#26 豪華な刺客
「だ・・・誰だ?」
「おや、ツァピウル=ケンソディスナル氏はどうした?」
「私の妻ならば現在遠征中だ。かわりに私が相手をしよう。」
「ふむ、そうか。まあいい、もともと貴様に用があったからな。」
「あ、なんだ。そうなのか。」
「とりあえず話を聞いてもらおうか。長くなる。」
「そうかい、ならばとりあえずウチに入んなさいな」
私は一人の男をケンスケウ・イルキスへ案内しようとする。
あれ、どうした?なぜ来ない。
「いや、長くなるとは言ったが立ち話で済ませたほうがよいということだ。」
「そうか、余計に言い回しはしなくてもいいから聞こうか。」
すると、男は顔を少ししかめていった。
「貴様はユーナリア=ハフリスンターリブだな?」
私は頭が真っ白になった。
「・・・は?」
「とぼけるな、ユーナリア。ネステルへの滞在を許してディスナルの制圧を任せたはずなのになぜここで新婚生活を送っているのだと聞いているんだ。」
「はっ、身分もわからん奴に急にそんなに質問をされても困るね。」
すると男は「何言ってんだこいつ」という顔をした。
「は?お前長らく新婚生活を送っているせいで私の顔も忘れたのか?」
「ん?誰だ貴様は。それになぜ私の旧名を知っている。」
「はあ、だから恋愛は駄目だといったんだ。貴様はちょっとハフルを離れれば自分の弟の顔も忘れるのか?」
「ああ?貴様が私の弟?名を名乗れ。」
「ハタ=ハフリスンターリブ。名前なら何回も聞いているはずだ。」
私は愕然とした。
「は、ハタ!?」
そういえば、私の記憶の片隅にあるハタと多くの部分で一致している。そうか・・・こいつは私の弟であり現ハフリスンターリブのボス、ハタ=ハフリスンターリブだ。なぜここにいる。ツァピウル達はどうした?
「はっはっは、言わなくてもわかっているよ。君の愛する妻がどうなっているか知りたいんだろう?」
「ちっ、どうすれば教えてくれるんだ。」
ハタはにやっとした顔をした。
「ふん、別に何もせんでも教えてやるわい。最近私の要塞に貴様の妻を含む女子集団が襲ってきたのはそちらも知っているな?」
「当然だ。」
「もちろん知っていると思われるがうちはファイクレオネの古理派と契約を交わしている。全員生け捕りにして古理派にぶちこむさ。ただし、上層部はおそらく消し去るであろうな。ツァピウルは当然、首をはねられただろう。」
「な・・・」
では今からすぐにウェールフープで飛んで救出せねば・・・
そう思い手に気をこめて意識を集中させる。
「無駄だよ、ユーナリア。うちの部下は作業が速いんだ。貴様とは違ってな。今頃すでに屍となっているだろうね。デュインで。」
私はその言葉を聞いて、真っ青になった。ツァピウルが死んだ?ありえない。あんなに強気でここを出て行ったというのに。一緒に平和な王国を眺めようといったのに、カラムの成人式に二人で参加しようと言ったのに。ツァピウルとの出会いが改装される。悔しさのあまりに声も出ないし涙も出ない。自分は彼女を助けることができなかった。一緒に死を迎えることができなかった。
「どうした?ユーナリア、まさか本気であの女を愛していたとでもいうのか?」
「黙れ!」
私は激してしまった。目の前の男が憎い。憎い。今すぐにでも殺してやりたい。
「お前に人の心はないのか!?人を信じるという概念はないのか!?お前の目的が分からない!なぜこんなことをする!?どうしそうまでしてこの国に対して破壊活動を行う!?」
ハタは私を嘲笑した。
「貴様より数年生まれるのが遅かったからだよ、ゴキブリ。」
いま、この男は私を笑ったか?私を馬鹿にしたか?私の心は完全に錯乱状態。もうなにも止める者がない。私は目の前の男に対して刃を向けた。
「はっはっは!まさか本当にあの女を愛していたとはね!まったく、馬鹿馬鹿しいよ!」
ハタは私の振りかざした剣を難なく避ける。
「うああああああああ」
もう一度剣をハタの方向に振る。するとハタは私の後ろにテレポートをした。
「今日、貴様のところに来たのは君の愛する妻の死を教えに来たってわけではない。」
「黙れ!!ハタ!」
後ろをウェールフープで爆破する。ハタはそれを上にジャンプして避けて私の頭の上に着地する。
「ぐはっ・・・」
「今日は貴様を強制連行しに来たんだ。ハフリスンターリブの裏切り者としてね。」
私は頭を振ってハタを振り落したのちに数百のナイフを出現させてハタを狙った。
ハタは再びテレポートをして向こうの木の上に出現した。すると指を鳴らして合図をした。
「さあ、ユーナリアを捕えよ!」
すると草陰から無数のハフリスンターリブの軍が出てきた。
「抵抗してもいいけれど朝起きたばかりの貴様にこいつらをすべて一掃できるかな?」
四方八方から兵士たちが襲いかかってきた。どうしよう、まずはカラムをウェールフープでネステルに強制送還してからある程度相手して離れるか・・・。
いずれにせよ私とカラムはここにはいられない。
まずはキスの中に入ってカラムにネステルに送ることを伝えよう。
そう考えて悔しさを踏ん張って塀を越えてイルキスに駆けつける。
「ふふ、逃げたか・・・?貴様ならもう少しうまい方向に逃げると思ったんだがな。」
境内を歩いていると地面の下で待ち伏せしていた兵士もいた。そこで地面から少し浮かせてなんとかイルキス内に逃げ込む。
「ほう?建物に逃げるとは。」
そしてカラムに話す。
「いいか?今から前にも行っていた偉い女の人の近くまで行く。ネステルというところなんだ。ちょっと私たちは今命を狙われているから、まずカラムから先に送る!」
「え?お父さん?うん、分かった。でも時間かかるよ?」
「私があの魔法を使えるということを忘れたか?」
「あ、そうか。便利だね。」
「そうだな、じゃあ送るぞ・・・」
するとイルキスの正面入り口をたたく音が聞こえた。まずい、突破されてしまう。
急いで意識を集中させてなんとかカラムを転送する。するともう後ろにはハフリスンターリブの兵が入ってくる様子が見受けられた。
「くそ・・・」
ウェールフープを発動させて相手をなぎ倒す。
どうする、このままでは袋のネズミだ。後ろの森林にも兵士が数人いて待ち伏せをされている可能性がある。そうだ、どうせケートニアーなんだ。真上から出て空中戦を展開しよう。
そして上を見て、足に気をためてジャンプをする。
イルキスの上空に出た。下を見てみるとやはり裏の森林にも兵が待ち伏せをしていた。全員巧みな狙撃で殺しておく。とりあえず周りで待ち伏せをしていた奴らは全員倒れた。ネートニアーだったようだ。そして門の方向を見る。何人かの兵士が入ってきた。完全に狙われていたようだ。全員ウェールフープ波を放って対処する。
このくらいにしようか・・・そう考えて自らの転送を試みる。すると誰かに殴られる。
「カハ・・・!」
「逃がさないさ。裏切り者。」
ハタだったようだ。地面に落ちる。これはしつこいぞ。
私は地面に頭から落ちたがケートニアーなので死にはしない。そうかんがえて上から追撃をしてくるハタを見かねてウェールフープを発動しようとする。
「させるか」
ハタが瞬間移動をしてきた。ウェールフープができなくなる。
「引っかかったな。いくら強くてもやはり思考は幼稚なままのようだ。」
「なんだと?」
今ハタが地面に落としたものは私のウェールフープで作った分身である。
「くそ、どこにいる!」
ハタはあたりを見回すが気配はしない。
「お前ら!くまなく探せ!」
ハタも完全に見失った。まいたみたいだ。よし、ネステルへ行こう。カラムが待っている。