「いやー、みんな来れて良かったね!」
己の性欲に負けて暴走し、真夏の大乱交スマッシュ何某かをおっぱじめかけた私、下成フタバ。
「ああ、説得が大変だったが、なんとか一人で外出する許可が下りたよ」
「ほーん、やっぱそっちもなんか言われたクチか」
もはやニチアサの二の字もない汚い存在と化してしまった私だが、そんな私をニチアサヒロインの少女達は清い心で理解……もとい勘違いをし、温かく迎え入れてくれた。
「ウチの野郎共も、お嬢に何かあったらアカンから〜っちゅーて来る来るうるさくてな。撒くのが大変やったでホンマ」
「あはは……家が大きいと大変なんですね」
そんな彼女達を私の邪悪なふたなりち●こから守るべく、魔法少女活動以外でのプライベートな交流は極力避けようと決めた私は今、
「人間界の海、楽しみだなぁ」
「ふふ……さあ、もうすぐ海に着くわよー」
「はーい! 海楽しみだね、下成さん!」
「……ええ、そうね」
彼女達と海水浴に来ていた。
(……人生って、ままならないものだなぁ)
上手くいかない事続きな人生に一抹の悲しみを覚えた私は、そっと車の天井を見上げた。
どうしてこんな事になったのか、時は数日前まで遡る。
▼▼▼
それは、例のブラック覚醒暴走事件の翌日のこと。
「ふーむ」
豊生先生から口酸っぱく言われていた私は、近くの病院で体調を診てもらった。
「検査では特に異常は見られませんでしたね」
「そうでしたか」(まあ予想通りね。仮に何かあったとしても、魔法関係の話は病院の人に聞いても分から)
「ただ、少々精神的な疲労が見受けられますね」
「……」
「過度なストレスは自律神経の乱れを起こして良くないです。休息はしっかり取ってくださいね」
「あ、はい」
……痛いところを突かれはしたが、とくに異常も無かった私はそのまま病院をあとにした。
(過労で倒れないようにしなきゃな)
もし彼女達の前でぶっ倒れようものなら、また要らぬ心配を掛けさせてしまう。
そんな事を考えていると、ポケットの中のスマホからピロンッ♪っとライソの通知音が鳴った。
「……」
嫌な予感で額に汗が伝う。私のスマホのライソから通知が来るのは、両親かバイト先の店長か、その他どこかしらの公式アカウント、そのどれかだけだった。
しかし、今は違う。昨夜、私とライソの友達追加をし、しかもグループの招待までしてきた人たちが居た。
「……っ」
恐る恐る、私はスマホを確認する。
アスカ『みんなで海に行かない?』
そこには案の定、グループの方で遊びに誘うアスカが居た。
レイナ『急にどないしたん? ちょっと前にもアタシらでプールに行ったやろ』
アスカ『それは私達
カナタ『なるほど、フタバ殿の歓迎も兼ねて、ということか』
アスカ『そういう事です! ちなみに行きと帰りの車は先生に頼んでもらいました』
メグミ『はーい、頼まれましたー』
レイナ『なるほどな、そういうことならアタシはええで』
カナタ『そうだな、一度家の者と話し合わないといけないからすぐには答えられないが、私も前向きに検討しよう』
アスカ『やったー! そういうことなんだけど下成さん、いつの日が空いてるかな?』
「おうふ」
こ、断りづれー!
どうしよう。みんな乗り気だし、もう豊生先生に車頼んでるらしいし、こんな場面で断る度胸ないよ私!
「はぁー……うん?」
どうにか良い感じに断れる方法は無いかなーっと考えていると、再びピロンッ♪と通知が鳴る。今度はグループではなく、個人の方で。
アスカ『ごめんね下成さん、本当ならまず最初に下成さんに聞くべきだって分かってたんだけど……私、どうしても下成さんと遊びたくて』
「……マ、マジでか」
私は戦慄した。なんと不知火さん、私が断りづらいだろうなというのを知った上で行動していたのだ。何がなんでも私と遊ぶ為に。
(不知火さん、おそろしい子!)
そのことを本人だけにわざわざ素直に伝えているあたり、とんだ小悪魔っ子だよ。顔も良いし、たくさんの男の子を勘違いさせちゃうよこんなの。
……顔が良いのはみんなそうか。※ニチアサ、アニメあるあるの異様に高い平均顔面偏差値
「はぁー……まあ、仕方ないか」
なんだかもう断る方が面倒な事になりそうだなと思った私は、潔く腹を括るのだった。
▼▼▼
そんなこんなで、私たちは今海に居ます。
「海だー!」
「はえー、ぎょーさん人おるなぁ」
「サマーシーズンだからねぇ」
燦々と照りつく太陽の下、海はキラキラと輝き、波打ち際ではしゃぐ大勢の人々。
そんなザ・夏な光景を見て、不知火さんを筆頭に一同はしゃぐ。
「へー、これが人間界の海かぁ! すごく綺麗だね!」
その一同の中には、エルエムも居た。
「妖精界にも海はあるの?」
「……うん、
私の疑問に、エルエムは懐かしさと哀愁も込もった口調でそう告げる。
「……?」(あった?)
その言葉に私は少しだけ引っかかりを感じたが、エルエムの辛そうな顔を見て追及する気は起きなかった。
(そっとしておこうか……そういえば)
折角の海水浴なんだと気持ちを切り替えたところで、ふと私はある事に気づく。
(私、海って今世だと初めてだったわね)
そう、私ってばこれが今世初めての海なのだ。
とくに深い理由はない。両親が忙しい人で、小さい頃からどこかへ遊びに出掛ける事が少なかっただけだ。
(前世で海に行ったのもだいぶ前だし、かなり久しぶりな訳だけど……うーん)
なんというか、感動が薄い。
別に海にこれといった思い入れもないから当然と言えば当然だけど……私も歳かな。
(あ、なんか急に悲しくなってきた)
隣で元気いっぱいにはしゃぐ不知火さんが眩しく映る。最近思春期男子みたいな悩み(性欲に翻弄されまくってる件)を抱えてるから忘れてたけど、私って精神年齢は良い歳した大人なんだよね。
(私って今、女の子に混ざって遊んでるんだよなぁ)
どうしよう、気分悪くなってきたかも。
「───えっと、下成さん?」
「うん?」
「どうしたの? そんな思い詰めた顔して」
「えっ」
そうして勝手に暗い気持ちになっていると、それを目ざとく見抜いた不知火さんが声を掛けてきた。
「もしかして海、嫌だった?」
「あ、ち、違うのっ」
眉を下げて悲しい顔を浮かべる不知火さんが見てられず、早く弁明しなきゃと慌てた私は咄嗟に本音を語ってしまう。
「その、(中身大人の)私なんかが(子どもの)あなた達と一緒に遊んでいいのかなって思って」
「「「「「……」」」」」
そして、それを聞いた不知火さんは……否、その場の全員が悲しい顔を浮かべていた。
「……ぁ」(し、しまった! 私が転生者だってことを彼女達は知らないんだ。こんな事を言ったところで伝わるわけ)
……なんて心配をしてしまったが、結果から言うとその考えは見当はずれだった。
「たっはぁ~! こりゃ重症やな」
(うん?)
まず最初に、陸千先輩が額に手を当ててため息混じりに口を開く。
「フタバ殿、何度でも言うが私たちは君を信用している。だから気にしなくて良いんだ」
「そうよ、そんな悲しいこと言わないでちょうだい」
(え? え?)
続けて天宝院先輩が私の肩に手をポンと置き、豊生先生が私の頭を優しく撫でる。
「うん、みんなの言う通りだよ……だから、たくさん遊ぼっ!」
「……」
最後に、不知火さんが太陽にも負けないぐらい明るい笑顔を私に向けた。
「あ、はい」
私は、たんぱくな返事を返すことしか出来なかった。
……なんだろう、この『光落ちしたてのキャラが過去の行いの罪悪感で一歩引いているところを、仲間が温かく手を差し伸べる』みたいな展開は。
(というかこれ、みたいな、じゃなくて、まさしくその通りの展開なのでは?)
確かに私の境遇を考えたら、あの発言を勘違いするのは仕方ないし、なんなら私自身も彼女達との交流は避けようと実際思っていたけども、
(なんか……なんか釈然としないなぁ!?)
こんな感動イベントを変な勘違いでサラッと流したくなかったよ!
「よーし、それじゃあ早く着替えて海に行こー! ほらほら、下成さんも行こっ」
「い、いえ、私はもう服の中に水着を着ているから」
「あ、そうなの?」
「ええ、だから先に行って待ってるわ」(あーやり直したい。記憶を消してさっきのみんなの言葉を初見できちんと噛み締めたい!)
グイグイ服を引っ張って行こうとする不知火さんをなだめながら、私は先ほどのやり取りに後悔を募らせるのだった。
服を脱いで水着姿(濃紺色の地味なやつ)になった私は、更衣室近くのヤシの木の木陰に佇んで、彼女達が着替えるのを待っていた。
「はぁ~」(だいたい『あ、はい』って何よ『あ、はい』って。もっと他の返事の仕方あったでしょ)
待っている間も、私は先ほどのやり取りについて悔いまくっていた。
(あーもう、こんなんだから私はいつまで経ってもニチアサヒロインになれな)
「───フタバ」
私が脳内で一人反省会をしていると、エルエムが話しかけてきた。
「エルエム、どうかした?」
「……さっき、みんなも言っていたけど、君は必要以上に引け目に感じなくて良いんだよ?」
「……あー」
どうやら先ほどの話、エルエムにも少し思うところがあったらしい。
「確かに君と彼女達の間には、まだ認識に齟齬がある。でもボクは信じているよ、彼女達が本当の事を知っても同じ事を言ってくれるって」
「あーいや、ごめんエルエム」
「……?」
そこまで聞いて、私はエルエムを止めた。
「実はさっきの話、私ちょっと勘違いしてて」
「勘違い?」
「ええ、あの時私が言いたかったのは、中身大人の私が子ども達に混ざって遊ぶのは如何なものかと思って」
「へ?」
「まあでも、彼女達の言ったことがまるきり的外れってわけじゃなくて、だから私もちょっとモヤモヤしてて」
「ちょちょ、ちょっと待って!」
「うん?」
私が話している途中、エルエムが慌てて話を止める。
「どうかした?」
「い、いや、サラッと言ったけど
「どういう事って……私って前世は良い歳した大人だから、そんな奴が子ども達に混ざって遊ぶのはどうかなという……意味で……」
あれ? そういえば、
「私が転生者って話、エルエムに教えたっけ?」
「……え、ええええ!!!?」
その時、エルエムの叫びがビーチ中に響き渡った。
「そ、そ、そうだったの?」
「あ、あれー? 教えてなかったっけ?」
「初耳だよ!?」
「そ、そっか」
エルエムとは秘密を共有する仲だから、転生の話も既に済ませたものだとばかり……
「まあそういう訳だから、今後ともよろしくね」
「そ、そういう訳って……なんかあっさりしてるね?」
「もともとエルエムには伝えてたつもりだったしね。あ、けどみんなには言わないでね? 成人男性が
「う、うん……え、男なの!?」
「……あー」(そういえば男だって言ってなかったわね)
本日二度目となるエルエムの驚く声を聞きながら、私は呑気にそう思うのだった。
▼▼▼
「お待たせ、下成さん!」
しばらくして、更衣室の方から水着に着替えた不知火さん達がやって来た。
「……おお」
呼びかけられた私は振り向き、そして彼女達の水着姿に感嘆の息を漏らす。
「あれ、エルエムは?」
「少し頭の整理をしに行ったわ」
「……?」
不知火さんの水着は、白いフリルをたっぷりあしらった淡いピンクの可愛いワンピースタイプ。茶髪のポニーテールが潮風になびき、その姿は明るく愛らしい。
「なんやフタバその水着、えらい地味やのー。スク水かいな」
「……派手なものは苦手で」(昨日急いで買ったやつだけど、実際これ以外の水着って学校用のスク水しか持ってないのよね)
陸千先輩は、黒を基調に黄色と白のラインを組み合わせたスポーティーな水着。不知火さんのようにフリルなどの装飾は無く、華やかさよりも動きやすさ重視と、本人の勝ち気な性格を感じさせる。
「おいレイナ……すまないなフタバ殿、私は落ち着いる感じがして似合ってると思うぞ」
「ありがとうございます」(褒めてくれたところごめんなさい。私もこの水着なんかスク水みたいだなと思ってました)
天宝院先輩は、シンプルで上品な黒ビキニ。派手な模様や装飾はないが、その漆黒の生地が持つ滑らかで艶やかな光沢は、並大抵の代物ではない高級品である事が伝わる。それを完璧に着こなす彼女は、美しさと高貴さの両方を兼ね備えていた。
「そうそう、可愛いわよ〜」
「……ありがとうございます」(デッカ)
そして豊生先生、彼女は……デカい。もうデッッッカい。深みのあるダークグリーンのビキニには、縁にフリルが控えめにあしらわれており、全体的に落ち着いていて、大人びた印象だった。あとデカい。溢れんばかりに大きい。
「……皆さんも、とても似合ってます」
本当に、冗談抜きで似合っているし総じて美少女すぎる。この集団にスク水女(スク水じゃないけど)が混ざって良いのかと戦々恐々してしまう。
(もし変身した状態で見てたらアソコが大変な事になってただろうな)
今の状態でさえ彼女達の強烈なビジュに押され気味なんだ。思春期男子もびっくりな性欲大魔人状態に目撃していたらどうなっていた事か。
「えへへ、ありがとね。それじゃ行こっか!」
そんな考え事をしていると、その隙に不知火さんが手を繋いでくる。
「……っ」
触れる手の感触に一瞬ドキリとしてしまう。……しかし、いつまで経っても情欲が湧き上がってくる気配はなく、その事実に私はホッと安堵する。
(……うん、そうだ。少なくとも今は暴走したりなんてしない)
変身していないのだから、アソコが生えていないのだから当然だ。
……なら、もう少し歩み寄っても良いだろう。
「ええ、そうね」
私は繋いできた不知火さんの手を握り返して、駆け出す彼女に連れられて足を動かす。
結局のところ、私は絆されてしまったんだ。
あの日の夜、彼女達が送ってくれた言葉の数々。例えそれが勘違いだったとしても、少なくともその事実に気づく前までは、
私の心は、確かに救われていたんだ。
▼▼▼
それから私達は、色んなことをした。
「はーいそこまで~、0対21で上級生チームの優勝です」
不知火さんとタッグを組んで先輩二人とビーチバレー対決をした。
「うぅ~! 先輩たち強すぎるよぉ……!」
「……」(リアルでこんな得点差出ることってあるんだ)
結果は先輩二人の圧勝だった。
「へへっ、わるぅ思うなよ後輩共」
「……やはり、チームを変えた方が良かったのでは」
「しゃあないやろ、アスカがフタバと一緒に組みたい~って言い出したんやから」
どちらもスポーツ万能なのは知っていたけど、とくに陸千先輩は変身しなくてもフィジカルモンスターだった。
(陸千先輩、その華奢な体のどこにあんな力を……)
開幕のサーブでビーチボールが爆散するのを見た時は、夏場なのに背筋が凍り付いたよ。
「うーん美味しい!」
みんなで海の家でかき氷を食べたりした。
「アスカお前……よおそんな甘ったるいもん食えるな?」
引き気味に言う陸千先輩は、不知火さんの練乳が山のように掛かったかき氷を見る。
「えーそうですか? そういうレイナ先輩こそ、せっかくの
「お前抹茶舐めとんのか? 抹茶はただ苦いだけじゃあらへんわ、分かっとらんなぁ。フタバはどうなんや?」
「……私も、抹茶は好き」
そう答えながら私は、トッピングに付けた宇治金時を口に入れる。
「けど、甘いのも好きね」(前世じゃ大人になってから甘いものが受け付けなくなったけど、今の体なら美味しく頂けるのよね)
「あ、じゃあ下成さんも」
「それはそれとして、不知火さんのはやりすぎ。体に悪い」
側に置いてある練乳入りのカップを渡そうとしてきたので、私は丁重に断った。
(流石にその練乳の量は将来糖尿病になっちゃうよ)
「えー、まあいいや、追い練乳しちゃおーっと」
さりげなく控えるように告げたが、不知火さんは気にせずカップの練乳を自身のかき氷に投入しようとする。
「……って、きゃっ!?」
しかしその時、不知火さんは手を滑らせて練乳を零してしまい、
「───あちゃー、胸に練乳が掛かっちゃった」
「ったく、何してんねん」
「あらあら大変、拭いてあげるから来て」
「あはは、すみません……うん? 下成さん、どうかした?」
「……いえ、なんでもないわ」(私は何も見ていない。断じて見ていない)
練乳なのは分かっているが、なんとなく見てはいけない気がした私は咄嗟に顔を背けた。
(そう、何も、決して……うん?)
そうして目のやり場に困っていた私は、ふとかき氷を買った店の前に目が行く。
「……ブルーハワイ……いや、抹茶というのも……」
そこには、かき氷のメニュー表を前に、顎に指を当てて考え込む天宝院先輩の姿があった。
(え゙、嘘でしょまだ悩んでるの?)
あの人、十分前もあの体勢だったぞ。
「なんやフタバ、さっきからどこ見て……あー」
ジッと見続けている私に陸千先輩が気づき、そして天宝院先輩の姿を見て呆れた声を出す。
「ありゃ気にせんでええで、ただの発作や」
「発作?」
「せや、あいつたまに変に優柔不断になるんよ。この前もなんか映画見に行くかって話になった時、なに見るかで二時間ぐらい悩みよったし」
「そ、そうなんですか」
いや二時間て、その時間で映画一本見れるよ。
「───すまない、待たせてしまったな」
などと思っていると、ようやく決まったのか彼女がやって来た。
「お、今回は早かったな」
(これで早い方なんだ)
天宝院先輩は、さっきまでメニュー表を前に十分以上悩んでいた人とは思えないほど、凛々しい佇まいだった。
……その手には、焼きそばの乗った皿を持っていた。
「いやなんでやねん!」
「むっ、どうしたレイナ、急に大声を上げて」
「いやどうしたはこっちのセリフや! なんで焼きそばや! かき氷食うって話やったやろ!?」
「かき氷は以前プールに行った時に食べたからな。やはり食べるなら普段食さないものが良いと思ったんだ」
「ほなソフトクリームとかでも良かったやろ! なんでよりによって炭水化物ガッツリいってんねん!」
「……」(なんか、だいぶイメージと違ったなぁ)
学校で見ていた時は才色兼備の完璧令嬢だと思っていたから、かなり意外な一面だなと思った。
本当に、本当に色んなことをした。海で泳いだり、砂の城作りにチャレンジしてみたり、
みんな、今世では初めて経験したことばかりで、そしてそれらはとても、
とても、楽しかった。
▼▼▼
海水浴を存分に楽しんだ私達は、水着から着替える為に更衣室に来ていた。
「海、楽しかったね!」
更衣室には私達だけだった。そのことに気付いた不知火さんは、抑えた高揚を解放するように声高らかに告げる。
「せやな、
「それを観光客が動画で撮ろうとした時は焦ったがな」
「ふふ、そうね」
そんな彼女達の雑談を耳に入れながら、私は部屋の隅で黙々と着替えを始める。
「───下成さん」
「……っ」
その私の隣に、不知火さんがやって来た。
「下成さんはどうだった?」
「……そう、ね」
一瞬隣に来られて焦ったものの、私はすぐ冷静になり、聞かれた事について考える。
(どうだった、か)
少し振り返ってみたけど……うん、そうね、やっぱり、
「ええ、楽しかったわ」
最初は億劫だったし、彼女達との交流はなるべく避けようという考えもまだ残っている。
それでも、気付いた頃には思う存分楽しんでしまっていた。
「……!」
そんな私の噓偽りない答えを聞いた不知火さんは、パァっと顔を輝かせる。
「えへへ、嬉しいな」
「……ふふ」
心の底から嬉しい。そんな感情が伝わってきて、私も思わず笑みを零す。
「これからもたくさん遊ぼうね」
「そうね、考えて……ん?」
彼女の言葉に前向きな返事をしようとした直前、不意に私は隣で着替える不知火さんの姿に目を奪われた。
「……」
とくに隠すそぶりもないまま、不知火さんは水着を脱ぐ。
「…………」
必然、隣に立つ私は、水着で隠されていた不知火さんの素肌を目にする事ができ、
「………………」
そこには当然、年相応に膨らんだ彼女の胸があり、そして、その先を辿れば、肌色とは違う、綺麗な、それが、
ムク
(うん?)
ムクムクムク
───ぼろんっ
「は???」
その瞬間、私の頭は真っ白になった。
「うん? 下成さん、どうし」
「……ッ!」
それからすぐに目を覚まして、私は風の如き速さでカーテン付きの個室に飛び込んだ。
「え? え?」
そして目にも留まらぬ早業で水着から服に着替えて、バッとカーテンを開けた。この間、僅か十秒の出来事である。
「ちょっと」
「私着替えたから、先に出て待ってるわ。それじゃあっ!」
「あ、うん」
私は口早にそう告げて、更衣室を飛び出した。
『エルエムゥ!!! 今どこに居るの!?』
「───な、なるほど」
その後、念話でエルエムを呼び出した私は、木陰に隠れて事情を説明した。
「変身してないのに、急にアソコが生えた……と」
「そう、そうなのよ! 今はもう消えてるけど、確かにあの時生えてたの!」
生えた時はマジで死ぬかと思った。エルエムに会いに行く道中でいつの間にか消えてたけど、本当に生きた心地がしなかったわ。
「どうなってるのよコレ! 説明してくれるのよね? っというしろ!」
「アワワワ! ま、待って、そんなのボク知らないよ!」
「知らなくても説明するのよおおお!」
「そ、そんな無茶なあああ!?」
私はエルエムの体を持ち上げて、行き場のない怒りを振るうように持ち上げた体を上下にぶんぶんと振る。
「ス、ストップ、ストーップ!」
「なに? やっぱり何か知ってた!?」
「い、いや、ごめんけどその事については本当に何も知らないよ。でも、少しだけなら予想は立てられる」
「予想?」
どういう事なんだと、私は話を聞くためにエルエムを地面に降ろす。
「ふぅー……えっと、前にも少しだけしたよね、どうして君にそんなものが生えたのかっていう説明」
「ええ、そうね」
確かあの時エルエムが言ったのは、私の
「ボクもあれから色々と調べて思ったんだけど、例え
「……言われてみれば、そうね」
「うん、だけど今日、君の前世が男だったという話を聞いて気付いたんだ。……君のその
「なっ……」
男だった前世の時から抱いていた
「い、いや、だとしてもおかしいわよ。別に私の前世、そんな性に奔放な人生送ってないわよ? 寧ろ経験人数ゼロの童貞で」
「いいや、きっと
「……?」
要領を得ない私に、エルエムは丁寧な口調で説明する。
「フタバの前世は男で、童貞のまま死んだんだよね?」
「え、ええ、そうだけど」
「性欲とは、あらゆる生き物が持つ原始的な欲求だ。それを発散しないまま歳を重ねて、そのまま死んだなら、死の間際に隠れていた性欲が無意識のうちに未練となって、爆発的に膨れ上がってもおかしくないよ」
「……なん、だと」
とても信じがたく、けれど妙に納得のできる話だった。
「そんな……私が、童貞のまま死んだからこんな事に?」
そんなまさかの真実に、私は思わず項垂れてしまう。
三十歳まで童貞だと魔法使いになれるってか? やかましすぎるわ。
「あ、で、でもこれが本当かどうかは分からないからね!? ……けど、もしこの考えが合っていたら」
「あ、合っていたら?」
絶望する私を見て言うのを躊躇ったのか、エルエムの口が止まる。
「……」
「……もし、合っていたなら」
それに対して私が、構わず続けてと視線を送り、察したエルエムが口を開く。
「君は変身してから今まで、
「……」
「一気に解放された
「……結果?」
「君は、性的興奮を感じると生える体質になった」
「エロゲかよ」
ゲージが溜まるとエロシーンに直行するタイプのエロゲかよ。
「いやいやいや! なにそのエロゲでしか聞かない体質は!?」
私は焦った。大いに焦った。
「え? 嘘? マジで言ってんの???」
変身していない間だけは
「で、でも変身中みたいに性欲が増す事はないから! あくまでも興奮したら生えるだけだから! ……多分」
「何一つ安心できないし多分ってなによ多分って! あ゙あ゙あ゙あ゙!!?」
「アワワワ、お、落ち着いてフタバ!」
あーもう本当にどうなってんのよこのニチアサワールドは! 私の世界観だけエロゲすぎない!?
「もういい! もう分かった! 今すぐこのち●こ切り取って」
「待って待って早まらないで! あ、アスカ達! ちょっとこっちに来てちょうだい!」
「あ、ちょっとエルエム!? それは卑怯でしょ!」
「エルエム? と、下成さん? 居ないと思ったらそんなところでどうしたの?」
「あ、いや、これはそのー」
……こうして私の今世初めての海水浴の一日は、とんでもない爆弾を最後に投下させて終わりを告げるのだった。
おまけ
なんか気が向いたので前回に引き続きイラスト(AI産)を載せます。今回は少女達の水着姿です。
※何度でも言いますが全て作者の自己満足で作ったものです。AIイラストが嫌いな方、余計な先入観を持ちたくない方は見ないで下さい。
下成フタバ
【挿絵表示】
不知火アスカ
【挿絵表示】
陸千レイナ
【挿絵表示】
天宝院カナタ
【挿絵表示】
宝生メグミ
【挿絵表示】
おまけのおまけ
需要がありそうな気配を感じたのでルストのイラストも載せます。エッチすぎてAIくんが中々描いてくれませんでした。本物はもっとエッチだと思います。(適当)
【挿絵表示】
自己満足と言いつつ、イラスト(AI産)の需要って実際のところありますか? 全然無い場合、イラストの削除も検討します。
-
ある
-
ない
-
(AI産なら)いらない
-
無回答