はふりの書   作:witoitaa

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#39 蜘蛛十字

イザルタ・イルキスの奪還に成功した。おそらくここまで厳重に警備しているのはここぐらいだろう。それ以外のところは同志たちに任せて早くハフリスンターリブの本拠地、ハフルまで行こう。しかし、気になることがある。曇ってきた。さっきまであんなに晴れていたのに。

その上空を、さっきやられかけたラヴァウ=ジャッハルタの使いが飛んでいるということを彼らは知らなかった。

 

――

 

ここは王国北部の上空。

「驚いた・・・ユーナリア先輩が戦ったところって昔何回か見たけれどこんなに強かったなんて・・・やはりハタ司令に戦っていただいた方がいいな。何より、早くハフルまで行ってこのことを伝えないと。通信機が兵たちに壊されたからな・・・」

ラヴァウはウェールフーポの節約のため、飛んでいくことにした。ハタであればそんなことしなくてもいきなりテレポートできるであろう。一気に加速する。この速さで行けばハフルまでそんなに時間はかからない。

 

やがてハフルが見えてくる。そしてその中心には広大な敷地がありその真ん中あたりには大きなビルが建っている。

「着いた・・・」

これがハフリスンターリブの本拠地。おそらくハタもここに住んでいると思われる。

「今すぐに報告せねば・・・」

 

――

「ハフリスンターリブのネットワークにかかればすぐにラヴァウがやられたことが広がり今すぐにでも追手がやってくる。奴らはおそらく私とカラムが力を合わせないと一掃できないような奴らが来るから、みな見つけたらこちらから仕掛けずに私に報告してほしい。」

そうだ、ハフリスンターリブは反逆者へは容赦がない。逆らう者は皆処刑。まさに「独裁」だ。

私もディスナルでハタにつかまりかけた。なんとか逃げて見せたが、今回ばかりは逃げてはいけない。

 

 

イザルタからハフルへ続く街道を通ってしばらくするともうハフルの端の方につく。端とはいえイザルタに比べると数倍ハフリスンターリブの影響力が強い。かつて、ここから先はスカルムレイの支配対象ではなかった。それゆえここではハタ王国とはちょっと違う文化が存在していた。そのためここではユーゴック語の方言がよりきつかったり、リパラオネ人などファイクレオネから来た人間が多かったり、ということがある。ユーゲ平野にファイクレオネ人が渡来してからずっとこの地に住んでいるのがTarf一族だ。のちにサシミ一族、サザシミ一族に分離し、サザシミ一族は今のランテイン地方に行きランテイン一族を気づきあげた。サシミ一族のほうはアケハフルに赴いた。また一部のサザシミ一族は海を渡り、今のウィルキタイ地方に移った。そのため古くからここではウィトイターが最も多く、イルキスもまったく存在しないか、取り壊されているであろう。ここでウィトイターが暴動を起こしてもおかしいことではない。

「な、なんだあれは・・・」

一人の兵士が感嘆する。

その先には看板があった。「トイムルクテイお断り」とあった。

「トイター教排除運動が非常に盛んなようだね。こんな奴らがずっとここに住みついていたのかと思うとぞっとするよな。」

「ええ、本当にそうです・・・」

 

ここでいったん休憩し、各自で食料をとる。

こんな休息中に襲ってくるのがハフリスンターリブだ。私はおにぎりを食いながらも空中浮遊をして上から監視していた。

 

すると、私の顔のすぐ横を何かが通り過ぎていく。

「ようこそ、ハフルへ・・・!」

「!?」

女性っぽい声が聞こえた。敵だろうか?はっと、後ろを向く。しかし、当然のように誰もいない。

「こんな大軍を引き連れて・・・ハタ様になにか御用かしら?」

後ろか!

手を振り回す。すると何かが突き刺さる。

「痛っ」

これは王国のナイフだ。ウドゥ・ミト使いか?

はっと前を見る。やっとその女性の姿を拝むことができた。

「・・・シャスティ?」

見た感じだと、ツァピウルやカラムと同じ、普通のスカルタンを着ているように見えた。

「おしいわ、もうあんな見たこともない人間に縛られる生活はやめたの・・・」

よく見ると、胸にアスタリスクのようなマークが見えた。

ハタ王国では家によってスカルタンの柄が少しずつ違う。たとえばケンソディスナル家では胸から腰にかけて縦に細長い有字のKが二つ、イザルタシーナリア家では右胸に旧有字でIが刺繍されている。

してみてみると、これは蜘蛛十字のようだ。蜘蛛十字とは十字架の一つで蜘蛛の足をかたどった棒が十字に付け足して描かれている。となると、該当するシャスティ家は一つ・・・

「アンテカ=ウロカーシャテリーン(Anteka=UrokaasyaTeriin)・・・だな?イザルタシーナリアの独裁反対武装連盟に参加し、ともにハフリスンターリブと戦ったシャスティの一族・・・」

あの時代のウロカーシャテリーンのシャスティと言えばたしかアンテカだ。ならば間違いない。

「ん?知らないわよ?私はハフリスンターリブに属するただの女。今はハタ様にあなたの討伐を命じられているの・・・あなたはだれ?」

「ガルタ=ケンソディスナル、真の王国を取り戻しに来た。」

「ふふ、面白い!」

アンテカはお得意のナイフを投げてきた。こちらに届くのが異様に速く、一秒もしないうちにこちらにすべて刺さる。

「ガハッ・・・!」

私は血を吐いた。ケートニアーだから死にはしないが、痛いものはいたい。だがすぐに修復する。

「・・・やはりケートニアーなのね。」

するとアンテカは合図をした。すると街道の周りの林から無数のウェールフープライフルがこちらに銃口を向ける。やはり兵を連れていたか。

私は何とかよけようと空中を移動しようとする。

「!!?」

なぜか、体全体が何かに固定されているような気がして動けない。なんだ?ウドゥ・ミトに相手の動きを止める術なんてあったか?

するとアンテカは地上に降りた。

「撃ちなさい!!」

私はこんなところでやられるのか?まさかハタに一矢報いることもなくやられるのか?必死に身をひねるがまったく動けない。

けたたましい銃声が聞こえた。一瞬にしてなにかが近づいてくる。それはウェールフーポが交換されている様子。私の死期を表しているともとれる。

下の方でカラムや兵士たちがこの世の終わりでも来たかのような顔をしている。

私は目を閉じた。

 

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