彼は悪魔ではなく人間です   作:TKMG_タカムギ

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第十一話:彼の行動は風の赴くままに

『…………趣味?』

「違う!/違います!」

 

 どうも、恋愛感情というのは昔から持ち合わせていない者、紅月魁雅です。

 

 …うちのクラスは馬鹿しかいないんですかね?いや、俺が入るクラス全てが馬鹿になってるだけだ。俺のせいじゃねぇかそれ。ようやく休憩できると思ったら、今度は何故かチアリーダーへと服装をチェンジしたクラスメイトの女子の姿を見ないといけないことになるなんて。しんどすぎることこの上ないぞ。

 

 …まぁそんなことはさておき話を戻しまして、今回はトーナメントで決着をつけるそう。瀬呂によれば、例年形式は変わっていき、毎年サシで競っているらしい。去年はスポーツチャンバラだったり。今からこの場でミッドナイトがくじで組み合わせを決める、そしてその後にレクリエーションだ。

 

「レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね」

 

 正直、レクは出ても出なくてもどっちでも良かった。出るにしろ出ないにしろ、プロヒーローからの評価が変わることはないだろうし、無駄に体力も使って疲れるから。だけど、参加自由なのは本戦に出場する選手のみ。騎馬戦で敗北したチームは参加せざる追えないのだ。…だが

 

「あの…!すみません。俺、辞退します」

 

 こうなってくると、話は別だ

 

「尾白くん!何で…!?せっかくプロに見てもらえる場なのに!」

「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまでほぼぼんやりとしかないんだ。多分奴の”個性”で…」

 

 ”奴”、尾白が組んでいたチームを見るにそれは心操のことだろう。

 

 チームを組んだのに記憶がほぼない、実に不可解な出来事だ。しかも、尾白が辞退するところから見て、尾白側の意思は無かったものだと思える。…だが、俺等のチームの現状を見るに、その出来事の真実が明らかになってきた。

 

「チャンスの場だってのは分かってるし、それを棒に振るのも愚かなことだと思ってる!…でもさ、皆が力を出し合って頑張った中で、自分だけわけわかんないまま並ぶのは…俺には出来ない」

「僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前の話として…何もしてない者が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」

 

 B組の……誰だ?恐らく彼も、心操の手によってチームに入っていたのだろう。…だがこうしてみると、皆意外と熱いと言うか、鉄哲みたいなのが多かったなって。高校生としては求めているものが相当高いところにある。

 

 だが、それはそれこれはこれ。全てを決めるのは主審のミッドナイト。どれだけ綺麗事を発して皆でカバーしようとも、主審が認めなければ全て無に帰す。果たして結果は…

 

「そういう青臭い話はさァ………好み!庄田、尾白の棄権を認めます!」

 

 

 好み

 

 

 そのたった一つの単語で、二人の棄権が決まった。二人とも、苦渋の決断だったのだろう。ここで無理に止めたりはしない。……だが、これでは本戦に2人分の枠が出来てしまう。シンプルに考えるならば、騎馬戦での順位が繰り上がり、そこのチームが出場することになる。

 

「繰り上がりは5位の拳藤チームだけど…」

「そういう話で来るんなら…ほぼ動けなかった私らよりさ、最後まで頑張って上位キープしてた、鉄哲チームじゃね?馴れ合いとかじゃなくてさ、フツーに」

「お……おめェらァ!!」

 

 あれ、なんか話がどんどん飛躍していっている気がする。もしかして……出場権を、譲られた?

 

「やったな紅月!やっぱオメェお手柄だ!」

                  

 

 

 

 

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 その後はチーム内の話し合いで、俺と鉄哲が本戦に出場することになった。俺は塩崎とか骨抜が出たほうがいいって勧めたけど、どうあがいても二人は俺と鉄哲を出したかったらしく、期待に答えるためにも、しょうがなく出ることにした。

 

『…けど、本当に俺等で良かったのか?拳藤…だっけ。あんたも出たかったんじゃないの?』

「いいよいいよ別に。実際、私達全然動いて無くて、ほぼ不戦勝みたいなもんだったし。だったらさ、影を薄くしながらド派手なことをした紅月のチームに出てもらうほうが本心って感じだし」

『…まぁ本当に本心ならその配慮、遠慮なく受け取るよ。うまく返せるかは分からねぇが』

「弱気になんなって!」

 

 __こういう(鉄哲)タイプだったかぁ……

 

「…というわけで鉄哲と紅月が繰り上がって16名!組はこうなりました!」

 

 眼の前のモニターにトーナメントの組分けが表示される。俺の初戦は……上鳴か。轟とは3戦目で戦いそうだが、果たしてお互いそこまで勝ち上がれるかどうか。轟の2戦目には緑谷が来る可能性もある。そこがどんな試合になるか、かなり楽しみである。

 

【よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間楽しく遊ぶぞレクリエーション!】

 

 とは言っても、俺は流れで本戦に出ることになったから、レクの参加は自由となった。選択は勿論バツ。今から少ししたいこともあるからな。

 

 

 

 

 

 

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『とーどろきっ、ジュース飲むか?』

「…あぁ」

 

 ここは会場の外、人目が全くつかないような場所だった。ここには轟がおり、二人きりという状況だった。まぁ俺が轟を探してここに来たわけだしたまたまってわけじゃないけど。

 

『精神統一?もしかして邪魔しちゃったかな』

「別に構わねぇ」

『そう、じゃ遠慮なく』

 

 轟の隣に座り込み、買ってきたジュースを口に運ぶ。買ってきたジュースはりんごジュースで、俺の好物だ。なんで好きになったかはよく分からないけど…いつの間にか沢山食べてしまっている。師匠に”リミッター・零”の味もりんご味にしてもらったし。

 

「…わざわざ俺のところに来るってことは、何か用があるのか?」

『そうだね。少し、聞きたいことがあってさ』

 

 ここに来た理由は、ただ轟とりんごジュースを飲みたかったわけではない。今日の開会式前に聴きそびれたことを聞こうと思ったのだ。

 

『ちょっと、ノンデリな質問かもしれないけど、いい?』

「…俺の、家のことか」

『察しが良くて助かる。家庭間の話に首を突っ込むことが迷惑この上ないのは承知の上なんだけど、純粋に気になっちゃってさ』

 

 俺は魔界に来てから、興味のあるものはなんでも聞いて、実践しようとしていた。自分でも、異常なことは分かっている。明らかに()()()()()だ。魔界に来た要因もこれだと思う。

 

 だが、そんな異常者でも興味を持つことは必ず理由がある。ただ無鉄砲に知りたがっているわけではない。「面白そうだから」、「役に立ちそうだから」、「()()()()()()」。そういった理由で、俺は興味を持ち始める。

 

『1回、俺に全部話してよ。別に否定したり、肯定したりするつもりもない。俺の欲を、満たしてくれればいい』

「…俺は、クソ親父……エンデヴァーから、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 その話の導入から、俺は改めて理解した。

 

 

 

 人間の、欲深さを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「気分悪くさせたか?」

『全然。逆に懐かしい感じがした』

 

 轟の家系に傷が入った理由は、複雑なように見えて、普通に複雑だった。

 

 エンデヴァーは、自分が辿り着けなかったオールマイト、いわゆるNo.1という高みを、”個性婚”を利用して半冷半燃という理想の”個性”を持って生まれた轟焦凍で達成しようとしていた。轟の言っていた通り、道具として。

 

「この火傷は、母さんにつけられた。親父に似た、この左が憎かったから」

『…じゃあお前、母を恨んでる?』

「そんなわけねぇ。悪いのは、全部アイツだ。…だから俺は、母さんの個性だけでヒーローになって、アイツを完全否定する。それが、お前の言う俺にとっての欲だ」

『…ふーん、そっか』

 

 少し間を置き、考える。やはり、これは他人がそう簡単に割り込んでいい世界ではなかったと思う。そして、他人の欲に首を突っ込むのも普通はご法度だ。悪魔…そして、人間の欲、野望は否定されるべきではない。

 

『悪いな、せっかくの休み時間を使わせて』

「別に」

『まぁ、無駄にはさせねぇよ。今の話も、お前の欲も。絶対に』

 

 そう言いながら、残ったジュースを口に運び、その場を去る。…さぁ

 

 

 

『助けてやると、しますかねぇ…』

 

 

 

 なんとなく、な。

 

 

 

 

 

 

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【さぁ観客共!色々あったが結局コレだぜガチンコ勝負!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくてもそんな場面ばっかりだ、わかるよな!!心・技・体に知恵知識!総動員して駆け上がれ!】

『いやはや盛り上がっておりますなぁ!』

「誰目線なんだよオメェは」

 

 ついに始まった本戦トーナメント。プレゼント・マイクも見に来たプロヒーローも、全員が待ってましたと言わんばかりに盛り上がっている。一回戦目は緑谷VS心操。勝率は正直、心操にほとんど偏っていると言ってもいいだろう。緑谷が奴のトリックに気づけるか……いや、気づいているか。勝敗は、そんな単純なことで決まる。テクニックなんて、必要ない。

 

『なー尾白、お前はどう思う?』

「忠告はしといた。だけど、奴…心操の”個性”は工夫次第じゃ、”個性”の構造を理解してても、引っかかるかもしれないからな…」

『いいね、よく分かってんじゃん』

「だけど、緑谷ならいけんじゃね?あいつ、結構慎重に動くタイプだし」

『いや、緑谷だからこそ……かもだぞ?』

「へ?」

 

 確かに、上鳴の言うことも間違ってはない。”個性”をしっかり把握し、そこから冷静に動けば、心操の”個性”は難なく突破出来る。だが、今回のカードは他人にすぐ情を抱く緑谷と、そんな甘ったるい考えを一瞬で砕くことが出来る心操の”個性”。

 

『勝つのは実力か初見殺しか……どちらにせよ』

 

【レディィィィィイ、START!!】

 

 決着は一瞬だ。

 

【オイオイどうした大事な初戦だ盛り上げてくれよ!?緑谷開始早々、完全停止!?

『こりゃまた間抜けな顔で止められてんねぇ…』

 

 

 心操の個性、それは恐らく洗脳系統。まず尾白、そしてB組の庄田は心操とチームを組んだ記憶がなく、それを望んでいるわけでもなかった。尾白や庄田の意思無き者をチームに組ませたいなら、()()()()()()()()()()()()()()()の話。そんなことが出来るのは……洗脳だったり、操りだったりだ。

 

 騎馬戦においての俺等のチーム…鉄哲チームも、恐らく奴の洗脳にかかり、自分の意志を持てなくなり、動けなくなった状態でポイントを取られたのだろう。

 

『これは諦めるしかねぇなアイツも…』

「おいどうにかならねぇのかよ紅月!トリック分かってるんだろ!?緑谷終わっちゃうって!」

『俺がどうこうする場面じゃねぇだろ普通に考えて!はぁ……一見地味だけど、これはこれでアイツ(心操)の実力だ。潔く負けを……………ん?』

【おおっとこれはァ……緑谷!!とどまったぁぁ!?】

 

 …マジか何が起きた?仕組み自体は簡単だ。ただ指をOFAで暴発させただけ。だけど…なんで動ける?俺も記憶が曖昧だからなんとも言えねぇが、洗脳中は頭の中が霧にかかった感じで、常に体の自由は効かないはずだ。

 

 

『…面白い』

 

 

 

 

                        

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『う〜ん…緑谷に話聞きたかったけどな…』

 

 緑谷の試合が終わり、楽屋へ移動中。医務室に最初は向かって緑谷に先程の個性の詳細を聞きたかったのだが、もう時すでに遅し、緑谷は観客席へと向かっていってた。

 

 そんで、俺の初戦は上鳴か……放電ブッパ以外にあいつが何か芸を持ってたら面倒そうだけど、見た感じ自分でも制御できてない感じだから、まぁ大丈夫だろう。

 

 後は他にも「ここにいたか」…え?

 

「……………」

『……………』

 

 …え?(二回目)ちょ、誰?この人。身長高いし肩幅デカいし()()()()()()()しで………ん?待てよ、なんかこの人テレビで見たことあるような…ってか炎ってことは、もしや…

 

『エンデヴァーさん…ですか?』

「そうだ、エンデヴァーだ」

 

 やった、正解!それじゃ!なんてうまくはいかないとして、エンデヴァーって轟の親父さんだよな…なんでこの人が俺を呼び止めてんの?今轟の試合やってるし、見に行かなくていいのか?

 

『あの、どんな御用で「君と俺の焦凍が昼に話しているところを、少しだけ聞かせてもらった」それと俺を呼び止めるのにどんな繋がりがありますか?』

 

 何故か口が先走ってしまう。昼の会話というのは、レクの時会場裏で話していたアレ。まさか当の本人に聞かれていたとは。少し焦りながらも、その焦りを表に出さないようにする。

 

「君は…俺の焦凍に何をしている?」

『何をしていると言われましても、ただの相談相手になってあげてるだけですが』

「焦凍にそんなものは必要ない、邪魔だ。あまり人の家系に足を踏み入れないでもらいたい」

『必要ない…ですか』

 

 否、申し訳ないがそれはない。人間なんて脆い生き物は基本、一人で生きていけるわけがない。生活面で見ても、精神面で見ても。現在進行系でその人間にマイナスを打ち込んでいる人間がいるのなら、プラスを打ち込む人間も居ないと、その人間は成り立つことが出来ない。生き物とは常に、プラスでもマイナスでもない、0の状態でいないといけない。

 

『…申し訳ありませんが、あなたに俺の行動を止める権利はありません』

「何…?俺は焦凍の父親だぞ。息子に何か勝手なことをされ止めないわけが…」

『人間の行動というものは、赤の他人に否定されるものではありません。それに俺はまだ、アイツ、そしてあなたの家系には干渉していません。話を聞いて…アイツの行く末を悟っただけです。肯定もしてないし、否定もしていない』

「ッ…」

 

 だが、俺とこの家系になんら関係がないのは事実だ。古くから長い間築き上げられた家系と、ぽっとでの悪魔もどき。噂で悪魔だ何だの聞いている生き物に、そりゃ家系に手を出されるのは嫌だろう。そればかりは俺も共感できる。…しかし

 

『だからあなたは、まだ止められない。止めることが出来ない。俺はまだ、何もしていないから。なので俺は、それを少し悪用させてもらいます。轟…いや、焦凍の今の野望を、ぶち壊すために

 

 目先の利益に囚われる、それが()()

 

 エンデヴァーの目を見ながらそう言い残し、その場を去った。ちょうど轟達の試合が終わっただろう、ベストタイミングだ。

 

「待て」

 

 エンデヴァーに、呼び止められる。…冷たい目だ。

 

「君…いや、お前に、焦凍の何が分かる?」

『…そうですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたの知らない、焦凍の全部です』

 




 少し短めごめんなさい
※次回からnoteにある裏話cornerは、一話ごと語るのではなく、私が語りたいときに語る方向に変えます(投稿頻度が下がるため)
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