番はあの悪魔だ。あれを倒せば脱出できる筈……なんだが」

『――』

「今はダメ! さっきので魔力がもうガス欠! 撤退だVチャン!」

「ま、待って!」

 

 

 グリフォンが羽を広げて飛び立つ。

 

 シャドウもだ。

 すぐ私の足元に寄ってくれて、流体の影へと姿を変えてくれた。

 これで逃げろってことだろう。

 

 

 

『――』

「クソ、そりゃ追ってくるわなぁ! Vチャン、ちと荒っぽい手段でいく! 我慢してくれよ!」

「グリフォン……?」

 

 スロースとかいう悪魔は、不気味な沈黙を保ったまま背中を追いかけてくる。

 シャドウのおかげでそれなりの速度を出せている筈なのに、何故か逃げられる気がしない。

 

 だからか、グリフォンが赤い電気を放った。

 電気が放った先、なんだかよくわからない植物の、よくわからない赤い部分だ。

 

 

 

『――』

 

 電気がそこに炸裂した途端、その植物は一気に灰色になって崩れ去り、植物が纏わりついていた建物が崩れ出した。

 スロースは、その建物の崩壊に巻き込まれた。

 

 

 

 

「うわっ?!」

「掴まれVチャン! このままだと俺達もお陀仏だ!」

 

 その次の瞬間、崩壊した建物と連鎖して地面も崩れ出した。

 私達が走っていた道路も、そのまま消えていってしまう。

 

 だから、今度はグリフォンの足に掴むことで対応する。

 

 

 

「悪いがそんなに長く飛べねぇ。このまま下に降りるぞ!」

 

 そこまでやって、私達は修羅場を脱することができたのだった。

 

 

 




 本当は短編にしたかったのですが、この辺りで区切る方が謎にしっくりきました。
 次回で色々決着します。
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