社長節は続く。
“君は思ったことがないのかい?今君の目の前にいる権力者が突然自らを敵とみなして襲いかかってきたら・・・!”
何を言っているんだろう。そうならないために権力者に従ってその権力者のもとに生きるのが利口なんじゃないんだろうか。
“ウチの会社は・・・それに備えるために兵器を蓄えているのさ。”
“馬鹿な、勝てるわけがない!それに連邦が・・・祖国が私を裏切るって何千年先の話をしているんだ?”
“私はつくづく不安に感じていることがあるんだ。”
一瞬辺りが静まった。社長の顔はだんだんひきつってきた。いつも愉快な顔をしているが今回ばかりは真面目だった。
“私のフルネームはアレス・ラネーメ・リファン。見た目は普通なんだが・・・二つ目の名前を注目してほしいんだ。”
“・・・ラネーメ?”
社長は深くうなずいた。
“そうだ。”
“それがどうしたんだ?”
“我々、ラネーメ族はかつてラネーメ国を作り国王として君臨していた。私と・・・あとはユエスレオネ中央大学のリパコール氏とかかな?私たちにこの名前がつく以上、私はラネーメ人を至上とするラネーメ民族党に加担しなければいけないんだ。だがな・・・”
“だが?”
“自分の生まれた民族の為に自分の考えを矯正される必要があるのかって話だよ。”
リファンのこのときの顔は普段の様子からは全く想像できないものであった。ものすごく真剣な顔。半分男らしいと思えば、半分気持ち悪い。
“そこで私は考えた。自分の考えは捨てない。私には私なりの持論がある。それに反論して攻撃してきたらウチの兵器で撃ち落とすまで。”
“な・・・”
“理由はそれだけじゃないさ。誰だって・・・あらゆる人類の支配者になりたいという欲望がある・・・!”
“・・・まさか!”
“連邦がワクチンを作って・・・動物がみなモンスターになって・・・そこまではいいんだ。だが、天空に地面を作って生活を初めてどうするんだ?人類は土の上で繁栄してきた。ケートニアーもネートニアーも、リパラオネ人もラネーメ人も、みなここで生まれた。目の前の人間は殴り殺せても大地を殴ったところで自分の拳が傷つくだけだ。みんな忘れちまったのさ。大地というものの有難さを・・・!”
“ならばどうした?地上にいたままあのモンスターたちに殺されればいいというのか?”
“そこが、連邦の頭の抜けているところだよ。今までフィア戦争とか、ネルト大虐殺で散々人を殺してきたというのになぜ下の世界のモンスターたちは殺さないのか・・・!そういう時にウェールフープを使えばいいというのに。”
私は黙って聞いていた。
“まず、ワクチンを作ろうとすること自体が私にとってはどうもね。”
“むむ・・・”
“だから、連邦はとりあえず今は力を失い始めている。この世界全体の景気だってかなり悪いぞ?”
“ああ、そうだな。”
“だが、ラネーメ公営地下鉄はどうだ?連邦とか、他の企業に依存しないような経営をしているから、ここに移っても黒字のまま。電気が動力だからウェールフープミスによる爆破も全くない。”
社長の表情にだんだんゆるみが見えた。
“兵器も蓄えているからxelken.valtoalの馬鹿にテロを仕掛けられても全く陥落しないのさ・・・!”
社長の生き方にはハタ王国の人々に通じたものもあった。なるべくほかのものに依存しない。ツァピウルもハタらと戦うときに私の助けを求めなかった。王国民はプライドが高いが、この社長も似たようなものだと直感した。
“これが・・・ラネーメ公営地下鉄のやりかただ。わかったかな?若旦那。”
“なるほど、よくわかったよ。”
“はっはっは、普段こんなこと社外には話さないんだがね。もう何回も君とは遭遇するからつい話してしまったよ。”
“そうか・・・”
“あんた・・・ハタ王国に興味はないか?”
“王国?”
“私は小さいころ、あの国とファイクレオネを行き来したんだ。ハタ王国は庭みたいなものだよ。”
“そうだったのか・・・。で、私にその国への興味を訊いて何をする気だ?”
“王国の開拓をしてほしいんだよ。”
社長はしばし考えた。
“開拓?ハタ王国は古風な国だと聞いたが、近代化をするつもりなのか?”
私はスカルムレイに目をやる。
“そこに少女が寝ているだろう?彼女はハタ王国を千年以上前から統べてきた女王の血を引いているんだ。しかも現女王だ。”
社長が驚く。
“そんな少女が言ったことなんだ。相手してやってくれ。”
“女の子の頼みごとなら仕方がないね。”
“助かるよ。”
交渉成立。これでラネーメ公営地下鉄も仲間だ。やっと話が落ち着いてきた。
“はー・・・連邦ではありえないよ。こんないたいけな少女が”
“そうか?”
“それと・・・君はxelkenをやめたのかい?”
“え?”