フリーレンは魔術師エミヤを探しにスカイリムの地へ。 作:みねひよ
「不合格だ」
「そう」
1000年以上生きた魔法使いフリーレンは、大魔法使いゼーリエから一級魔法使いの最終試験でそう告げられた。
「お前が北へ行く理由はなんだ、フリーレン」
ゼーリエがふと気になったことから物語の歯車は動き出す。
立ち去ろうとしていたフリーレンは振り向いて言う。
「ヒンメルに会いに行くんだよ」
下を向きどこか遠い目をする。
「お前も死んだ人間に執着を持つとはな」
だがその声はフリーレンには届いていなかった。
「何か言った、ゼーリエ?」
にやりと笑みを浮かべ話し出す。
「今の私たちには時間を加速させたり遅くしたりする魔法はあっても、過去や未来に干渉する魔法は存在しない」
「急にどうしたのさ」
「まぁ最後まで聞け」
ゼーリエが花壇に座る。
「私の弟子に過去の英雄に会える奇跡を観たことがあるというやつがいた。そいつはとある儀式に参加し英雄とともに戦ったそうだ」
「もしかして私にその儀式を使って英雄であるヒンメルを呼び出せとでもいうの?」
フリーレンはゼーリエの言いたいことを察した。
「私はあくまでもそういう方法があると言っただけだ。過去の英雄を呼び出すという時間軸を無視した大魔法、そんなもの魔法使いなら誰だって見てみたいだろう。だがその儀式の面白いところはそこだけじゃない。7人の魔法使いが7騎の英雄を呼び出し、勝ち残ったものは願望器によって願いを叶えられるというものだ。」
フリーレンは扉に足を向けて最後の言葉を口にした。
「私が会いたいのは過去の英雄勇者ヒンメルなんかじゃない。天国にいったヒンメルと話して聞けなかったことや知れなかったことを教えてもらうために私は『魂の眠る地(オレオール)』に行くんだ」
ゼーリエはつまらなさそうにフリーレンが部屋から出ていくのを見守った。
最終試験の部屋に紫の長髪の女の子が入ってきた。
「お前、フリーレンの弟子だな」
「はい、名をフェルンと申します」
「不合格だ。」
宿でエルフの魔法使い、その魔法使いの弟子、赤髪の戦士の3人は途方に暮れていた。
「まさかフリーレンとフェルン2人とも落ちるなんてよ」
「申し訳ありません、私が不甲斐ないばっかりに」
「いや、フェルンは悪くないよ」
「っていってもどうするんだ?一級魔法使い試験は2年後だぜ、またのんびり2年もつのか?」
「それもいいかなーとは思ったんだけど、どうやらゼーリエは私にさせたいことがあるらしい」
「それってどいうことですか!フリーレン様!?」
「ゼーリエは『わざと』フェルンを不合格にしたってことだよ」
大魔法使いゼーリエが幾多の魔導書の上に座り、フリーレンを見下ろしている。
「よく来たな、フリーレン。昨日の今日だ、試験の不満なら受け付けんぞ」
「来るように仕向けたのはそっちでしょ」
ため息をつきながらゼーリエが召喚した椅子に座る。
「昨日の話の続きを聞かせて」
「いいだろう、まずは私のかつての弟子について話そう」
ゼーリエは対等に話すかのように自らも椅子に座った。
「そいつは3年前に私のところにやってきた。理想郷に到達するための大魔法を探してやってきたとな。だな理想郷など私の概念にはないしそんな魔法もない。そうしたらそいつは自分で魔導書を漁りだしたんだ。その代わりに私が雑用を押し付けるそんな日々が続いた。あるとき私は奴の日課の魔法の鍛錬を観たんだ。そのときに気づいたことがあった。そいつは魔力を消費せずに魔法を使っていた。最初は底なしの魔力を持っているのかと思ったが違った。そいつは魔法を使ってる時でさえ魔力探知に引っかからなかった」
「ゼーリエ、それっておかしいよ。魔力は魂の根源でもある。どんなに魔法適性がない人間でも魔力は持っているし魔法が使える人間ならなおさらだ」
「だから私が弟子にとったのさ。最初は生物なのか不安になったが私の生命探知魔法が役に立った数少ない場面だな。そしてそいつの魔法には一切魔力がないという矛盾のような出来事までもが観測できた」
「つまりそいつは本当にコスト無しで魔法を使っているってことじゃないか。ゼーリエが大魔法を教えれば何でも使い放題の強力な大魔法使いになってたんじゃない?」
「そこが問題だった。私が弟子の中で最も育ててみたかったやつだったんだが、そいつが使える魔法…いや魔術は1つだけだった」
「魔術…?魔法と厳密に何が違うの?」
「そいつがいうには魔法ってのは大魔術による奇跡の結晶で、普段この国の人達が使っている魔法はその奇跡には該当せず魔術に過ぎないんだとさ。だからそいつは初めて私に会ったときから言っていた、自分は『魔術師』だと。そしてその大魔法とやらを求め私の元を訪ねてきたというわけだ。」
「でも弟子にしたあとはどうしたのさ、そいつのいう魔術すらも使えないんじゃ話にならない」
「そいつの唯一使える魔術は私にとっては非常に興味深いものだった。それに魔術以外の腕も立つ。戦士としても申し分ない実力者だっただろう。だから私はそいつを雑用扱いの弟子に加え大陸魔法協会非公式の私の諜報用員として働かせた。魔物の討伐に各都市の治安改善に犯罪者の殺しまで、そいつは命令されたことは何でもやった。私の命令というより私とそいつの目的が一致していたというのが正しいかもしれん。ただ…」
「…ただ?」
「私もあいつもそうだが殺しは嫌いだったようだ。無慈悲な掃除屋ではなかったということだ」
「だが1年前に突然やつがとある大陸に渡りたいといい出した」
「理由は?」
「その大陸にはその理想郷とやらにたどり着ける異世界の神々にすら干渉できる大魔法があるらしい」
「世界にはそんなところがあったなんてね、なんていうところなの?」
「大陸タムリエルの『スカイリム』地方だ」
「私はそんなところ聞いたことがないよ」
「当たり前だ、この私でさえ知らない世界なのだ」
「そいつはそのスカイリムとやらでまた儀式でも始めて願望を叶えるの?」
「いや、そいつは過去の儀式には一度勝利している。だがそいつは万能の願望器、聖杯とやらを儀式ごと自ら破壊したそうだ」
「つまりそいつの目的は儀式でも願望器でもない理想郷がそこにあるってこと?」
「どうやらそのようだな。だが願望器を破壊したやつが望む理想郷だ。一体どんなものなんだろうな」
「それはもしかしたら魂の眠る地(オレオール)かも」
ゼーリエは笑みを浮かべた。
「お前ならそういうと思った」
椅子から立ち上がった。
「どうしたい?フリーレン」