彼は悪魔ではなく人間です   作:TKMG_タカムギ

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言い忘れてましたが、彼の観客席の場所は、最前列の上鳴の隣です。詳細は原作を読んでください


第十三話:みんなのちから

『いいぞ鉄哲―!!もっと力入れてけ―!!』

「分かってらぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 どうも、盛り上がるときは盛り上がろう、紅月魁雅です。

 

 今現在の試合は、切島対鉄哲。先程の試合で引き分けという結果になり、今、腕相撲で改めて決着をつけようとしている。お互い、体の一部が固くなるという似た”個性”をしているが、それでも細かな違いがある。それをどれだけ活かせるかが勝利を握る。ただの腕相撲だけどね。

 

「お前切島応援してやれよー。クラスメイトなんだぞ?」

 

 瀬呂が呆れた表情で言う

 

『関係ない関係ないっ、俺は応援したい方を応援する、ただそれだけだし』

「あーーーおぉっと!今切島と鉄哲の進出結果が!!引き分けの末キップを勝ち取ったのは………切島!」

『あっおい鉄哲!何負けてんだよー!』

「ぐぉぉ金属疲労が…!もっと鉄分を摂っていれば…」

 

 うーん、負けてしまったか。魔界にはなかった、熱い男同士の戦いを見せられて、少し頭が理解に追いついてないところもあるが、これはこれで面白かったのでヨシ(๑•̀ㅂ•́)و✧。

 

 そして、これにて二回戦進出者が全て決まった。緑谷、轟、爆豪、飯田、切島、常闇、芦戸、そして俺という面々が、また新たな舞台(ステージ)の幕を開く。

 

 見てて面白みのありそうな試合は………やはり緑谷対轟だろう。両者ともに、今回の体育祭での成績優良者。端から見ればお互い実力が同じで、バランスの良い試合が見れると思われるが、そんなのは幻想。緑谷が己の”個性(OFA)”に何かしらの進展を起こさない限り、勝つ確率は皆無に等しい。

 

【さァ休憩も終わり試合再開だ!今回の体育祭、両者トップクラスの成績!まさしく両雄並び立ち今!緑谷対轟!】

 

 それに、轟はまだ全力を出していない。きっと、この戦いでも左の力を使うことは無いと言っていいだろう。

 

 …だが、轟はそれで勝てるのか。同じ対戦相手として瀬呂は、右の力だけで完封されてしまったが、緑谷はどうか。轟に、全力を出させることは可能なのか。

 

【レディィィィィィ____START!】

 

 さてさてそんな考えの中始まった興味深い戦い。こんな二人が最初にすることと、それは…

 

【おオオオ!緑谷、自慢の超パワーで轟の氷結を正面から破ったァ!】

 

 初手のブッパ、お互いそれが最適解だ。だが、同じ行動でも、二人の思考はまるっきしちがう。

 

 緑谷は、最初に轟の氷結が来ることを読んでいた。だが、今の緑谷では”個性”の調整がまるで効かない上に、どの規模の氷結が来るかも予想できない。だから、全ての氷結をぶっ壊せる100%のブッパで、轟の氷結を確実に壊す。

 

 轟は、そんな緑谷の力を恐れ、好きに力を使わせまいと氷結を開始直前にぶつける。

 

【緑谷まーーーた破ったぁ!】

 

 今の状況は、防戦一方と言ったところか。轟の一方的な攻撃を、緑谷が一生防いでいる。もし緑谷が今、轟の隙を探しているのなら、もう早速決着をつけないとまずくなってくる。だってもう、既に指がボロボロだ。勝負の勝ち負け以前に、アイツの体が問題だ。

 

 もし、万が一だが、アイツの限界が来た場合、俺が止めに行く。先生方も止めに行くだろうが、俺だってSD名乗ってるしな。守るもんは守らなくては。

 

「お!切島二回戦進出やったな!」

 

 ここで、先程の試合を勝ち上がった切島が戻ってきて、上鳴が称賛を送る。

 

「そうよ次おめーとだ爆豪!「ぶっ殺す」はっはっはやってみな!」

『ほらそこ、試合に関係ないことで喋りすぎない。せっかく面白くなってきてるんだから』

「ワリィワリィ。…と言っても結構悩んでてな、おめーも轟も、強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー…」

 

 確かに、()()()()()、緑谷がその状況だ。

 

「ポンポンじゃねぇよ舐めんな」

『ほう爆豪くん、その心は?』

「黙れ。筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息が切れる。”個性”だって身体機能だ。奴にも何らかの”限度(キャパ)”はあるはずだろ」

『その通り。まァ限度の種類は色々とあるけど、緑谷のやつとかが一番分かりやすいだろ』

 

 前回の麗日対爆豪のときもそうだった。麗日は”個性”の使いすぎで体が追いつかなくなり、爆豪は最後の一撃などの威力の出し過ぎで、手を痛めた。

 

 それの対策としてヒーローのコスチュームでその限度の引き上げを行ってるヒーローが多数なのだが、この体育祭という場は公平を期すためコスチューム着用不可。どれだけ限度を超えないで体を守れるかも重要となっていくだろう。

 

『そして戦況は―――急展開!』

【轟、緑谷のパワーに怯むこと無く近接へ!】

 

 さて、試合に戻ろう。轟が隙を見て距離を詰める。それと同時に出された氷を緑谷も負けずと左指で壊すが、当然それにも隙が生まれるわけで。氷を壊したことにより出来た緑谷の死角、上方向から轟が攻め、そのまま着地に氷を合わせる。

 

『やっぱり伊達に推薦名乗ってねぇなぁ……うわっ』

 

 氷で少しステージの状況が見にくかったが、唐突に先程までの威力とは比べ物にならないほどの風圧が飛んできた。恐らく、緑谷の100%だ。

 

 確かに今の場を切り抜けるならもう、100%を出すしか無かったが、ここで腕と指を使い切るのは相当まずいのではないのか。右手の指を全て使い切り、左腕を100%で丸ごと負傷。マトモに動かすことの出来ないこの状況で、緑谷はどう立ち回る。

 

【圧倒的に攻め続けた轟!とどめの氷結を―――……】

「どこ見てるんだ…!」

『おいおいおい…』

 

 …これは、止めるべきだろうか?轟から来たトドメの氷結を、()()()()()再度破った。もう、見れば分かる。あいつの指の骨は、もう既に原型を留めてなかった。だがその状況でも無理に指を動かし、100%の力を使った。

 

 そしてここで、緑谷がとあることに気づく。

 

「震えてるよ、轟くん」

『あ、震えてる…………なるほど』

「”個性”だって身体機能の一つだ。君自信、冷気に耐えられる限度があるんだろう…!?でそれって、左側の熱を使えば解決できるもんじゃないのか…?

「っ…」

 

 図星、だな。轟の顔が曇ってきた。

 

「皆…本気でやってる。勝って…目標に近づくために…一番になるために!()()の力で勝つ!?まだ僕は()に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

 壊れた四本の左指を全力で握りしめ、こちらにもはっきりと聞こえる大声で叫ぶ。

 

 

「全力でかかって来い!」

 

 

 その一言を境に、ステージの空気が凍る。これは、轟の氷による冷気ではない。当たり前か。

 

 俺は、轟が炎を使わない理由をしっかりと理解している。だけど、緑谷は知っているのか?自分をここまで犠牲にしてまで轟を変えようとしているなら、もしかしたらもう既に知っているのかもしれない。轟が何かをきっかけに緑谷に教えたのか?

 

 今思い返せば、最初の控室での宣戦布告。轟の”左を使わずトップになる”という欲から見るに、オールマイトと”個性”が似た緑谷を超す、オールマイトと同等の力を右だけの力で勝つことによって、同じ個性遺伝子の父の”個性”、考えを否定でき、No1にも近づける未来が見える、という意図のもと行ったものだろう。

 

 だから、轟は緑谷に家系の事情を説明した。緑谷を超えないといけないという自分自身の使命のもと、また別の宣戦布告の意味も込めて。

 

『お互い、背負ってるものが違いすぎるな…』

 

 凍りついた場面の中、轟が先に動く。

 

 だが、氷の使いすぎか、体に霜が降りてきて震え始めたときから、障害物競走や騎馬戦、そして緑谷戦の最初と比べ、明らかに動きが鈍くなってきている。”個性”も身体機能の一つで限界があると言ったが、轟の場合だと使えば使うほどデメリットが増えていく、と言ったような感じ。

 

 それの対策として、轟は炎を使えば体温調節が可能で、デメリットを打ち消すことが出来るのだが…

 

【モロだぁーーー!生々しいの入ったぁ!】

「轟に…一発入れやがった!どう見ても緑谷の方がボロボロなのに、ここで攻勢に出るなんて…!」

 

 動きが鈍くなり、氷の勢いが弱まったことも原因か、轟よりも圧倒的にボロボロな状態の緑谷が、轟の腹に一発入れ込んだ。轟は殴られ後ろに飛ばされその場で体制を整えるが、ここにきて初めてのダメージだったからか、腹を抑えながら少し咳き込んでいる。

 

 それに今さらっとやっていたが、緑谷が殴るときに、OFAを発動していた。それも、うまく調整された、100%以下の状態で。これで力の調整に成功するのは、USJに次ぎ2回目だ。

 

 だが、一発攻撃を叩き込んだだけでは、戦況など何も変わらない。

 

 轟も負けずと変わらず氷を出し続ける。そして緑谷は……壊れた指を口で無理やり弾き、轟の氷を壊していく。

 

 もうお互い、体が限界に近い。緑谷は轟に一撃を貰わずとも自分で体を壊し、轟も緑谷から殆どダメージを貰わずとも、”個性”による体温低下。この戦況を動かすのは緑谷か、轟か。

 

「君の境遇も君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない……でも!全力も出さないで一番になって完全否定なんて、ふざけるなって今は思ってる!だから……僕が勝つ!君を超えてっ!」

 

 緑谷が勢いを強め、何度も殴りを入れていく。

 

「君の…………!力じゃないか!」

 

 会場全体に響き渡るような声量で、腹の底から声が出る。

 

 

 …轟は、自分の欲を、左の力だけでヒーローになり、親父を完全否定する、と言っていた。それは正直、本心ではあったのだろう。轟…焦凍の父親、エンデヴァーの行いは、焦凍だけでなく、轟家全体に亀裂を生み出すことだったから。

 

 だが、人間という生き物は、どこかしらで何かの矛盾という()()が生じてしまう。どんな天才でもそうだ。俺が考える矛盾は、自分の中にある、2つの本心がぶつかり合い生まれるものだと考えている。

 

 ”自分はこうしたい、だけどアレもしたい、しなければならない”

 

 そんな2つの本心のどちらが勝ち、どちらが欲として()()()優先されるか。それが…

 

 

 

 

「俺だって___ヒーローに…!」

 

 

 

 

 

 焦凍の矛盾の、殺し方だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『随分派手に暴れましたねぇ』

 

 今日何度目かの保健所。試合の方は、ステージ修復のため一時中止だ。

 

 試合の結果は、轟が炎を解禁したことにより高熱で冷やされた空気の膨張が起き、緑谷が吹き飛ばされ場外KO。観客席からは、称賛の声に混じり戸惑いの声もいくつか見られた。緑谷は何がしたかったのか、あのパワーは何なのか。

 

 当の本人は今、手術前で寝込んでいる。

 

「そこまで言うなら止めてやればよかったじゃないか。あんたの力なら簡単だっただろうに」

 

 当然、緑谷の怪我は尋常じゃなかった。右腕左腕、右手左手、右足、どれも100%を使ったことにより、今この場ですぐ直すことは出来ない状況だ。右手なんかは特に酷く、治したとしてもキレイに元通りにならないほどだった。

 

『それは駄目ですよ。この試合で、何かを見出すことが出来そうだったんで。この二人。やっぱり問題は、どんだけ早く適応できるかですよ』

「一応彼もコツは掴めてきてるんだけどね…」

【さァお前等、ステージ修復も終わりそうだし、そろそろ再開するぞォ!】

『…それでは、俺行ってきますね』

 

 次の試合は、俺対飯田。

 

「紅月少年も頑張ってくれたまえ。きっと君の試合も、緑谷少年は見たがるだろうしね」

『分かりました。俺も轟と戦いたいんで、期待に答えてみせますよ。…あと、緑谷にこう伝えといてください。”よくやった”、って』

 

 

                      ●

 

 

【さぁて色々あったが再開だ!道化の悪魔と真面目なメガネ!紅月魁雅対飯田天哉!】

 

 お互い異名にツッコみたいのを我慢して、上鳴の時とは違い、喋らずに視線を向ける。

 

 飯田の”個性”は速すぎる。一瞬でも気を抜いたら、騎馬戦の時見せてたレシプロバーストで翻弄されて終わりだ。だから多分だが、自分から速攻を仕掛けに行くのは得策ではないだろう。俺があいつの速度に合わせるのは、ほぼ不可能と言っても過言じゃないし。

 

 なら、飯田の動きを予測して攻撃を仕掛けるのはどうか。うーーーーん微妙。

 

 これは、飯田の動きを読むのが簡単ではないが故に、確実性に欠ける。一回でも読み間違えて隙を晒せば、蹴りなり掴みなり何らかの一撃は入ってしまう。そうなると、いよいよどうなるか分からなくなる。

 

 

 速攻は悪手、隙打ちも悪手、さてどうするか。

 

 

【レディィィィィィ____START!】

『やっぱり初手かよ…』

 

 最初からレシプロを仕掛けてくる飯田。だが、これはある程度想定内。避けることは容易い。

 

 

 …それに、これでやることは決まった。後は実行に移すのみ。

 

 

『よっと』

「…何!?」

『少し映えない絵面だが…我慢してくれよ?』

 

 飯田のレシプロから繰り広げられる蹴りを、全て見てから、そして見ないで避ける。

 

 信じられるのは、己の反射神経と感覚のみ。だから、その2つを最大限まで引き出せ。

 ()()()の言っていた感覚を今、ここで。

 

「くっ、何故当たらないッ…!」

『はい、焦らない焦らない。そろそろ限界でしょ?』

 

 飯田の足のマフラーから黒い煙が立ち上る。やはりそうだ。これほどのスピード、流石に制限時間があるようだ。そう考えながらも、ひょいひょいっと避けていく。行動と同時に思考を回すことは、自分の得意技だ。

 

 そしてやがて飯田のマフラーからは勢いがなくなり、プスプスと音を立ててエンストを起こした。

 

「時間が…!」

『…よし、10秒だ。悪かったな、つまらない攻略で』

「…まだだ、まだ終わって『じゃ終わらせる!』ぐあッ!?」

【飯田の動きが速すぎて実況できなかったが、なんと紅月、その動きさえ全て避けきったァ!そしてそのまま距離を詰めながらの回し蹴りでまたもや1発KO!上鳴の時もそうだったが、この悪魔は喋る暇すら与えない!】

 

 ”問題児の世界(アブノーマル・ワールド)”鈴木入間得意技術・圧倒的危機回避能力。

 

 この能力は、その名の通り、ありとあらゆる危機を避けれるもの。自分が危ない、痛そうと思った攻撃は、見てからも、無意識的にも避けることが容易くなる。ステータスで言えば、防御力無限、攻撃力0。うちの主人の自慢できることの一つだ。

 

 だが、攻撃力0という通り、発動中には自分から攻撃をすることが出来ない。出来たとしても、ダメージは全く入らない。

 

 それ故にこの能力は、切り替えが難しいのだ。

 

 素の自分のステータスが防御50攻撃50だとすると、防御に50プラスして攻撃に-50することになる。そのプラマイの調整というのが難しく、戦闘中に使うとなると、そちらに意識を持っていかれることとなる。

 

 だから、試合が始まる前だったり、飯田のマフラーがエンストしたときのような隙がある状態じゃないと使えない。ただ単に相手が攻撃してるときだけ発動すればいい、といった単純な能力ではないのだ。

 

 入間はこれが日常だからか切り替えとかとっくに慣れているが。まじ、敵わねぇよアイツには。

 

 …ってか、なんで入間は悪魔じゃないのに、入間の特徴を使えるんだろうね?

 

『立てるか?』

「あぁ、ありがとう……全て俺の攻撃を避けれたのは、またいつもの能力なのか?」

『うん。詳細は言わないけど、俺の主人の誇らしい努力だよ』

「…そうか」

 

 その一言が原因だったのだろうか、俺が手を差し伸べた時の飯田の顔は少し曇っていた。ただ未練が残っている、そんな心情では無いのだろう。

 

『控室まで、一緒に行っていいか?』

「?別に構わないぞ」

『ありがと』

 

 実際はお互い控室は反対だが、例のごとく気になっちゃった。

 

 

 

                      ●

 

 

 

 飯田天哉。うちのクラスの学級委員長で、リーダーシップに優れていると思われる。特にこれといった関わりは無いが、緑谷と一緒にいることが多かったため、なんだかんだ同じ空間にいることはよくあった。

 

 実力は、まぁまずまずと言ったところだろう。エンジンによる地上特化性能は魅力的だが、まだ少し扱い慣れていないように見える。

 

 そして、これとは別に、一つ憶測だが…

 

『なぁ、飯田』

「なんだ?」

『お前ってさ……インゲニウムの、家族だったりする?』

 

 俺も段々と、この世界に適応してきたかな?




ほぼ原作と動き変わらなくてごめんなせぇ。轟対緑谷のところで力入れすぎて意外と時間かかった
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