【JEALOOO〜〜〜!!?】
魔獣は断末魔を上げながら、その肉体を霧散させる。
「……ふぅー、危ないところやったわ」
魔獣の消滅を見届けたイエローは、安堵のため息を溢すと共に、ふと自身を襲い続けていた眠気が消えている事に気がつく。
「あの魔獣が消えたからか、えらい目が冴えたな」
一度気持ちよく背伸びした後、イエローは近くで仰向けに倒れていたレッドに近寄る。
「う、うぅぅ、テストが、テスト期間が終わらないよぉ」
「どんな夢見とんねんアホんだら」
「ぴゅいっ!?」
レッドの寝言にイエローはツッコミを入れつつ、ちょっと強めに蹴り起こした。
「あ、あれ? 次は歴史のテストだった筈」
「おい、寝ぼけとんちゃうぞ」
「イエロー? ……そ、そうだホワイト! あ、いやその前に魔獣を」
「魔獣ならもう倒したで」
「へ?」
そう言われて、レッドは周囲を見渡す。見てみれば、目を覚ましつつある人が至るところで現れ始め、商店街に騒めきが取り戻されつつあった。
「ほ、本当だ……」
「ほら、グズグズせんと他の寝坊助も起こしにいくで」
そう言ってイエローは、倒れているブルーとグリーンを一瞥する。
「え? 他のみんなも……っ! も、もしかして、イエロー一人で倒したの!?」
「せやで」
魔獣は正面から戦わず、終始逃げに徹して相手が睡魔に負けるのを待っていた。
その結果、少女達は一人、また一人と眠ってしまい、最後に残ったのはイエローだけで、彼女も限界が近かった。
「まあちょっと卑怯な手は使ってもうたけどな」
そこでイエローは、相手を油断させる為に寝たふりをすることにした。
そのまま睡魔に負けて本当に眠ってしまう可能性もあったが……彼女は最後の最後までふんばり、そして魔獣の不意を突いて倒してみせた。
「まっ、正面からやり合わん腰抜けにはちょうどええやろ」
「はえ~……」
「んなことはどうでもええねん」
イエローはブルーを起こしに向かいながら、後ろで感心しっぱなしのまま動かないレッドに呼びかける。
「お前もはよグリーンを起こしにいかんかい。……そんで、ホワイトを助けに行くんやろ?」
「……! う、うん!」
その言葉を聞いて、レッドは慌てて動き出す。
(待っててホワイト、すぐに行くから!)
▼▼▼
一人は、最初の頃から表舞台に出てきて魔獣をけしかけ続けてきたプライド。そしてもう一人が、少し前から現れ始めたルストである。
プライドはずっと、魔獣を生み出してはきたが、前に出てきて戦う事はしなかった。だから妖魔というのは、魔獣のような戦闘能力が無いのだと思っていた。
しかし、違った。
踊るように宙を翔け巡る紫の稲妻。
地面の至るところから生えてきて、出鱈目に暴れ回る触手の群れ。
大地を、空を支配する。それを成しているのは、工場の中央で宙に浮く妖艶な美女だった。
「ほらほら〜、逃げてばかりじゃ勝てないわよ?」
「……っ」
ルストの力は予想以上で、私は防戦一方を強いられていた。
縦横無尽に疾る紫電は氷柱で防ぎ、突き出る触手は氷漬けにしていく。
しかしその繰り返しで、その先に進めない。相手に攻撃する暇がない。
「はあ、はあ、はあ」
「あらあら、そんなに息を切らしちゃってどうしたのぉ?♡」
そう言いながらルストは、足から胸に掛けて舐めるように手を這わせる。
スラリとした脚に、ムチッ♡とした太もも、そしてプルン♡と弾む胸。一つ一つ、見せつけるように手を這わせていく。
「……!」(ぬぐわー! さっきからエロすぎでしょ! いい加減にしないとその胸揉みしだくわよ!?)
……苦戦している一番の理由、それは敵がエロすぎるせいだ。
分かってる。アレが私の集中力を乱す為の罠だって事ぐらいは。戦いの中で、あんな安っぽい色仕掛けに惑わされてる暇なんてない。
分かってる。分かってるのよ……でも見ちゃうのよ! だってエロいから!
「フー! フー! フー!」
性欲を押し殺す。必死に我慢する。
「あらあらあら♡ そんなに息を荒げて見ちゃいやよ? まったく、捕まったらどんな事をされちゃうのかしら? いやーん♡」
(ぼ ん゙ ど ゔ に゙ じ で や゙ ろ゙ ゔ が!?)
それでも溢れ出る
(っ、不味い)
力が弱まり、氷が溶けかけている。
(このままじゃジリ貧になる……!)
焦燥に駆られた私は、急ぎ勝負を決めようと動いた。
「【ブリザード】!」
上空で動かないルストに向かって、手のひらから極寒の冷気を放つ。
「あら」
それをルストは、前方に触手を置いて防御する。
(今だ!)
触手でルストは前が見えなくなっている。その隙を突き、私は足元に氷柱を生成し、思いっきり突き出させる。
突き出た氷柱を私の体を押し上げ、その勢いのままルストの居る方向へと私を吹っ飛ばす。
「……!」
ルストが防御に使った触手を退かした時、既に私は彼女の目前まで迫っていた。
「上から見てばかりじゃつまらないでしょう」【ブリザード】
私は再び手から極寒の冷気を放つ。狙いは勿論、ルストの背中で広がる蝙蝠の翼だ。
「墜ちなさい」
「───残念♡」
次の瞬間、私が冷気を浴びせるよりも先に、一本の触手が私の腕を掴んだ。
「っ!?」
いつの間にか、私の側には見覚えのある闇の渦があった。そしてその闇の奥から、触手が現れていた。
「近づかれた時にどうするか……なんて、とっくに対策済みよ♡」
それから次々と私の周りに闇の渦が現れて、そこから出てきた触手が私に襲い掛かる。
「くっ……! 【ブリザー」
私は自爆覚悟で全方向に冷気を放ち、向かってくる触手を全て凍り付けようとする。
「ふふ、だーめ♡」
しかしその直前、ルストが私の両頬に手を添えて、自身の胸に私の顔をうずめさせた。
むっぎゅぅ~っ!♡
「ぬほォッ!?」
すべすべで、もちもちで、大きくて、柔らかくて、弾力があって……そんな言い知れぬ感触が顔全体を包み込んで、あまりの衝撃に私が放とうとしていた冷気は一気に霧散してしまった。
「む、むご、むごごぉ……!」(や、やめ、やめろー! これ、本当にダメなやつぅ!)
「やんっ♡ そんな暴れないでちょうだい。くすぐったいわ」
ジタバタと暴れて必死に逃れようとする。
「~~~♪ ……はぁーい♡ もういいわよ」
そんな抵抗もむなしく、ルストは鼻歌まじりに触手で私の四肢を雁字搦めに縛り上げると、ようやく私を解放した。
「ぷはぁ! はあ! はあ! はあ!」
「うふふ、どーお? 堪能してくれたかしら♡」
「……っ!」
「あら怖い♡」
せめてもの抵抗に、キッとルストを睨みつける。しかし、四肢を広げられて、空中に縛り付けられた今の状態じゃ、滑稽もいいところだ。
「私をどうするつもり?」
「うーん、そうねぇ」
「……殺すの?」
冷や汗を流しながら、恐る恐る問いかける。するとルストはしかめっ面を浮かべて、さぞ心外そうに言い返した。
「ちょっと、物騒なこと言わないでちょうだい。そんな恐ろしいこと、死んでも出来ないわよ」
「……?」
強い拒絶の意を感じるその発言に、私は少しだけ引っ掛かった。
殺すことへの並々ならない忌避感。それが彼女の良心に反したのだと言えばそれまでだが、何かそれ以外の理由もあるような気がしたのだ。
「まっ、それは今置いておきましょう。……それより」
ルストは気持ちを切り替えるように一度咳払いした後、妖艶な眼差しで
「さっきくっついた時、腰に何か当たっているのを感じてたのよね~♡」
「え?」
そう言ってルストはペロリと舌なめずりをし、私のスカートをガバっとめくり上げる。
「いったい何が入ってるのかしら?」
「いや、ちょっ、まっ……!」
そして止める間もなく、もっこりと膨らんだ私のパンツを───脱がした。
(うぎゃー!?)
「……?」
(ってあれ? なんか反応が……あ、そうか!)
内心悲鳴を上げる私だったが、ルストは不思議そうに首を傾げるだけで何も言わない。
一瞬どうしたのかと思ったが、下を見て気づく。
パンツを脱がされた先にあったのは、冷たい空気に晒されるそそり立つちん……ではない!
(私には、まだコレがある!)
そこまで意味が無いことを知りつつも、勿体ないからと付けるようにしていた、ち●こを守る最後の防御壁……貞操帯である。
「なに? この棒状のモノ」
(ざ、残念だったわね! 貞操帯の鍵は家に置いてきた。これがある限り、あなたが私のち●こに触れることは)
「えーと、これが鍵穴かしら?」
勝利の笑みを浮かべたのも束の間、ルストは貞操帯に触れまわり、鍵を掛けるための錠前を見つける。
「【アンロック】」
「え?」
その鍵穴に向かって、ルストは人差し指をクルクル回しながら言葉を紡いだ。
ガチャ
……その瞬間、貞操帯の鍵が開く音が聞こえた。
「よし、開いたわね」
「なにその技!?」
あまりにも理不尽過ぎる展開に、あまりにも役立たず過ぎる貞操帯。
ままならない世の中に私は嘆きながら、無情にもポロリと取れて落ちていく貞操帯を眺めることしか出来なかった。
「あら? ……あらあらあらあら♡」
とうとう露わになったソレを見て、ルストは憎たらしいほどに笑みを深める。
「これってアレよね? そうよね? 男の子に付いてるっていう、ア・レ♡」
「~~~!」
「あ、ちょっとピクッて」
「言わないで!!!」
「あなたって男の子だったの?」
「ちがっ……わなくもないけど、いやでも、今で考えると違うような」
「……? まあどっちでもいいわ」
煮え切らない反応にルストは眉を寄せるも、気にしないことにしてすぐに話題を変えた。
「あなたのコレ、魔力で出来ているみたいね。……という事は〜♡」
「……っ」
ゾッとするほどに妖艶な笑みを浮かべるルストに、私は嫌な予感をせずにはいられなかった。
「ココから出るア・レ♡もぉ、魔力の塊である可能性が高いって事よね?♡」
「……まさ、か」
ゆっくりゆっくり、彼女の細くしなやかな指が私のアソコへとにじり寄る。
「安心して、優しくするから♡」
「や、やめ……!」
そんな事されたら、絶対我慢なんて──する必要あるか?──いやあるでしょ。
ここで一気に
そうだ、それでいいんだよ──なにか、おかしいような──この生意気なクソビッチを
───
───
───だってそれが、
漆黒の炎が、猛く燃え上がった。
▼▼▼
人間界を脅かすリビディアンを止めるべく、妖精界からやって来た
彼は以前から一つ、不思議に思っている事があった。それはフタバの……マギアホワイトのおかしな性質についてだ。
生きとし生ける人間が持つリビドー。そこから生まれる強大なエネルギーを妖精達は魔力と呼ぶ。
そしてマギアウィッチは、そんな魔力を自身のリビドーから生み出し、魔法として操ることができる。それはつまり、リビドーが高まれば高まるほどに強い力を発揮できるということだ。
しかし、マギアホワイトは違った。
彼女の
性欲を抑えるほどに強くなり、性欲を解放するほどに弱くなる。それが、彼女だけが持つ特異な性質だった。
なぜ、
なぜ、性欲が高まると力が弱まるのか。
……エルエムは、ある一つの仮説を立てた。
フタバが普段使っている力は、他のマギアウィッチが扱う力とはそもそも正反対のものではないのか?
溢れるリビドーから生まれる通常の魔力をプラスの力とするなら、リビドーを
熱エネルギーと同じ仕組みだ。激しい分子運動は炎を生み、反対に静止していれば全てを凍てつかせる絶対零度をもたらす。
実際には分からない。そもそもマギアウィッチという存在自体が稀有で、魔力についてもまだまだ未知の可能性を秘めているからだ。……しかし、
もし、この仮説が当たっていて。
もし、彼女が己のリビドーに抗う事をやめたなら。
▼▼▼
順調にマギアホワイトを追い詰めていたルスト。彼女はホワイトを拘束し、トドメと言わんばかりに下半身に付いているモノに触れようとした……その直前だった。
突如として、ホワイトの体から漆黒の炎が燃え上がった。
「……!?」
ルストは動揺し、慌てて彼女から離れる。
次の瞬間、ホワイトの四肢を縛っていた触手が漆黒の炎に包まれ、たちまち消し炭と化した。
「な、なに、が……」
唖然としながら、ルストは燃え上がる炎を眺める。
漆黒の炎は徐々に消えて……否、ホワイトの胸へと一点に収束していき、最後にはその胸の内へと吸い込まれた。
「……あなた」
触手の拘束から脱出したホワイトは、そのまま地面に着地する。……その姿に、ルストは言わずにいられなかった。
「だれなの?」
そこに居たのは、アイスブルーの目と髪をした仏頂面の少女じゃなかった。
毛先の広がった漆黒の髪に、鋭くつり上がった紫の瞳。身に纏う衣装も真白の服から紫を基調としたものに変化していた。
「……キヒッ」
しかし、何より一番の変化は、その表情。
全ての感情を殺したかのような鉄仮面から一変、今の彼女は不敵な笑みを浮かべて、全てを灼き尽くさんばかりの激情を瞳に宿している。
「情炎滾る黒き魔法使い、マギアブラック」
……反転した。
「お前を犯す者の名だ」
そうとしか言えない変貌を、彼女は遂げていた。
「マギア、ブラック」(嘘でしょ……)
ルストは驚愕していた。マギアブラックを名乗る彼女の変貌ぶりに……そして、彼女が操る漆黒の炎から感じる力に。
(あれって、闇の魔力!?)
負のリビドーからのみ生まれる闇の魔力。それを彼女は行使していたのだ。
「さっ、自己紹介は済ませたんだ。早く続きをしようぜ」
「ッ、つ、続き……?」
動揺から抜け出せないまま、ブラックからそんな事を言われてルストは戸惑う。
「続きって、ど、どういう意味?」
「は? おいおい、萎えるようなこと言うなよ」
ブラックは、何がなんだか分からないルストを見て失望をあらわにする。
「やってくれるんだろ? この俺のち●この」
それから一度腰を大きく落として、
「───ご奉仕をサァ!」
上空で佇むルスト目掛けて、一気に跳び上がった。
「っ……!」
向けられる濁った感情にルストは思わず悲鳴が出かけて、それを誤魔化すように慌ててブラックに触手の群れをけしかけた。
「はんっ、触手プレイならやる相手を間違えてんぞ!」
しかしブラックは、四方から襲いかかる触手を一瞥する事なく、全身を黒炎で包み込む。
「【ダーク・ボルケーノ】!」
そしてブラックを中心に、黒炎が四方へと一気に燃え広がった。
触手は残らず黒炎の餌食となり、ブラックに届く前に全てが燃え尽きてしまう。
「ッ、このっ……!」
ルストはその結果に目を見開きながらも、続けて指先をブラックに向け、そこから紫電を放つ。
「おっと」
それに対してブラックは燃え残った触手の肉片を掴み、迫り来る紫電目掛けて投げ付けた。
肉片が紫電に触れた瞬間、バチバチッと激しい火花が散る。肉片を黒焦げにした紫電は役目を終えるように霧散していった。
「嘘……!?」
「もう終わりか?」
ルストのもとまで到達したブラックは、彼女の両翼を掴む。
「だったら次は俺の番だ!」
そして手から黒炎を放った。
「しまっ……!」
翼はあっという間に燃え尽き、ブラックはそのままルストの身体を引きずるようにして、地面へと急降下した。
「うぐっ……!?」
「さあて、これで立場逆転だ」
「ひっ……!」
ルストは背中から地面に激突する。しかしその痛みに悶える間もなく、ブラックはルストの身体を押さえつけるようにして、その上に跨がる。
その時、彼女が浮かべた下卑た笑みを見て、ルストは思わず息を呑んだ。
「今までさんっざんそのエロい体で誘ってきたんだ……襲われても文句ねえよな?」
「あ、ああ」
ルストは後悔した。自分は、なんてとんでもない猛獣を目覚めさせてしまったのだろうか。
「そ、その、ごめんなsひうっ!?」
慌てて許しを乞おうとしたが、突然自身の股に何か固いものが触れた為、思わず驚き、次の瞬間には青ざめる。
「あ、あの」
「なんだ?」
「……や、優しくして」
「……」
絶望の中、縋るように呟いたルストの言葉。
「キヒッ」
それを聞いたブラックは、ニィッと悪辣な笑みを浮かべた。
「ヤダね、お前は煽りすぎたんだ。……奥の奥までぶち込んで、壊れるまで続けてやる。泣いて謝ったって止めてやらねぇ」
「〜〜〜ッ!」
死刑宣告に等しいその言葉に、ルストは声にならない悲鳴を上げた。
「はいじゃあ
「ぁ、いや、待って」
「ニィ〜」
「やだっ、しんじゃう、こわいよ」
「イィ〜〜〜
「ほんとにやめてっ! お、おねがい、もうしないから! なんでもするから、だからゆるして! あ、えと、ご、ごめっ、ごめんなさいっ!」
〜〜〜チ」
ジタバタと必死にもがいて、涙で顔をグシャグシャにさせながら、なんとかやめて貰おうと言葉を紡ぐ。
その姿にブラックは、真っ黒な悦びを感じて笑みを深め続けた。
「……キヒッ」
ブラックは、今一度腰を後ろに下げる。そして自身のモノがルストのソコへと命中するよう狙いをすまし、そして、
「ゼッ───
「───助けに来たよホワイト!」
「…………あん?」
……その瞬間は、ドタバタと慌ただしく空き工場に転がり込んできたレッドの叫び声によって遮られた。
次回、第一章完