「ふ、ふひひ」
とあるアパートの一室、薄暗い部屋の中で小太りの中年男が机に向かって薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「や、やっぱり触手と女の子の組み合わせは最高なんだなぁ」
男は机に置かれたタブレットにペンで絵を描く。そこに描かれていたのは、魔法少女風の格好をした金髪ツインテール美少女(至るところがはだけている)が触手に拘束されるイラストだった。完成度は高い。
「と、とくにロゼリアたん、こういう戦うヒロインが触手に敗北するシーンは……ハア、ハア」
彼の名前は
彼はチヤホヤされたくてイラストを描いているのではない。
自身が理想とするエロいものを具現化したい。その為に絵を描く。たったそれだけの理由だった。
……そんな
「あら〜、素敵じゃない♡」
「ふひっ!?」
突如耳元から聞こえた蕩けるような囁き声に、好手は驚きのあまり椅子から転げ落ちた。
「だ、だ、誰ですかな!? ……おっふ」
見上げると、そこには創作でしか見ないようなエロい体にドスケベな格好をした美女と、いかにもくっころしそうなエルフ耳の褐色美女が居た。
「ねえねえプライド、この子にしましょう」
「貴様、わざわざこんな奴を探していたのか?」
「いいからいいから! この子から生まれる魔獣ちゃんなら、きっと面白い事が分かると思うのよ」
「……まあいい、今回だけだぞ」
プライドは仏頂面のまま好手に近づく。
「ぶひゃぁ!? せ、拙者リアル女子への免疫ゼロでしてぇ!」
「五月蝿い、すぐ終わるから静かにしてろ」
騒ぎ立てる好手を鬱陶しそうにしながら、プライドは彼の胸の内に文字通り手を突っ込み、そして黒いモヤモヤを引っ張り出した。
「ぶひぃ!? なん、です、と……」
とても現実とは思えない光景を目にした後、彼の意識は闇に沈んでいった。
「顕現せよ、色欲魔獣ラストオクト」
黒いモヤモヤは部屋の窓から漏れ出て、アパートの外で形を成していく。
【───LUUUS LUS LUS!】
それは、頭部に無数の目が付いた巨大なタコの姿だった。
瞳孔は黒く、白目の部分は紫色。そして元々のタコにも存在する両の目の部分、その瞳の中にはハートマークが浮かんでいた。
(もし私の予想通りなら……うふふ)
ルストは妖艶な微笑を浮かべる。
「楽しみにしてちょうだい、マギアホワイト。きっと素敵なものを見れるわよ♡」
その裏には、隠しきれないほどの嗜虐心が秘められていた。
▼▼▼
「はあ、はあ、お、お待たせしましたー!」
プライドとルストが魔獣を生み出したのと同時刻、エルエムの念話を聞いたアスカは急いで学校の校庭裏に訪れた。
「お、来たか」
「全員揃ったわねー」
そこにはレイナとメグミ、そしてカナタの三人が集まっていた。
「よし、それじゃあ……」
カナタは、やって来たアスカとほか二人を一瞥した後、胸元に手を当てる。それに他三人も続ける。
「「「「───マギアチェンジ」」」」
そして四人とも、全身を眩い光が放たれた。
校舎裏を包み込むほどの光が放たれたのは一瞬で、すぐに止む。そしてその場に立っていたのは、四人の魔法少女。
「至情溢れる青き魔法使い、マギアブルー」
「人情貫く黄色の魔法使い、マギアイエロー!」
「愛情捧げる緑の魔法使い、マギアグリーン」
「情熱燃やす赤き魔法使い、マギアレッド!」
「───さあ、行くぞ!」
四人がそれぞれ名乗りを上げた後、ブルーが前に出て魔獣の発生地点へと向かった。……そしてその先で、
【LUS LUS LUS!】
巨大なタコの魔獣が、その触手で女性達を拘束している光景を目撃した。
「くっ、もう既に被害が……!」
「うーわなんやあれキモッ、なんかヌルヌルしとるし」
ブルーは魔獣の所業に憤り、イエローは魔獣の姿に生理的嫌悪を示す。
「えっと……あ、いた、ホワイト!」
一方、レッドは魔獣を一瞥した後、周囲を見渡して、マギアホワイトが近くの交差点近くにいる事を確認した。
「おーい!」
「……」
そのホワイトは、レッドの呼ぶ声に一瞥したものの、すぐに目線を魔獣の方に向け直す。
「……レッド、言っておくが」
「ううん、大丈夫」
ブルーが厳しい口調で言い聞かせようとしたが、レッドはブルーに手のひらを向け、首を横に振った。
「まずは魔獣退治に専念する、ですよね?」
「その通りやレッド!」
レッドがそう言った直後、イエローが前に出て魔獣目掛けて突撃する。
「はよぉこの気色悪いの倒して、昼休みが終わる前にホワイトをとっ捕まえるで!」
「うん!」
「あ、おい、待つんだ!」
突っ込むイエローにレッドも続く。ブルーが止める間も無かった。
「ふんっ、来たか……やれ、ラストオクト」
【LUS LUS〜♪】
「……おい! そんなの見てないで迎え打つんだ!」
【LUSS!?】
触手で捕まえた粘液塗れの女を鑑賞する魔獣だったが、プライドから怒り気味に命じられた事で動き始める。
「やらせないわ」
しかし、それよりも先にホワイトが手を打った。
彼女が魔獣へ手のひらをかざす。その瞬間、彼女の足元が凍り付き、それは魔獣の方まで伝っていく。
【LUSS!?】
凍り付く地面の進行方向に対して、魔獣は触手を壁のように塞ぐ。
間一髪のところで、魔獣は触手一本を犠牲にホワイトの凍結攻撃を凌いだ。
「まったく、後先考えない奴らばかりだ」
ホワイトに続き、ブルーが弓に三本の水の矢をつがえて構える。
「【アクアバイト】!」
一斉に放たれた水の矢は、空中で形を変えて蛇の姿を模る。
三体の水の蛇は、変則的に軌道を変えながら魔獣に迫り、そして魔獣が女性達を拘束するのに使っていた三本の触手、その先端を噛み千切った。
「「「きゃー!?」」」
「グリーン!」
「はーい」
拘束が解かれて空中に放り出された女性達の足元、そこにグリーンは魔法で柔らかい土を盛り上げた。それがクッションとなり、彼女達は無事着地する。
「それじゃあ私は、彼女達を避難させるわね」
女性達は全員無傷だが、まだ魔獣の足元に居る。巻き込まれてしまう可能性があるからと、グリーンは足早に彼女達のもとへ向かった。
「サンキューやでブルー、グリーン! ほなアタシも!」
イエローは一度大きくジャンプする。
魔獣の上空を取ったイエローは、そのまま拳を振り下ろそうとする。……しかし、
【LUS!】
「げっ」
魔獣は一本の触手をイエローに突き出す。
そして触手の先端から、大量の粘液を吐き出した。
「うわっぷ!?」
粘液を全身に浴びてしまったイエローは、そのままなす術なく地面に落下する。
「イエロー!?」
「チィッ! 舐めた真似しよってからに!」
思わず叫ぶレッドだったが、心配無用とばかりにイエローはすぐに起き上がり、魔獣に対して怒りを見せる。その体は粘液塗れだった。
「オラァ!」
イエローは立ち上がると同時に魔獣の胴体へ拳を振るった。だが、
ツルンッ
「ぶへぇっ!?」
「あっ」
全身粘液でヌルヌルだった彼女は、足を滑らせて勢いよくずっこける。
「だぁクソ! クセェわ動き辛ぇわなんやこのヌルヌル───って、うおわああ!?」
「イ、イエロー!」
粘液で思うように身動きが取れなかったイエローは、あっという間に魔獣に捕まってしまった。
「クソ! 離せやこの変態が!」
「あわわわ! イ、イエローが捕まっちゃった……!」
触手で雁字搦めにされたイエローを見て慌てるレッド。
「あ~れ~!」
「ってグリーンまで!?」
そのイエローの隣には、いつの間にかグリーンが同じように触手で拘束されていた。
「テメェどこ触ってんねん! ホンマに変態なんか? ああ!?」
「あらあらあら、こ、これはちょっと参ったわねぇ」
捕まったイエローは怒鳴り散らし、グリーンも柔らかな笑みに少しだけ冷や汗を垂らしていた。
触手は先端にかけて徐々に細くなっている。魔獣はその先端を器用に操って、イエローの健康的な生足をギュッと握り、グリーンの胸の上下を締め付けて彼女の豊満なソレを強調させる。
【LUS LUS LUS♪】
その光景を魔獣は、頭部に付いた無数の目を通して楽しそうに見ていた。
「……ふざけた奴だが、意外に強いな?」
そんな魔獣の姿にプライドは、呆れながらも少し感心する。
「い、今助け、わわっ!?」
慌ててレッドが助けに向かおうとするも、その行く手を三本の触手が邪魔する。
「くっ……!」
続けてブルーが矢を二本つがえて、イエローとグリーンを縛る触手にそれぞれ狙って射る。
【LUSS!】
しかし魔獣は、向かってくる矢を無数の目で正確に捉え、触手で払い除けた。
「弾かれたか……! だったら」
ブルーは再び矢をつがえる。
「【アクアバイ───」
【LUUUST!】
しかし魔獣は追撃を許さず、ブルーに向かって触手から粘液を噴射させた。
「なっ……!?」
回避は間に合わない。防御も不可能。
ブルーは無防備に粘液の波に呑まれる……事は無かった。
「【ブリザード】」
極寒の冷気がゴウッと音を立てて横から吹き荒れる。それは魔獣が放った粘液に直撃し、粘液は一瞬で凍り付いた。
「こ、これは」
「はあ、はあ……き、気を付け、て……」
「ホワイト……!」
ブルーは遅れてホワイトが助けてくれた事に気づく。
「助かったが……君の方は大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫、よ……はあ、はあ」
ブルーは感謝よりも先に心配に感じる。
ホワイトは顔を真っ赤にし、息も荒い。誰が見ても正常ではなかった。
(どうしたんだ? 彼女はそこまで動き回っていない筈なのに、なぜあんなに息を切らして)
「うぅ〜! 触手が邪魔で近づけないよー!」
「あ、ああ」
その時、レッドが悔しそうな顔を浮かべながらブルーのもとへ戻ってきた。そこでブルーも思考を切り替える。
「私の弓矢もだ。どこを射ってもあの
そう言ってブルーは魔獣を一瞥する。
【LUS LUS LUS】
(その分、機動力は皆無らしいが)
魔獣は魔法少女に攻撃を仕掛けようと向かっているものの、その歩みは牛歩だった。こちらから相手の間合いに入らなければ、攻撃される心配はないだろう。
(ただ、触手の動き自体は素早い。どうにか奇襲を仕掛けたいが、奴の目は全方位を見ていて死角がない)
どうすればいいのか、ブルーはじっくりと思考に耽る。
「どうにか死角から攻撃を、いや周りにそんなものは」
「……っ、ね、ねえホワイト!」
一方、手持ちぶさたになってしまったレッドはホワイトに呼びかける。
「あなたが私たちを避けたがっているのは分かってる。けど、ここは一緒に協力して魔獣を倒そうよ!」
「っ、レッド……」
レッドの言葉にホワイトの瞳が揺れる。
(……待てよ?)
そのレッドの叫びにブルーもホワイトの方を一瞥して……そして彼女の凍り付いた足元を見る。
「それでも、私は……」
「───そうか、この手がある!」
「「え?」」
突然大声を上げるブルーに、レッドとホワイトは思わず彼女の方に顔を向ける。
そしてブルーは、ホワイトに向かって叫んだ。
「頼むホワイト、私たちに協力してくれ!」
「……奴ら、何を企んでいる?」
プライドは眉を細める。ブルーが何かを叫んだあと、レッドとホワイトが彼女のもとに集まって何かを話し始めたのだ。
「……っ、おい、もっと早く動かんか!」
【LU LUUS……】
何か策を練られる前にケリを付けたいプライドだったが、魔獣の移動が遅すぎるせいでそれも叶わない。
「……ちっ、動き始めたか」
結果、魔獣が追い付くよりも先に彼女達は話を終えて、プライド達の方向に顔を向けた。
「……」
まず前に出てきたのはホワイト。彼女は無言のままゆっくりと魔獣に近づいてくる。
【LUS!】
そのまま無造作に間合い内まで入ってきたホワイトへ、魔獣は意気揚々と触手をけしかける。
「───ここね」
しかし、触手がホワイトに触れる直前、彼我の間に巨大な氷の壁が飛び出してきた。
【LUS!?】
氷の壁は触手を防御するだけでなく、魔獣の視界を遮る目隠しにもなった。
「今よ」
「【アクアバイト】!」
ホワイトが合図するのと同時、ブルーが三本の矢をつがえて真上に発射する。
放たれた三本の水の矢は蛇へと姿を変えて、左右と上の三方向にそれぞれ軌道を変える。
(なるほど、氷の壁で死角を作り、その裏から矢で狙うか……だが)
水の蛇は氷の壁の左右と上からそれぞれ飛び越えて魔獣を襲う。
……その一瞬、壁の向こうから水の蛇が姿を現すその瞬間を、魔獣の目は余すことなく捉えた。
「無駄だ。攻撃時に壁から出てくる必要がある以上、コイツに奇襲は通じない」
【LUUSSS!!】
魔獣は幾本もの触手を大きく広げる。それらを用いて水の蛇をすべて撃ち落とす。
「……やはり、全て防ぐか」
そしてその結果を、ブルーは至極当然のように受け入れた。
「だが触手を使って防いだという事は、前方は今ガラ空きというわけだ」
【……LUS?】
その時、魔獣は気づく。
氷の壁の中央、そこが段々と溶けて、赤みを帯びていることを。
「───【ブレイブバーン】!」
【LUSSS!!?】
そこからゴウゴウと燃え盛る炎が解き放たれて、気づいた頃には魔獣は身を焼き焦がしていた。
「壁越しから攻撃を行う……目はたくさん付いているようだが、透視は出来ないらしいな」
ジュワーと音を立てて溶け落ちる氷の壁の穴、そこからレッドとブルーがしたり顔で覗いていた。
「えへへ、ホワイトとの初めて協力技だね」
「っ、そ、そうね」
レッドは嬉しそうにホワイトへ笑顔を向けたが、彼女は思わずといった風にそっぽ向いてしまう。
【LU LUSS……】
一方、炎をモロに食らった魔獣は苦しそうに呻く。かなりの大ダメージだったらしい。
そしてそのダメージに怯んだ事で、触手の拘束が弱まる。
「───ずいぶんひでぇ目に遭わせてくれたやんか」
その隙をイエローは見逃さなかった。
「オラァ!」
彼女は触手からスルリと抜けて脱出すると、そのまま目の前にあった魔獣の目玉一つを拳で穿った。
【〜〜〜!?】
「はんっ、なんやお前、よお見たらそこかしこに弱点付いとるやんけ」
目玉を抉られた魔獣は悶え苦しむ。それを見たイエローは、獰猛な笑みを浮かべた。
【LU LUST!】
再び向かってくるイエローに、魔獣は彼女の横から触手を使って再び粘液を噴射する。
「あらーダメよ」
しかしその粘液は、地面から迫り上がってきた土の壁にぶつかる。
「これ以上のおいたは〜、めっ」
それはグリーンの魔法だった。
彼女も触手の拘束から逃れて、自由になっていたのだ。
「さあて、借りはきっちり返させて貰うでぇ……!」
粘液飛ばしは防がれ、この至近距離では触手攻撃も間に合わない。もはやイエローを阻むものは何も無くなっていた。
【LU LUSSSSST!?】
「……今回もダメか」
自身の無惨な結末を悟った魔獣は怯え切り、それを見たプライドはため息を溢して一足先に逃げる事にした。
───その後、魔獣の一際大きな断末魔が辺りに響き渡った。
「ふぅー、スカッとしたわ」
魔獣を滅するまでタコ殴りにしたイエローは、それはそれは清々しい笑顔で額の汗を手で拭っていた。
「さっ、魔獣もボコったことやし、早うホワイトんところへ行かんと」
そう言ってスッキリした表情のまま彼女は後ろを振り返る。
「ああ、ホワイトならもう居ないぞ」
「……は?」
その時、ブルーがイエローの呟きにそう返事した事で、彼女は目を丸くしながら辺りをキョロキョロと見渡す。
「え? は!? ホ、ホンマにどこにもおらんやん……」
「イエローが魔獣を倒している間に逃げたのだろう。私もさっき気づいた」
「あはは……もうイエローの独壇場だったもんね」
レッドの言う通り、一度肉薄してしまえば簡単だった。
数が多く、射程も長い触手は脅威だが、それでも体から引っ付いて離れないイエローを払い落とすのは至難の業だ。その上、急所である目玉をイエローが逐一潰してくる為、その度に魔獣は怯んでしまう。
結果、イエローによる魔獣の蹂躙が繰り広げられたのであった。
「クッソー! 今日こそはと思っとったのにぃ! こうなりゃ今からでも探しに」
「あら、それはダメよー」
今にも飛び出していきそうなイエローだったが、グリーンに襟首をつかまれ、あえなく制止された。小柄な彼女の身体は、そのまま地面から浮き上がって宙ぶらりんになってしまう。
「おい離せやグリーン!」
「もうすぐ昼休みも終わって授業が始まるんだから、良い子は学校でお勉強よ〜」
ジタバタと暴れるイエローだが、グリーンは無視してそのまま学校へ戻ろうとする。さながら暴れる子猫を連れ帰る飼い主だった。
「ちょっ、分かった、分かったから! せやから降ろせや自分で歩くけん!」
「ふふ、まったく暴れん坊さんなんだなら」
「ガキ扱いすんな!」
暴れるイエローをグリーンはそっと優しく降ろす。その瞳には我が子に向けるが如き慈しみの念が込められていた。
「ったく……しかし、またホワイトに逃げられてもうたか」
「……うん、私も話す気満々でいたから、ちょっと悔しい」
イエローの呟きにレッドが頷く。
(せっかく下成さんに相談して貰ったのに……)
彼女の脳裏に浮かんだのは、少し前に行ったフタバとのやり取り。
『───それでも助けを求めないという事は、きっと、その人は怖いのよ』
『───怖い……?』
『───ええ、多分その悩みが、打ち明けてもどうにもならないようなもので、逆に打ち明けることで相手に幻滅される事が……とても、とても怖いのよ』
(あの話は、下成さんの想像でしかない。だけどきっと、違うという事も無いんだと思う)
秘密を知られて嫌われるのが怖い。だから隠す。それは彼女には考えもしなかった発想だ。
レッドはこれまで何度もホワイトと顔を合わせてきた。今回は共闘までしている。
それでもやはり、ホワイトの隠している物が何なのか、レッドには分からない。だが、フタバの話を聞いて振り返ってみると、確かに彼女は何かに怯えている節があった。
(もしあの話が真実なら……きっと、次こそホワイトに歩み寄れる!)
そう信じたレッドは、再び前を向く。今回はダメだったが、次こそはと希望を持って。
「……こうなりゃ強硬手段に出たるか」
一方、イエローはポツリと不穏な言葉を口にしていた。
▼▼▼
「はあ、はあ、はあ……!」
イエローを魔獣を倒し終えたのと同時刻、マギアホワイトは一足先に現場から離れて路地裏に身を潜んでいた。
「はあ、はあ、はあ」(か、考えが甘かった……!)
路地裏の壁にもたれ掛かり、熱い吐息を漏らす。彼女の心情にあったのは後悔と、自身への失望。そして、
(貞操帯があるから大丈夫……全然そんな事なかった!)
信じていた
(え? なにこれ? 全然変わらないんですけど。●起した時に圧迫されて痛いだけで、性欲は毛ほども減ってないんですけど???)
一般人や魔法少女が触手に捕まってネチネチ弄られていた時も、イエローがヌルヌル塗れのあられもない姿になっていた時も、ホワイトのアソコはビンビンしたままだった。
(え? ちゃんと貞操帯付いてるよね?)
思わずスカートをたくし上げてパンツの中を確認するホワイト。そこにはち●こを覆う筒状のモノがしっかりと存在していた。
(ど、どういう事なの? 貞操帯って、性欲を抑える為の器具じゃないの?)
……彼女は勘違いをしていた。そもそも貞操帯とは、文字通り貞操を守る為のものであり、ヤッたり45ったりなどを物理的に防ぐだけで、性欲を減衰させる効果なんて微塵もない。
というか彼女は前世の知識含めて、エルエムに講釈垂れるほど性的な事には詳しくない。あと童貞だ。
貞操帯についても、前世で見たエロ漫画の知識程度しかない。
(そ、そんな……せっかく高いお金を出したのに、こんな事って……!)
貞操帯があろうとなかろうと、そもそもアソコを刺激しなくても射精してしまう彼女には意味がない。
……結局のところ、射精しない事が条件な以上、気合いで我慢する以外に手はないのだ。
その事実に気づいた時、ホワイトは変身を解いて地面に両手をつかせる。
「う、うわあああ!!!」
……一人の少女の悲痛な慟哭が、路地裏に響き渡った。