『誰と言われましても、俺は俺、紅月魁雅ですよ』
どうも、身分証明書があればいいかな?紅月魁雅です。
あてか待ってそんなこと言ってる場合じゃ…
「だって、君の髪が今『ふぇえ…』少年!?」
その場に体が脱力しながら倒れ込んでしまった。
…ダーメだ体が全く動かん。これは前から変わらないか…
この世界に来てから色々変わったと思ったが…そんなこたぁなかった。
『むぅ、悔しい…まぁでも、脳無は倒しました。あとはあなたに…』
「倒しましたじゃねぇよふざけやがって…お前、どんな手を使いやがった」
『そういうのは俺が起き上がってから聞いてくれない?疲れてるんだしさ…』
「クソガキが…!」
「死柄木弔!落ち着いてください。確かに脳無はやられましたが、脳無が与えたダメージは確実に残っている」
うわ、ここで冷静になるか。
恐らく飯田が今この場にいないということは、あいつがプロヒーローを呼びに行っているってこと。あと少しでも怒って判断を鈍らせてくれれば、希望はあると思うのに。もうオールマイトは動けないだろうし、脳無倒したとはいえ結構ピンチだぞ。
「どうやら子供たちは棒立ちの様子…あと数分もしない間に増援が来てしまうでしょう。死柄木と私で連携すれば、まだヤれるチャンスはあるかと」
「…うん、そうだよそうだよな…ラスボスが目の前にいるんだ、やるっきゃないぜ…」
…これは、もしかして…
「何より…脳無の仇だ」
来るんかい!
ってかこれオールマイトだけじゃなくて俺まで殺す気だな。
…ま、いいか。今回は少し…
「2人から、離れろ」
頼らせてもらおうかな。
俺とオールマイトが霧に包まれる寸前に、緑谷が飛び込んできた。
自身の右足を折るほどの力を使い、一瞬の間で。
「二度目はありませんよ!」
死柄木弔とやらが手をワープゲートの中に突っ込み、緑谷へと向けた。
そのまま緑谷の顔を鷲掴みする未来が見えてしまったが、次の瞬間、
「!?」
『…お?』
死柄木の手に、一つの銃弾が直撃した。
その銃弾が飛んできた方向を見てみる。そしたら、大量のプロヒーロー、そしてそれらを率いる飯田が入口に立っていた。
「1-Aクラス委員長飯田天哉!ただいま戻りました!!」
「あーあ来ちゃったなゲームオーバーだ…出直そう黒霧……ぐっ!?」
ワープゲートが死柄木を包もうとすると、させんとばかりに大量の銃弾が降りかかる。
そして端にいた13号さんが2人をブラックホールで吸い込もうとする。
「…今回は失敗だったけど、次は殺すぞ、オールマイト」
そんな後味の悪い言葉を残し、2人は消えていった。
…あー、早く帰りてぇ。
●
「…今回は事情が事情なだけに、小言も言えないね…」
『ごもっともですね』
ここは雄英の保健室、この場にはリカバリーガール、オールマイト、緑谷のメンツに合わせ、俺がいる状況。秘密を知っているのはこの3人だから、別に不思議ではない。
リカバリーガールも、今回の事件の話を聞き、攻めることも出来ないそう。
「多分だが…私また活動限界が早まったかもな…一時間ぐらいはまだ欲しいが…」
「オールマイト…」
緑谷が申し訳無さそうにオールマイトを見つめる
「まー仕方ないさ!こういうこともある!」
『そうですね。それに、今はこの状況を喜べよ。今回だって”豆腐先生”のお陰で見つからなかったんだし。ほーら笑顔笑顔』
「セメントス先生だよ紅月君…あと分かったからほっぺを引っ張らないで…地味に痛い…」
笑顔にさせるためにほっぺを引っ張っていた手をどける。
一応俺の意図は分かっていたみたいで、ありがとうと笑顔で礼を言われた。
うむ、それで良し。
「失礼します」
『お?』
「…オールマイト、久しぶり!」
「塚内君!君もこっちに来ていたのか!」
扉から突然入ってきた警察官に、オールマイトは当然かのように挨拶をする。
何故だ?バレてはいけないのではなかったのではないか?
「オールマイト!?え…いいんですか?姿が…」
ごもっともだ緑谷。
「あぁ大丈夫さ!何故って?彼は最も仲良しな警察、塚内直正君だからさ!」
「はっはっはっ、何だその紹介。…それで、魁雅君だっけ?」
『はい。魔界という環境でサリバン様と入間様のSD、人間界で言う執事をさせてもらっています、紅月魁雅と申します』
その場でバッと立ち上がり、いつもの挨拶をする。
「本当に噂通りの存在なんだね。…いきなりだけど、君が、あの脳無を倒したのかい?」
『どうでしょうか、あの状況で私が倒したと申し上げていいものか、少々理解に苦しみます』
あの場面では、オールマイトと消太さん、それに緑谷が時間を稼いでくれたのもあっての勝利だ。俺が倒したと言っていいのかはよくわからない。
「本当に、ありがとう。オールマイトを守ってくれて。正直、とってもびっくりしてるよ」
『勿体なき御言葉。それに感謝の御言葉でしたら、緑谷にもかけてやってください』
「そうだね、緑谷君にもとても感謝してるよ」
大人は対応が難しいな、こればかりは魔界と変わらんか…
「そうだオールマイト、早速で悪いがヴィランについて詳しく…」
「待った待ってくれそれより…」
『クラスの皆はどうなりましたか?消太さ…イレイザーヘッド、13号さんは?』
まずい、つい口走ってしまった。体が動かないまますぐに保健室に連れて行かれたから、皆の状況を知らない。
「…生徒はそこの彼以外で軽傷数名、教師2人はとりあえず命に別状は無しだ」
ほっ、良かった…
消太さんが一番危なかったからな…安心安心。
「3人のヒーローが身を挺してなければ、生徒らも無事じゃあいられらなかっただろうな」
「そうか…しかし一つ違うぜ塚内君。生徒らも戦い、身を挺した!ヴィランも馬鹿なことをした!このクラスは強いヒーローになるぞ!」
そう言うとオールマイトは、緑谷に向けて親指を立てる。
●
オールマイトは俺の話も頼りにしながら、
塚内さんにヴィランの情報をすべて話した。
「…なるほど。それじゃあ俺は先に戻らせてもらうよ。安静にな」
「あぁ、ありがとうな塚内くん」
「緑谷君と紅月君も、これから期待させてもらうよ」
そう言い残して、塚内さんはこの場を離れていった。
「…そういえば、ずっと紅月少年に聞きたかったことがあったのだが…」
『気になることがあればいくらでも』
「あの脳無を吹き飛ばした一撃…あれは一体何だ?私の100%を軽く超えていた気がしたのだが…」
「あ、それ僕も気になってました。髪の毛が紫色になってたし…」
『その件についてですか。やや長く、幾分込み入ったお話となりますが…まぁいいでしょう』
その場で立っていた姿勢をやめ、その場にある椅子に座る
●
…ま、案の定長かったんで要約。
まず髪が紫になったあれは、バラム師匠直伝の“リミッター・零”。ソロモンの魔力を最大限引き出せる万能飴玉だ。それを俺の魔力と合わせれば、まぁ最強ってわけだな。
ただ、魔力に耐えるために体の限界を強制的に上げてるから負担はエグい。だからその場で倒れた。髪の色が紫になるのは、抑えきれなかった魔力がちょっと漏れてるせい。
とりあえず、ここまでがリミッター・零の解説。
もう一つは、あのオールマイトすらを超えた、あの一撃。
あれは、師匠じゃなくて俺とソロモンだけで作った完全オリジナル技、“天穿封迅・魔獄之烈”。
72の悪魔の力を借りてソロモンの魔力をさらに底上げし、拳に全部まとめてぶっ放す“天穿封迅”の強化版だ。
こればっかりは威力がヤバすぎて“リミッター・零”の時しか使えないし、打ったあとはソロモンの魔力が一時的に体から消えるってデメリットもある。それでも十分すぎる威力があるから、奥の手として使ってるわけだ。
●
『…このような感じですね』
「…なんと言うか、普通に強いね…」
『まぁな。もっと他にもあるけど、これ以上語ると日が暮れそうだしな』
「まだあるんだ…」
…大丈夫?もはや感心と言うよりかはドン引きの域に入ってない?
それほど人間にとって悪魔の技術はレベチなもんなんだな。
『まずは、兎角そのような些末事よりも、自分自身の怪我を治すことをおすすめしますよ。緑谷もな。あんま怪我して親を心配させんなよ?』
そう言い残し、また別の病室へと向かっていった。
「…あ、そうだ」
「どうした?緑谷少年」
「
●
『恐れ入ります、只今、消太様とお話しすることは叶いますでしょうか?』
消太さんの病室の前に立つ看護師さんに聞いてみる。
「ごめんなさいね、病室に入ることなら出来るけど、気を失ってて話すことは難しいわね…」
えーまじか。消太さん、今日は病院泊まりだろうから、色々話そうかと思ったのにな…
しょうがない、置き手紙だけでもしておくか…
『分かりました、それじゃあ、中には入らせてもらいますね−』
「えぇ、それだけなら大丈夫よ」
ガララッ
『あらら…たくさん包帯巻いちゃって…』
ほんと、よく生きてたよね消太さん。
完全にミイラ状態になってるのに、それでも息をしている。
『”今日は本当にお疲れ様でした、お見舞いは明日行くので、お大事に。魁雅より”…っと、これでいいか』
持ってきていた付箋紙に伝えたいことを書き、机に貼り付けていおく。
明日は…リンゴでも買って持っていってあげよう。久々の重労働だったろうし。
ま、今日はもう帰りますか…
●
『今日の夜ご飯…消太さんいないし、軽いのでいいか』
冷蔵庫を開けて、何の食材があったかを確認する。
ここは、消太さんの家。
前にも説明した通り、俺はこの世界に来てからこの家で匿ってもらっている。
やっぱり消太さんは優しい。見知らぬ俺をすぐ保護してくれるんだから。
『あ、もやしある』
料理は基本、俺が作っている。
あの人そういうの得意じゃないから、俺が変わりに。
料理をしようと器具に手を伸ばすと、一つの思い出が頭の中で鮮明に蘇る。
『…ここまで先輩の教えが役に立った日、いつぶりだろなぁ…』
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約二年前…
「いいですかカイガ、サリバン家のSDとして必要なこと、まず一つは料理です」
『オペラさん、ホントにやんないといけないんですか…?』
「オペラ
『めんどくさ…』
…なんで俺は執事服なんか着てるんだ。
どうも、他人に頼られるよりかは頼りたい、紅月魁雅です。
バビルスから帰ってきて、入間の護衛やら何やらで疲れたから寝ようと思ったらこれだよ。別に俺はSDやりたいなんて一言も言ってないのに、オペラさん…先輩が色々教えようとウキウキしてる。まぁサリバン様の家で匿ってもらってるわけだし、それ相応の返しをしないといけないし、しょうがないか…
「あなた、料理の経験などは?」
『ないですね、全く』
「なるほど、これはイチから叩き込んだほうが良さそうですね。流石に入間様ほどではないでしょうが」
『あいつそんな下手なんですか?』
「下手…というか、どのような調理法なのかは私も知りません。一応、入間様がホットミルクを作ろうとすると部屋が爆発する、とでも伝えておきましょうか」
『爆発…!?』
…これは、俺が引き受けないとなんかまずいことになりそうだ。
オペラさ…先輩によれば、俺が料理を学べば、同じ人間として入間に料理を教えやすい、
という考えもあるらしい。
『…と言っても、魔界の料理って滅茶苦茶な見た目だったじゃないですか。あれを美味しくするとか無理があると思われる』
「大丈夫です、料理とは正確な手順、丁寧な作業、それと気持ちです。あなたが美味しいものを作りたい、誰かにあげたいと思えれば、きっと美味しいものが出来上がります」
『…苦手かも』
「私がついています。まずは、基礎的なことから始めていきましょう」
数時間後…
「……」
『見てくださいオペラ先輩!出来ましたよホラ!これは正真正銘、ハンバーグですよ!』
「…そうですね。
長い悪戦苦闘の末、ついに料理…ハンバーグを作ることに成功した。
だがオペラ先輩は俺と真逆のテンションになっている。
目線も何故か今作ったハンバーグではなく、もう一つの料理に向かっている。
「…まさか、あなたまでもがこれ程の腕前とは…」
『うるさいですよ!過去に一度も料理したことないんだからしょうがないじゃないですか!』
「だからといって生き物が出来るのは聞いてません」
台所の端には、作るのに失敗したハンバーグ(?)が置いてある。
ちょっと料理が自分で動いたり黒くなったりはしたけど、作った俺がハンバーグと言うのであれば、あれはハンバーグだ。
『…まぁでも、やっぱり料理って難しいですね。人間界で料理したこと一度もなかったので』
「一度も?」
『はい。別に好きじゃないし、やりたいとか思わなかったので』
「…それでは、今はどうですか?」
『…少し、やりたいって思えてきたかも』
「それは良かったです」
お互い、少しの笑顔で顔を合わせ、そこで初めて楽しいって思えた。
オペラさんのさっきまでたれていた猫耳が、ピーンと立っている。これ、気分が良くなったからこうなってんのか?だとしたらまんま猫だな。
「それでは、料理はここまで。もう私の手はいらないでしょう」
『最初にまず一つはって言ってたわけだし、どうせもう一個なんかあるんですよね?』
「はい、勿論。それはズバリ、強さです」
『へぇなるほど、強さか……』
…ん、待って?
『強さ!?』
「はい、何か問題でも?」
…俺一応、高校生なんだけど。
〜用語解説のコーナー〜
・オペラさん:魁雅が魔界に来る前からサリバン邸ですでにSDとして働いていた、いわば魁雅君の先輩
〜おまけ〜
・ずっと解説してなかったソロモンの見た目についてですが、悪魔の角が生えた黒いちびネコって感じです。可愛いかよ。(用語解説とこれの詳細はnoteの裏話にて解説)