「…えっと、紅月少年?君はいつから…」
『最初から』
「あぁ…(絶望)」
どうも、真面目な話に水を指せるぐらいにはメンタルは強い方、紅月魁雅です。
現在、真面目な雰囲気に水を指して少し気まずくなってる感じっすね。保健室には寝てる緑頭、さっき絶望されたよくわからん細い人、そんでおばさん。イロモノが集まっている状況だ。
『申し訳ございません、最初は
「…興味が湧く程度で聞くような話じゃなかっただろうに、悪い性格してるね…」
『よく言われます、私は自分の欲が第一ですので。…そして、話を聞かせていただいた感じ、そこにいらっしゃる細い方がオールマイトという解釈になりそうなのですが…?』
「…そうだと言ったら?」
細い人は、真剣な顔つきでこちらに問いかける。いや、そんな真顔で言われたって…
『さようなこと、私めにとりましては些末なことでございます。あなたはその見た目でもオールマイト、その事実さえ、私めが正しく理解しておれば、何ら差し支えございません』
「!…そうか」
…あれやっべ、なんか地雷踏んだ?反応が少しおかしかったんだけど…
やっぱ人間とのコミュニケーションに慣れていかないとダメか…
『…それと、このような辛気臭い話は私め、誠に勝手ながらあまり好きではありません。早くさっきの話題に戻りませんか?』
「戻すとは言ってもね…あれはあんたが入っていいような領域の内容じゃないんだよ。ほら、平和の象徴からも何か言ってやったらどうだい」
「…紅月少年、君がさっき言っていた、力になる…というのは、本当かい?」
『さようで』
「ちょっとあんた!正気かい!?」
後ろのおばさんが、オールマイトの行動によほど予想外だったのか、大声を上げる。
話を外から聞いてた感じ、この話は他人に打ち明けてはいけないような話だったし、まぁ当然っちゃぁ当然だな。
「私だって、考えないで言っているわけではありません。ですが、今の私だけでは、私の甘さ、管理能力の低さ故に、彼の心にストッパーを掛けてやることが出来ないのです」
「…それはそうだけど、あんたはその子にそんなに期待を寄せているのかい?」
「はい。彼は先程言っていたように人間の面倒見が良く、仲間思いで、相手への着眼点もいい」
…どこの情報からそんなもんがポンポンポンポン出てくるかねぇ。
まぁ思い当たる節は2つほどあるが。
「それに何より彼は、緑谷少年と同い年だ。きっと、私よりも気軽に接することが出来て、相談相手にもなってくれる」
『それほど高きハードルを設けられては、むしろ私め、困惑してしまいます…しかし自ら申し上げるのもはばかられますが私め、かなりの自信を抱いております。これでも前は、何人もの個性豊かな師匠から様々なことを教えてもらっていました。誰かに何かを教える、支えるなどは、こう見えて結構出来る方だと』
いやーそう思い返すと、前はまーじで大変だった。
収穫祭前に師匠が出来るって聞いて少しワクワクしてたら、まさかのクラスメイト全員の師匠と特訓することになるなんて。
そのお陰で色々な技が出来たからマイナスってわけじゃないけど…まぁ死ぬかと思ったわな。
「どうでしょうかリカバリーガール、彼ならきっと、緑谷少年を支えることが出来ると思います」
あぁなんだあのおばさんリカバリーガールって言うのか
『まぁそもそも?ここまで話を理解してしまったのなら、きっと身元に置いといたほうが安全だと思いますけどね〜?にやにや』
「…最初からそれを言えばよかったのに、泳がしたね…ホントに悪い性格してるね…」
『よく言われます』
「…それじゃあ改めて、君に問おう。私達に、力を貸してくれるか?」
『えぇ、勿論。この俺、紅月魁雅が真心持って育てるのをお手伝いいたしましょう』
別に、SDの派遣先を変えるわけじゃないからな!
もしこの光景をサリバン様が見てたとしても、まぁ大丈夫だろ!
「ん…あれ、オールマイト……と紅月君!?えっちょ、どういうことですか!?」
『おぉ起きた。長く寝過ぎなんだよお前』
「なっなんで紅月君がこの場に!?あのオールマイト!これどういうあでっ!」
『落ち着け』
慌てる緑髪こと緑谷出久に、おでこへデコピンを決めてやったぜ。
なんで人間はデコピンをするとすぐ落ち着くのだろうか。
「うぅ…普通に痛い…」
『話はオールマイトから聞いたぞ、お前があの人の後継者だってな』
「え”ッ!?どうしてそこまで…」
そんで、緑谷に色々かくかくしかじか教えて…
『…これからお前は、俺が守ってやるよ。未来の平和の象徴がこんなところでくたばってもらっちゃ困るもんでな』
「未来の平和の象徴だなんて、そんな…」
『調子に乗るな』
「えぇ!?」
まぁ、面白そうだからそばで見ておきたいってのが本心だけど
「…やはり、彼に頼んだのは正解でしたね」
「それは、これから分かることさ。あんたも手を抜かないようにね」
「勿論です」
●
『おーおつかれソロモン』
「お前…マジでふざけんなよ…」
『意外と疲れてんね。やっぱ若者ってすげぇや』
緑谷達との話も終わり、明日から頑張ろう…ってなってから保健室を去り、教室に戻ると、俺が囮にしていたソロモンがぐたってしてた。
ソロモンにはあいつらの質問に答えてやっていただけなんだが…
そんな疲れるほど質問攻めされたのか?こいつは。
「あいつら、俺の話せるようなこと全部聞いてきやがった…」
『話せるようなこと?』
「お前が魔界にいた頃のこととか、
俺の個性についてか。
…今日の戦闘訓練で手の内を明かしたくないって言ったばっかなんだが…
ま、別にクラスメイトだしいいだろ。
『よし、今日はもう帰るぞ〜』
「…妙に上機嫌だな。何があった?」
『別に〜?まぁ一つあるとすれば、魔界で味わったあの地獄の訓練を、分かりあえる仲間が出来たってところかな〜』
「本気か?」
『うそうそ冗談、流石にあそこまではしねぇよ』
そう語り合いながらも、俺は相澤先生の家へ帰り、長かった一日を終えた
●
〜次の日〜
学級委員?なんだそりゃ興味ねぇ。
とりあえず適当に緑谷に入れて決定したけど、結局飯田天哉という奴に変わってしまった。まぁぶっちゃけどうでもいいけど。他人を引率する力もヒーローにとって大事だと相澤先生も言ってたけど、だからってあそこまで必死にはならん気がしますよ僕は。
午前中の普通授業も、
そんなこんなで、午後のヒーロー基礎学の時間がやってきた。
そして今日の内容は、人命救助。前回の戦闘訓練とは全くの真逆だ。
とりあえずそのためには特別な施設への移動が必要らしいから、皆でバスに乗ることになった。
飯田の先導もなんやかんや無駄に終わりつつ、全員がバスへと乗車し、走り出した。
「私、思ったこと何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あっハイ!?蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
バスの中で、緑谷が蛙吹梅雨という女子に話しかけられる。
…嫌な予感が。
「あなたの個性オールマイトに似てる」
「え!?そそそそそうかな!?いやでも僕は、その〜…」
助けて…!と目で俺に訴えかける緑谷をフルシカト。そんぐらい自分でなんとかしなさいな。
「待てよ梅雨ちゃんオールマイトは怪我しねぇぜ。似て非なるあれだ」
良かったな緑谷、切島に助けられたな。
しかし、他人から見ると緑谷の個性はオールマイトの下位互換と見られているのか。
「俺の”硬化”は対人じゃ強ぇけど、いかんせん地味なんだよなー」
「そんなことないよ!プロでも十分通用するカッコいい個性だと思うよ!」
「派手とかで言えば、爆豪とか轟がやっぱ上がるけど…意外と紅月とかも派手なんじゃねぇか?」
『ん?何の話?』
あ、何も話聞いてなかった。
なんか派手とか爆豪とか轟とか言ってたけど…なんで俺が選ばれてんだ?その中に。
切島「ソロモンから聞いたぜ!お前の個性、マジですげぇよな!もうほぼ何でも出来るだろあんなの!」
『そうだろうそうだろう、これは俺の仲間の努力の結晶みたいなもんだ』
「下手すりゃ爆豪よりも強いんじゃねぇのか?」
「んだとゴラァ!」
『え、何?』
びっくりした凄い大声で怒るじゃん。アリスの口がありえないほど悪くなったみたいな。
それに皆なんもびっくりしてないし、これがデフォなんかな?
「どうなんだろうな、火力はワンチャン爆豪のほうが高そうだけど、手数は個性の数的に紅月のほうが強いように思えるよな」
「手数も火力も俺のほうが上だわ!舐めんじゃねぇ!」
『いやいや、俺を舐めてもらっちゃあ困るぜ?なんせ俺は…』
「お前等そろそろいい加減にしろよ…」
「「「はいッ!」」」
いや怖。消太さんもこのうるさい雰囲気に限界が来ていたか。
だがしかし、せっかく俺の秘密を一個暴露しようと思ったのに…まぁ、またいつかだなそれは。
●
「水難事故、土砂災害、家事etc…あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…」
”
(((USJだった!)))
『USJやんけ』
おっと思わず口に出てしまった。
今はプロヒーロー13号さんの説明を皆で聞いている途中。これあれだな、社会科見学みたいな気分だ。13号さんの話では、前の戦闘訓練で把握した通り、自分たちの個性は簡単に人を殺すことが出来る、そして今回は、その個性を人助けのために使ってみようとのことだ。
流石プロヒーローと言ったところか、言葉の重みが断然違う。
「…以上です!ご清聴ありがとうございました!」
…なんか、一気に雰囲気が変わったな。
「そんじゃあ、まずは…」
『消太さん』
…そんで、このお気楽な時間も終わりか。
「魁雅?どうかしたか…」
『皆を逃がして』
「ひとかたまりになって動くな!13号!生徒を守れ!」
「何だありゃ、入試ン時みたいにもう始まってんぞパターン?」
「動くな!あれは、ヴィランだ!」
「…おかしいな、ここにオールマイトがいるはずなんじゃないのか?
「えぇ、先日いただいた教師側のカリキュラムでは」
「んだよこんなに大衆を引き連れてきたのに、オールマイト…平和の象徴がいないななんて…」
「子どもを殺せば来るのかな?」
…昔、とある常識知らずの人間から聞いた、危険を察知する力
数々の修羅場を経験したからか、嫌な気配を感じることを体が自然に覚えてしまった。
忘れてはならない、脅威とは常に………隣りにあるものだと。
『んで、その逆もまた然りってか?』
「…は?」
『リ・ベーラ!』
一人の男の声と同時に、地面にヒビが入る。まるで、ドラゴンが地面に激突したかのように。
『いやぁ、つくづくアイツには驚かされる!まさかこんな世界でもあんなのが通用するとは』
その男は何事もないかのように喋り始める。仮にも敵は眼の前にいるというのに。
「…何だお前、お前が資料を送ってきたガキか?」
『誰お前、変なやつ。手なんかいっぱいつけちゃって。多様性の時代ってよく言うけど、それは無茶があるぜ流石に』
「…だからガキは嫌いなんだよ、話が通じねぇ」
『大丈夫大丈夫、頭はいいほうだかr』
「殺れ」
その男の一言と共に、周りの
たくさんの
『だが、そんな心配も不要だった。そういう展開、嫌いじゃない』
「…は?」
『いや、むしろ好きに入るか…?心臓破りの時からたくさん人に見られてたわけだし…』
一瞬だった。煙が舞ったと思い、その煙が消えたと思った頃には、
『フルフル軍曹直伝 ”
「こいつら…やっぱ寄せ集めじゃ役に立たねぇじゃねぇかよ…」
『あぁ安心しろ、別にこいつらは弱くないよ。多分……俺が強いだけだから』
…突如眼の前に現れた、強大な悪。
誰でも簡単に殺してしまいそうな殺気、声。
そんな恐怖に抗う手段はなにか。鍛える?助けを求める?否、そんなものではない。
彼…紅月魁雅は、とある先輩のこの教えを、手段として挙げるだろう。
”恐ろしい時ほど前に出ろ”
『なぁなぁ、お前等はさ…どれだけ、強欲なんだ?』
恐怖を興奮に変えるのです、と。
〜用語解説のコーナー〜
”師匠”:前々から出ていたこの師匠という言葉は、彼らが位階昇級のために先生が雇った特別講師の方です。普通はそれぞれクラスメイト二人組に一人の師匠なのですが、魁雅君は可哀想なことに一人で全員の師匠から教えを貰っていました。その結果、地獄を見ることに。
”アロケル”:フルネームはアロケル・シュナイダー。彼は百獣の王と言われるほど座学の面で優秀で、更に師匠はずる賢い頭脳を持つ悪魔で、勉強面、そしてせこい面でもものすごく優秀になった。そして彼の問題児の世界による効果は、勉強が好きになると言ったもの。ちなみに彼の頭がいいのは、家系能力ではない。
”フルフル軍曹”:先ほど紹介したアロケルの師匠。女遊びが大好きで作中ではなかなかなクズキャラみたいな感じで紹介されてる場面もあるが、実際はアロケルがともう一人の生徒が優秀になるために色々教えてくれてる。
”リ・ベーラ”:魔界に存在する魔術の一つ。物を投げる際にその物に魔力を込めながら詠唱することによって、ものすごいスピードで投げることが出来る。魁雅君は今回、自分の手にリ・ベーラを詠唱していて、殴りをものすごいスピードで行っていた。
”重力操作”:そのまんま、自分が指定した場所や人の重力を操作する。重くしたり、向きを変えたり、軽くしたりと汎用性の高い魔術。今回魁雅君は敵にかかっている重力を重くさせて、うつ伏せの状態にしていました。
〜裏話〜
・魁雅がヴィランと話しているときに相澤先生が手を出さなかったのは、魁雅はあんな煽ってても油断することは絶対にないという信頼があるのと、ヴィランの前に行くときの顔から『邪魔しないで』という感情を読み取っていたからです。
・2025年8月14日更新/一部セリフの喋り方を変更しました。