彼は悪魔ではなく人間です   作:TKMG_タカムギ

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第五話:押忍!

『うえぇ…再生持ち?気持ち悪いったらありゃしない』

 

 どうも、特に語ることもない者、紅月魁雅です。

 

「お前もそんな腕で、人のこと言えるのか不思議なものだね」

『俺のはカッコいいからいいんだよ』

 

 そう、俺の右腕は機械。手袋をしてた理由も、あまりバレたくはなかったからだ。

 こうなった理由は、魔界での出来事が関係してるんだけど…まぁ今説明するもんではないな

 

 ま、そんなことより問題はこの化け物だ。

 

 明らかに人間じゃないなコイツ。こいつらに改造されたようなものだろう。

 その改造方によっては…当然許されるものではない。

 改造された、造られたと判断するなら…コイツの”個性”は今の再生だけじゃないと思う。

 

「脳無…まさかこんなガキに負けるわけないよな?さっさと殺せ」

重力操作(フラクタル)。…でか〜ら〜の〜?』

 

 魔術を腕に乗せて…重ねるイメージ!

 

『”天穿封迅(てんせんふうじん)”!』

 

 魔術を乗せた右腕に、機械音が響く。

 コシュー、といった音とともに、煙までもが出てくる。

 

 うん、やっぱりいい音だ。先生たちのことを思い出せる。

 …あ、そんなこと言ってる場合じゃ

 

『あっぶね』

 

 俺に対してどでかい拳が振り落とされる。なんと。この技を受け止めるか。

 

 ロビン先生直伝”魔術融合(マギリア)

 

 加速系の魔術と威力増量の魔術を重ねて、更にそっから念を入れて重力操作で軽くしたんだけど…それでも微動だにしない?うへぇ。

 

『…ってことは重さが関係してるわけじゃないのね…』

「こいつの能力はショック吸収さ…ダメージを与えるならゆっくり肉をえぐり取っていくしかないね。させてくれるかは別だが」

『…いいのか?そんなペラペラ喋って』

「喋っても問題ないと思えたんでね」

 

 …なるほど、吸収か。無効化じゃないだけ億分マシだな。

 ずっと殴り続けてりゃいつかはダメージ入りそうだが…こいつのパワー的にジリ貧確定だな。

 

『…なら、別の方法を試そう。”クワルツ・クワルツ”』

 

 進化の魔術で、機械の腕に刃を付ける。

 先ほどみたいに、相手のパワーを利用すれば、多少なりとも傷は与えられるだろう。

 まぁ問題は再生能力なのだが…

 

『オールマイトが来るまでの時間稼ぎ…十分な大役だね』

 

 やるだけやってしまおう。

 

 俺の予想通り、脳無とやらの体はスパスパ斬れている。

 再生能力はもうどうにも出来ないけど、それに時間をかけてるあたり、時間稼ぎとしては十分だろう。

 

「死柄木弔」

「黒霧、13号は殺ったのか?」

 

 おっとなんか密談してるじゃあありませんか。

 あの2人もさっさと叩きに行きたいところだけど…今じゃ脳無の対処で手一杯だ。

 

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして…1名逃げられました」

「…は?…はーーお前、お前がワープゲートじゃなければ粉々にしてたよ…」

 

 …まってなんか結構重要なこと言ってる気がするな。

 よく聞きたいけど…

 

『硬すぎお前。ちょっと苛ついてきたぞ流石に』

 

 それでいて再生持ちとか…マジでモテねぇぞ。

 

「流石に何十人のプロ相手には敵わない…ゲームオーバーだ…今回はゲームオーバーだ…帰ろっか」

 

 …へ?

 あれ、なんかあいつの一言で脳無が下がっていったんだけど…

 これってもしかして…

 

「…けどもその前に」

 

 だよなそうだよな終わるわけねぇよなそんな簡単に!

 

 明らかに感じた。あの手がいっぱいある奴からの、殺気。

 あいつは絶対、人を殺す。そして、その相手は…

 

『蛙吹!逃げろ!』

 

 あいつらだ。

 

 すぐさまあのヤベェヴィランの下に向かう。…だけど

 

『…やばすぎ』

 

 もう一つの脅威が迫ってきているのを、自分は気付けなかった。

 

『うぐッ…』

「紅月君!」

「おいやめろって緑谷!巻き込まれるぞ!」

 

 脳無の手加減なしの強烈な一撃が、自分の腹へと直撃して、その勢いのまま壁に直撃した。

 とっさに防護魔術”グラン”とサブノックの”武器創生”で盾を生成して防いだけど…

 

『ぁ…ぐっ、ごほっ…いってぇなクソが…』

 

 無理、火力高すぎ。血を吐くとかいつぶりだよ。

 ソロモンの魔力を使った魔術と盾を”魔術融合(マギリア)”で二重にしてもこのレベルか。

 

 あと峰田、珍しくお前正解だったぞ。

 

 蛙吹の方は…良かった、大丈夫だ。消太さんが個性を止めてくれてる。

 緑谷も止めようとしてくれてる。俺も早く加勢を…

 

 ドンッ!

 

『…やっと来た』

「私が…来た!」

 

 オールマイトだ。USJの扉ぶっ壊して入ってきたな。

 そんで、顔が笑ってない。相当お怒りのようだ。まぁそりゃそうか。生徒と先生襲われてるし。

 

「待ったよヒーロー、社会のゴミめ」

「あれがオールマイト…!迫力がすげぇ…!」

 

 まだ残っていたヴィランたちが、初めて見るオールマイトに恐怖を覚える。

 流石は平和の象徴、威圧感も半端じゃ…な?

 

「皆入口へ、相澤くんを頼んだ意識がない!」

 

「紅月君!?」

『早すぎ…』

 

 なんと、ヴィランが何体か倒されたと思ったら、俺等がいつの間にかオールマイトに運ばれてるじゃありませんか。

 しかもそのついでに手のヴィランも殴ってるし、バケモンかよ。

 

「入口に戻ったあとの皆の統率は、紅月少年に任せる。13号もやられている、慎重に頼むぞ」

『承知しました、八百万がどこにいるかわからない今、俺がやってみせます』

「オールマイト駄目です!あの脳ミソ(ヴィラン)!僕の腕が折れない程度の力だったけど…びくともしなかった!きっとあいつ…」

「緑谷少年、大丈夫」

『”重力操作(フラクタル)”。とりあえず消太さんは軽くした。俺と梅雨ちゃんが周り見てるからすぐに運ぶぞ』

 

 オールマイトの言葉は、多分信じていい。あのヒーローの実力は本物だ。

 …だが、あの人も勝てるとは言っていない。

 消太さんの腕を小枝を折るかのような力…しかもそれが個性じゃないと来た。

 更にそっからショック吸収+再生持ち…

 

 …アイツは完全にオールマイトを殺すためだけに造られた存在だ。

 

 …と言ってもあの人今バックドロップで爆発起こしてますけどね!ただの化け物VS化け物じゃねぇか。

 あれで弱ってるとかマジで言ってんのか…ってかそうじゃん弱ってるじゃんあの人。

 昔の戦闘による怪我とか継承が原因だったり。緑谷がさっきから焦ってる理由もそれね。

 

 俺と緑谷だけが知ってる秘密、だから皆は勝てると信じて応援している。

 

「…ごめん紅月君、相澤先生担ぐの変わって」

『お前、まさか…』

「オールマイト!!」

 

 だからってお前一人で行くな馬鹿!

 

 …まぁ今回は

 

「どっけ邪魔だデク!」

 

 オトモダチが助けてくれたようで何より。

 

 黒い霧野郎に無計画に突っ込んでいった緑谷だったが、ちょうどワープで飛ばされた爆豪勝己がこの場に戻り、緑谷を助けた形になった。

 そして爆豪率いる轟、切島達も戻ってきた。

 

『梅雨ちゃん、峰田。消太さんを頼んだ。俺は加勢に入る』

「統率はどうするの?」

『うーん、まぁ大丈夫だろ。今はヴィランが全員こっちに集まってる。入口に戻れば、ぶっちゃけただ待ってればいい。もしもの時は、俺がすぐ戻る』

「…分かったわ、無理をしないでね」

『信頼してくれてありがとな』

 

 心配されるよりも、そっちの方が断然嬉しいな、俺的には。

 

『そんで、お前等は無傷でここまで来れたんだな。相当弱かったのか?』

「おそらく寄せ集めだろうからな。…というか、お前その腕…」

『あー気にすんな、これがデフォだから。それよりも今はこっち』

「なぁクソヴィラン!完封された気持ちはどうだぁ!?」

『爆豪それヴィランが言うセリフだから』

 

 まぁともかく、爆豪が霧野郎の弱点…というか仕組みを暴いてくれたおかげで、この先の攻略がかなり楽になった…と言えるだろう。

 少しピンチだったオールマイトも、轟が脳無を凍らせたおかげで見事抜け出すことが出来た。

 しかも俺らの立ち位置は入口の前に立っている状況。有利ポジである。

 

「そんなことよりお前、大丈夫なのか?その血…」

『ん?あぁコレね…っん、よし、これで大丈夫』

 

 先ほど吐血した血のことを切島に指摘されて、とっさに服の袖で拭う。

 

「攻略された上に全員無傷…凄いなぁ最近の子供は…!恥ずかしくなってくるぜヴィラン連合…!」

『お前等あんなやつに耳かすな。ろくなこと言わないぞ』

「脳無、爆発小僧を殺せ。出入り口の奪還だ」

 

 そう命令された脳無は、轟が凍らした部分を自ら崩壊させ、立ち上がってきた。

 そして、掛けた部分は…

 

オールマイト「なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」

『再生能力ですよ。ほんと、どんな技術なんだか』

「危ない!」

 

 ドンッッ!

 

『ッ!?爆豪!』

 

 くっそ追えなかった!

 少しの瞬きの間に、一瞬で間合い詰めてこれるのかよアイツ!

 ターゲットは完全に爆豪だった。オールマイトが庇ってくれたように見えたけど…

 

「ゴホッ…加減を知らんのか」

『間に合うのかよソレ…』

 

 もうもはや、安心とドン引きがいい感じに釣り合って新しい感情が生まれてきそう。

 あとなんか、あの脳無ってやつ、変な気?っていうのかな、なんだか見慣れてるような気配が…

 

(同感だ)

(あれソロモン、どったの?)

 

 ソロモンが唐突に脳に直接語りかけてくる。便利だなソレ。

 

(そのままの意味だ。俺も、アイツから妙に見慣れてる…というか、もはや懐かしいと言える気配を感じるぞ)

(へぇ、お前も感じるんだ。…なんだか嫌な予感がするねぇ)

 

「おい紅月、集中しろ」

『あぁごめん、考え事』

「…今は、3対6だ」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!」

「とんでもねぇ奴らだが…俺等でオールマイトをサポートすれば撃退できる…!」

「駄目だ!逃げなさい」

 

 今すぐ助けようとする俺等をオールマイトは大声で止める。

 その行動に、俺も含めたその場にいる全員が困惑した。

 

「…さっきのは俺のサポートが無ければまずかったでしょう」

『今回は轟に賛成です。貴方がもし勝ったとしても、生きて帰れる保証はありますか?』

「それはそれだ!大丈夫さプロの本気を見ていなさい!」

 

 …ほんとに大丈夫かなぁ。

 

「それじゃ…クリアして帰ろう!」

 

 手のヴィランが、俺等生徒を狩ろうと距離を詰めてくる。

 勝てるかなぁ

 

「おい来てるやるっきゃねぇって!」

『…覚悟決めろよ』

 

 ドッ!!

 

『風圧ッ…?』

「ショック吸収って…さっき自分で言ったじゃないか」

 

 死柄木が近づいてきたと思ったら、今度はオールマイトが行動を起こした。

 それは、物理攻撃が基本効かない脳無に対し真正面から殴ることだった。

 しかもただ殴るだけではなく、お互い一歩も譲らない速度で殴り合っていく。

 

「無効ではなく吸収ならば!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えるなら!更に上からねじ伏せよう!」

 

 血を吐きながらも、殴り合っている…!

 

 やっぱり無茶してるんだあの人。

 

「ヒーローとは常に!ピンチをぶち壊していくもの!」

 

 …なるほどね。

 

「ヴィランよこんな言葉を知ってるか!?更に向こうへ、”Plus Ultra”!

 

 その掛け声と共に、俺等が目にした光景は…

 

 脳無がこの場からいなくなり、天井に穴が空いていた。流石プロと言ったところか。

 

 …で、予想通り()()()()が起きるな、こりゃ。ここまできたら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の見せ場だ

 

『ウァラク・クララ”トイトイ”』

 

 …すまない、使わせてもらうね、クララ。

 

 自身のポケットを叩き、一つの飴玉を取り出す。

 そして、その飴玉を口の中へと放り込む

 

『バラム直伝”リミッター・零”』

 

 …美味だ。

 

 

 

                     ●

 

 

 

「衰えた…?嘘だろ完全に気圧されたよ、よくも俺の脳無を…チートがぁ…!」

「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが…出来るものならしてみろよ!」

 

 …とりあえずそれっぽいことを言ったが、もう一歩も動けん!脳無とやらが強すぎた!

 あと少しでも動こうものなら、トゥルーフォームに戻ってしまう!

 

切島「お、おい!紅月がいねぇぞ!?」

轟「あいつ、いつの間に…」

 

 何!?紅月少年が!?

 

 彼は勝手な行動をしないと思っていたが…いや、彼にも考えがあるはずだ!信じて待つ!

 あと少しで増援が来る!だから…少しでも迷え!

 

「…さぁ!どうした」

 

 ドォン!!!

 

「…何!?」

「あ、そうだった」

 

 何故…何故脳無が戻ってきた!ショック吸収でも耐えきれないほど殴ったはずだ!

 しかも穴を開けた天井から飛んで戻ってくるとは…体力が底知れない!

 

「いやぁ、あいつと契約しといて正解だったよ。一人使ったかいがあった」

「…お前達の後ろには、何が関わっている!」

 

 時間を!時間を稼ぐんだ!

 

「…教えないね。脳無」

 

 …チクショウ!誰か…早く…早く!もうこの際…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…アンドロマリウス・ダンタリオン・セーレ』

 

 

 

 …突然、声が聞こえた。聞き覚えのある。

 だが、声の主の場所は?何も無い空気から声が聞こえる。

 

 …しかも、体が動かない。

 

 しかしそれは、私だけではないようだ。

 脳無、ヴィラン、そして緑谷少年たち。

 

 

『デカラビア・ベリアル・アムドゥスキアス』

 

 また声が聞こえる。段々と、近づいてきている?

 

 

『ウァラク・アスモデウス……ナベリウス』

 

 そして、その声はいつしか、自分の眼の前で聞こえてきた。

 

『破壊の悪魔、ソロモンに使役されし72の悪魔達よ、今この場にて、己の力の開放を許可する』

 

『そして、その力は我らの物だ。我に貴様らの力を、すべて預けろ。我が、欲のために』

 

 …すると、眼の前の空間が歪み始め、()()()()()()()()が徐々に浮き出てきた。

 

『…我がこの力を使い、この者たちを導く光となろう』

 

 その言葉と共に、それは全ての姿を出現させた。

 そこに、現れたのは…

 

 

 

 

天穿封迅・魔獄之烈(てんせんふうじん まごくのれつ)!』

 

 

 

 

 紫色の髪をした、見たこともないような少年だった。

 

 

 

 …ドォォォォォォン!!

 

 

「…は?」

 

 一瞬だった。

 

 紫髪の少年が一つの拳を脳無の腹にぶち込んだ瞬間、世界が崩れたように感じた。

 そしてそのまま脳無を目も届かぬ場所まで吹き飛ばした一撃は、私の100%を軽く超えていた。

 ヴィラン、そして私がその場で驚きのあまり立ち尽くしている中、彼は何事もなかったかのようにその場に立っている。

 

「…君は、誰だ?」

 

 つい声に出てしまった。ただ心のなかで思っていただけなのに。

 だがしかし、私がそう聞いた瞬間、彼の髪の毛は色を失っていき、白色になってきた。

 その姿は、まるで…

 

『…押忍!』

 

 ただの、紅月少年だった。

 

 




〜用語解説のコーナー〜

・ロビン先生:魔界で主に使い魔授業の担当をしている新人の先生。基本的にバカで明るくて元気で作者の最推し。特技は弓で、家系能力のお陰で当たるまで矢が消えないチート能力を持っている。

・クワルツ・クワルツ:対象の物体を進化させる魔術。今回だと自分の機械の手を刃物に変えています。鋼の錬金術師を思い浮かべれば分かりやすいです。

・防護魔法”グラン”:そのままで、自分の周りに防護壁を作り防御する魔術。

・サブノック”武器創生”:フルネームは”サブノック・サブロ”。アブノーマルクラスのクラスメイトの一人で、乱暴な性格だが友達思いですごく体がでかい。少しジャ◯アンに似てる感じかも。武器創生はサブノックの家系能力で、自分が噛んだ物質と同じ素材の武器や盾を作り出すことが出来る。

・トイトイ:自分が見たことあるものをなんでも出すことが出来る、クララの家系能力。
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